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ものがたり

【先行連載】『さよならは、言えない。』ためし読みれんさい! 第6回 誤解(ごかい)された……?


『君のとなりで。』シリーズの高杉六花さんの新シリーズ『さよならは、言えない。』を、ためし読み連載でチェックしよう!


中学1年生になったばかりの心陽(こはる)には、もう一度会いたい、ぜったいにわすれられない人がいて……。
会いたいのに、会えない。伝えたいのに、伝えられない――切なくて苦しいけれど、大切にしたい想いの物語が、はじまります。

何も言えない、何もできなかったころの自分から『変わる』ことをあらためて心に決めて、玲央(れお)に会いにいくことにいた心陽。
はなればなれの間の1年間に、いったい玲央に、何が起こったの……? 



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誤解(ごかい)された……?

 

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 次の日、学校が終わり、部活に行く香奈(かな)を見送ると、私は学校を飛び出した。 

 これから、美咲野(みさきの)病院に行って、玲央(れお)に直接聞くんだ。

 どうして、手紙を返してくれなくなったの?って。 

 

 ――言いたいことを、きちんと言える私になる。

 それは、あの日、玲央を約束したことだから。

 私は、制服のポケットから、玲央からもらったお守りのバッジを取り出した。

 いのるようににぎりしめて、またポケットに戻す。

「よし、行こう」

 意を決して、私は美咲野病院に向かった。

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 ひとりで病院に行くなんて初めてだから、ドキドキする。

 きのうと同じく、玲央の病室のある階に行って、ナースステーションに立ちよった。

 面会の相手の名前には、『青山玲央(あおやまれお)』。面会者の名前は、『山口心陽(やまぐちこはる)』と書く。

 ……どうしよう。緊張してきた。

  長いろうかをゆっくり歩いて、一番奥を目指す。

 特別室にたどりついた私は、ドアの前で、大きく深呼吸した。

 ネームプレートには、やっぱり『青山玲央』の文字。

 昨日は、一瞬しか会えなくて、おたがいおどろいておしまいだったけど。

 ちゃんと会えたら、玲央ならきっと、「久しぶり!」って笑ってくれるよね。

「よし!」

 自分をふるい立たせ、手の中でお守りのバッジをぎゅっとにぎる。

 行け! 私! ノックするんだ!

 意を決して、扉をノックしようとしたその時。

「あれ? 心陽!?」

 となりの大部屋から、車いすに乗った健介(けんすけ)が出てきた。

「あっ。健介……」

 健介は、私の顔を見るなり、ぱぁぁっと目をかがやかせた。

「一人でみまいに来たのか? えっ。マジ!? それって、もしかして……。俺のことが好きだから!?」

「へ!?」

 な、な、なに言ってるの!?

 言っている意味がすぐにはわからなくて、口をぱくぱくさせていると……。

「コホン」

 後ろからせきばらいが聞こえてきた。

「!!」

 振り向くと、そこに立っていたのは、玲央だった。

 うそ!?

 今の健介の言葉、玲央に聞かれた……!?

「あ、奥の部屋の人ですよね? すみません。今どきます」

 そう言って、健介は私の腕をひっぱった。

 私がろうかの真ん前に立っていたから、玲央が病室にもどれなかったんだ。

 でも、私が会いたいのは健介じゃない。玲央なのに!

「あの……」

 私が玲央に話しかけようとする声に、健介の声が重なった。

「すげーうれしいよ。まさか心陽が俺のこと好きなんて」

「えっ!?」

 違うよ! ぜんぜん、まったく違うよ!

 好きとか恋とか、よくわかんないけど、健介のことは友だちとしか思ってないのに!

「あっ、部活のみんなが来た!」

 違うってちゃんと言おうとしてたのに、ろうかの向こうから、野球部の人たちがぞろぞろやってくるのが見えた。

「おーい、みんなー。こっちこっち」

 うわっ! 

 これ以上ここにいたら、野球部の人たちに誤解(ごかい)されちゃう。

 それは、絶対に避(さ)けなきゃ!!

「じゃあ、私は帰るね!」

 私はくるっと回れ右をして、逃げるように早足で歩きだした。

「えっ。心陽!? ちょっと待てよ」

 追いかけてこようとする健介は、そのまま、野球部の人たちにわいわい囲まれている。
 

 私は、振り返りもせずに、ずんずんろうかを歩いた。



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やっと会えたのに

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 最悪だ。玲央に誤解(ごかい)されたかもしれない。

 私が健介のことを好きだって、思われていたらどうしよう。

 なぜかは分からないけど、そう思われるのは絶対にイヤだった。

 ぐちゃぐちゃに混乱したまま、私は病院の中を歩き続けた。

 とにかく、ただ、あの場所から離れたくて、階段をのぼりつづける。

 ついに、階段がとぎれた。

 顔を上げると、屋上に出るドアが見えた。

 そのまま、ドアノブに手をかけて、体重をかけて押し開ける。

 すると、そこは……。

「わぁ……すごい」

 目にとびこんできたのは、色とりどりの春の花。

 病院の屋上は、小さな庭園になっていた。

「マリーゴールドに、パンジーだ」 

 ちょうど1年前に、北海道で、玲央と一緒に花壇(かだん)の手入れをしたことを思い出す。


『雑草抜き、けっこう大変だな。あ、ミミズ』

『ぎゃあ! 私、ミミズ苦手!』

『かむもんじゃないし、そんなにきらわなくてもいいだろ』


 びっくりした私が、思わずしりもちをつくと、玲央はミミズを土に戻したあと、手を差し出して、笑いながら助け起こしてくれた。

 玲央は、教室ではクールだけど、ふたりきりだとよく笑った。

 そんな玲央の笑顔に、いつも元気をもらっていたんだ。

 私にとっては、大切な、宝物のような思い出。

 玲央は、覚えているのかな……。

 ズキン、と胸の痛みを感じながら花壇を見つめていると、後ろからドアが開く音が聞こえた。

「心陽」

 この声……!

 ずっと、聞きたい、会いたいって思っていた、私を呼ぶ声。

 はじかれたように振り向くと、玲央が立っていた。

「……玲央」
 



 

勇気を出して病院に行ったのに、そこで起こったのは、誤解(ごかい)されそうな大ピンチ!?
どうしようもない状況だったけど、玲央は心陽を追いかけて、会いにきてくれた――。
玲央は、心陽にいったい何を話すの? この1年間の間に、玲央に、いったい何があったの!??
続きは本でチェックしてね。

 


『さよならは、言えない。② ずっと続くふたりの未来へ』のためし読み公開中!




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\新シリーズを、先行連載でだれよりも早くおためし読み!/



作:高杉六花  絵:杏堂まい

定価
770円(本体700円+税)
発売日
サイズ
新書判
ISBN
9784046322166

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