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◆第2回
くらやみ森の『お宝』をゲットするため、カービィに協力(きょうりょく)してもらうことにした、ケロッタ・ケロージ・ケロリナの三人組。でも、三人がカービィだと思いこんで声をかけたのは、デデデ大王だった!?
かんちがいしたまま、三人は、『お宝』の正体を、デデデ大王に語りはじめます…。
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カービィ発見!? 後編
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「実は……」
ケロッタはデデデ大王の耳元で、声をひそめてささやいた。
「宇宙一(うちゅういち)おいしいフルーツなんです」
「フルーツだと? はっ、つまらん。そんなもの、もの足りんわい。オレ様は、宇宙一(うちゅういち)うまい肉のほうがいい」
また食事にもどろうとするデデデ大王に、ケロッタがすばやく言った。
「いえいえ。ただのフルーツじゃないんですよ。その実はとろけるように甘く、この世のものとは思えないほどおいしいと言います。しかも、とてもめずらしくて、食べたことのある者は数えるほどしかいないんです。まさにフルーツ界の王者、フルーツ界のナンバーワン! 食べてみたいと思いませんか?」
「うむぅ……王者か……」
王者とかナンバーワンとかいう言葉に弱いデデデ大王は、少し心を動かされた。
そこへ、コックカワサキが声をかけてきた。
「すてきなお話ですねえ! そんなフルーツ、食べてみたいな……けど……」
彼(かれ)は先ほどから、三人組とデデデ大王の会話に聞き耳を立てていたのだ。
三人組は、けいかいしてコックカワサキをにらんだ。
コックカワサキは、横を向いてフーッとため息をついた。
「オレなんかには、ふさわしくないよなあ……そんな最高(さいこう)のフルーツを食べることができるのは、よほどの大物だけなんだろうなあ……」
大物という単語にも弱いデデデ大王は、ピクッと反応した。
ここぞとばかりに、コックカワサキはたたみかけた。
「たとえば宇宙一(うちゅういち)のちょうイケメン王子とか、プププランドのいだいな支配者(しはいしゃ)とか……そのくらいのちょう大物にならないと食べられないスペシャルなフルーツなんだろうなあ……ああ、ザンネンだけど、しかたないなあ……」
「──おい」
デデデ大王は、コックカワサキの発言は聞こえなかったふりをして、ケロッタに向き直った。
「その話、たしかなんだろうな?」
「もちろんですとも。フルーツがある場所を記したトクベツな地図も手に入れてあります。あとは、カービィさんの協力(きょうりょく)さえあれば」
「……よし」
デデデ大王はうなずき、むねをポンとたたいた。
「このカービィ様が、おまえたちに協力(きょうりょく)してやる。そのフルーツのもとへ案内(あんない)しろ」
「はいっ!」
三人組は、そろってガッツポーズを作った。
デデデ大王は、おもむろに立ち上がった。その姿を、三人組はたのもしそうに見上げた。
「行くぞ」
「はーい! カービィさんが味方してくれたら、こわいものなしですよ!」
三人組は、デデデ大王を囲み、うかれた足取りで出て行った。
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ドアがしまったあと──。
コックカワサキは、よろこびをおさえきれずに大声を上げた。
「やったぁぁー! ついに、やくびょう神を追いはらったぞー!」
彼(かれ)はうれし泣きをし、店内をスキップで三周(さんしゅう)した。
足を止めたところで、ふと思い出して、ひとり言を言った。
「しかし、あいつらが言ってたフルーツって……まさか、くらやみ森のスターダストの実のこと……じゃないだろうな……?」
コックカワサキはしんこくな顔で考えこみ、プルプルと首をふった。
「いや、まさか! どんな命知らずだって、あれに手を出すはずはない。命がいくつあったって足りないよ。考えすぎ、考えすぎ……そんなことより、レストランの準備(じゅんび)のほうが大切だ」
デデデ大王が食べちらかした皿を片づけ、食材(しょくざい)を仕入れ直し、いつもの営業(えいぎょう)にもどらないと。
コックカワサキははり切って、店のオープン準備(じゅんび)に取りかかった。
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二人で聞き込み
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「大王様、おそいなあ……」
西の地平にしずんでゆく夕陽を、デデデ城(じょう)のまどからながめながら、ワドルディはため息をついた。
「まだコックカワサキのお店でお食事をしてるのかなあ? いくらなんでも、もう、おなかいっぱいだと思うんだけど……」
「心配いらないよ! そんなことより、夕ごはん、夕ごはん!」
カービィはフォークとナイフを手に、待ちきれない様子でさけんだ。
ワドルディはそんなカービィをふり返り、二度目のため息をついた。
「ほんの三十分ぐらい前に、おやつを食べたばかりじゃないか……しかも、ぼくが大王様のために焼(や)いたクッキーなのに、全部食べちゃうんだから。大王様が帰ってきたら、ぼく、しかられちゃうよ……」
「あのクッキー、おいしかったー! また焼(や)いてね!」
「うん……」
ワドルディは、また窓(まど)のほうに向き直った。
「なんだかイヤな予感がするんだ。大王様、何かトラブルにまきこまれてるんじゃないかなあ……」
「デデデ大王は、いつもトラブルを作るほうだよ。まきこまれるなんて、ありえないからだいじょーぶ!」
カービィにしてはまともなことを言って、また「そんなことより、夕ごはん〜!」とさわぎ出した。
ワドルディはくるりと向き直って、窓(まど)からはなれた。
「悪いけど、カービィ。ぼく、やっぱり大王様をむかえに行ってくる」
「え〜? 夕ごはんは?」
「帰ってきてから。夕ごはんより、大王様のほうが大事だもん」
「そんなぁ……」
「じゃあね、カービィ」
「まって! ぼくも行く!」
カービィはナイフとフォークをテーブルにおいて、イスからピョンと飛(と)び下りた。
「え? カービィも?」
「うん! だって、デデデ大王が見つからないと、いつまでたっても夕ごはんにならないんでしょ?」
「う、うーん……」
目的(もくてき)はなんであれ、カービィがいっしょに来てくれるのは心強い。
ワドルディとカービィはデデデ山を下りて、ふたたびコックカワサキのレストランに向かった。
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レストランに着いた二人は、どちらからともなく顔を見合わせた。
「あれぇ……? はり紙がなくなってる」
「お店、やってるみたいだね」
さすが、プププランドでいちばんの人気レストラン。ちょうど夕食どきなので、店の前に行列(ぎょうれつ)ができるほどの大にぎわいだった。
「さっきはお休みだったのになあ」
「どうしたんだろう?」
カービィとワドルディは、店内に入ってみた。
大いそがしで料理(りょうり)を運んでいたコックカワサキが、二人に声をかけた。
「こみ合ってるので、すみませんが列にならんでください……って。なんだ、カービィとワドルディじゃないか。君たちも、食事に来てくれたの?」
「ううん。ぼくら、デデデ大王様をさがしに来たんだ」
「デデデ大王!?……ふ、ふーん」
コックカワサキは目をそらせた。明らかに、何かかくしていそうなふんいき。
ワドルディがつめよった。
「デデデ大王様は、さっきここで食事をしてたよね? そのあと、どこへ行ったの?」
「さ、さあ、知らないなあ」
「コックカワサキ! ウソをつくと……」
ワドルディににらまれて、コックカワサキは息をのんだ。
ワドルディはこわくないが、となりにカービィがいる。カービィをおこらせることだけは、さけなければ。
「あのね……実は……」
コックカワサキは、ないしょの話をするために、二人を調理場へつれて行った。
「デデデ大王が食事をしてるところへ、おかしな三人組がやってきたんだよ」
「三人組?」
「うん。見かけない顔だった。そいつら、デデデ大王のことを、なぜかカービィとまちがえたらしいんだよね」
「えぇぇぇー!?」
カービィは、ひっくり返りそうなほどショックを受けてさけんだ。
「ぼくとデデデ大王を!? このかっこいいぼくと、デデデ大王を!? どうして!? その三人組って、目がわるいの!?」
「さあ、よくわからないんだけど。とにかく、デデデ大王のことを『カービィさん』ってよんで、話を持ちかけてたよ」
「どんな話?」
「たしか、宇宙一(うちゅういち)おいしいフルーツがある……って言ってたっけ。それを手に入れるのに、カービィさんの力をかりたいってさ」
「宇宙一(うちゅういち)……おいしいフルーツ……!?」
カービィはこうふんして、くるんと宙返(ちゅうがえ)りをした。
「何、それ!? 食べたい、食べたーい!」
「その話を聞いたデデデ大王は、自分がカービィになりすまして、三人組といっしょに出て行っちゃったんだよ。オレが話せるのは、ここまで」
「なんで、すぐにぼくをよんでくれなかったのー!? 三人組がさがしてたのは、ぼくだったんでしょー!?」
カービィはコックカワサキにすがりついた。
「そうだけど……でも、デデデ大王が乗り気になっちゃってね……」
「ずるーい! ぼくのフリをするなんて! ぜんぜん似てないのに!」
「とにかく、そういうこと。三人組とデデデ大王はいっしょに出て行ったけど、その後どこに行ったかはわからないよ」
コックカワサキは、いっそう声を低めてつづけた。
「どうか、オレがこんなことを言ったってことは、ないしょにしてくれよ。デデデ大王に知られたら、仕返しをされるかも。また、あの悪夢(あくむ)が……」
コックカワサキは青ざめ、ぶるっと身ぶるいをした。
「うん、わかった。だれにも言わないよ」
コックカワサキに約束(やくそく)して、カービィとワドルディはレストランを出た。
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早足で歩きながら、ワドルディは言った。
「やっぱり、ぼくのイヤな予感が当たっちゃった。デデデ大王様は、事件(じけん)にまきこまれたんだ……」
「まきこまれたんじゃなくて、自分から飛(と)びこんだんじゃないか! ほんとなら、ぼくがまきこまれるはずだったのに!」
カービィはプーッとふくれっつらになり、天をあおいでさけんだ。
「くやしいよー! まきこまれたかったよーー!」
「大王様に近づいた三人組って、何者なんだろう? 見かけない顔って言ってたから、このあたりの住人じゃなさそうだよね」
「だいたい、どうしてデデデ大王とぼくをまちがえるの!? どこがにてるっていうの!?」
「うーん……食欲(しょくよく)、かなあ? とにかく、大王様をさがさなくちゃ。カービィ、協力(きょうりょく)してくれる……?」
「何ひとつにてないよね! ぼくはデデデ大王みたいに太ってないし、顔だってかわいいし、あんなに意地きたなくないのに!」
「う、うん。そうだね。カービィ。おねがいだから協力(きょうりょく)を……」
「デデデ大王もひどいよ! ぼくになりすますなんて!」
「あの、カービィ……おねがい……」
「ワドルディったら! ひとの話を聞いてるの!?」
カービィは自分のことをたなに上げて、ワドルディに飛(と)びついた。
「う、うん、聞いてる」
「ほんとなら、ぼくが宇宙一(うちゅういち)おいしいフルーツを食べられるはずだったんだよー! それなのに!」
「くやしいでしょ。だから、その三人組を見つけて、とっちめようよ」
「うん、そうしよう!」
やっと話がまとまった。
ワドルディは、ぐっとシリアスな顔になって言った。
「じゃ、さっそく調査(ちょうさ)を始めよう。こういうときは、まず『聞きこみ』をするんだ」
「キキコミ? それ、何?」
「よくわからないけど、ぼくが前に見たドラマでは、事件(じけん)を解決(かいけつ)するためには『聞きこみ』が大事だったんだよ」
「何をすればいいの?」
「ええっと……とにかく、聞きこむんじゃないかなあ。事件(じけん)の手がかりについて」
「うん、わかった。聞きこむぞー!」
カービィは張(は)り切って走り出し、たまたま通りかかったバーニンレオを見つけて、声をかけた。
「おーい、バーニンレオ!」
「カ……カービィじゃねえか」
いつもカービィにひどい目にあわされているバーニンレオは、ギョッとして後じさった。
「な、なんだよ。オレに用かよ?」
「うん。ちょっと聞きこみたいんだけど」
「え?」
「ぼくとデデデ大王って、にてると思う?」
「カービィ、カービィ」
ワドルディが、カービィの背(せ)をたたいた。
「聞きこみのポイントは、そこじゃなくて……」
「ねえ、どう思う!?」
「そうだな……」
バーニンレオはまじめに考えこんだ。
「言われてみれば、にてるかもな」
「え!?」
カービィはショックを受けて、よろめいた。
「にてる!? どのくらいにてるの!? コロッケとメンチカツぐらい!?」
「……そのたとえは、よくわからねえ」
「どこがにてるっていうの!?」
「性格(せいかく)……とか。食い意地……とかな」
「ぼくが、デデデ大王みたいに、自分勝手でひとの話を聞かなくて意地きたないっていうの!?」
「んー……まあな……」
「わぁぁーん、ひどい! ひどいよー、バーニンレオ!」
カービィは大きく口をあけ、今にもバーニンレオをすいこみそうになった。
「う、うわぁぁ! やめろぉぉ!」
バーニンレオは頭をかかえて、地面にふせた。
ワドルディが、あわててカービィを止めた。
「ダメだったら、カービィ。こんなことやってちゃ、ぜんぜん手がかりがつかめないよ。もっとちゃんと、聞きこみをしよう」
「ちゃんと……って?」
「いくつか、わかってるヒントがあるだろ。三人組とか、フルーツとか。心当たりがないかどうか、みんなから証言(しょうげん)を集めて……」
「うん、わかった! よーし! ちゃんと聞きこむぞー!」
カービィはまた張(は)り切ってかけ出した。
そこへ、向こうから歩いてきたのは、いかめしいヒゲと眉毛(まゆげ)が特徴(とくちょう)のきちょうめんな住人──ミスター・チクタクだった。
「やっほー、ミスター・チクタク!」
「む? カービィではないか。それに、ワドルディも。そろって、どうした?」
「ちょっと聞きこみたいんだけど!」
「このあたりで、あやしい三人組を……」
ワドルディがまともな聞きこみをしようとしたが、カービィがさえぎった。
「ねえねえ、宇宙一(うちゅういち)おいしいフルーツって、何か知ってる?」
「む? なぞなぞか、それは」
ミスター・チクタクは、目をとじてじっくり考えこみ、おもむろに口を開いた。
「宇宙一(うちゅういち)おいしいフルーツって、バナナだろ? そんなバナナ!……なんちゃってな」
「……もう、いいです」
ワドルディはがっかりしてその場をさろうとしたが、カービィは大よろこびで手をたたいた。
「ぼく、バナナ大好きだよー! 気が合うね、ミスター・チクタク!」
「そうだな。だが私は、どちらかといえばバナナよりメロン派(は)かな」
「ぼく、どっちも大好き。あと、イチゴとブドウとリンゴとスイカと……」
「オレンジをわすれていないかね、カービィ」
「うんうん! オレンジもおいしいよねーっ!」
「モモとカキもな」
「あとキウイとグレープフルーツと……」
ほうっておいたら、どこまで話が脱線(だっせん)するかわからない。
「……行くよ、カービィ」
ワドルディは、まだまだ話し足りなそうなカービィの手をつかんで、ミスター・チクタクから引きはなした。
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カービィは歩きながら、つまらなそうに言った。
「うーん、なかなか手がかりがつかめないね。なんてむずかしい事件(じけん)なんだろう!」
「……聞きこみのしかたが悪いんじゃないかな……」
「もう、つかれちゃった。それに、おなかもへったから、休憩(きゅうけい)にしようよ。夕ごはんを食べてから、また聞きこみをしよう」
「う……ん……」
この調子では、いつまでたっても、有力な手がかりなんて得られそうにない。
ワドルディは困(こま)りはてた。しかし、カービィの言う通り、おなかがすいたのも事実だった。いつもなら、もうとっくに夕ごはんの時間だ。
「じゃ、いったんお城(しろ)に帰ろうか。ひょっとしたら、大王様がもどってきてるかもしれないしね」
ワドルディはそんなわずかな望(のぞ)みをむねに、カービィといっしょにデデデ山を登った。
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二人がデデデ山の頂上(ちょうじょう)についた時には、もうすっかり日がくれていた。
あたりをてらすのは、月の光と、デデデ城(じょう)のまどからもれている光だけ。
そのあわい光の中に、ぼうっと浮(う)かび上がる大きな物体があった。
「あれ? お城(しろ)の前に、何かあるよ」
ワドルディは目をこらした。
カービィが、とび上がってさけんだ。
「あれは、飛行船(ひこうせん)だよ!」
「うん! 飛行船(ひこうせん)が、お城(しろ)の前にとまってるっていうことは……!」
二人は顔を見合わせ、同時にかけ出した。
デデデ大王を探し始めた、カービィとワドルディ。
そこにやってきた、飛行船に乗った『ある人物』とは…?
次回、『デデデ大王探し』と『お宝探し』に急展開(きゅうてんかい)!? おたのしみに!
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