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注目シリーズまるごとイッキ読み!『神スキル!!! キセキの三きょうだい、登場!』第6回


神バズリ中☆ファン増加率【No.1】の超人気シリーズ「神スキル!!!」1巻がまるごと読める! 「イッキ読み」を公開中!!

朝陽、まひる、星夜の三きょうだいは、
めちゃくちゃすごい能力〈神スキル〉を持っていた!
ただし、「神スキルを秘密にする」——これが三人の約束だ。

新学期、クラスメイトの様子がおかしいことに気づいた、朝陽たち。スキルを使っての初めての調査をスタート!
危ない犯罪組織? 銃? 印刷工場でニセ札!? 大事件の計画を見ぬいた時、クラスメイトがさらわれて…!
「警察も解決できないなら、おれたちが、敵のアジトに潜入して、人知れず助けだす!」
手にあせにぎるドキドキの物語の幕が開く!


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※これまでのお話はコチラから

 

第14章 はじまりの合図


 おれは印刷工場を囲むブロック塀にかくれながら、道の先をのぞいた。

 昨日、まひると確認した工場が見える。くすんだ壁が夕日に染まって、今日のほうが不気味な感じだ。

 はじめて工場を見た星夜(せいや)が、ひとみを鋭くした。

「……ここが、例のニセ札工場か」

「うん。まずはわたしが、工場の中の様子を視てみる。少し待って」

 まひるが、さっと目を閉じる。

 まひるの表情が緊張する──けれど、何か見つけたのか、突然、ほっとしたものになった。

「夕花梨(ゆかり)ちゃんのお父さん、見つけた! 無事だよ。ケガもしてない」

 よかった、まだ最悪の事態にはなってない。

 おれは星夜と、胸をなでおろす。まひるが、すかさず言いたした。

「工場にちょうど着いたところみたい。表の出入り口から中に入って、工場の中の通路を歩いている。その先を、アジトで見た若い男が歩いてる」

「若い男……出迎え役か。まひる、久遠(くおん)さんの父親が持っていった記録メディアは?」

「ちょっと待って……うん、お父さんのバッグの中にあるよ。まだわたしてないみたい」

「まひる、久遠さんは? 久遠さんは無事?」

「夕花梨ちゃんは……」

 まひるが、息を止める。工場の部屋をつぎつぎと視ているんだろう。

 何もできなくて、はがゆい。でも今は、まひるが頼りだ。

「夕花梨ちゃん、いた、一番奥の部屋!」

 ……ドキッ

「様子は? ケガとかしてない?」

「うん、ケガはないみたい。部屋のすみに座らされてるだけ。でも、同じ部屋にいる男が監視してる。夕花梨ちゃん、顔色がよくないね。すごく不安そう……ごめん、こんなこと言うと、朝陽(あさひ)がますます心配になっちゃうよね。とにかく無事。それは本当だから」

「ありがとう、まひる」

 無事だとわかれば、十分だ。

 まひるは目を開けると、おれを見てうなずいた。

「夕花梨ちゃんの近くにいるのは、お父さんをおどしていた水原ね。お父さんは夕花梨ちゃんがいる部屋に向かっているみたいだから、そこで夕花梨ちゃんと交換することを条件に、データをわたすつもりなんじゃないかな」

「それなら、久遠さんのお父さんがその部屋に着いて、あいつらにデータをわたすまでに、なんとかしないと」

 久遠さんとお父さんを助けられても、データをわたしてしまったら、お父さんもあいつらの共犯者にされてしまう。ニセ札作りも止められない。

「二人を助ける、救出プランがいるな」

 そう言うと、星夜とまひるが口を引きむすぶ。静かな空気が、ぴんとあたりにはりつめた。

「──来る途中で話しあって決めた方法で行こう。おれと星夜が工場に潜入して、久遠さんとお父さんを助ける。まひるはスキルを使って、外からおれたちをナビゲートして」

 まひるは、真剣な顔でうなずいた。

「まかせて。それじゃあ朝陽、はいコレ」

 ボスッ

 突然、ヘッドセットをかけられて、おれは肩をはねあげた。

「わっ! びっくりした。これ、おれのゲーム用のヘッドセット? 音が聞こえる」

「家から持ってきたの。もちろん三人分あるよ。工場潜入中は、これを使って連絡をとろう。何があっても絶対に外さないこと。あと、これも」

 まひるが黒いネックカバーと手袋をとりだすと、すばやくつけてポーズをきめた。

「どうどう? わたしの秘蔵、変装グッズ! 顔をかくすネックカバーと手袋ね。わたしたち三人に似合うようにコーディネートしたの。絶対におしゃれだから安心してつけて」

「えー? おしゃれの必要、ある?」

「真におしゃれな人は、どんなときもおしゃれなの。それに、カッコいいほうがテンション上がるでしょ、はい!」

 うわ、拒否権なし!? ヘッドセットの二の舞になる前に、自分でつけよ。

 ネックカバーを頭からかぶると、まひるが向けてきた手鏡をしぶしぶのぞいて調整する。

 本当だ。顔の下半分がかくれて、これなら正体もバレなそう。

 うすくて通気性もよくて、着ごこちも悪くない。

 星夜もつけてる。まひるが言うとおり、おれも星夜も、意外とサマになってるかも。

「じゃあ、最後にこれね」

 まひるは、あまい香りがする小さなポーチを、おれと星夜にわたした。

「はい、スペシャルお菓子袋~! キッチンのお菓子箱からかき集めてきたの。スキルの使いすぎでおなかが空いたら、力も判断力も落ちる。動けなくなったら確実に失敗するでしょ。スキルを使ったら、こまめに食べて。朝陽にはチョコ、星夜にはアメね」

 まひるが、グミが入った自分のポーチを見せる。

「う、うん。ありがと」

 さすが、まひるは緊急事態でも頭が回るな。

 でも、なんでここまでするんだろ? おれと星夜の好きなお菓子まで選んでくれてるし……。

(まひるは、心配してるんだ。オレたちのこと)

 今の、星夜の心の声だ。

 ……そうだよな。おれたちの潜入中、まひるは一人きりだ。

 視ているしかできないぶん、まひるのほうが心配だよな。

 それなら。

「まひる。おれのキックスケーター、預かっておいて。潜入中に、音を立てたらマズいから」

「え? うん、いいよ」

「それと……あれ、やろうよ」

「アレ?」

 返事をする前に、おれは、後ろから手を回して、まひると肩を組む。

 すぐに気づいた星夜も、おれの左に来て、同じようにおれと肩を組んだ。

「……うんっ」

 まひるもおれたちに応えるように、おれの肩に手を回して、ぎゅっと力をこめる。

 まひる、おれ、星夜──きょうだい三人での肩組み。

 子どものころから、そう。

 だれかがつまずいたとき、困ったときは、三人で肩を組む。

 そうするだけで、力がわいてくる。

 一人じゃないって気がするんだ。

 星夜の背が伸びて、高さが少しガタガタになってきたけど。

 右にまひる、左に星夜。二人の顔がすぐ近くに見える。

 緊張と興奮と──でも、絶対信じてるって顔だ。

「じゃあ、行ってくる」

「……うん」

 二人からさっとはなれると、道の角から工場のほうへ飛びだす。

 すぐ後ろには、星夜の足音。おれは背中を向けたまま、手袋をした手をまひるに軽く振った。

 三人で、救出プランを成功させて、久遠さん親子を助けだす!

 神スキル、全力全開──いよいよ、救出の幕開けだ。



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