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◆第3回
あやしい三人組&デデデ大王の『お宝探し』と、カービィ&ワドルディの『デデデ大王探し』に、急展開(きゅうてんかい)!? 飛行船に乗ってプププランドにやってきた人物とは……?
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くらやみ森のウワサ
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やっぱり、二人の思った通り。
デデデ城(じょう)の広間で、たいくつそうにソファに座(すわ)っていたのは、メタナイトだった。
メタナイトは、素顔(すがお)も素性(すじょう)もナゾにつつまれた仮面(かめん)の剣士(けんし)。
ふだんはどこに住んでいるのかだれにも知られていないが、時おり、思い出したようにフラリとこのプププランドにあらわれる。
カービィやワドルディとも、顔なじみだった。
「メタナイト様。どうかしたんですか? 三日前にも遊びに来たばかりなのに……」
ワドルディは、そう言いかけて、あわてて言い直した。
「もちろん、遊びに来てくださるのはうれしいんですけど!」
ワドルディがふしぎに思うのも、もっともだった。メタナイトが、立てつづけにデデデ城(じょう)をおとずれるなんて、めずらしいことだ。
「やあ、ワドルディ。実は、大事なカードをなくしてしまってね」
「カード……?」
「ああ。金色の小さなカードだ。ひょっとしたら、三日前にここで落としたのではないかと思って、さがしに来たんだが……」
「さあ……ぼくは、見かけませんでしたけど」
「そうか。なら、他の場所を当たろう。ジャマをしたな」
「何に使うカードなの?」
カービィがたずねた。メタナイトはちょっと考えてから、答えた。
「君には教えないほうが良さそうだ」
「え! どうして!?」
「いや、なんでもない。もし見つけても、ぜったいに悪用したりしないでくれ。めんどうなことになるからな」
「めんどうって?」
「くわしくは言えない。デデデ大王にも伝えておいてくれ。見つけたら、ぜったいに使わずに、私に返してくれとな」
「はい……」
「では、しつれいする」
立ち上がって歩き出したメタナイトを、ワドルディはよび止めた。
「まってください、メタナイト様! 実は……」
「ことわる」
話を聞きもせずに、メタナイトはピシャリと言った。
「え、まだ何も……」
「どうせ、何か力をかしてほしいというんだろう」
「そのとおりです。なんで、わかったんですか?」
「こまった顔をしているからさ。悪いが、帰らせてもらうぞ。君たちのトラブルにまきこまれると、ろくなことがない」
「そんなぁ……」
「さらばだ」
取りすがろうとするワドルディをふり切って、メタナイトはサッとマントをひるがえし、広間を出て行こうとした。
そのせなかへ、カービィが声をかけた。
「待ってよ、メタナイト。帰る前に一つだけ、聞きこみたいことがあるんだけど」
「……なんだって?」
メタナイトは足を止めてふり返った。
カービィは、ちらっと上目づかいでメタナイトを見ると、いつになく真剣(しんけん)な声でたずねた。
「ぼくとデデデ大王って、にてると思う?」
「……何?」
メタナイトは、あっけにとられて答えた。
「どういうことだ、その唐突(とうとつ)なしつもんは……?」
「いいから、答えて!」
「ふむ……まあ、にてると言えば、にているな。以前(いぜん)から、そう思わないでもなかった」
「……そうなの!?」
バーニンレオに言われたぐらいなら、冗談(じょうだん)だと思って聞き流せるが、メタナイトの言葉にはやはり重みがある。
カービィはよろよろしながら言った。
「そんなににてるの……? どのくらい? コロッケとメンチカツぐらい? チャーハンとピラフぐらい? それとも、まさか、カレーライスとハヤシライスぐらい……?」
カービィは、しゃべっているうちに感情(かんじょう)が高ぶってしまい、思わず涙(なみだ)ぐんだ。
「な……何? どうした、カービィ?」
メタナイトは、質問(しつもん)の意味がさっぱりわからずに、たじろいだ。
カービィは、必死(ひっし)の形相(ぎょうそう)でメタナイトにせまった。
「はっきり言って! どっちがコロッケで、どっちがメンチカツ!?」
「……意味がわからない……」
「ごまかさないでよ、メタナイトー!」
今にもメタナイトに飛(と)びかかろうとするカービィを、ワドルディがあわてて止めた。
「やめなよ、カービィ。メタナイト様がこまってるよ」
「ぼくだってこまってるよ! いやだよ、デデデ大王とまちがわれるなんて! わあぁぁぁんーー!」
床(ゆか)につっぷしたカービィを見て、メタナイトはあっけにとられた。いつものんきなカービィが、こんなに落ちこむなんて、めずらしい。
「どういうことだ、いったい? デデデ大王とまちがわれるって……?」
「あの……実は、ですね……」
ワドルディが、今日のできごとを最初(さいしょ)から説明(せつめい)した。
デデデ大王が、コックカワサキの店をかし切りにして食事をしていたこと。
そこへ、あやしい三人組が近づいたこと。
三人組は、宇宙一(うちゅういち)おいしいフルーツの話を持ちかけて、デデデ大王をさそい出したこと。
彼(かれ)らが、どうやらデデデ大王のことをカービィと思いこんでいるらしいこと……。
メタナイトはしずかに聞いていたが、ワドルディがすべて話し終えると、むずかしい顔でつぶやいた。
「宇宙一(うちゅういち)おいしいフルーツ……だって? まさかとは思うが、くらやみ森のスターダストの実のことではないだろうな?」
「え……? メタナイト様、今、なんて?」
「メタナイト、宇宙一おいしいフルーツのこと、知ってるの!?」
つい今まで打ちひしがれていたカービィは、ガバッと飛(と)び起きた。
「くらやみ……? それが、宇宙一(うちゅういち)おいしいフルーツの名前なの? どこにあるの!? 教えて教えて〜!」
「……いや」
メタナイトは首をふり、言葉をにごした。
「そんなはずはない。私の思いすごしだろう。すまない、今の話はわすれてくれ」
「ええ!? そんなのないよ、メタナイト。ちゃんと教えてー!」
「おねがいします、メタナイト様」
ワドルディは、ゆかに頭がくっつくぐらい、深く礼をした。
「デデデ大王様は、宇宙一(うちゅういち)おいしいフルーツに目がくらんで、わるもの一味(いちみ)にだまされているんです。なんとかして助けなくちゃ、キケンなんです!」
「彼(かれ)のことだ、心配はなかろう」
「でも、こんな時間になっても、まだ帰ってこないんです。いだいな支配者(しはいしゃ)のデデデ大王様にもしものことがあったら、このプププランドはどうなってしまうことか……」
「平和になるだけだと思うが」
「メタナイト様!」
ワドルディは、めずらしくキッとなってメタナイトをにらんだ。
「ああ、すまない、ワドルディ。トラブルにはなるべく関わりたくないんだが……君の忠誠心(ちゅうせいしん)にめんじて、話そう」
メタナイトはあきらめたように、またソファにすわりなおした。
「くらやみ森というのは、このプププランドの奥地(おくち)にある、古い森のことだ。とても広くて、昼でも暗くて、まよいこんだらまず出てこられない。それだけではない、森の中にはおそろしい獣(けもの)や魔物(まもの)がウヨウヨいると言われている。まず、だれも近よりたがらない魔境(まきょう)と言っていいんだが……」
メタナイトは、ふいに声をひそめた。
「この森には、貴重(きちょう)なフルーツがなるのだそうだ」
「貴重(きちょう)な……フルーツ……?」
「ああ。それが、くらやみ森のスターダストの実だ。ふしぎなことに、広い宇宙(うちゅう)のなかでただ一か所、この森にしか育たないんだ。森じゅうの果実(かじつ)を根気よくかき集めたら、おそらく数千個になるはずだが……」
「はず……って?」
「このスターダストの実には、やっかいな性質(せいしつ)があるんだ。果実(かじつ)がなるのは、毎年、春の満月(まんげつ)の夜と決まっている。日の入りとともに森じゅうの果樹(かじゅ)がいっせいに実をむすび、そして夜明けとともに、すべてくさり落ちてしまうんだ」
「……えっ!?」
「つまり、その一晩(ひとばん)のうちに収穫(しゅうかく)しなければ、スターダストの実を味わうことはできないということだ」
メタナイトは、しずかに首を振った。
「遠い昔、このフルーツを食べた勇者(ゆうしゃ)が『宇宙一(うちゅういち)おいしい』と書きのこしたことから、これまでに何人ものぼうけん者が森をめざしてきたのだが……無事に帰ってきた者は、一人もいないと言われている」
「ええっ!?」
「みんな、森に住む猛獣(もうじゅう)や魔物(まもの)にやられてしまったんだ。フルーツを食べるためだけに、命をかけるほどのぼうけん者なんて、最近ではすっかりいなくなった。だから、くらやみ森のスターダストの実は、今では『まぼろしのフルーツ』と呼ばれているんだ」
「デデデ大王様は……そんなおそろしい森に……!」
ワドルディは青ざめ、ぶるぶるっとふるえた。
カービィは、そんなワドルディとは逆(ぎゃく)に、今にもよだれをたらしそうなウットリした表情(ひょうじょう)になった。
「宇宙一(うちゅう)おいしいフルーツ……! どんな味なんだろう? あまいのかな? すっぱいのかな? うわあ、ワクワクする!」
カービィはピョンと飛(と)び上がると、ワドルディの手をつかんだ。
「行こう、行こう! 今すぐ行こう、くらやみ森へ!」
「カ、カービィ……」
「やめろ、カービィ」
メタナイトが止めた。
「私の話を聞いていなかったのか? とてもキケンな森なんだ。近づいてはならん」
「でもさ〜! 宇宙一(うちゅういち)おいしいフルーツ、食べてみたいよ〜!」
「やめておけ。それに、デデデ大王と三人組が、くらやみ森のフルーツを狙っているとは思えない」
メタナイトは、今にも飛(と)び出して行きそうなカービィの手をつかんで、言い聞かせた。
「いくらなんでも、そんな命知らずではあるまい。彼(かれ)らが言った『宇宙一(うちゅういち)おいしいフルーツ』というのは、きっと、べつのくだもののことだと……」
「いいえ、メタナイト様」
ワドルディが、さえぎった。
「ぼくは、やっぱり、くらやみ森があやしいと思います」
「ワドルディ?」
「だって、満月(まんげつ)の晩(ばん)はもうすぐです。それに、やつらはカービィをさがしていたんです。くらやみ森に住むキケンな獣(けもの)たちを追いはらうために、カービィの助けをかりようとしてたんだと思います」
メタナイトはカービィの手をはなし、考えこんだ。
「……たしかに、な」
「ぼく、くらやみ森に行ってみます。大王様を助けなくちゃ!」
ワドルディは、きっぱりと言って、戸口に向かった。
もちろん、カービィもはり切ってその後につづいた。
メタナイトは、だまって二人を見送ろうとしたが──やはり、じっとしてはいられなかった。
「待て、カービィ。ワドルディ」
ふり返った二人に、メタナイトはため息まじりに告げた。
「私もいっしょに行こう」
「ほんとですか、メタナイト様!」
「しかたあるまい。乗りかかった船というやつだ。君たちだけを行かせるのは心配だし、それに……」
「メタナイトも、宇宙一(うちゅういち)おいしいフルーツを食べたいんだね!? 食べくらべをしよう! よーし、負けないぞー!」
「ちがうっ! デデデ大王が、レストランをかし切りにして食事をしていたということが気にかかるんだ。まさか、大王はあのカードを見つけてしまったのでは……」
メタナイトは言いかけて、言葉をのみこんだ。
「いや、悪い方向へ考えるのはやめよう」
「なんの話?」
「別に。とにかく、デデデ大王に会って話したい。さがしに行こう」
「うん! 行こう行こう!」
「待て。今日はもう日がくれた。ゆっくり休んで、明日の朝、出発しよう」
メタナイトの提案(ていあん)に、ワドルディが顔をくもらせた。
「でも、メタナイト様。こうしている間にも、デデデ大王様はわるもの一味(いちみ)に苦しめられているかもしれません。ひょっとしたら、本物のカービィじゃないってことがバレて、しばられたり、牢屋(ろうごく)に入れられたり、ムチで打たれたりしているかも……」
ワドルディは、自分が口にした言葉にふるえ上がってしまった。
「たいへんです! 早く大王様を助けに行かないと!」
「落ち着け、ワドルディ。今から急いでも、どうせとちゅうで野宿(のじゅく)になってしまう。くらやみ森は、手ごわいぞ。ちゃんと準備を整えなければ、とても近づけない」
「でも……大王様が……わるもの一味(いちみ)に……」
「大丈夫だ。私のカンでは、苦しめられているのは、むしろわるもの一味(いちみ)のほうだろう」
メタナイトは、軽いじょうだんのつもりで口にしたのだが──。
彼(かれ)のカンは、残酷(ざんこく)なくらい、よく当たっていた。
☆゜・。。・゜゜・。。・゜☆゜・。。・゜゜・。。・
「あ〜あ、よく歩いたわい! 足が棒(ぼう)のようだ!」
デデデ大王は、フキゲンきわまりない声で言うと、そまつなソファの上にドテッとたおれこんだ。
その様子を見ながら、ケロッタたちは暗い顔でささやき合った。
(どこが棒(ぼう)だ! 丸太みたいな足をしやがって……)
(しっ、兄ちゃん。聞こえるよ)
(兄ちゃんじゃねえ! 親分ってよべって言ってるだろ!)
(ちょっと、二人とも。兄弟げんかはやめてよ。それより、カービィのやつをなんとかしないと……)
デデデ大王は、三人の気持ちにはおかまいなしに、どら声をはり上げている。
「宇宙一(うちゅういち)おいしいフルーツのある森が、こんなに遠いとは聞いてなかったぞ! あとどれくらい歩けばいいんだ!」
「何言ってんのよ。ぜんぜん歩いてないくせに」
ケロリナが、腹立(はらだ)たしげにつぶやく。
ケロッタは、妹のわきばらをつついて、だまらせた。
「しっ、だまってろ、ケロリナ。……カービィさん、おつかれさまです。森はもう目の前ですよ〜」
「早く食わせろ。宇宙一(うちゅういち)おいしいフルーツを!」
「フルーツを収穫(しゅうかく)するには、満月(まんげつ)の晩(ばん)をまたないといけないんですよ。今しばらく、ごしんぼうを〜」
「フン、まあいい。とにかく、オレ様はクタクタだ。足をもめ! せなかもだ!」
「はいはい、ただいま〜」
ケロッタは、両手をもみ合わせて高い声を出した。
ケロリナが、幻滅(げんめつ)したように言った。
(なさけないなあ、ケロッタ兄さんったら! あたしたち、カービィのめしつかいじゃないんだから!)
(しんぼうしろ、ケロリナ。カービィにヘソを曲げられたら、元も子もない)
(だけど、カービィのやつ、いくらなんでもワガママすぎ!)
ケロリナが怒っているのも、ムリはなかった。
カービィになりすましたデデデ大王は、言いたい放題、やりたい放題。
このかくれ家までの道中も、「食い物を持ってこい」だの「つかれたから、おんぶしろ」だの、さんざんワガママを言って、三人組をこき使ってきたのである。
おんぶはさすがにムリだったので、台車を見つけてきてその上にデデデ大王をのせ、三人で力を合わせて引っぱった。
ところが大王は、かんしゃするどころか、「もっとスピードが出せんのか!」とおこり出す始末(しまつ)。
ようやく、くらやみ森の近くのかくれ家までたどり着いたものの、三人はもうヘトヘト。目が回りそうなくらい、つかれはてていた。
それなのに。デデデ大王のワガママは止まらない。
「あ〜、ハラがへったわい。夕ごはんは、まだか?」
ソファに腹ばいになったデデデ大王は、ケロッタとケロージに足をもませながら、そう言った。
ケロリナが、ついにブチ切れた。
「さっき、おやつを食べたばっかりでしょーが、この食いしんぼう!」
「ん? 何か言ったか?」
デデデ大王は、じろりとケロリナを見た。
さけぼうとするケロリナを、あわててケロッタが取りおさえた。
「な、なんにも言ってないですよ、カービィさん」
「カービィ……? ああ、そうそう。オレ様はカービィだったっけ。ついわすれていた」
「は?」
「なんでもないわい。夕ごはんだ、夕ごはん……いや、まて。その前に」
デデデ大王は、むっくりと体を起こした。
「まだ、くわしいことを聞いていなかったな。宇宙一(うちゅういち)おいしいフルーツについて」
「そうそう、それです!」
ケロッタたちはホッとして、デデデ大王の前にすわりこんだ。
「そのフルーツの木が生えている森は、くらやみ森とよばれています。ごらんください」
ケロッタは窓のカーテンをあけて、西側に見える黒々とした森を指さした。
「あれが、くらやみ森です」
「初めて聞く地名だな」
「地図にものってない、伝説(でんせつ)の秘境(ひきょう)なんです。一見、ふつうの森にしか見えませんが、あの中にはおそろしい猛獣(もうじゅう)がウヨウヨいると言われています。うっかりまよいこんだらぜったいに出てこられないそうです」
「ほほう。おもしろい」
不敵(ふてき)に笑ったデデデ大王を見て、ケロッタは感動した。
「おお、なんてたのもしいお言葉! さすがはカービィさんです……!」
「おまえら、オレ様のために、そんなキケンな森からフルーツを取ってきてくれるとは。いい心がけだな。ほめてやるぞ」
「は、ありがとうござ……」
「ちがーうっ!」
うっかりデデデ大王につられて頭を下げたケロッタに代わり、ケロリナがどなった。
「ねぼけたこと言ってるんじゃないわよ、カービィ! フルーツを手に入れるために、あんたの力が必要なの! 猛獣(もうじゅう)をけちらして、フルーツを一気にすいこむのよ!」
「すいこむ……?」
「そうなんですよ、カービィさん。このフルーツを収穫(しゅうかく)するためには、何よりもスピードが大事なんです」
ケロッタは、あばれるケロリナを取りおさえながら説明(せつめい)した。
「どういうことだ?」
「このフルーツ──くらやみ森のスターダストの実とよばれているのですが、おそろしく腐(くさ)りやすいという性質があるんです。熟(じゅく)してから腐(くさ)り落ちるまでの時間は、わずか一晩(ひとばん)」
「一晩(ひとばん)だと?」
「はい。その一晩(ひとばん)のうちに収穫(しゅうかく)しなければ、食べられないんです。けれど、くらやみ森はとても広いし、まっくらだし、フルーツは小さくて見つけにくいんです。一つぶずつ収穫(しゅうかく)していたのでは、とても間に合いません。そこでたよりになるのが、カービィさんの有名なすいこみワザ!」
ケロッタにつづいて、弟のケロージが目をかがやかせて言った。
「オレ、ウワサに聞いたことがあります! カービィさんのすいこみワザは宇宙一(うちゅういち)すごいって! 岩でもお城(しろ)でも山でも、なんでも一息ですいこんじゃうって!」
「いや……それはちょっと、大げさだな……」
デデデ大王が言いかけるのを、ケロッタがさえぎった。
「カービィさんこそ宇宙一(うちゅういち)の勇者(ゆうしゃ)、宇宙一のヒーロー! カービィさんの力があれば、くらやみ森のフルーツは全部オレたちのものです!」
「カービィさん、さいこう! カービィさん、ばんざい!」
ケロッタとケロージが、いっしょうけんめいにおだてるのを聞いて、デデデ大王はだんだんふきげんになってきた。
「おまえたち。ちょっとカービィをほめすぎだぞ」
「そんなことはありません。カービィさんのようなすばらしい勇者(ゆうしゃ)は、いくらほめても足りないくらいです!」
「そうです、そうです。カービィさんこそプププランドがほこる英雄(えいゆう)! みんなのあこがれ、スーパーアイドル!」
「うるさぁぁぁい!」
デデデ大王は、両手をふり上げておこりだした。
「ああ、ふゆかいだわい! なんだ、おまえら、カービィカービィって! カービィなんかより、オレ様のほうがずっと、ずっと……!」
「え……? オレ様……って……?」
とつぜんの大王の怒(いか)りに、ケロッタたちは目をパチパチさせた。
デデデ大王は三人の顔を見て、自分が今「カービィ」になりきっていることをやっと思い出し、あわてて取りつくろった。
「い、いや、えへん。あまり、オレ様をほめるんじゃない。てれるじゃないか。そんなことより、とっとと食事のしたくをせんか!」
「は、はい!」
ケロッタたちは、かくれ家にそなえつけた小さなキッチンに向かいながら、こそこそと話し合った。
「カービィさんは、ほめられるのが苦手みたいだな」
「意外と、てれ屋さんなんだね〜」
「ずうずうしいヤツだと思ってたけど、かわいいところもあるじゃない。見直したわ」
「おお。さすが、オレたちのカービィさんだぜ!」
三人組は勝手な誤解(ごかい)をし、カービィ──いや、デデデ大王のために、せっせと食事のしたくをするのであった。
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そして、ソファの上でふんぞり返っている大王はと言えば。
余裕たっぷりのふりをしながら、実は、あれこれと考えをめぐらせていた。
(あいつら、すいこみワザはカービィだけのものだと思ってるらしいな。フン! オレ様だってすいこみぐらいできるわい。ま、カービィよりは、少しパワーが落ちるが……)
それは、大王もみとめざるをえない。カービィのすいこみワザは、だれにもマネできないくらい強力なのだ。
(オレ様がカービィじゃないと知ったら、あいつら、森へ案内(あんない)するのをためらうかもしれんな。もう少し、カービィになりすましておくとするか。オレ様のすいこみパワーでは、すべてのフルーツを吸(す)いこむことはできんかもしれんが……なに、そのときはあいつらをこき使って、ひとつぶずつ集めさせればいいわい)
もともと楽天家(らくてんか)な上に、部下をこき使うことになれているデデデ大王である。あっさり、考えるのをやめた。
(そんなことより、ハラがへったわい。あいつら、料理はうまいのかな? コックカワサキをいっしょに連(つ)れてくれば良かったな……)
目指すは、くらやみ森の「スターダストの実」!
三人組&デデデ大王と、カービィ&ワドルディ&メタナイト、いったいどっちが先に、「スターダストの実」を見つけることができるのか…?
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