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◆第9回
事件の真相がわかって、コックカワサキを助け出すためにパフェスキー夫人のお屋敷(やしき)へと向かうカービィたち。
はちゃめちゃなおたんじょうびパーティの結末は!?
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みんなでパーティ
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パフェスキー夫人の屋敷(やしき)にもどったカービィたちは、かくし部屋に閉じこめられていたシェフたちを救い出した。
シェフたちは、何日も自由をうばわれて弱っていたけれど、解放されるとみんな元気になった。
コックカワサキが、シェフたちを代表して言った。
「ありがとう、メタナイト。カービィ、そしてデデデ大王様……」
「なんでオレ様が最後なんだ! やり直しっ!」
デデデ大王にしかりつけられて、コックカワサキはしかたなく言い直した。
「ありがとうございます、デデデ大王様、メタナイト、カービィ。おかげで、助かりました」
カービィが言った。
「ひどい目にあったねー!」
「うん、まったく……」
コックカワサキが言いかけるのをさえぎって、シェフたちがさわぎ出した。
「オレは、ニンジンの切り方が0.1ミリうすすぎるって言われて、閉じこめられた!」
「私は、スープが熱すぎると! 熱々のほうがおいしいのに!」
「オレは逆だ。シチューがさめてるって言われたぞ! パフェスキー夫人が、雑誌を読みふけってるうちに、さめちゃっただけなのに!」
他のシェフたちも、口々にもんくを言い出した。
大さわぎになったのを、メタナイトが静めた。
「君たちの言い分はわかるが、ここは収めてくれないか。君たちの腕をふるって、料理を作ってほしい」
シェフたちは、だまりこんでメタナイトを見た。
メタナイトは続けた。
「パフェスキー夫人のたんじょうびパーティの続きをしよう。それぞれ、いちばんの得意料理を作るのだ」
「パフェスキー夫人のために!?」
シェフたちは、ざわめいた。
「じょうだんじゃない! まっぴらだ!」
「あんなやつのたんじょうびの料理なんて、作りたくない!」
「オレは帰るぞ! じゃあな!」
出て行こうとするシェフたちに、メタナイトは語りかけた。
「不満はわかる。だが、君たちにも料理人としてのプライドがあるはずだ」
「プライド……だって?」
「この屋敷(やしき)にやとわれて、満足のいく料理を作れたのか? みんな、不満があるだろう。それを、はらしてほしいのだ」
シェフたちは、顔を見合わせた。メタナイトは続けた。
「パフェスキー夫人だけのためではない。私たちみんなのためと思って、作ってくれないか」
「食べたい、食べたい! みんなの得意料理!」
カービィが目をかがやかせて、ピョンピョンはね回った。
コックカワサキが言った。
「……たしかに、オレたちみんな、不満に思ってました。せっかく腕によりをかけて得意(とくい)の料理を作ろうとしてたのに、それができなくて」
シェフたちは、そろってうなずいた。
「オレたち料理人にとっては、作った料理を食べてもらうことがいちばんの幸せ。わかりました。最高の料理を作りましょう!」
「やったー!」
カービィは大よろこび。
デデデ大王も、「ウフフフ……」とぶきみな笑いをもらしている。
パフェスキー夫人は、ツンとして横を向いていた。
☆゜・。。・゜゜・。。・゜☆゜・。。・゜゜・。。・
カービィは、いったんデデデ城にもどり、ワドルディに会った。
「あ、カービィ! おかえり。パーティはどうだった? デデデ大王様は?」
「実はね、パーティの最中に、とんでもない大事件が起きたんだ!」
カービィは、誘拐(ゆうかい)事件のことをワドルディに話した。
「それでね、ぼくが心をこめて歌を歌ったら、みんな拍手かっさい。パフェスキー夫人なんて、なみだを流して感動してたよ! 事件解決、めでたしめでたし!」
「……ふ、ふーん……?」
カービィのオンチを知っているワドルディは首をかしげた。
カービィは、ワドルディの手をひっぱった。
「これから、パフェスキー夫人のたんじょうびパーティの続きをするんだ。ワドルディもおいでよ!」
「え? でも、ぼく、招待状(しょうたいじょう)が……」
「もう招待状(しょうたいじょう)なんていらないんだ。いいから、おいでよ!」
「うん! ありがとう、カービィ」
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二人がパフェスキー夫人の屋敷(やしき)に到着すると、もうパーティの準備が整えられていた。
テーブルに運ばれてきたのは、シェフたちみんなが腕によりをかけて作った、じまんの料理。
「うっわ〜! おいしそう〜!」
「食うぞ〜!」
「いっただきまーす!」
カービィとデデデ大王は、たちまち夢中(むちゅう)になった。
ワドルディも、目をかがやかせている。
「おいしいよ〜! このエビピラフ、最高〜!」
「うぉー、このビーフステーキ! これこそ、コックカワサキの味だ!」
「おかわり、おかわり〜!」
いつもなら「静かに食べたまえ」と注意するはずのメタナイトだが、今回はふたりには何も言わなかった。
彼は、となりに座ったパフェスキー夫人に言った。
「いかがですか、シェフたちのじまんの料理は」
パフェスキー夫人は、ふてくされたように答えた。
「野菜の切り方が気に入らないわ。わたくし、もっと厚く切ったほうが好きなのに」
パフェスキー夫人の後ろに立っていたコックカワサキが、説明した。
「歯ざわりが良いように、くふうしているのです。料理によって、切り方を変えるのは当然ですよ」
「んまっ! わたくしにくちごたえをするの!? ナマイキな……」
おこりだしたパフェスキー夫人を、メタナイトがたしなめた。
「あらさがしをしながら食べても、おいしくないでしょう。すなおに味わってみてはいかがですか。あのふたりのように……」
メタナイトは、カービィとデデデ大王のほうを見た。
ふたりは、運ばれてくる料理を、手当たりしだいに口に放りこんでいる。
「おいしいよ〜! おかわり、もっと〜!」
「めんどうだ! 十人前ずつ持ってこーい!」
「……」
メタナイトは目をそらせて、つぶやいた。
「いや、あのふたりを見習うのはやめたほうが良いが……ともかく、そんなしかめっ面では何を食べてもおいしくないでしょう、パフェスキー夫人」
「フン! よけいなお世話よ」
パフェスキー夫人は、いっそうこわい顔になって、つまらなそうに料理を口に運んだ。
そこへ。
ワゴンにのった、大きな箱が運ばれてきた。
カービィが、首をかしげた。
「なあに、その箱。中に、何か入ってるの?」
コックカワサキが答えた。
「シェフ一同が、力を合わせて作ったケーキです」
「ケーキ!?」
「パフェスキー夫人のたんじょうびケーキですよ」
シェフたちが、箱についたリボンをひっぱると、箱はパカッとわれた。
中からあらわれたのは、見上げるほど大きな、純白(じゅんぱく)のバースデーケーキ!
生クリームが、レースのようにこまかくかざりつけられており、フルーツがふんだんにトッピングされている。
「うっわ〜! すごい!」
「おいしそ〜!」
カービィとワドルディが、そろって歓声(かんせい)を上げた。
パフェスキー夫人も、しかめっつらをやめて、口をポカンとあけている。
コックカワサキが、パフェスキー夫人にナイフを手渡した。
「奥様の好きなフルーツをたくさん盛りつけました。どうぞ、切り分けてみてください」
「え……ええ」
パフェスキー夫人は立ち上がり、ケーキにそっとナイフを入れた。
その瞬間──。
ポンッと、何かが破裂(はれつ)するような音がひびいた。
ケーキのてっぺんが開き、そこから小さなものがバラバラとふってきた!
「きゃああ〜! 何、これ!? ばくだん!? きゃ〜! 助けて〜!」
パフェスキー夫人は床にすわりこみ、頭をかかえて悲鳴を上げた。
コックカワサキと、シェフたちが笑い出した。
「もうしわけありません。ビックリさせすぎてしまいました」
「な……なんですって!? あなたたち、まさか、わたくしに仕返しを……!」
「ちがいますって。これは、ちょっとしたサプライズ・プレゼント。パフェスキー夫人、おたんじょうびおめでとうございます!」
カービィが、ケーキの中からふってきたものをひろいあげて、さけんだ。
「あ、これ、キャンディーだよ。かわいいお花の形になってるよ〜!」
パフェスキー夫人は、おそるおそる手をのばして、床に散らばっているキャンディーをひろった。
「まあ……ほんとうだわ。チューリップの形のキャンディー……」
「奥様は、チューリップがお好きと聞いたので。花束のかわりに、料理人らしいしかけを、みんなで考えたんです」
「なぜ……こんなことを……? わたくし、あなたたちにひどいことをしたのに」
「たしかに、ひどい目にあわされました。仕返ししてやりたいって思ったことだってあります。でも、メタナイトに言われて、ハッとしたんです。料理人としてのプライドがあるはずだ……って」
コックカワサキの言葉に、シェフたちはうなずいた。
「そう、オレたちは料理人です。仕返しなんか考えるより、喜んでもらえる料理を作ったほうがよっぽどいいって、みんなで相談したんです」
パフェスキー夫人は、キャンディーをだいじそうにひろい集めた。
ほおが赤くなり、けわしかった表情が笑顔にかわった。
「ありがとう……そして、ごめんなさい。こんなうれしいプレゼント、初めてだわ」
コックカワサキも笑顔で答えた。
「料理はまだまだあります。パーティを続けてください」
「わーい!」
いちばんはしゃぎ回ったのは、もちろんカービィ。
一同は再び席について、運ばれてくる料理を味わった。
パフェスキー夫人の顔はすっかり晴れやかになり、いくども笑い声を上げるようになった。
「ああ、おいしい! こんなおいしい料理が食べられて、わたくし、本当に幸せだわ」
「ぼくも〜! 幸せ、幸せ〜!」
「わたくし……まちがっていました」
パフェスキー夫人はナイフとフォークを置き、しみじみと言った。
「食べることの楽しさをわすれて、えらそうにケチをつけてばかりいて……ほんとうの意味で料理を味わっていなかったんだわ。あなたたちと、こうして食卓(しょくたく)をかこむのは、なんて楽しいんでしょう!」
「ぼくも楽しいよ〜!」
「うむ、オレ様も……」
カービィにつられてうなずきそうになったデデデ大王は、あわてて言い直した。
「いや、楽しくはないがな! カービィなんぞと同席して、楽しいはずがない」
「なんだって〜!? ぼくだって、ほんとはデデデ大王なんかといっしょに食事したくないからね!」
「やるか、このっ!」
メタナイトが苦笑して言った。
「やめたまえ。こんな時に、見苦しい」
「でもぉ……デデデ大王が……」
「私が見たところ、今回、君たちふたりは息がぴったり合っていたようだが」
「なんだと!? このオレ様が、こんなやつと……!」
「息なんて、合ってないよ……と、思うけど……」
カービィは、考えこんだ。
「でも、ちょっぴり楽しかったかもね。デデデ大王とふたりひと役」
「む? 楽しかっただと? そりゃ、おまえはオレ様の上でニコニコしてるだけだったからな! オレ様は、肩(かた)がこったぞ!」
「楽しくなかった?」
「む……そう言われると……」
デデデ大王も、考えこんだ。
「いつもとちがって、新鮮だったな。みんなから、女の子と思われたり……」
「メタナイトの恋人と思われたり!」
「……そこは忘れてくれ」
メタナイトが、暗い声で言った。
「ともかく、君たちは、いがみ合ってばかりいないで、仲良くしてみたらどうだ?」
「オレ様は……カービィと仲良くなんぞ……!」
「今回だけだよね、今回だけ!」
「う、うむ……今回だけ、だ」
ふたりの言い合いを聞いていたワドルディが、にっこり笑って、メタナイトに小声で言った。
「なんだか、デデデ大王様とカービィ、気が合ってるみたいです」
「……そうだな」
「ほんの少しだけ、友情がめばえたのかも。よかったぁ……」
そのとき、パフェスキー夫人が立ち上がって言った。
「そうだわ、わたくしからあなたたちに、お礼をしなくては。みなさんのおかげで、目がさめたんだもの」
「いや、礼など……」
メタナイトがことわろうとしたが、カービィとデデデ大王は、もちろんえんりょなんてしなかった。
「お礼!? なになに!? ごちそう!?」
「おう、良い心がけだ。何をくれるんだ? 食い物だろうな!?」
「そうね……何がいいかしら……」
パフェスキー夫人は少し考えて、「そうそう!」とうなずいた。
「あれがいいわ。ちょっと待っていてくださいね」
パフェスキー夫人は、いそいそと部屋を出て行った。
もどってきたとき、彼女がかかえていたのは、カゴいっぱいに盛られた、虹色のまるいもの。それをテーブルの上に置いた。
カービィもデデデ大王も、首をかしげた。
「何、それ? ボール……じゃないよねえ?」
「これは、わたくしの生まれ故郷(こきょう)でしかとれない、特別なフルーツ。レインボーベリーといいますの」
「レインボーベリー!? おいしいの!?」
「もちろん。このまま食べてもおいしいですけど、シロップ漬けにしたり、ゼリーよせにしたりしても、最高ですのよ。他では手に入らない、とても貴重なフルーツなのです」
「そんな貴重なものを、私たちに……」
「ええ、メタナイト様。カービィさんも、デデデ大王さんも、どうぞ仲良くめしあがって……」
カービィは、聞いていなかった。
「いっただきまーすっ!」
大声でさけぶと、胸をはって、すいこみ体勢に。
「……やめろ、カービィ!」
気づいたメタナイトが止めようとしたが、間に合わなかった。
ごぉぉぉっ、と音を立てて、カービィはレインボーベリーの山をすいこんでしまった。しかも、カゴごと。
パフェスキー夫人は、青ざめて、たおれそうになった。
「き、きちょうなレインボーベリーが……ダイヤモンドよりも高価な伝説のフルーツが〜!」
「ぷはっ! おいしかった〜!」
カービィは満足そうに笑って、おなかをなでた。
「もっと食べたいよ〜。おかわり、ないの? ねえ、パフェスキー夫人?」
「あ、あるわけありませーんっ! キーッ! この食いしんぼうっ!」
パフェスキー夫人は、また、もと通りのこわい顔に戻ってしまった。
彼女よりも、もっとこわい顔になったのは、言うまでもなくデデデ大王。
「きさまぁ……! ひとりで全部食うとはなにごとだっ! オレ様の分を返せ〜!」
「あ、もう食べちゃった〜。ごめ〜ん」
「ごめんですむかぁぁっ!」
デデデ大王はカービィにつかみかかった。
カービィはすばやく飛び上がって、デデデ大王をかわした。
「待てっ! この〜!」
「えへへ〜。つかまらないよ〜だ!」
逃げ出したカービィを、デデデ大王がドタドタと追いかけていく。
ふたりは屋敷を飛び出して、すぐに見えなくなった。
「……やれやれ」
メタナイトがため息をついた。
「友情がめばえたように見えたのは、ただの錯覚(さっかく)だったようだな。二人とも、すっかりいつもの調子だ」
「……そうみたいです」
ワドルディも、ふーっと長いため息をついた。
「待て! 今日という今日は、ぜったいにゆるさ〜ん!」
「ごめんってば〜!」
カービィとデデデ大王の追いかけっこは、いつ終わるともしれない。
プププランドは、今日も平和。
最後は、みんなでごちそうをかこんで、楽しいおたんじょうびパーティ!
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