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大人気ゲーム『星のカービィ ディスカバリー』が、角川つばさ文庫から小説になって登場!
新世界を駆けぬけたカービィたちの、次なる『絶島』での大冒険を、大ボリュームでためし読みれんさいしていきます!(全5回)
※このお話は、『新世界へ走り出せ!』編のつづきです。ぜひ、『新世界へ走り出せ!編』を読んでから読み進めてください。
◆第5回
ナゾのうずにすいこまれ、『絶島(ぜっとう)ドリーミー・フォルガ』にやってきたカービィとバンダナワドルディ、エフィリン。
どくどくしい色にそまった空間にうかぶ島におり立ったカービィたちが見たものとは……?
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うずの向こうは夢の中!? 後編
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三人がおり立ったのは、さざ波が打ちよせる浜辺だった。
カービィは、あたりを見回して、言った。
「ここ、知ってる! ぼくが最初にこの世界に来たときの浜辺だよ」
たしかに、砂浜も、波も、浜辺に生えている木も、カービィが最初に見た風景によくにている。
ただ、色合いがまるでちがった。
あのとき見たような、美しい青い海や白い砂浜ではない。
水も、砂も、草木も、むらさきがかった異様(いよう)な色にそめられている。
カービィは歩き出そうとしたが、ためらった。
のんきなカービィですら不安に思うほど、この世界の色彩(しきさい)は、不吉(ふきつ)だった。
「……どうして、こんな色をしてるんだろう? 空も海も、ほんものとは、ぜんぜんちがうよ」
エフィリンが言った。
「ここは、フェクト・エフィリスが思いえがいてる世界だからね。あいつの怒りやにくしみにそめられて、こんな色になってしまってるんだよ」
「そっかぁ……」
バンダナワドルディは、どくどくしい色の草木を見つめて、悲しそうにつぶやいた。
「フェクト・エフィリスのこころの中には、きれいな海も空も、森や砂浜も、ないんだね。なにもかもが、にくしみの色にそめられてるなんて……苦しくないのかな……」
「……行こう」
エフィリンが言い、森の奥へと飛んでいった。
カービィとバンダナワドルディも、きょろきょろしながら歩き出した。
歩きながら、バンダナワドルディが言った。
「この場所は、ネイチェル草原っぽいね。ホワイティホルンズや、オリジネシア荒野大地(こうやだいち)みたいな場所もあるってことかな?」
エフィリンが答えた。
「そうだと思う。こんなちょうしで、ほんとうの世界にある草原や雪原ににた場所が、広がってるんだよ」
「きっと、フェクト・エフィリスは、いちばん奥にひそんでるんだろうね。ほんとうの世界なら、ラボ・ディスカバールがあるはずの場所に……」
ふたりが話している間に、カービィは思いきって駆け出し、さけんだ。
「レオン! レオン、どこー? 返事をして!」
すると――返事のかわりに、どこからかハンマーが飛んできた。
「わわわっ!?」
カービィは、あわててよけた。
すがたを見せたのは、小さな赤いゴリラのような生きものだった。
ぴょんぴょん飛びはねながら、ハンマーを次々に投げつけてくる。
エフィリンがさけんだ。
「ムッキースだ。ビースト軍団のメンバーだよ!」
バンダナワドルディが、ヤリをかまえて言った。
「だけど、この世界にいるってことは、本物のムッキースじゃなくて……」
「うん。フェクト・エフィリスが思いえがいてる、まぼろしのムッキースだ!」
「よぉし! 行くよー!」
カービィは、ソードをぬいて、ムッキースに斬(き)りかかっていった。
「キーッ!」
ムッキースは歯をむき出して怒りをあらわにし、ハンマーを投げた。
「たぁ!」
カービィはかるがるとジャンプしてハンマーをかわすと、ムッキースにかいしんの一撃をくらわせた。
そのしゅんかん――ムッキースのすがたが、パッと消えた。
カービィは、目をまるくした。
「あれ? 消えちゃった……?」
エフィリンが言った。
「本物のムッキースじゃないからだよ。フェクト・エフィリスの思念(しねん)で作られただけだから、たおすと、消えちゃうんだろうね」
「ふぅん……ふしぎだね」
そのとき、カービィは、ムッキースがいた岩の上で、なにかが光っているのを見つけた。
「あれ? なんだろう」
カービィは近づいてみた。
バンダナワドルディが、心配そうに言った。
「気をつけて、カービィ。フェクト・エフィリスのワナかも……」
「ううん、悪いものじゃなさそうだよ」
オレンジ色の美しい光だ。
どくどくしい色にそまったこの世界の中で、この光だけが、明るく力強い色にかがやいている。
「きれいだね」
カービィは、光に向けて手を差しのべた。
すると、オレンジ色の光はカービィのほうへただよってきて、ひときわ、かがやきを強めた。
バンダナワドルディが言った。
「なんだろうね? 見てると、こころがポカポカする……」
エフィリンが、ふしぎそうに言った。
「この光だけが、フェクト・エフィリスの思念(しねん)にそめられてないよ。どうしてだろう?」
カービィがさけんだ。
「あ、あそこにもある!」
カービィが見つけたのは、草むらのかげにかくれていた光だった。
注意してみると、同じ光の玉が、いくつも見つかった。ベンチの下や、くずれたカベの後ろなどに。
「たくさんちらばってるね……この光、なんなのかなあ?」
「いくつあるんだろう? 全部集めたら、なにかわかるかな?」
三人は、光を集めながら進んで行った。
やがて、見覚えのある建物が見えてきた。
カービィがさけんだ。
「ショッピングモールだ! ゴルルムンバがいた場所だよ!」
「ここにも、ゴルルムンバがいるのかな……?」
バンダナワドルディが言うと、エフィリンがうなずいた。
「たぶんね。もちろん、本物じゃなくて、フェクト・エフィリスが思念(しねん)の力で再現(さいげん)したゴルルムンバだけど……」
エフィリンは、ふと思い出したようにつけ加えた。
「そういえば、ボク、ゴルルムンバにあやまったんだよ。おやつのバナナを食べちゃったこと」
「……え?」
「ゴルルムンバは、ちょっとムッとしてたけど、カービィがバナナにむちゅうになっちゃったことを話したら、ゆるしてくれたよ。ゴルルムンバも、バナナが大好きなんだって。だから、カービィがぱくぱく食べちゃった気持ちが、よくわかるみたい」
「ほんと? ぼくら、友だちになれるかな?」
「なれるよ! ゴルルムンバは、ほんとは、いいヤツなんだ。ワドルディたちをさらったこと、今ではとっても反省(はんせい)してるみたいだよ」
三人は、話しながら、ショッピングモールに入って行った。
こわれたカベや、草のはえた床(ゆか)など、こまかいところまで、本物のショッピングモールによくにている。
ただ、ここもやはり、むらさきがかった異様(いよう)な色にそまっていた。
通路を進んで行くと、奥のほうから、うなり声が聞こえてきた。
「ゴルルムンバだ……!」
カービィとバンダナワドルディは駆け出した。エフィリンも、耳をパタパタさせながらついて来る。
かどをまがると、大きなガラスまどの向こうに、巨大な影が見えた。
カービィは、元気よくさけんだ。
「あそこにいる! ぼく、仲直りしてくるね!」
「……え? 仲直り?」
バンダナワドルディは、おどろいた。
「まって、カービィ! こっちのゴルルムンバは、本物じゃないんだよ! 友だちにはなれないよ!」
けれど、カービィは割(わ)れたまどガラスをすばやくくぐりぬけ、中庭(なかにわ)に飛び出して行った。
「おーい、ゴルルムンバ! ぼくだよ! バナナ食べちゃって……ごめ……ん……」
カービィは言葉を切って、立ちすくんだ。
ゴルルムンバ――いや、まぼろしのゴルルムンバがふり返った。
本物そっくりだが、色がちがう。
本物は、黒い毛におおわれ、赤いもようがあったが、こちらは水色のからだに、ピンク色のもようがある。
その色合いは、どことなく、フェクト・エフィリスを思わせた。
ギョロリと大きな目には、本物のゴルルムンバとはまったくちがう、残忍(ざんにん)な光がやどっている。
「……ンガァァァァ……!」
たけだけしい声を上げて、ゴルルムンバは手をのばした。
「あ……!」
カービィは飛びのこうとしたが、一瞬(いっしゅん)おそかった。
ゴルルムンバ・幻(げん)の太い指が、カービィをつまみ上げた。
本物のゴルルムンバと同じ動きだ。
けれど、力がケタちがいだった。
カービィはぎゅうぎゅうとしめつけられ、声を出すことすらできない。
バンダナワドルディは、あせってヤリをかかげ、振り回した。
「カービィ!」
回転の力で、宙(ちゅう)にうき上がる。
おとくいのワザ、ワドコプターだ。
「ぼくが相手だ! おーい、ゴルルムンバ! こっちを向け!」
なんとかゴルルムンバ・幻(げん)の注意を引こうと、目の前を行ったり来たり。
ゴルルムンバ・幻(げん)は、うるさそうに顔をしかめると、もう片方(かたほう)の手でバンダナワドルディをなぎはらった。
「うわあああああ!」
バンダナワドルディはふっ飛ばされ、地面にたたきつけられた。
いそいで起き上がり、ヤリをかまえて、ゴルルムンバ・幻(げん)の太い足に飛びかかる。
「カービィをはなせ! やあ! やあ!」
ヤリをつきさしても、ぶあつい皮膚(ひふ)にじゃまされて、ほとんどダメージを与えられない。
ゴルルムンバ・幻(げん)は、カービィをつまんだ指に、ますます力をこめた。
「…………!」
カービィは、今にも気を失ってしまいそう。
バンダナワドルディは、ぼうぜんとした。
「ダメだ、このままじゃ……カービィが……!」
本物のゴルルムンバのときと、同じ作戦では通用しない。これほどの怪力(かいりき)を持つ敵と、どう戦えばいいのか。
絶望(ぜつぼう)に、打ちひしがれそうになったときだった。
とつぜん、大声がひびいた。
強敵ゴルルムンバ・幻(げん)とのバトルで、カービィがいきなりの大ピンチ! このあと、カービィたちはどうなっちゃうの!? そして、とつぜんの大声って、いったい何が起こったの!??
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作:高瀬 美恵 絵:苅野 タウ 絵:ぽと
- 【定価】
- 792円(本体720円+税)
- 【発売日】
- 【サイズ】
- 新書判
- 【ISBN】
- 9784046321817
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