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「1%」「スキ・キライ相関図」で大人気!
このはなさくらさんの新シリーズ『海斗くんと、この家で。』を一足早く公開中!
『海斗くんと、この家で。 ①初恋はひとつ屋根の下』は、2022年2月9日発売予定です!
5 お熱じゃないよ!
目覚まし時計の音が鳴るよりはやく目が覚めた。
ベッドをおりて、壁にかけられたカレンダーをながめる。
とうとう二学期になっちゃった。今日から学校かあ。
気合いを入れて行かなきゃ!
パジャマを脱いで着替えたあとは一階へ。
うわー、ひどい! 洗面所の鏡にうつるわたしを見て、情けなくなっちゃった。寝ぐせだらけ!
なっ、なんとかしなくちゃ!
ジャブジャブといきおいよく顔を洗って、タオルで拭いて、髪をブラシでとかして――。
にいっ、と笑顔をつくった。
ようし、これで、なんとかだいじょうぶ!
「おっ、おはよ!」
元気いっぱいにアイサツして、ダイニングテーブルについた。
「おはよう、詩衣(しい)。めずらしく自分で起きてこられたのね」
と、お母さんはニコニコ。
「やっ、やだなあ。お母さん、起きられるよっ」
なあんてね、ケンさんと歩夢(あゆむ)くんの前だから、そう言ってごまかしちゃった。
本当は今までずっと、お母さんに起こしてもらってたんだよね。
「おはようございます、ケンさん。おはよう、歩夢くん」
コーヒーを飲んでいるケンさんと、フォークで目玉焼きをつついて格闘中の歩夢くんにもアイサツした。だけど、あとひとり、いるべきひとがいない。
「あれ? 海斗(かいと)くんは? まだ起きてないの?」
今日から学校、だよね……?
大変、寝坊してるのかも!
「おっ、起こしにいかなきゃ!」
わたしは大あわてで立ちあがり、海斗くんの部屋に向かった。
「海斗くん、朝だよ。起きてよ!」
声をかけながら階段をあがっていったのだけど、海斗くんの部屋のドアがあけっぱなし!
部屋をのぞいてみると、ベッドは空っぽだった。
「えーっ」
なあんだ、最初からいなかったのか~。
海斗くん、どこに行ったんだろう? 家出……じゃないよね?
壁にかけられていたウエットスーツもボードも消えている。
海に行ったんだ!
バルコニーにでて、外を見てみる。すると、すぐ近くの浜を歩いている海斗くんを発見した。
ちょうど帰ってくるところだったみたい。彼の足跡がずっとつづいている。
ふう、よかった。わたしはバルコニーの柵(さく)に寄りかかった。
またサーフィンしにいってたんだ。
本当に好きなんだなあ……。
太陽の日差しを受けながら歩く彼が、とってもまぶしい。
髪が光に透(す)けて茶色になっている。
わたしがここから見ているなんて、海斗くんは想像もしてないだろうなー。
そのとき、下から服のすそをツンツンひっぱられた。
「しーちゃん、なにをみてるの?」
つぶらな二つの瞳が、わたしをジッと見あげている。
「あっ、歩夢くん!!」
ひええ! バンザイの姿勢で飛びあがった。
歩夢くんが来たの、ちっとも気づかなかったよ~!
「かっ、海斗くんにっ、ゴハンできてるよ、って言いにきたの!」
うろたえながらも、なんとか答えられたけれど、まだ胸がドキドキしている。
わたし、海斗くんに見とれてなかった……?
*
歩夢くんといっしょに一階におりていったら、海斗くんがいた。
リビングの窓枠に腰(こし)をおろして、風に吹かれている。
海からあがってきたばかりの彼は、なんだか大人びていて、近寄りがたくて。わたしは声をかけづらくなってしまった。
かっ、家族なんだから! きょうだいなんだから!
ためらったりなんかしたら、ダメだからねっ。
でも、わたしったら情けないんだ……。
「か、海斗くん、今日から学校、なのにっ……」
ボソボソっと注意するのが、せいいっぱいだったんだ。
海斗くんは、わたしをふり向いた。
「わかってるよ。すぐにシャワーをあびてくる」
と、目の前でファスナーをおろし、ウエットスーツを脱ぎかける!
「わわっ!」
なんで!?
考えるよりはやく、リビングを飛びだした。
わたしがいるのに、どうしてヘーキで脱いじゃうのーっ!
キモチを落ち着かせるために廊下(ろうか)で息をついていたら、歩夢くんがトコトコやってくる。
「しーちゃん、どうしたの? まっかだよ? おねつ、ある?」
「だいじょうぶだよ、歩夢くん! お熱じゃないよ!」
「ブッ!」と海斗くんの笑い声が聞こえた。
むうっ!
わざとやったんだ……!
しばらくして身支度を終えた海斗くんがダイニングにやってきた。
「はやく、ゴハン食べてよねっ。待ってるんだから……!」
目をつりあげ、怒っているコトをアピールしたのだけど。
海斗くんはニヤリとしながら、わたしの鼻の頭をピンと弾いた。
「ひゃっ!」
と鼻をおさえる。
「わかってる、って、さっき言っただろ」
「ふ、フンだ!」
わたしはドスドスとキッチンをでていった。
海斗くんには、ペースをみだされっぱなし。
「なかよくやろう」って握手したのに、意地悪してくるんだもん。
男の子って何を考えているのかよくわからないよ。
うーん? それか、きょうだいってこういうものなのかな……?
<第6回へつづく>
※実際の書籍と内容が一部変更になることがあります。
『海斗くんと、この家で。』を読んだあとは…
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