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第1回「らしく」なんかしたくない!!!【期間限定】「ふたごチャレンジ!」1巻無料公開


【チャレンジしようよ。好きなものを「好き」って言うために。】

「毎日読んでます。はげまされます」「心がふるえる」「この先どうなるのか、ぜんぜん予想できない!」と話題そうぜん。毎日セカイにたちむかってるみんなへの応援ストーリー「ふたごチャレンジ!」1巻が、期間限定で全文無料ためし読み中。
ぜひ、この機会に追いついてね!(公開期限:2026年2月28日(土)23:59まで)

【このお話は…】
うち、双葉あかねと、弟のかえでは、外見そっくりのふたご。
小さいころから、いつも、
「男女が逆だったらよかったのにね」って言われてきた。
さらに、今年の誕生日には、親から
「お願いだから、ちゃんと女の子らしく、男の子らしくなって…!」
なんて、無理強いされちゃった!
それで、うちとかえでは、決めたんだ。
このセカイに、2人きりで「チャレンジ」してやろうって!


1 あかね「くん」と、かえで「ちゃん」

 深夜12時をすぎ、お父さんもお母さんも眠りについたころ。
 まっ暗なリビングの、大きな鏡の前で、ゆらゆらと動く人影があった。
 なにをしてるんだろう。
 鏡にむかって、布みたいなものを体にあててる?
 あ。あれって――。
「かえで?」
 背中にむかって声をかけると、その体がビクッと固まった。
 かえでは胸の前でギュッとひらひらした布をだきしめ、おそるおそるこちらをふりかえる。
「……ああ、あかねかぁ」
 うちのすがたを見ると、ほっとしたように、肩で息をつく。
 窓からそそぐ月明かりで照らされたかえでの顔は、うちにそっくりだ。
「かえでったら夜中に起きだして、ぜんぜんもどってこないから、心配したんだからね!」
「そっか、ごめん。ぼくが起こしちゃったかな」
「いつもはあれくらいの音じゃ起きないんだけどね」
 うちとかえでは2段ベッドで寝ているから、おたがいの気配はすぐにわかる。
 うちは眠りが深いほうだから、こうやって夜中に起きることはほとんどないけど。
「それにしても、なつかしいの引っぱり出してきたね、かえで!」
 うちはかえでから、持っていた布を受けとって、目の前で広げる。
 それは昔、うちが習わされていたクラシックバレエの衣装。
 発表会用にお母さんが作ってくれた、うすむらさき色の、ふわふわでキラキラなドレスだ。
 まるで、お姫さまや妖精みたいな。
「……ま、うちは好きじゃなかったけど」
 結局、1年ももたずにやめちゃったんだよね。
 小学4年生になった今、うちが一番好きなのは、サッカー。
 うちにはバレエより、ボールを蹴って走りまわるほうが、性に合ってるんだ。
 だから、バレエを習っていたころを思いだすことは、正直ほとんどなかったけど――。
「かえでは、夜中に持ちだしたくなるくらい、記憶に残ってたんだね」
 うちは衣装の上のほうを両手で持つと、かえでの体に合わせる。
「うんうん、すっごく似合う!」
「ほんと?」
「ちょーかわいいよ、かえで!」
 うちがほめると、かえではもじもじしながらも、うれしそうに目を細くした。
 ――うちの名前は、双葉あかね。
 そしてこっちは、かえで。
 うちの――弟。
 うちとかえでは、見ためも身長も、すべてがそっくりなふたごだ。
 でも、趣味はうちと正反対で、かえではかわいいものが好き。
 保育園のころは、うさぎのぬいぐるみを肌身はなさず持っていたし、スーパーに売っている、おもちゃのネックレスやゆびわをお母さんにねだって、たくさん集めていたっけ。
 この『かわいい』衣装も、本当はかえでが着たかったんだろうなあ。
 でも、お母さんやお父さんは、かえでには空手を習わせた。
 まあ、うちと同じように、1年以上はつづかなかったけど。
「かえで、こんな夜中にやらないで、もっと堂々としなよ!」
「うん……でも、お母さんが心配しちゃうから」
「心配? なんで?」
「だって、ぼくは男の子だし……」
「ああ、でも、男子がかわいいもの好きだっていいじゃん」
「それはそうだけど……」
 口ごもるかえで。
 ……そういえば最近、かえでがかわいいものを好きって言ったり、ほしいって言ってるとこ、見てないな。
 かえでははずかしがりやだし、まわりに主張しづらいのかも。……あ、そうだ。
「かえで、いいこと思いついた!」
「え、なに?」
「来週、うちらのお誕生日会があるでしょ? お父さんたちに、おそろいのドレスをリクエストして、いっしょに着ようよ!」
 ふたごであるうちらは、当然、生まれた日も同じなわけで。
 プレゼントは、2人で相談して、同じものを色ちがいでもらうのが、わが家のルールなの。
「え……でも、ぼくがドレスなんて……」
 たじろぐかえでの肩を、うちはポンとたたく。
「だいじょーぶ。うちら、ちっちゃいころからおそろいの服ばっかり着せられてきたじゃん。『ふたごファッションがかわいいー!』ってさ」
「そ、そうだけど……」
「それに、みんなはうちが――『あかねくんがドレスを着てる』のを見たほうが、ずっとビックリするよ!」
「うーん……。でも、あかねはドレスなんか興味ないでしょ?」
「うん、でもいいの。2人でみんなをおどろかせようよ!」
 そう笑顔で答えると、かえでの表情も、ふっとやわらかくなる。
 そして、ゆっくりとうなずいた。
「ありがとう、あかね」
「いいってことよ」
 うちはグッと親指を立てる。
 よく男子にまちがわれるうちが、ドレスを着るなんてなあ。
 うちのクラスでのあだ名は、『あかねくん』なの。
 そのほうがなんだかしっくりきて、うちは気に入っている。
 女子とおしゃべりするより、男子と外で遊ぶほうが、楽しいしね。
 うちのドレス姿を見たクラスメイトは、自分の目を疑うかも。ふふっ。
「お誕生日会、楽しみだねっ」
 うちらは顔を見あわせて、ほほえみあった。

 あれから1週間が経って、5月に入った。
 今日は5月1日、うちらのお誕生日会の前日だ。
「よーし、飾りつけかんりょー! かえでは?」
「ぼくも終わったよ」
 かえでが台がわりにしていたイスから降りると、うちはにぎやかになった部屋を見まわす。
 どんと壁にかけられた、『HAPPY BIRTHDAY』と書かれた横断幕。
 細く切ったおりがみを丸めてつなげた、色とりどりの輪飾り。
 うちが担当したところは、赤や青というはっきりしたビビッドカラーを、かえでの担当したところは、パステルカラーのあわい色を使っていて、それぞれの好みが出ている。
 すわる場所を示すネームプレートの文字は、みんなの好きな色をきいて書いた。
 かえではピンクで、うちは黒。黒は色あい的に、輪飾りには使わなかったけどね。
「うんうん。われながら、なかなかいいできばえじゃん!」
 カラフルになった部屋に満足したうちは、ふんと鼻から息をはいた。
 じつは、うちらはもうすぐ、おばあちゃんの家に引っ越すことが決まっている。
 だから、この場所でむかえられる誕生日は、これで最後なの。
 それもあって、たくさんの子がきてくれる予定なんだ。
「そうだ、かえでのぬいぐるみコレクションも、飾りとしてならべとこうよ」
「えっ、でも……」
「かわいいじゃん、せっかくいっぱい持ってるんだし」
 なんて、部屋をデコレーションしていると、1階から声からひびいた。
「あかねー、かえでー、ごはんできたわよー!」
「早くこないと、冷めるぞー」
「「はーい」」
 お母さんとお父さんに呼ばれて、うちらは階段を下りてダイニングへむかう。
 ん、この食欲をそそるにおいは、ひょっとして……!
「わあ、やった!」
 テーブルの上にならぶメニューを見て、思わず声が出た。
 今日のおかずは、デミグラスソースのかかったハンバーグ。
 うちはこれが、一番の大好物なんだ。
 かえでは、もっとさっぱりしたもののほうが好きだけどね。
「いただきまーす!」
 さっそくハンバーグをほおばると、口いっぱいに肉汁が広がる。
 みじん切りで入ってるたまねぎも、食感が変わって、いいんだよなあ。
 夢中で口に運んでいると、あっという間に平らげてしまった。
 ふう。あ、そういえば。
「ねえお母さん。うちらのドレス、まだ届いてないの?」
 部屋の飾りつけに集中していて、すっかりわすれていたけど。
 先週、かえでと2人ですぐにドレスのデザインを決めて、お母さんに注文をおねがいしたから、そろそろ届いていないとおかしい。
 バースデーパーティーは、もう明日の午後なのに。
「そのことなんだが……」
 お父さんが、なぜか顔をくもらせて、重々しくくちびるを動かす。
「えっ、もしかして、誕生日会に間にあわないとか!?」
 うちがあわてて身をのりだすと、今度はお母さんが口を開いた。
「あのね……あかね、かえで。あなたたちはふたごで、ずっとそばにいるから、影響しあっているだけなんだろうと思って、今まであまり口出ししてこなかったけど……2人とも、明日で10歳になるんだし……ねえ。そろそろやめにしない?」
「え? やめるって、なにを?」
「あなたたち、まわりになんて呼ばれてるのか、知っているでしょう?」
「ああ、『あかねくん』と『かえでちゃん』のこと? いいよ、気にしてないから。ね、かえで」
「う、うん」
 かるい口調で答えると、顔を見あわせたお父さんとお母さんの空気が変わった……気がした。
「2人はそれでよくてもな……」
「ええ……。とにかく、明日はお母さんたちの言うことをききなさい。わかったわね」
「? はあい」
 結局、ドレスはお誕生日会に間にあうのかな……?
 でも、もう一度きけるようなふんいきじゃなくて、うちはおとなしくイスにすわり直した。
 かえでもなにかを感じとったのか、チラチラとお父さんとお母さんの様子をうかがっていた。


2 お誕生日に、さよなら

「あかね、ちょっと」
 次の日。少し早めのお昼ごはんを食べ終わると、お母さんに声をかけられた。
「なに?」
「あかねはこれを着て」
 そう言ってお母さんが差しだしたのは、うちがかえでといっしょに選んだ、こしの部分に大きなリボンがついた、やさしいピンク色のドレスだ。
「なんだ、届いてたんじゃん」
 うちは笑いながら、お母さんに手伝ってもらってドレスを身にまとう。
 うーん、かわいいとは思うけど、やっぱりうちの趣味じゃないな。
 こんな機会がなかったら、うちは絶対に着なかっただろう。
 いかにも女の子らしいデザインをむずがゆく思っていると、お母さんに肩をたたかれる。
「すわって。髪もセットするから」
「えっ、いいよ。うちはオマケみたいなものなんだし」
 あくまでドレスを着る主役は、かえでだから。
 すると、お母さんの目がするどくなった。
「あかね、早くすわりなさい」
 ぐいとすわらされて、あっという間にくるくるに髪を巻かれた。
「もう、こんなのしなくていいって言ったのに……。そういえば、かえでは?」
「かえでは2階で、お父さんにやってもらってるわ」
「そっか。みんながくる前に、見てこようっと」
 どこかとれちゃったりしてないか、飾りつけの最終確認もできるしね。
 階段をあがって、一番手前にある部屋のとびらをノックする。
「かえでー、着がえられた?」
 あれ、おかしいな。中に人がいる気配はするけど、返事がない。
「かえで、お父さん、入るよ?」
 首をひねりながら、ドアノブに手をかけて開くと――。
 うちは、言葉を失った。
 うちに背をむけているお父さんの腕が、かえでのほっそりした首へのびていく。
 首もとをつかんだかと思うと、ぐっと力を入れて――。
 ……いや、ちがう。
 お父さんは、かえでのネクタイをしめているんだ。
 まゆを下げ、されるがままでいるかえでが着ていたのは、ドレスじゃなかった。
 お父さんのスーツを白くしたような、ピシッとした服装をしている。
「えーっ、なにそれ、カッコいい! うち、それが着たいなあ――って、あれ?」
 われに返ったうちは、あわててお父さんに確認する。
「誕生日プレゼントは、色ちがいのドレスを2着って、おねがいしたよね?」
 お父さんは、真剣な顔つきで答える。
「これからのおまえたちにとっては、これが『おそろい』なんだよ」
「? 意味わかんない。かえで、うちの服と交換しよう」
 うちが手さぐりでドレスの背中にあるジッパーを下ろそうとすると、お父さんがどなった。
「だから、ドレスはかえでが着るべきものじゃないんだ!」
 大きな声に、うちとかえでの肩が、ビクッとふるえる。
 お父さんもそのことに気づいたのか、次は声のトーンをおさえた。
「いいか? 男の子はふつう、こういうスーツを着るんだよ」
「で、でも……かえでが好きなのは、それじゃないもん」
「もう、好きか好きじゃないかだけで選ぶ年じゃないだろ」
「なにそれ……」
 お父さんのどなり声をききつけたのか、お母さんも2階へあがってきた。
 うちはすかさず、お母さんにうったえる。
「ねえ、お母さん! お父さんが、いじわる言うんだけど」
 お母さんは、うちらの味方になってくれると思っていた。信じていた。
「あかね、かえで。そういうワガママをもうやめなさいって、昨日言ったの」
 でも、お母さんもうちらを責めるように、けわしい表情をしている。
 なにも言えずにいると、かえでがうちのドレスを指さして、消えいるような声をしぼりだす。
「……ぼくは、ドレスを着ちゃいけないの?」
 少しの間のあと、お母さんは静かにつぶやいた。
「お母さんはね、『あかねくん』と『かえでちゃん』を生んだつもりはないの……」
 お母さんは、苦しそうに顔をゆがめながら、声をふるわせる。
「おねがいだから2人ともちゃんとして? ちゃんと男の子らしく、女の子らしくなって……!」
 その言葉に、ズキリと、胸ににぶい痛みがはしった。
 息をすうのが、苦しい。
 そのとき、お母さんとむきあっている、かえでの表情が変わった。
 ひどいことを言われたのに、怒るわけでも、泣くわけでもなくて。
 ……かえでは、せいいっぱい、ほほえんだのだ。
「そっか。今まで心配かけてごめんね、お母さん」
   ピンポーン
 はげしく心臓が脈うつ中、まぬけなインターホンの音が鳴りひびいた。
「きっとお友だちがきたのね。すぐに入ってもらうから、2人はここにいていいわよ」
 そう言って、お母さんたちは部屋を出ていってしまった。
「……どうして謝ったのよ」
 かえでと2人きりになると、つい、心の声が口に出た。
「ぼく、お父さんやお母さんを悲しませてまで、ドレスを着たいわけじゃないから」
 かえでらしい理由だ。
 でも、うちはこんなドレス、着たくない。
 ぜんぜん、うちらしいって思えないもん。
 そう思うことは、ワガママなの……?
「あかねは、ぼくのためにドレスをリクエストしてくれたのに……ごめんね」
「いや、かえでのせいじゃないから……!」
 なんて返せばいいのかわからなくて、うちは言葉をにごす。
 ――女の子は、かわいいものが好きで、コイバナに目がない。
 男の子は、かっこいいものが好きで、ゲームやスポーツに目がない。
 たしかに、そういう子が多いけど。
 みんながみんな、そうじゃないとダメなの?
 うちは、ぐるぐると考える。
 女の子らしくって、なに?
 男の子らしくって、なに?
『ちゃんと』するって、なに――?
 少しすると、お母さんに連れられて、ぞろぞろとクラスメイトがやってきた。
「おじゃまします。おっ、部屋の飾りつけ、すげーな」
「そりゃあ、あかねくんたちの転校前、最後のお誕生日会だもん」
「2人がいなくなっちゃうなんて、さみしくなるね」
 部屋を見まわしながら、クラスメイトは口々に話している。
 うちはあわてて気をとりなおす。
「みんな、きてくれてありがと!」
 明るく呼びかけると、みんなの視線が一気にうちへ集まる。
「……もしかして、『あかねくん?』」
「え? そうだけど」
 なんだか、変な反応だ。あっ、そうか!
 うちがこんなフリフリのドレスを着るわけないから、ビックリするよね。
 そうだ。みんなはきっと、うちらといっしょに怒ってくれるはず。
 お母さんとお父さんが、まったくうちらの気持ちを、わかってくれないことを!
「えへへ、おどろいた? それがさあ――」
「あー、よかった」
 え?
「『あかねちゃん』に、もどったんだね!」
「…………へ?」
 うちは、ぽかんと口をあける。もどったって、どういうこと?
「ドレス、すごく似合ってるよ、あかねちゃん!」
「やっぱり、そういう服を着てると、あかねも女子だったんだなって気がするな」
「えっ、それってあかねちゃんに失礼じゃない?」
「いや、すげー似合ってるって言ってるんだからよ!」
「あ、はは……そう?」
 うちはどうにか、のどの奥から言葉をしぼりだした。
「先生が、前に言ってたの。『あかねくん』は、気の弱いかえでくんを心配して、逆に自分が男っぽくふるまってるだけだろうって。やっぱりそうだったんだね」
 クラスメイトの視線が、かえでにうつる。
「かえでくんも、すごくかっこいいね」
「そうしてると、ちょーイケメンじゃん!」
「……ありがと」
 かえではまたもや、ニコリとしてうなずく。うちから見れば、仮面みたいな笑顔だ。
 でも、そのおかげで、この楽しげなふんいきはこわれなかった。
 みんなわざわざきてくれているんだし、重い空気にするわけにもいかない。
 うちはうちで、なにもなかったみたいに、どうにかおしゃべりをつづける。
 お母さんが、ホールケーキを運んできた。
「みんな、あかねとかえでのために、きてくれてありがとう」
「わー、おいしそう!」
 歓声があがる中、お母さんは10本のキャンドルに火をともす。
 パチンと明かりを消すと、みんなが手をたたきながら歌いはじめた。
   ♪ハッピーバースデートゥーユー
    ハッピーバースデートゥーユー
 うちは、その歌を、ぼうっときいていた。
 みんな、いったいだれのことをお祝いしてるんだろうって、思いながら……。
 まるで、知らないだれかの誕生日会に、まぎれこんでしまった気分だ。
   ♪ハッピーバースデーディア、あかねちゃん、かえでくん――
 ――『あかねちゃん』に、もどったんだね!
 歌なんかより、クラスメイトに言われたことが、頭の中をはいずりまわる。
 …………ああ。
 うち、「いつか『あかねちゃん』にもどる」なんて思われてたのか。
 かえでのために、ムリして男っぽくふるまっているなんて、気をつかわれてたのか。
 気づかされちゃったからには、これからは家でも学校でも、『女の子』らしくならなくちゃいけない?
 ……なんだか、お誕生日会っていうより、『自分』との――
「おわかれ会みたい……」
「ん? あかねく……あかねちゃん、なにか言った?」
「ううん、なにも」
「そっか。おめでとう、あかねちゃん! かえでくんも!」
「「ありがとう」」
 今までで、一番サイアクな誕生日だった。

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