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ものがたり

『放課後チェンジ 友情の危機!? 波乱の夏祭り』ためし読み 第1回 みんなの願いごと

2024年 新シリーズ売上 第1位の「放課後チェンジ」。
人気うなぎ登りの第3巻が60ページも試し読みできちゃう!
第3巻から読んでもおもしろい!
ハラハラドキドキ、おなかをかかえて笑っちゃうお話を今すぐチェック!

まなみ、尊(たける)、若葉(わかば)、行成(ゆきなり)は動物に変身できる! 大喜利(おおぎり)大会やクイズ大会など、大笑いのイベントの連続。
ところが、悪霊による「ほれ薬」の事件が発生!!
行成が、まなみに恋をしちゃった!? あわてる尊も巻きこんで、まさかのドキドキの関係に!



『放課後チェンジ 友情の危機!? 波乱の夏祭り』
(藤並みなと・作 こよせ・絵)
8月6日発売予定!



人物紹介


目次


 プロローグ ――行成(ゆきなり)――


「若(わか)! こんなお時間にお出かけですか?」

 こっそり門を出ようとしたところ、おかかえ運転手の八代(やしろ)さんに声をかけられた。

「シャーペンの芯(しん)を買いに、コンビニに行くだけだ」

「すぐにお車をお出しします」

「徒歩三分だぞ? ……まだ少し残ってるから、明日買いに行く」

 俺(おれ)は小さくため息をついてから、屋敷の中に引きかえす。

 今鷹(いまたか)行成。中一。

 父親が茶道の家元である我が家は、たとえ両親が留守の夜でも、住みこみの弟子や従業員の目があって、家をぬけだすのは一苦労だ。

 そもそも中学生が夜に出歩くなという話だが、これにはやむにやまれぬ事情がある。

 ……やっぱり、今夜もこうするしかないか。

 自室にもどった俺は、スマホに入れてあるハチの巣の写真を見る。

 小さなものの集合体が本能的に苦手だからドキッとした、瞬間(しゅんかん)、ボン! 

 タカの姿に変身し、開いた窓から、塀(ほり)の外へと飛びだした。


 ――少し前に幼なじみ三人と、ドキッとすると動物に変身するフシギな指輪を手に入れた。

 変身する動物はみんなバラバラで、俺はタカ。

 ただ、この指輪、どうしても外せない。

 指輪をはめた当日、ナゾのフクロウが現れて、これは動物の能力を使えるようになると同時に、動物の悪霊(あくりょう)を呼びよせる災いの指輪だと教えてくれた。

 さらに、動物の悪霊を昇天(しょうてん)――天国に行かせる力も持ち、たくさんの悪霊を昇天させることで、今は失われている本来の力がよみがえり、外せなくなった指輪も外れるようになるだろう、と。

 フクロウは言いたいことだけを言うと、飛びさってしまった。

 ナゾだらけのこの指輪のことを知る、現時点での唯一の手がかりが、あのフクロウだ。

 だから、俺は時間や体力によゆうがある夜に、ときどきこうして変身して、フクロウをさがしに外に出ていた。

 先ほどは、たまには視点を変えて人の姿のままさがしてみようと思ったが、脱出失敗したというわけだ。

 まあ、いい。

 つばさを広げ、風を切って大空を自由に飛ぶ。

 この上ない解放感があって、気持ちがいい。

 他では味わえない高ぶりを感じる。

 上空からゆったりと見おろす町並みは、たくさんの灯りがともって、昼とはまたちがった景色が楽しめた。

 俺は、タカになって飛行するのを気に入っている。

 フクロウさがしの成果はないが、最近はこの空中散歩が、一番の趣味かもしれない。


 ……という話を、翌日学校でしてみたら、「めっちゃ指輪の力を楽しんでるじゃん!」と尊に笑われた。

 神崎尊(かんざきたける)。

 活発でスポーツ万能、一見悪ガキっぽいけど、根はマジメで芯が強い。

 明るい色の髪と、口を開くたびに見える犬歯が特ちょう。

 尊は指輪の力で黒い柴犬に変身するが、熱中すると一直線なところとか、行動力があってスタミナお化けなところとか、もともと犬っぽいかもしれない。

 口ではひねくれたことを言っても、感情がわかりやすいところもだ。

「行成のその図太さ、うらやましい……けどたしかに飛べるって、すごい能力強化(バフ)だよね。そういう点でも、うらやましいな」

 若葉からはあきれ半分、本気半分くらいのようすで、ため息をつかれた。

 水沢若葉(みずさわわかば)。

 しっかり者の優等生、凝り性のゲーマーで集中力はピカ一。黒髪のショートボブ。

 たまにつくえの上で、まるでピアノをひくみたいに指を動かし、無意識に音ゲーの練習をしてたりして、ゲーム本気(ガチ)勢とはこういうものかと感心する。

 俺は小学校の時から若葉に負けたくなくて勉強を続けた結果、全国テストで一位になったけど、ゲームはどれだけやっても勝てる気がしない。

 若葉が変身するのは、ハムスター。

 若葉の人見知りで警戒心が強いところや、インドアで夜行性なところはハムスターっぽいな。

「空中散歩……いいね! わたしも今度、変身して猫集会にもぐりこんでみよう」

 目をかがやかせてそう言ったのは、まなみ。

 斉賀(さいが)まなみ。

 いつも元気で素直、おしゃべりが好きなムードメーカー。

 左右の三つ編みがトレードマークで、サーモンピンクの毛にしまもようのある子猫に変身する。

 まなみはのんきで人なつっこい家猫(いえねこ)タイプで、自然と空気を和ませ、まわりを笑顔にする力がある。あと、寝るのが好きで、休みの日は起こされないと十二時間くらい寝るらしい。寝すぎだろ、さすがに。

 多少(?)ルーズでそそっかしいけど、こまっている人にためらいなく手を差しのべられる、まなみの心の広さと温かさは、何よりの美点だと思う。

 

 俺たちは四人で、悪霊たちが起こす事件を解決する、チーム㋐(マルア、アにマルでアニマルという意味を秘めている)を結成した。

 指輪の力を使うとみんな、運動神経が大はばにアップし、夜目が利くようになるし、動物の言葉もわかるようになる。

 それ以外にも、犬はするどい嗅覚(きゅうかく)で敵のニオイを追いかけたり、仲間の居場所をさがしたり。

 ハムスターは小さな体で、せまいところにもぐりこんだり、こっそりかくれたり。

 猫は耳がとてもよく、小声の会話から情報を集めたり、異変にいち早く気づいたり。

 タカは空を飛んだり、優れた視力で遠くのものまで見ることができたり。

 まるで超能力のような動物たちの力を活かして、悪霊を昇天させてきた。

 悪霊にはキケンなやつもいて、大変な目にあうことも少なくないが、それでも、動物に変身できるなんて貴重な経験だ。

 せいぜい楽しめる分は楽しんでおこう……なんて思っていたんだが。

 まさかよりによって悪霊が、あんな伝説の残る品にとりついて、あんなふざけた呪いをふりまくなんて――。

 これは、俺の一生の不覚にして、思いだしたくない黒歴史になる事件の話。

 きっかけは、今鷹家に代々伝わる、家宝の一つが行方不明になったことだった――。


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