テストの点数=寿命!? 勉強しないと殺人犯!?
科目男子とのトキメキ(!?) おべんきょ生活、スタート!
(全5回・毎週月・金曜更新予定)(公開期限:2026年1月12日(月)23:59まで)
※これまでのお話はこちらから
目次
人物紹介
わたし、花丸円(はなまる・まどか)。
科目男子4人との命がけのお勉強ウィークもいよいよ大詰め!
学校での実力テストにむけて、
模擬テストで勉強の成果をたしかめることになって……。
11 模擬テストは悪夢のはじまり
土曜日。
今日は、テスト本番にむけて、勉強の成果をたしかめる日。
学校で午前授業をうけたあと、家で模擬テストを受けることになってる。
(模擬テストって、むずかしいのかなぁ? 赤点とったら、ケイがまたうるさいだろうなぁ……)
なんて、ユウウツな気分のまますごしてた、その日の二時間目。
算数の授業中のことだった。
「じゃあ、問3は……花丸、どうだ?」
「えっ、あ、はい……」
先生にあてられて、あわてて席を立つ。
黒板の前では、ほかの指された子たちが、問1と2を解いているところ。
その横にならんで、問題に目をとおす。
えーと。
つぎの計算をして、答えを小数であらわせ。
問3 0.5+3/4(4分の3)
「……うっ」
な、なにこれっ!?
小数と分数がまざってる!?
頭のなかで数字がぐるぐるまわりだして、チョークを持ったまま完全にフリーズする。
ダ、ダメだ、ぜんぜんわかんない……!
「おーい。できないなら素直にギブアップしろよー」
うしろからとんでくる、男子のからかい声。
「ペケ丸ペケ子にはムリにきまってんじゃん! 優等生の優ちゃんに解いてもらえば~?」
「ちょっと、あんたたち! やめなさいよ!」
優ちゃんが怒って立ち上がるけど、男子たちはギャハハハと笑ってる。
はずかしさとくやしさで、カーッと顔に血がのぼってくる。
(……むかつく)
でも、言いかえせない。
だって、わたしがとけないでいるあいだ、授業が止まっちゃうし。
あの言い方はひどいけど、みんなに迷惑をかけてるのは本当だから……。
(正直に、『わかりません』って言おう……)
「……あの、先生」
バシーーーーーンッ!
──そのとき、机を思いっきりたたく音がひびいた。
びっくりしてふりかえる。
みんなの視線があつまる先にいたのは──ケイだった。
ケイは、ぎろりと男子たちをにらみつける。
「むかつく」
低い声。
お調子者の男子たちもひるんだみたいで、きまり悪そうに口をとがらせてだまりこむ。
「ほら、おまえらしずかにしろ! 花丸も席にもどっていいぞ」
わたしは席にもどりながら、チラリとケイを見た。
いつもの不機嫌そうな目で、じっと黒板をにらみつけてる。
(もしかして……今、わたしを助けてくれたのかな?)
あの、ケイが?
半信半疑のまま、その横顔を見つめる。
短気で横暴でいじわるなヤツだと思ってたけど……。
もしかしたら、意外と、やさしいところあるのかも……?
家に帰ると、いよいよ模擬テストの時間がやってきた。
「制限時間は各教科二十分。模擬テストとはいえ、ふざけた点をとったらどうなるか、わかってるだろうな……?」
ケイはゴゴゴゴと圧力をかけながら、首からさげたストップウォッチをカチカチ鳴らす。
うぅ、すでに胃が痛い……。
おなかをおさえてたら、ほかの三人がはげましてくれる。
「まるまる、大丈夫」
「そんな緊張しないで気楽にやろうぜ~」
「大事なのは高得点をとることではなく、今、なにができないのかを知ることですよ」
みんなのやさしい言葉で、すこし緊張がほぐれた。
ケイは、あいかわらずものすごい顔でにらんでくるけど……。
「テストを開始する。鉛筆を持て」
言われるまま、鉛筆を手にとった。
とりあえず……さいごまでがんばってとくぞ!
えいや────っ!
「──それでは、模擬テストを返却しますね」
カンジくんの声に、わたしはむくりとベッドから起き上がる。
すべてのテストが終わったあと、ベッドにたおれこんで。
そのうしろで、男子たちはあっというまに各科目の採点をしてくれた。
(うぅ、模擬テストとはいえ、緊張する……)
裏返しにされた答案用紙を、四人からそれぞれ受けとる。
(どのくらい点数とれたかな? 学校で受けたテストより上がってるといいけど……)
ドキ、ドキ、ドキ……
ごくりとつばをのみこんで。
「えいっ!」
いっせいに、紙をめくった。
国語……25点。
理科……28点。
社会……20点。
「や、やった……! 点数、アップしてる!」
なんとなんと、三科目すべてで20点越え!
ふつうの人が見たら低い点かもだけど、わたしにとっては生まれてはじめての快挙だよ!
信じられなくて、点数を何度も確認する。
「すごい……! さすが! みんなの教え方がよかったんだ!」
「いいえ。これはまちがいなくまどかさんの努力の結果です。がんばった成果が出たんですよ」
「がんばった成果が……?」
どきん、と胸が熱くなった。
そんなの、考えたことなかった。
これまでずっと、どんなにがんばっても成績があがらなくて。
きっと、わたしはおバカだから、勉強は生まれつきむいてないんだって思ってたのに。
わたしでも、自分にあった方法でやれば、成果が出る……?
「みんな、ありがとう……! こんなにいい点がとれるなんて思わなかったよ!」
「……オイ、待て」
「まるまる、がんばり屋さん。えらいえらい」
「エヘヘ……」
ちょっぴり照れるなぁ。
「おい。なにか忘れてないか?」
「いや~、おれはまるちゃんのポテンシャル信じてたしさ~」
「ぽてんしゃる?」
「潜在能力ともいいますね。まどかさんの内に秘められた才能のことです」
「え~? わたしに才能なんてないよ~! ウフフ」
「おいいいいいいいいっ!!」
バシーンと机をたたく音。
ケイは髪を逆立てて、わなわなふるえている。
「おまえら! オレを完全スルーして話をすすめるなっ!」
ケイは、わたしから算数の答案用紙をバッととりあげた。
そこには、衝撃の点数が……!
「2点!! 2点だぞ!? どういうことだっ!?」
「うぅっ、わたしに聞かれても……」
答案用紙におどるペケの嵐。
つらい現実から、おもわず顔をそむける。
(やっぱりわたし、算数だけはどうしてもムリなのかも……)
どの科目も、おなじように一日一科目で、家庭教師の男子の言うとおりに勉強した。
だけど……やっぱり、いちばんニガテな算数だけは点数が上がらないまま。
じつはプリントを解きすぎたせいか、数字アレルギーが悪化しちゃったみたいで……テスト中、ずっと頭がボーッとしてたんだよね。
しゅんと肩を落としていると。
「仮に0点だった場合……ケイは明後日で消えてしまうことになりますね」
カンジくんがつぶやいた。
するとレキくんとヒカルくんが、さめざめと泣きはじめる。
「うぅ、悲しいな~、おまえはいいやつだったよ」
「僕、忘れないよ」
「残念ですが……これも運命でしょう」
目を閉じて顔の前で手をあわせる三人。
え、じゃあわたしも一緒に手を……。
「やめろ! 縁起でもないっ! たった一週間で消えてたまるかよ!」
髪をふりみだしてさけぶケイ。
「もうすこしマシかと思ってたが、ここまでヒドイとはな! このペケ丸ペケ子め! おまえの顔が死に神に見えてきたぞ!」
ひ、ひどい!
死に神って! あんまりだよ!
「今日の授業中に助けてくれたときは、ケイのことすこし見直してたのに!」
「……助けた? なんの話だ」
「算数の授業でわたしがからかわれたとき、『むかつく』って言って止めてくれたじゃん!」
「…………?」
ケイは無言で首をひねったあと。
ああ、と視線をもどす。
「あれは、あんな基礎的な問題もできないおまえへの絶望と怒りから出た言葉だ」
「えぇっ!?」
あれって、わたしのこと「むかつく」って言ったの!?
ちょっといいやつかも、とか思ったのに! 純粋な気持ちかえしてよ!
「ええい、そんなことはどうでもいい! オレはこれから日曜の分刻み時間割を作成しなくてはならん! いいか、だれもジャマするなよ!」
「ふ、分刻み……?」
まさか、あのプリント地獄より、もっとおそろしいことが待ってるんじゃ……?
絶望で、ガバッと頭をかかえる。
「うわ────ん!」
明日がユウウツすぎるよ~~~~っ!!