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ものがたり

【スペシャルれんさい】『星のカービィ 地底世界の大冒険!の巻』第1回 冬のある日のプププランド


地面に開いた深~い穴に落っこちてしまったデデデ大王を助けに行くため、カービィたちが穴をおりると、そこには、見たこともない地底世界が広がっていた!? 2025年12月10日発売予定の『星のカービィ 地底世界の大冒険!の巻』でくりひろげられる、カービィたちの大冒険を、どこよりも早く先行ためし読みできちゃうよ! 

◆第1回
デデデ城のおやつタイムは、毎日の大事なビッグイベント!
冬で寒いきょうのおやつタイムのメニューは、なんと冷たいかき氷!? ワドルディ隊のみんなが、いっしょうけんめい準備をしているようですが…?
カービィたちの新しい物語のはじまりです! 

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冬のある日のプププランド

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 プププランドが真っ白い雪におおわれた、ある寒い日の午後。

 デデデ大王は、執務室に置いた大きなこたつに入り、ぬくぬくと温まりながら、おやつを待っていた。

 今日のおやつは、かき氷の予定。

「だれもが凍えるような寒い日に、こたつで汗をかきながら、キンキンに冷たいかき氷を食う! これこそ、きゅうきょくのぜいたく。本物の王者だけが食える、至高のおやつ! フフッ、さすがオレ様、天才の思いつきだわい」

 そんなことを思いながら待っていると、部下のバンダナワドルディがやってきた。困ったような顔をしている。

「きたか、ワドルディ。遅いではないか。このままでは、オレ様は温まりすぎて、のぼせてしまうぞ!」

「もうしわけありません、大王様。実は、手ちがいがあったみたいで……」

「手ちがいだと? なんだ?」

「注文した氷が届いたんですが……かき氷にするには、大きすぎるんです」

 デデデ大王は、首をかしげた。

「大きいなら、問題ないではないか。特大のかき氷を作れ」

「それが、お城の台所に運べないくらい大きいんです。みんなで氷を切ろうとしているんですが、ものすごく固くて……」

「フン、情けないヤツらだわい」

 デデデ大王は、こたつから出て立ち上がった。

「氷ぐらい、オレ様が切ってやる」

「もうしわけありません、デデデ大王様」

「今回だけだぞ。まったく、世話の焼ける部下どもだ!」

 デデデ大王とバンダナワドルディは、執務室を出た。


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 問題の氷は、城の庭に置かれていた。

 マフラーを巻いたワドルディたちが、氷を囲んでワイワイ言っている。

 デデデ大王は、庭に出たとたん、大きなくしゃみをした。

「さ、さ、寒い! なんだ、この寒さは! かぜを引いてしまいそうだ!」

「大王様!」

 ワドルディたちはびっくりして駆けより、自分たちのマフラーを次々にデデデ大王に差し出した。

「大王様、これを巻いてください!」

「ぼくのも! ぼくのも!」

「フン、きさまらの小さいマフラーなんぞ、いらんわい。そんなことより……」

 デデデ大王は、白い息をはきながら、ノシノシと氷の前に進み出た。

 たしかに、特大サイズの氷だった。ワドルディ十人分くらいの大きさがある。

 ガラスのように透きとおっていて、とても美しい。かき氷にしたら、さぞかし、食べごたえがあるにちがいない。

 バンダナワドルディが言った。

「さっきから、ノコギリで切ろうとしているんですが、すごく丈夫な氷で……ノコギリの刃のほうが欠けちゃうんです」

 たしかに、ワドルディたちが手にしているノコギリは、どれも刃がボロボロだった。

「フン、きさまらの切り方が悪いのだ。新しいノコギリをよこせ。オレ様が、手本を見せてやる」

「はい、大王様!」

 ワドルディたちは、大王に新品のノコギリを渡した。

 大王はノコギリをかまえて、氷に向き合った。

「いいか、ワドルディども。こういうのは、角度が大事なのだ。氷に、こうやって刃を当てて、一気に……」

 デデデ大王は思いっきりノコギリを引いた。

 けれど、氷にはキズ一つ付けられなかった。ノコギリの刃が、ボロボロっと欠けてしまった。

「な……なに……?」

 デデデ大王は目をまるくした。

 バンダナワドルディが言った。

「やはり、ノコギリでは無理です。バーニンレオにたのんで、氷をとかしてもらってはどうでしょう?」

「むむむ……」

 大王の顔が、けわしくなった。

 負けずぎらいの大王は、だれかにたのみごとをするのが、大きらいなのだ。

「せっかくの氷をとかすなんて、つまらんわい。オレ様がなんとかするぞ」

「でも、大王様……」

「ノコギリなんか、いらん。オレ様が、この手でかちわってやる!」

 デデデ大王は腕まくりをした。

 バンダナワドルディは、おどろいて言った。

「手で……? まさか、素手で氷を割るおつもりですか!?」

「そうだ。おまえたちは、下がっていろ」

「氷を手で割るなんて、無理です、大王様! 手に大ケガをしてしまいます!」

「フン。オレ様をだれだと思っている。プププランドの偉大なる支配者デデデ大王様が、氷ごときに負けてたまるか。見ていろ……うりゃあああ!

 大王は地面をけり、全身の力をこめて、こぶしを氷にたたきつけた。

 すると――なんと!

 メリメリと音を立てて、氷がくだけた!

 おそるべき、デデデ大王の怪力だ。ワドルディたちは、どよめいた。

「わあああ!」

「すごい、すごいです、大王様!」

「まさか、氷を手で割っちゃうなんて……!」

 全員が興奮して、デデデ大王を取り囲んだ。

 デデデ大王は、寒さもわすれて、ニヤリとした。

「ま、オレ様にかかれば、こんなものだ。ワドルディども、さっさとかき氷を作れ」

「はい、大王様! いちごのシロップと練乳をたっぷりかけて、アイスクリームものせます!」

「白玉もたくさんのせろ」

「はい! すぐに作ります!」

 ワドルディたちは、大急ぎで、割れた氷をひろい集めた。

 バンダナワドルディは、感動のあまり顔を赤くそめて、大王を見上げた。

「さすがは大王様です。まさか、あんな大きな氷を素手で割ってしまうなんて!」

「言っただろう。オレ様にかかれば、このくらい……ふむ」

 デデデ大王は、ふと考えこんだ。

「これは、なかなか良い方法だぞ」

「え? 方法?」

「うむ。オレ様の偉大さをみんなに知らしめるためのな。ワドルディ、さっそく準備を進めろ」

 バンダナワドルディは、とまどってたずねた。

「準備って、なんの準備ですか?」

「決まっとるわい。オレ様のこぶしの強さをみんなの前で披露するのだ。いや、それだけではつまらんから、大会を開くことにしよう。プププランド最強のこぶしを決める、力くらべ大会だ!」

 大王は、自分の思いつきが気に入って、目をかがやかせた。

 バンダナワドルディが言った。

「えっと、つまり……素手で氷を割る大会ですか? いちばん大きな氷を割った参加者が勝ち、とか?」

 デデデ大王は、考えこんだ。

「いや、それでは、ありきたりだな。氷くらい、割れて当然だ。もっと固いもの……岩だ。岩を割る大会を開くぞ!」

「い、岩を……素手で?」

 バンダナワドルディは、たじろいだ。

 しかし、デデデ大王は大乗り気。ウキウキした様子で言った。

「そうと決まれば、さっそく準備に取りかかれ。大きな岩を用意して、プププランドの住民たちに知らせるのだ。腕に……いや、こぶしに覚えがあるヤツは、かかってくるがいい。ま、オレ様の優勝に決まってるがな!」


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 こうして、いつものことながら、デデデ大王のてきとうな思いつきで、イベントが開かれることになった。

 その名も、「第一回デデデ大王様杯・かちわりメガトンパンチ大会」。

 ワドルディたちがポスターや看板を用意して、住民たちに参加を呼びかけた。

「かちわりメガトンパンチ……だって? いったい、どんな大会なんだ?」

 ワドルディたちからくわしい話を聞いた住民たちは、みんな、あきれたように言った。

「素手で岩を割る? そんなこと、できっこないよ」

「手が痛くなっちゃうだけだよ。ぼくには無理だ」

 そんな中、カービィだけは、話を聞いたとたんに、目をキラキラさせた。

「岩を割る大会? わあ、おもしろそう! ぼく、出るよ!」

「……え? カービィ、ほんと?」

 バンダナワドルディは、心配になって言った。

「素手で岩を割るっていうルールなんだよ。コピー能力は使っちゃいけないんだ」

「うん、いいよ、ぼく、すっぴんでも強いから。みんなの前で、ぼくのほうがデデデ大王より強いって、見せつけちゃうもんね!」

 バンダナワドルディの心配をよそに、カービィは鼻歌まじりで、自信まんまん。

「あ、そうだ。メタナイトも、さそってあげようよ」

「メタナイト様? それは、どうかなあ……」

 バンダナワドルディは、考えこんだ。

「メタナイト様は、剣士だからね。剣の戦いはお好きだけど、素手なんて、興味ないんじゃないかな」

「そんなことないよ。メタナイトは、戦いならなんでも好きに決まってるよ」

 そこで二人はデデデ城の通信室に向かい、戦艦ハルバードを呼び出してみた。

 しかし。

「……あれ? 通じないね」

 何度かけ直しても、通じない。

 カービィが言った。

「お出かけしてるのかな?」

「強敵と戦ってるのかもしれないね。メタナイト様は、お忙しいんだよ」

「そっかぁ……」

 残念だが、しかたない。

「それじゃ、他のだれかをさそってみよう。ボンカースとか、ナックルジョーとか」

「そうだね。あの二人なら、きっと、出場してくれるよ!」

 二人はトコトコと、通信室を出て行った。


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 さて、そのころ。

 メタナイトと部下たちは、とある荒れ果てた惑星にいた。

 岩山だらけで、草木は一本も生えていない。もちろん、住民もいない。

 大きな岩のかげに、戦艦ハルバードが停泊していた。

 あちこち大破している。もちろん、通信機能もこわれている。メタナイツたちが総出で、修理に取り組んでいた。

「おーい、船員くん。ドライバーを取ってくれ。それじゃない、もっと大きいヤツだ」

「はい、ジャベリンナイトさん」

「こっちには、トンカチを頼む」

「はい、トライデントナイトさん」

 船員ワドルディは、みんなに道具を手渡したり、ときにはお茶や軽食を運ぶ係だ。

 手ぎわよく修理を進めているメタナイツたちを見て、船員ワドルディは言った。

「すばらしいですね。みなさん、まるで修理のプロみたいです!」

 ソードナイトが言った。

「みたい、なんて言ってもらっちゃ困るな。オレたちは修理のプロそのものだ。なにしろ、戦艦ハルバードが大破するたびに、こうやって直してるんだからな」

「はい、すみません。でも、こんな荒れ果てた星に、ヒミツの修理工場があるなんて、びっくりしました!」

 ブレイドナイトが、笑って言った。

「修理工場なんて大げさなもんじゃないさ。オレたちが勝手に作業場にしてるだけだ」

 アックスナイトが言った。

「ここなら、だれにも気づかれずに修理できるからな。ヒミツの作業には、もってこいなんだ」

 メイスナイトが言った。

「船員くんも、早く修理のやり方を覚えるだスよ。ワシが教えてあげるだス」

「はい、がんばります!」

 と、そこへ、メタナイトがやってきた。

 彼は、バル艦長と手分けして、艦内の状況をチェックしていたのだ。

「みな、作業は順調なようだな。ご苦労」

「はっ!」

 メタナイツたちは姿勢をただし、声をそろえた。

「そろそろ、休憩を取ることにしよう。ワドルディ、お茶のしたくを頼む」

「はい、メタナイト様!」

 船員ワドルディが、大きくうなずいたとき。

 バル艦長が、艦内から出てきた。うかない顔をしている。

「メタナイト様。やっかいなことがわかりましたぞ」

「やっかい?」

「はい。今回の損傷の度合いはまことに激しく、中枢部にまで及んでおります。これを、ごらんください」

 バル艦長が差し出したのは、小さなオレンジ色のかけらだった。

「これは……!」

 メタナイトは息をのんだ。

 バル艦長は言った。

「このとおり、中枢の核となる鉱石が、こなごなに砕けておるのです。新たに、同じものを入手しないことには、修復は不可能です」

 メタナイトは、うなずいた。

「――わかった。なんとかしよう」

「はっ。それでは、修理はいったん中断し、みなで目的地に……」

 しかし、メタナイトは頭を振った。

「いや。この件は、私にまかせてくれ。君たちは、このまま修理を続けてほしい」

「……え!?」

 バル艦長は、おどろいた。

「お一人で行かれるのですか!? それは、あまりに危険では……」

「問題ない。あとのことは、たのんだぞ、バル艦長」

 メタナイトは、すばやくマントをひるがえし、部下たちに背を向けてしまった。


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 メタナイトがいなくなると、部下たちは顔を見合わせた。

 ソードナイトが、バル艦長にたずねた。

「どういうことです? 鉱石って?」

 バル艦長は、重苦しい声で答えた。

「……ワシにも、くわしいことは言えん。ただ、戦艦ハルバードの中枢をつかさどる、重要な鉱石が破壊されてしまったのだ」

 アックスナイトが、ぼうぜんとして言った。

「中枢……って、戦艦ハルバードの全機能をコントロールする心臓部ってことですよね!? それが破壊されたって……」

 絶句してしまったアックスナイトにかわって、トライデントナイトが叫んだ。

「つまり、オレたちがいくら修理したところで、その鉱石がなければ、戦艦ハルバードは元どおりにはならないってことですか!?」

「そうだ」

 バル艦長は、うなずいた。

 ジャベリンナイトが、あせってたずねた。

「どこにあるんですか!? その鉱石は!?」

「わからん」

 バル艦長は、首を振った。

「どこかの星の地下深く……としか。くわしいことは、メタナイト様だけがご存じなのだ。いや、メタナイト様ですら、すべてをわかっているわけではないかもしれない。なにしろ、戦艦ハルバードには、超高度な技術が数多く使われているからな」

 ブレイドナイトが、ぼうぜんとして言った。

「なぜ、メタナイト様はお一人で……?」

「思うところが、おありなのだろう。とにかく、ワシらは、メタナイト様のご命令にしたがうだけだ」

 バル艦長は深いため息をつくと、気を取り直したように顔を上げた。

「メタナイト様は、きっと、鉱石を手に入れてきてくださる。メタナイト様がおもどりになったとき、ただちに戦艦ハルバードを起動させることができるよう、修理を進めるぞ!」

「はい!」

 全員が、声をそろえた。

     


おやつの準備から、プププランド最強のこぶしを競う大会がはじまりそう!? 勝つのはカービィか、デデデ大王……はたまた、ナックルジョーかボンカース!?
いっぽう、メタナイトも、ひとりでどこかに向かっているようで…?
次回、いよいよ大会スタート! ためし読み第2回『いどめ、かちわりメガトンパンチ大会!』をお楽しみに! (11月21日公開予定)


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