
神バズリ中☆ファン増加率【No.1】の超人気シリーズ「神スキル!!!」1巻がまるごと読める! 「イッキ読み」を公開中!!
朝陽、まひる、星夜の三きょうだいは、
めちゃくちゃすごい能力〈神スキル〉を持っていた!
ただし、「神スキルを秘密にする」——これが三人の約束だ。
新学期、クラスメイトの様子がおかしいことに気づいた、朝陽たち。スキルを使っての初めての調査をスタート!
危ない犯罪組織? 銃? 印刷工場でニセ札!? 大事件の計画を見ぬいた時、クラスメイトがさらわれて…!
「警察も解決できないなら、おれたちが、敵のアジトに潜入して、人知れず助けだす!」
手にあせにぎるドキドキの物語の幕が開く!
※これまでのお話はコチラから
第14章 はじまりの合図
おれは印刷工場を囲むブロック塀にかくれながら、道の先をのぞいた。
昨日、まひると確認した工場が見える。くすんだ壁が夕日に染まって、今日のほうが不気味な感じだ。
はじめて工場を見た星夜(せいや)が、ひとみを鋭くした。
「……ここが、例のニセ札工場か」
「うん。まずはわたしが、工場の中の様子を視てみる。少し待って」
まひるが、さっと目を閉じる。
まひるの表情が緊張する──けれど、何か見つけたのか、突然、ほっとしたものになった。
「夕花梨(ゆかり)ちゃんのお父さん、見つけた! 無事だよ。ケガもしてない」
よかった、まだ最悪の事態にはなってない。
おれは星夜と、胸をなでおろす。まひるが、すかさず言いたした。
「工場にちょうど着いたところみたい。表の出入り口から中に入って、工場の中の通路を歩いている。その先を、アジトで見た若い男が歩いてる」
「若い男……出迎え役か。まひる、久遠(くおん)さんの父親が持っていった記録メディアは?」
「ちょっと待って……うん、お父さんのバッグの中にあるよ。まだわたしてないみたい」
「まひる、久遠さんは? 久遠さんは無事?」
「夕花梨ちゃんは……」
まひるが、息を止める。工場の部屋をつぎつぎと視ているんだろう。
何もできなくて、はがゆい。でも今は、まひるが頼りだ。
「夕花梨ちゃん、いた、一番奥の部屋!」
……ドキッ
「様子は? ケガとかしてない?」
「うん、ケガはないみたい。部屋のすみに座らされてるだけ。でも、同じ部屋にいる男が監視してる。夕花梨ちゃん、顔色がよくないね。すごく不安そう……ごめん、こんなこと言うと、朝陽(あさひ)がますます心配になっちゃうよね。とにかく無事。それは本当だから」
「ありがとう、まひる」
無事だとわかれば、十分だ。
まひるは目を開けると、おれを見てうなずいた。
「夕花梨ちゃんの近くにいるのは、お父さんをおどしていた水原ね。お父さんは夕花梨ちゃんがいる部屋に向かっているみたいだから、そこで夕花梨ちゃんと交換することを条件に、データをわたすつもりなんじゃないかな」
「それなら、久遠さんのお父さんがその部屋に着いて、あいつらにデータをわたすまでに、なんとかしないと」
久遠さんとお父さんを助けられても、データをわたしてしまったら、お父さんもあいつらの共犯者にされてしまう。ニセ札作りも止められない。
「二人を助ける、救出プランがいるな」
そう言うと、星夜とまひるが口を引きむすぶ。静かな空気が、ぴんとあたりにはりつめた。
「──来る途中で話しあって決めた方法で行こう。おれと星夜が工場に潜入して、久遠さんとお父さんを助ける。まひるはスキルを使って、外からおれたちをナビゲートして」
まひるは、真剣な顔でうなずいた。
「まかせて。それじゃあ朝陽、はいコレ」
ボスッ
突然、ヘッドセットをかけられて、おれは肩をはねあげた。
「わっ! びっくりした。これ、おれのゲーム用のヘッドセット? 音が聞こえる」
「家から持ってきたの。もちろん三人分あるよ。工場潜入中は、これを使って連絡をとろう。何があっても絶対に外さないこと。あと、これも」
まひるが黒いネックカバーと手袋をとりだすと、すばやくつけてポーズをきめた。
「どうどう? わたしの秘蔵、変装グッズ! 顔をかくすネックカバーと手袋ね。わたしたち三人に似合うようにコーディネートしたの。絶対におしゃれだから安心してつけて」
「えー? おしゃれの必要、ある?」
「真におしゃれな人は、どんなときもおしゃれなの。それに、カッコいいほうがテンション上がるでしょ、はい!」
うわ、拒否権なし!? ヘッドセットの二の舞になる前に、自分でつけよ。
ネックカバーを頭からかぶると、まひるが向けてきた手鏡をしぶしぶのぞいて調整する。
本当だ。顔の下半分がかくれて、これなら正体もバレなそう。
うすくて通気性もよくて、着ごこちも悪くない。
星夜もつけてる。まひるが言うとおり、おれも星夜も、意外とサマになってるかも。
「じゃあ、最後にこれね」
まひるは、あまい香りがする小さなポーチを、おれと星夜にわたした。
「はい、スペシャルお菓子袋~! キッチンのお菓子箱からかき集めてきたの。スキルの使いすぎでおなかが空いたら、力も判断力も落ちる。動けなくなったら確実に失敗するでしょ。スキルを使ったら、こまめに食べて。朝陽にはチョコ、星夜にはアメね」
まひるが、グミが入った自分のポーチを見せる。
「う、うん。ありがと」
さすが、まひるは緊急事態でも頭が回るな。
でも、なんでここまでするんだろ? おれと星夜の好きなお菓子まで選んでくれてるし……。
(まひるは、心配してるんだ。オレたちのこと)
今の、星夜の心の声だ。
……そうだよな。おれたちの潜入中、まひるは一人きりだ。
視ているしかできないぶん、まひるのほうが心配だよな。
それなら。
「まひる。おれのキックスケーター、預かっておいて。潜入中に、音を立てたらマズいから」
「え? うん、いいよ」
「それと……あれ、やろうよ」
「アレ?」
返事をする前に、おれは、後ろから手を回して、まひると肩を組む。
すぐに気づいた星夜も、おれの左に来て、同じようにおれと肩を組んだ。
「……うんっ」
まひるもおれたちに応えるように、おれの肩に手を回して、ぎゅっと力をこめる。
まひる、おれ、星夜──きょうだい三人での肩組み。
子どものころから、そう。
だれかがつまずいたとき、困ったときは、三人で肩を組む。
そうするだけで、力がわいてくる。
一人じゃないって気がするんだ。
星夜の背が伸びて、高さが少しガタガタになってきたけど。
右にまひる、左に星夜。二人の顔がすぐ近くに見える。
緊張と興奮と──でも、絶対信じてるって顔だ。
「じゃあ、行ってくる」
「……うん」
二人からさっとはなれると、道の角から工場のほうへ飛びだす。
すぐ後ろには、星夜の足音。おれは背中を向けたまま、手袋をした手をまひるに軽く振った。
三人で、救出プランを成功させて、久遠さん親子を助けだす!
神スキル、全力全開──いよいよ、救出の幕開けだ。
