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ものがたり

【第1章ためし読み】廣嶋玲子『おっちょこ魔女先生 魔女修業は危険がいっぱい!』

(さい)(しょ)の試験は、()(こう)試験です。四日後にやりますから、それまでにその二人にほうきを作らせ、(くん)(れん)をつませなさい。()()()、わかっていますね? 師匠としてのアドバイスは許されますが、手を()すことはいっさいだめですよ。わたしの()()りネズミが全てを見ていることを(わす)れないことです」

 ()()()に言いのこし、(おお)(いわ)先生はさっと姿(すがた)を消したのでした。

 (おお)(いわ)先生が消えたとたん、いさなと()(ぐさ)、それにおっちょこ先生は()()から立ちあがることができました。

 いさな(たち)は体が自由になったことにまずほっとし、それからおっちょこ先生につめよりました。

「ちょっと、おっちょこ先生! どういうことなの、これ!」

「わたし達が先生の弟子? よくもあんなこと言ってくれましたね!」

「し、しかたないじゃないですか!」

 おっちょこ先生は言いかえしてきました。

「あの時はああ言わないと、師匠が(なっ)(とく)してくれないと思ったんです。それに……二人を弟子と言ったのは、半分本当です」

「え?」

「だって、二人ともなかなかのものですよ。()()はからきしないくせに、魔物をちゃんと捕まえたり、二人だけで(へん)(しん)魔法の(かい)(じょ)(やく)を作ったり。だから、ずっと弟子にしたいなって思っていたんです」

「そんな勝手に決めつけないでよ。あたし、(べつ)に魔女になりたいわけじゃないもん」

「わたしも、魔法には(きょう)()がありますが、魔女になりたいってほどではないです」

 いさなと()(ぐさ)の言葉に、おっちょこ先生はため息をつきました。

「うわあ、今時の子はつまらないですねぇ。わたしが子どものころは、魔女になりたいって(ねが)(ゆめ)のある子がたくさんいたっていうのに。ああ、なげかわしい」

 むかっとしながらも、いさなは言葉をつづけました。

「それに、魔女試験ってテストのことでしょ? あたし達、明日(あした)から夏休みなんだよ? 夏休み中に勉強して、テストを受けるなんて、まっぴら!」

「そんなぎゃんぎゃんわめかないでくださいよ、(まつ)(たに)さん。魔女試験に合格すれば、一人前の魔女として認められるんですよ? 色々と()()()で楽しいことができますよ? そうなったらいいって、思わないんですか?」

 そそのかすようなささやきに、いさなは思わずだまりこみました。

 色々と不思議で楽しいこと? (たと)えば、(だい)(こう)(ぶつ)のスイカやメロンを車くらいのサイズにして、()きなだけ食べられるようになるとか? 学校の勉強ができるように、自分に()(ほう)をかけるとか? ああ、そうなったら、たしかにすてきかも。

 考えこむいさなから目をそらし、おっちょこ先生は今度は()(ぐさ)のほうを向きました。

(ゆき)(むら)さん。魔女になれば、もっともっと色々な本を読めますよ。そこらの書店には(ぜっ)(たい)に売っていない、この世に(さつ)しかないような()(ちょう)な書物を読むことができるようになるんです。興味ないですか?」

「……興味はありますね」

「でしょう? なら、魔女()(けん)受けるでしょう? ね? お願い。受けるって言ってくださいよぉ。このままじゃ、わたし、問答()(よう)でぞうきんの刑にされちゃいますよぉ」

(けっ)(きょく)はそれが一番いやってことですね?」

「なんとでも思ってください。ねね、それより、うんと言ってくださいよぉ」

 おがんでくるおっちょこ先生に、()(ぐさ)は小さくため息をついて、いさなの(かた)をつつきました。

「しかたないようだね、いさな。ここはおっちょこ先生のためにも、魔女試験に(ちょう)(せん)してみようよ」

「う、うん。ま、そうだね。魔法が使えるようになるのも、悪くないと思うし」

 ぱっと、おっちょこ先生は目を(かがや)かせました。

「よかった! それじゃやる気になってくれたんですね! すばらしい! あ、もう取り消しはききませんからね。いやだと言いだしても、もうだめですからね」

「そんなこと言わないよ。おっちょこ先生じゃないんだから」

 いさなはべっと(した)を出しました。

 

 こうして、いさなと()(ぐさ)は、魔女試験に挑戦することになったのです。



ためし読みはここまで。いかがでしたか?
『おっちょこ魔女先生 魔女修業は危険がいっぱい!』は11月26日発売予定! ぜひ手に取ってみてくださいね☆


作:廣嶋 玲子 絵:ひらい たかこ

定価
本体920円(税別)
発売日
サイズ
四六判
ISBN
9784041100424

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