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ものがたり

【スペシャルれんさい】『星のカービィ まんぷく、まんまる、グルメフェス!』第3回 大魔女の正体


大人気ゲーム『カービィのグルメフェス』の小説版、『星のカービィ まんぷく、まんまる、グルメフェス!』が、大ボリュームためし読みできちゃうよ!
カービィVSデデデ大王VSメタナイトの、食いしんぼうバトルがはじまります☆(全5回)

◆第3回

大魔女ポーリンが持っていた『魔法のフォーク』の力で、カービィたちは小さくなって、おかしの山の中に入りこんでしまった!?
そのころ、バンダナワドルディたちがどうしていたかというと……?

 

 

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大魔女の正体

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 いっぽう、広場では――。

「デデデ大王様! 大王様、どこですかー!?」

 ワドルディたちが、とつぜん消えてしまったデデデ大王を探して、走り回っていた。

 他にも、とまどった声が、あちこちから上がっていた。

「カービィ! おーい、カービィはどこだ?」

「メタナイト様! メタナイト様は、いずこに!?」

「バーニンレオ! どこ行った? おかしいなあ、たった今まで、ここにいたのに……」

「ナックルジョーもいないぜ。オレの目の前にいたはずなのに」

 バンダナワドルディは、青ざめて言った。

「どういうこと? こんなに何人も、急に消えちゃうなんて!」

 住民たちは、おかしをそっちのけにして、集まって話し合った。

 消えてしまったのは、カービィ、デデデ大王、メタナイト、バーニンレオ、チリー、バウンシー、ナックルジョー、コックカワサキの八人だった。

 そして、ポーリンの使い魔のウェイターハンドも見当たらない。


「どういうことだ……!?」

「みんなは、どこに……?」

 そのとき、バル艦長が、血相(けっそう)を変えてさけんだ。

「大魔女ポーリン! さては、おまえのしわざか!?」

「……え!?」

 住民たちは、ステージの上のポーリンを見た。

 ポーリンは、ぎょっとしたように言った。

「な、なんじゃと? 言いがかりじゃ! わらわは、なにも……」

「おまえ以外に、だれがいるというんだ!」

 バル艦長は、いかりの形相(ぎょうそう)で、ポーリンにつめよった。

「最初から、あやしいヤツだと、ワシのカンが見ぬいていたのだ! おまえは、メタナイト様をねらって、この計画を立てたのだろう!」

「メ、メタナイトなど……知らぬわ……」

 すると、メタナイツたちが気色(けしき)ばんで、ポーリンをとりかこんだ。

「知らないわけがあるか。おまえは、メタナイト様を倒して、自分が銀河最強を名乗るつもりだな!」

「あのウェイターハンドとかいう使い魔に命じて、メタナイト様をどこかへ連れ去ったんだろう!」

「剣ではかなうはずがないから、魔法を使って、ひきょうなまねを!」

「カービィたちは、巻きぞえになっただス。みんなを助けるだス!」

「い、言いがかりじゃー!」

 ポーリンは、あたふたしながらさけんだ。

「わらわは、なにも知らぬ! 本当に、なにもしておらぬ……!」

 そのとき、おかしのテーブルの上を飛び回っていたブロントバートがさけんだ。

「おい、ちょっと待ってくれ! あれ、ひょっとして、カービィたちじゃないか!?」

「え!?」

 バンダナワドルディたちは、ブロントバートに駆けよった。

「見つかったの!? カービィは、どこ……!?」

「山もりおかしの中だ!」

 ブロントバートは、羽でおかしの山を指した。

「……ええ!?」

 バンダナワドルディは、テーブルの上にどっさり盛りつけられたおかしをのぞきこんだ。

 たしかに、おかしの世界の中に、なにかがうごめいていた。

 よくよく見れば――それは、小さく小さくなったカービィたちだった。

「カ……カ……カービィ!? デデデ大王様も……メタナイト様も……!」

 バンダナワドルディは、ぼうぜんとした。

 十分の一くらいにちぢんでしまった八人が、おかしの世界で、右往左往(うおうさおう)している。

 なにかさけんでいる様子だが、その声は、バンダナワドルディたちには聞こえなかった。

 カービィたちのそばには、二つの白い手がうかんでいた。ポーリンの使い魔、ウェイターハンドだ。カービィたちと同じように、ちぢんでいるが、もともとが大きいので、目立っている。

 信じられない光景を見て、メタナイツたちはさけんだ。

「な、な、なんというおそろしい魔法を……!」

「大魔女ポーリン! メタナイト様たちをもとにもどせ!」

「さもなくば、たたき切るぞ!」

 メタナイツたちにかこまれて、ポーリンはまっさおになった。

「わわわわわ……!」

「さあ! 早く魔法をとけ!」

「し、知らぬ……わらわは……本当に、なにも……!」

 ポーリンは、ヘナヘナとすわりこんで、顔をおおった。

 そして、これまでの威厳(いげん)のある声とは、まったく別人のような情けない声でさけんだ。

「うわあああああん! ごめんなさい、ごめんなさい! でも、ほんとに知らないの! あたし、なんにもしてないの!」

「……ええ!?」

 とつぜんの変化に、メタナイツたちも、住民たちも、たじろいだ。

 バンダナワドルディが言った。

「ど、どういうことですか? 大魔女ポーリン様……」

 すると、ポーリンは泣きじゃくりながら言った。

「うぇっ……えええーん……! あ、あたし、大魔女なんかじゃないの。ほんとは、魔女試験に落ち続けの、落ちこぼれ魔女なんだ……」

 バンダナワドルディたちは、目を見開いた。

「え……えええええ!?」

「ウソついて、ごめんなさい。まさか、こんなことになっちゃうなんて……」

 ポーリンは、あふれる涙をぬぐって、ブルブルふるえている。

 さっきまで、大魔女の威厳(いげん)を見せつけていたとは、とても思えない。

 バル艦長が、ポーリンをどなりつけた。

「どういうことだ!? 落ちこぼれ魔女だと!? 落ちこぼれ魔女が、なぜメタナイト様をねらったのだ!? きさま、説明しろー!」

「ちょっと、だまっててください、バル艦長」

 アックスナイトが、冷静にたしなめた。

 ジャベリンナイトが、うなずいた。

「どうやら、事情がありそうです。魔女の話を聞きましょう」

「う……!」

 バル艦長は言い返そうとしたが、メタナイツたちのほうが正しいのは明らかなので、しかたなく口をつぐんだ。

 ポーリンは、うつむいたまま、話し始めた。

「あの……あのね。あたしは、魔女一族の末っ子なの。お母さまも、お姉さまも、みんな一流魔女ぞろい。中でも、おばあさまは、銀河最高のパティシエ魔女と呼ばれた、すごい方なんだ」

「あ、聞いたことがあるだス」

 メイスナイトが言った。

「むかしむかし、最高においしいおかしで、みんなをしあわせにした、伝説のパティシエ魔女がいたんだス」

「うん。それが、あたしのおばあさまなんだ。あたしは、そんなおばあさまにあこがれて、一流パティシエ魔女になるために、魔女学園に入学したんだけど……」

 ポーリンは、やっと顔を上げた。

 涙でべしょべしょにぬれたせいで、濃いおけしょうがはげ落ちている。すがおは、意外にも、おさなかった。

「あたしは、小さいころからおかし作りが大好きで、魔法のおけいこをサボって、おかしばっかり作ってたんだ。そのせいで、魔法はぜんぜん上達(じょうたつ)しなくて、魔女学園の試験は落第(らくだい)続き。このままじゃ、退学させられちゃうんだ。ものすごくあせっていた、ある日……ふしぎなフォークをひろったの」

 バンダナワドルディがたずねた。

「フォークって、ポーリンさんが魔法を使うときに手にしていた、あれですか?」

「うん。あれはドリームフォークっていって、魔女界じゃ伝説のアイテムなんだよ。とにかくすごい魔力をひめていて、どんな願いごともかなえてくれるって言われてるの。あたしは、たまたま、さんぽ中に見つけちゃったんだけど……この出会いは運命だと思って、利用することにしたの」

「利用……?」

「うん。魔女学園の試験に合格するためには、魔法でだれかをしあわせにしなければいけないんだ。あたしの夢はパティシエ魔女だから、魔法のおかしでだれかをしあわせにしたい。それで、いろいろ調べてみたら、ポップスターっていう星に、カービィくんやデデデ大王っていう、とんでもない食いしんぼうがいるってことがわかったの」

「……なるほど」

 バンダナワドルディは、話を察して、うなずいた。

「魔法のおかしで、大王様やカービィをしあわせにし、試験に合格しようと考えたんですね」

「うん……それだけじゃなく、グルメフェスを開いて、たくさんの住民をしあわせにすれば、おばあさまみたいになれると思って……」

 ポーリンは、うなだれた。

 バル艦長が、けわしい声で言った。

「だったら、最初から、そう言えばよかろう。なんで、おとなっぽいおけしょうなんかして、大魔女ぶっていたんだ?」

 ポーリンは、しょんぼりして答えた。

「だって……すがおのままじゃ、どこから見ても落ちこぼれ魔女だし……大魔女っぽくしなきゃ、話を聞いてもらえないと思ったから……」

 バンダナワドルディが言った。

「お話はわかりました。でも、どうしてデデデ大王様やカービィたちを小さくしてしまったんですか? みんなをしあわせにするはずじゃなかったんですか?」

 すると、ポーリンは、涙をふいて顔を上げた。

「みんなを小さくしたのは、あたしじゃないんだ」

「……え?」

「こんなことができるのは、ドリームフォークしかいないよ。カービィくんたちって、ものすごく食いしんぼうなんでしょ? たぶん、『もっと大きなおかしが食べたいなあ』って願ったんだと思う。だから、ドリームフォークが、そのお願いをかなえちゃったんだよ」

「ドリームフォーク……え……まさか!?」

 バンダナワドルディは、ハッとした。

「カービィが使っていたあのフォークが、ドリームフォークだったんですか!?」

「うん。あたしが、うっかり落っことしちゃったのを、カービィくんがひろったんだと思う……」

 バル艦長が、また、頭に血をのぼらせてさけんだ。

「そんなだいじなものを、うっかり落とすなァァァー!」

 アックスナイトが言った。

「ごもっともですが、静かにしていてください、バル艦長」

「う……うむ。すまん」

 バル艦長はだまりこんだ。

 バンダナワドルディが言った。

「そうか……おかしを大きくするかわりに、大王様たちを小さくしたんですね。からだが十分の一にちぢめば、おかしが十倍になったのと同じことですから」

「うん……そういうこと」

 トライデントナイトが言った。

「で、そのフォークは、今どこにあるんだ? フォークに言い聞かせて、魔法をといてもらわなくては」

「たぶん、カービィくんの近くにあると思うけど……」

 すると、ブロントバートが飛び回りながら言った。

「あった! あそこに落ちてるぜ! 待ってろ、オレが、ひろって来てやる……」

 山もりおかしの中に飛びこもうとするブロントバートを、ポーリンがあわてて止めた。

「ストップ! うかつに入っちゃダメだよ。今、この山もりおかしには、強力な魔法がかかってるんだから。勝手に飛びこんだら、あなたまで出られなくなる。それどころか、みんな永遠に出てこられなくなっちゃうかもしれない」

「なんだって……!?」

 メタナイツたちは、息をのんだ。

「だったら、どうすればいいんだ!?」

「どうすれば、メタナイト様たちを助けられるんだ!?」

 ポーリンは、真剣な表情で答えた。

「あたしの使い魔、ウェイターハンドを呼び出してみる。あいつは、ドリームフォークが作った魔法生物だから、おかしの世界とこっちの世界を自由に行き来できるはず」

 ポーリンは目を閉じ、すーっと息をすいこんで、静かに呼びかけた。

「ウェイターハンド、ウェイターハンド。こちらにもどってきて。たいへんなことになってるの。どうか、もどってきて……!」

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 そのころ、ウェイターハンドは、おかしの世界の中で、八人に向かってきどった声で話していた。

「それでは、選ばれし八人のみなさまに、グルメフェスのルールをご説明いたしましょう。まずはじめに……」

 と、その瞬間。

 ウェイターハンドの姿が、パッとかき消えた。

 カービィたちは、びっくりした。

「あれ? 消えちゃった」

「どこへ行ったんだ、あいつ」

「グルメフェスはどうなるの?」

 八人は、巨大おかしの間を探し回ったが、ウェイターハンドは見つからなかった。

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「あ、もどって来てくれたのね、ウェイターハンド!」

 ポーリンは、ホッとした声を上げた。

 広場に呼びもどされたウェイターハンドは、ふきげんそうに言った。

「なんですか、ポーリンさん。急に呼んだりして。わたくしは、グルメフェスでいそがしいのです」

「それどころじゃないよ。ドリームフォークの魔法で、カービィくんたちが小さくされちゃ
ったの! 魔法を、今すぐとこう。カービィくんたちを、元にもどしてあげなきゃ……」


「なんですって? 元にもどす? それでは、グルメフェスが開催(かいさい)できないではありませんか」

 ポーリンは首を振った。

「そんなことない。みんなが元にもどって、楽しくおかしを食べてくれれば、それでグルメフェスは成功だから……」

「イヤでーす!」

 ウェイターハンドは、えらそうに、そっくり返った。

 ポーリンは、目を見開いた。

「なに言ってるのよ。イヤって……」

「みなさんが楽しくおかしを食べているのを、わたくしはただ見ているだけなんて、イヤでーす! グルメフェスは、もっと熱く、もっともりあがらなくては!」

 ウェイターハンドは、こぶしをにぎりしめた。

 ポーリンは、あせってさけんだ。

「ちょっと、ウェイターハンド! あたしに逆らう気? あんたは、あたしの使い魔でしょうが!」

「ちがいまーす。わたくしは、ドリームフォーク様の使い魔。ポーリンさんには、ちょっとの間、かしだされていただけです」

「ええ……!? そんな……」

「そもそも、あなたみたいな落ちこぼれ魔女が、わたくしを使いこなせるはずがないのです。わたくしは自由です。わたくしの、わたくしによる、わたくしのためのグルメフェスを、はなばなしく開催(かいさい)することに決めたのです。じゃまをしないでくださいよ」

「ちょ……ちょっと……まってよ……」

 あまりのことに、ポーリンは、ふらふらした。

「グルメフェスは、あたしが、みんなをおかしでしあわせにするイベントなんだよ。あんたのものじゃない……」

「ポーリンさんの計画なんかより、わたくしが考えたグルメフェスのほうが、百倍もスリリングで楽しいのでーす。そこで、指をくわえて見てなさい。では、さらばです!」

 ウェイターハンドのすがたが、パッと消えた。

「あー! まちなさいよ! ちょっと、まってってば!」

 ポーリンがさけんだが、もうおそい。

 バンダナワドルディも、ワドルディ隊も、メタナイツたちも、ぼうぜんとしてポーリンを見つめていた。

 ポーリンは、がっくりうなだれた。

「あいつめぇぇ……あたしをうらぎって、勝手なことを……!」

 

     


ポーリンは大魔女ではなかったし、ウェイターハンドはポーリンを無視してグルメフェスを始めてしまった!
はたして、小さくなって、おかしの中にとじこめられたカービィたちの運命は……!?
次回「めざせ、グルメ王!」をおたのしみに!



『星のカービィ まんぷく、まんまる、グルメフェス!』れんさい第4回(12月9日更新予定)に続く


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