角川つばさ文庫の人気シリーズ『神スキル!!!』最新8巻が、【さし絵ぜんぶカラー】のトクベツ版で7月8日(水)に発売! 発売前にドドンとイラストつきで、ためし読みしちゃおう!
めちゃくちゃすごい能力〈神スキル〉を持った神木三きょうだいは、豪華客船で二泊三日の旅へ!
海上プールや夕食ビュッフェで、特別な夏休み♪ になるはずが……朝陽たちの正体をうたがう宮野警部と再会!? しかも船上のシークレット・パーティーで3億円の王冠がねらわれて……長男・星夜のようすもどこかおかしい?
海の上で大ピンチ! 王冠もスキルのヒミツも、きょうだいのきずなも守り抜け! 波乱の豪華客船出港――!
『神スキル!!! 夏休みはきらめく豪華客船!?』
(大空なつき・作 アルセチカ・絵)
7月8日発売予定
◆プロローグ
ザザザ、ザザザザ――
波の音がする。
船があげる大きな波しぶき。まばゆい太陽。
そして――どこまでも続く、真っ青な海!
「「「きーもーちーい――――!」」」
おれ、神木朝陽は、船で一番高い展望デッキから、きょうだいといっしょに大声で叫んだ。
兄の星夜と、姉のまひるも、手すりをつかんで輝く海を見てる。
潮風が、びゅうっと顔に吹きつける。ハル兄も、パーカーのフードを揺らしながら笑う。
ボッ――――!
とどろく汽笛に、体がビリビリ震える。
これが、おれたちの夏休みのはじまり!
すうーっ!
「豪華客船〈クリスタル・ダイヤ号〉での、二泊三日の旅!」
「海の景色をのんびり楽しみながら、船内を、ぜ~んぶ探検して」
「おいしい料理を、全種類、おなかいっぱい食べつくす――――っ!」
……はず、だ・っ・た・の・に!
まさか、映画も顔負けの、スリルいっぱいのトンデモない旅になるなんて――。
このときのおれたちは、ちっとも知らなかったんだ。
◆1 出発前から大さわぎ!?
おれたち神木三きょうだいは、全員、めちゃくちゃすごい能力――〈神スキル〉を持っている。
中二の長男・星夜は、『人の心を読むスキル』。
中一の長女・まひるは、『はなれた場所を視るスキル』。
そして、おれ――小六の次男・朝陽は、『ふれずにものを動かすスキル』だ。
おれたちは、生まれたときから、このスキルを持っていた。
それぞれはたしかに便利だけど、なんでもできるってわけじゃない。
星夜は、聞きたくない人の心の声を聞くことがあるし、まひるは、目をつむっている間だけ、しかも半径一キロメートル以内しか視られない。
おれも、自分で持てるくらいのものしか動かせない。せいぜい、十キロってところ。
何より、スキルを使いすぎると、めちゃくちゃおなかが空くんだ。
そんなおれたち三きょうだいは、神スキルを使って人知れず困っている人を助けてきた。
『ショッピングモール爆破事件』や『有名鑑定士闇オークション事件』みたいな、大事件を解決して、テレビで〈協力者〉なんて言われることもあるわけだけど……。
「「「クリスタル・ダイヤ号?」」」
目の前の封筒を見ながら、おれ、まひる、星夜の三人は声をそろえて言う。
我が家の、いつものダイニング。
集まったおれたちに、ハル兄がにっこりと笑いかけた。
ハル兄――若月春斗は、仕事で海外にいる父さんと母さんの代わりにおれたちの保護者をしてくれている、頼れるいとこだ。
やさしいし、洗濯も掃除もめちゃくちゃ得意で――。
しかも、料理が神うまい!
「そう、豪華客船クリスタル・ダイヤ号、二泊三日の招待券が、おじさんとおばさんから届いたんだ。夏休みになったけど、まだ日本に帰れそうにないから、みんなで乗ってきたらって」
「えっ、父さんと母さん、まだ帰ってこないの!?」
前回の帰国から、もう半年以上たってない?
おれは、あきれて肩をすくめた。
「ハル兄におれたちのことを押しつけて、二人とも自由すぎだって。ね、星夜」
「オレは、最初からあきらめてた。あの二人には、計画性がないから……」
ため息をつく星夜に、ハル兄が苦笑いした。
「ま、まあまあ。そのおわびのためのチケットだと思うから。ね? でも、当たったらみんなで行こうと抽選に応募したのに、一ヶ月以上忘れて放置してたみたいだけど……」
「さすがに、いいかげんすぎない!?」
……その船、本当に乗ってもだいじょうぶ?
王冠のロゴが入った封筒から、チケットとパンフレットを取りだすと、広い海を進む巨大な船の写真に、目が吸いよせられる。
『豪華客船〈クリスタル・ダイヤ号〉 あこがれの船の旅へ。
最高のクルーズで、特別な時間をお約束します――』
「あ! この船、もしかして、あのクリスタル・ダイヤ号? 日本を代表する豪華客船の!? わたし、ちょうど先週、テレビで見たよ!」
まひるが、得意げに人差し指をピンと立てた。
「乗客七百人、乗員三百人、合計で千人も乗れる巨大な船で、なんと十三階建て! プールやシアター、たくさんのレストラン――さまざまな設備をそなえた、世界中を旅する動くリゾートなの。しかもそれが、ぜんぶタダで楽しめちゃう!」
「ぜんぶタダ? ほんとに!?」
じゃあ、おいしいものを食べて、遊び放題ってこと!?
それ、おれの天国じゃん!
「えーっと、そういうのなんて言うんだっけ。たしか、ゴールインくるーしむ?」
「ゴールインしたのに苦しむの!? 正しくは、オール・インクルーシブ。旅行代金だけで、食事やサービスが楽しめるシステムなの。特にクリスタル・ダイヤ号は、大きくて設備も豪華だから、三年いてもあきないって言われてるんだって」
星夜が、驚いて言った。
「三年も? そんなにすごい船なのか。すごいな……それにしても、まひる。テレビで見ただけのわりに、よく覚えてるな。乗客の数や、建物の階数まで」
「ふふん。まあね。小一から中一まで、七年連続学年一位はダテじゃなーい! それに……キャーッ! じつは、その番組で、わたしの大好きなアイドルグループがこの船に乗ってたの。みんなと同じ船に乗ることになるなんて、運命じゃない!?」
……えーっと、その船って、一回の航海で千人が乗るんだよね?
「さすがに、運命の人が多すぎない? どう考えても、たまたまかぶっただけ、もごっ!」
(朝陽、ストップ)
後ろから手で口をふさがれた瞬間、頭の中に星夜の声が響いた。
これは、星夜の心の声。
星夜は心を読めるだけじゃなくて、こんなふうに、おれたちきょうだいの間なら、心をつないで会話することもできるんだ。
特に便利なのは――今みたいに、聞かれるとマズい話をするとき。
(本当のことを言ったら、夏休みじゅう、まひるにうらまれるぞ。今年も、宿題を手伝ってもらうつもりなんだろ?)
星夜、ナイスアドバイス。
たしかに、まひるのサポートがなくなったら困る。特に、一番苦手な自由研究で!
「えっと、あこがれの人たちと同じ船に乗れてヨカッタネ。おれたちもウレシイナ。ね、星夜」
「あ、ああ。船の魅力をくわしく教えてくれると助かるな」
「ふふふっ、まかせて! 紹介してもしたりないくらいだから。でも、やっぱり一番の目玉は、定期的に開かれる夜のシークレット・パーティーかな」
「シークレット・パーティー?」
なにそれ?
まひるがすばやくパンフレットを広げて、船で行われるイベントのページを開く。
『開催予定:二日目 シークレット・パーティー』
背景にあるぼんやりした写真は……王冠? でも、くわしいことは何も書いてない。
「ふふん。これが、撮影禁止・秘密厳守のシークレット・パーティー! 乗船客だけが参加できる秘密のパーティーで、なんと、スマホの持ちこみもSNSへの投稿も、すべて禁止なの」
「……スマホの持ちこみも? やけに徹底してるんだな。何か理由があるのか?」
「それはね、世界に一つの王冠〈クリスタル・クラウン〉を見られる唯一の場所だから」
まひるが、目をキラリと輝かせた。
「じつは、船の名前は、その王冠――クリスタル・クラウンが由来になってるの。クリスタル・クラウンは、船に乗って世界中を旅していてね。なんと、三億円の価値があるんだって」
「三億円? 王冠、たったの一個で!?」
おれのとなりで、星夜も目を丸くする。
「三億円……どんなものか想像もできないな。その王冠を、間近で見ることができるのか?」
「うん。しかも、そのパーティーでは、参加者のうち一人だけ、その王冠をかぶれるらしいよ。それ以外は、ぜんぶヒミツ。王冠を安全に展示するためにそうしてるんだって」
まひるが、ぐっとこぶしをにぎった。
「とにかく! こんなすごい豪華客船なんだもん。乗るしかないでしょ。いろんな施設があるから、夏休み最初のおでかけにもピッタリだし。ほら、二人もパンフレット見て!」
「そうだな。二泊三日の船の旅なら、本もゆっくり読めそうだ。図書室やカフェもあるし……」
「これ、アイスの専門店!? レストランも七つある。それに、この屋外プール、すごい!」
おれは、パンフレットにのっている青いプールの写真を指さす。
船の上のプールって、どんな感じだろ? きっと、ふつうのプールより空が近くて――。
あー、想像しただけでワクワクしてきた!
「あっ、ラウンジにドリンクバーもある。ゲームを持っていけば、永遠にダラダラできそう!」
「わたしは、おしゃれな服で船の中をかっ歩したーい! 新しい水着も買おうっと。もちろん、最高にかわいいの!」
「船旅だと、たくさん本が読めそうだな。図書室があるなら、少なめに十冊くらい持っていくか」
星夜、十冊は、じゅうぶん多くない!?
そのとき、ハル兄がせきばらいした。
「コホン! 三人とも、盛りあがるのはわかるけど、トラブルには注意しないとね。神スキルの約束も忘れないこと」
あ、そうだった。
おれたちは、神スキルについて大事な約束を三つしている。
そのうち二つは、おれたちのいとこで、保護者でもあるハル兄としている約束だ。
一、犯罪や悪いことには使わないこと
二、危険な使い方をしないこと
神スキルは使い方によっては、危険なことにもなりかねない。だから、これはおれたちとまわりの人を守るための約束だ。
そして、それ以上に大事なのが、きょうだい三人で決めた三つ目の約束。
三、神スキルをヒミツにすること
これは、主に星夜のための約束だ。星夜は、小学生のころ、困っている友だちを助けるためにスキルを使った結果、心が読めるんじゃないかと疑われて、つらい思いをしたことがあるからだ。
たしかに、人が多いってことは、それだけ神スキルを目撃される可能性も高まるもんな。
家族での旅行だからって、気を抜いて、つい使わないようにしないと……。
「……たしかに」
すぐとなりで、星夜がぽつりとつぶやく。
? なんだろ。やけに、深刻な顔してる?
ハル兄も、首をかしげた。
「星夜、どうしたの?」
「……いや。ハル兄が言うとおり、どんなトラブルがあるかわからないと思って。注意してくれてありがとう、ハル兄。助かるよ」
「そ、そう? あらたまって言われると、照れるなあ。でも、星夜がトラブルを起こすイメージはないけどね。三人の中でも、特にしっかりしてるから」
「ちょっと待って、ハル兄! わたしも、しっかりしてるからね? レストランで食べすぎたり、はしゃぎすぎて船から飛びだしかけたりしそうな朝陽とは違うから~!」
「おれだって、まひると違ってトラブルなんて起こさない。自分で運べないくらい荷物をつめたり、プールでおぼれそうになったりもしない!」
「はいはい。まひるも朝陽も、しっかりしてるな」
星夜が、パンフレットをテーブルに置きながら笑った。
「とにかく、安全で快適な、最高の旅にしよう。なんと言っても、夏休みの始まりなんだから」
「「夏休みの始まり……」」
おれとまひるは、顔を見あわせる。
たしかに……こんなとびきりの旅行の前に、ケンカなんてしてたらもったいない!
「朝陽、この豪華な旅が終わるまでケンカはナシね。あと、困ったことがあれば助けあうこと!」
「オーケー!」
最高の旅は、いっしょに行くみんなで、楽しく作る!
まひると手をにぎりあうと、その上に、星夜も手を重ねる。
ワクワクしてきたせいか、ひゅうっと吹いてきたエアコンの風まで、船の上の海風みたいだ。
おれ、単純すぎ? ううん、そんなことない。
待ってろ、豪華客船クリスタル・ダイヤ号!
★<ためしよみ・第2回>へ続く★
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