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ものがたり

【スペシャルれんさい】『星のカービィ まんぷく、まんまる、グルメフェス!』第1回 大魔女がやってきた


大人気ゲーム『カービィのグルメフェス』の小説版、『星のカービィ まんぷく、まんまる、グルメフェス!』が、大ボリュームためし読みできちゃうよ!
カービィVSデデデ大王VSメタナイトの、食いしんぼうバトルがはじまります☆(全5回)

◆第1回

バンダナワドルディは、しっかりものの働きもので、おかし作りも大とくい!
今日も、デデデ大王やカービィによろこんでもらおうと、おいしいタルトを作っているようです♪

 

 

☆゜・。。・゜゜・。。・゜☆゜・。。・゜゜・。。・

 

大魔女がやってきた

 

☆゜・。。・゜゜・。。・゜☆゜・。。・゜゜・。。・

 

 あくびが出るほど平和な、いつものプププランドの昼下がり。

 

 丘の上の木かげで昼寝をしているカービィのもとへ、バンダナワドルディがやって来た。

 

「おーい、カービィ! 起きて! おやつだよ!」

 

 すやすやとねむっていたカービィだが、「おやつ」の一言で飛び起きた。

 

「おやつ!? なに!?」

 

「はい、これ」

 

 バンダナワドルディはカービィのとなりにすわって、持っていた箱を差し出した。

 

 カービィが開けてみると、あまい香りがただよい出した。

 

「わあ! おいしそう!」

 

「リンゴとクルミをたっぷり使ったタルトなんだ。何度も作ってるんだけど、今日のは特別においしいって、大王様がほめてくださったんだよ。だから、カービィにも食べてもらいたいと思って」

 

「わあい! ありがとう!」

 

 ひとくち食べたとたん、カービィの顔がパァァッとかがやいた。

 

「んんんんん! おいしい――!」

 

「よかった!」

 

「すごいよ、ワドルディ! これまでに食べたケーキの中で、いちばんおいしい!」

 

「リンゴの切り方とか、オーブンの温度とか、いろいろ工夫していたんだけど、やっと最高のレシピができたんだ」

 

 カービィは、タルトを半分に割って、片方をバンダナワドルディに差し出した。

 

「はい。ワドルディも、どうぞ!」

 

「え? ぼくはいいよ。だって、ぼくが作ったんだもん。何度も試食したし……」

 

「外で食べると、おいしいよ。それに、二人でいっしょに食べると、もっとおいしくなるよ」

 

 それを聞いて、バンダナワドルディは、にっこりした。

 

「そうだね! ありがとう、カービィ。じゃ、いっしょに食べよう」

 

 二人は、楽しくおしゃべりしながら、半分このタルトを食べた。

 

 食べ終わると、バンダナワドルディは、ぴょこりと立ち上がった。

 

「じゃ、ぼく、帰るね」

 

「え、もう? おしごと、終わりじゃないの?」

 

「まだなんだ。ワドルディ隊のみんなにまかせて、ちょっとだけぬけ出してきたんだよ」

 

 以前はたよりなかったワドルディ隊だが、最近は、どんな仕事もきちんとこなせるようになってきた。

 

 だから、バンダナワドルディは、こうしてちょっと息ぬきをすることができるのだ。

 

「ありがとう、ワドルディ。ほんとに、すごく、すごく、すごーく、おいしかったよ!」

 

「また作るね。じゃあね、カービィ」

 

 バンダナワドルディは手を振って、お城にもどっていった。

 

☆゜・。。・゜゜・。。・゜☆゜・。。・゜゜・。。・

 

 バンダナワドルディは、そうじ、せんたく、アイロンがけなど、どんな仕事でも好きだが、中でもおかし作りが最高に好きだ。

 

 デデデ大王やカービィの、とびきりの笑顔が見られるから。

 

「よろこんでもらえて、よかった。明日は、もっとおいしいケーキを考えよう!」

 

 そんなことを思いながらデデデ城に近づいて行くと――。

 

 門の前に、見知らぬ人物がたたずんでいた。

 

 黒ずくめのドレスに、星のもようをちりばめ、大きなとんがりぼうしをかぶっている。

 

 バンダナワドルディは、ふしぎに思って、声をかけた。

 

「あの……なにか、ご用ですか?」

 

 すると、その人物は振り返り、バンダナワドルディを見下ろした。

 

 とても美しい顔立ちの女性だった。けれど、表情はとても冷たい。

 

「そなたは?」

 

 声も、やはり冷たく、感情がこもっていなかった。


 バンダナワドルディは少しこわくなったが、とつぜんの来客の前で、ビクビクしてはいられない。

 

 そこで、せいいっぱい声を張り上げて、答えた。

 

「ぼくは、デデデ大王様の部下のワドルディです。あなたは、どなたですか?」

 

「わらわは、銀河一の大魔女ポーリン」

 

 しゃべる間も、ほとんど表情が動かず、しんぴ的だ。

 

「デデデ大王様に、どんなご用件ですか?」

 

「ここでは言えぬ。大王に会って、直接、話したい」

 

「すみません。大王様は、お約束のないお客様とは、会わないことになっているんです」

 

 デデデ城には、約束もなく押しかけてくる客がたくさんいる。たいていは、大王を利用しようとする、腹黒い連中だ。

 

 だから、バンダナワドルディは、とつぜんの来客には、なるべくきびしい態度を取ることにしていた。

 

 すると、大魔女ポーリンは、フッと笑った。

 

「大王へのプレゼントを用意してきたのじゃ。受け取っていただきたい」

 

「プレゼント? でも……」

 

「わらわのプレゼントは、これじゃ」

 

 大魔女は、どこからかフォークを取り出して、ひょいっと振った。

 

 すると、バンダナワドルディの目の前に、山のようなおかしがあらわれた。

 

 シュークリーム、クッキー、スイートポテト、ドーナツ、バウムクーヘン……見上げてしまうほど積み上げられたおかしから、ほわほわとあまい香りがただよってくる。

 

 バンダナワドルディは、目をまるくした。

 

「ええ!? いったい、どこから!?」

 

「どうであろう? 気に入らないなら、しかたない。帰ることにするが」

 

「ちょ、ちょっと待ってください!」

 

 バンダナワドルディは、あわてた。

 

 こんなにすごいプレゼントを用意してきた客を、追い返したりしたら、デデデ大王から大目玉をくらってしまう。

 

 バンダナワドルディは、大急ぎで、デデデ大王のひるね室に走っていった。

 

☆゜・。。・゜゜・。。・゜☆゜・。。・゜゜・。。・

 

「ふぁぁ……? 客だと? そんなもの、知らんわい。追い返せ……ふぁぁぁぁぁ」

 

 大あくびをして、寝直そうとしたデデデ大王だったが……。

 

「でも、大王様にプレゼントを持ってきてくださったんです。山ほどのおかしです!」

 

「山……山……山ほどの……なんだとぉぉ!?

 

 大王は飛び起き、カッと目を見開いた。

 

「山ほどのおかし!? 本当か!?」

 

「はい! とにかく、すごいんです。大魔女さんがフォークを振っただけで、食べきれないほどのクッキーやシュークリームがあらわれて……」

 

「ばかもの! このオレ様に、食べきれないおかしなどない! すべて食らいつくして見せるぞ!」

 

「は、はい。大王様に、なにかお話があるそう……」

 

「うひょぉぉぉ! シュークリーム! クッキー!」

 

 バンダナワドルディが話し終える前に、大王は大よろこびでひるね室を飛び出し、階段を駆け下りた。

 

☆゜・。。・゜゜・。。・゜☆゜・。。・゜゜・。。・

 

 大魔女ポーリンは、さっそく応接室(おうせつしつ)に通された。

 

 山ほどのおかしは、ワドルディ隊が、せっせと食料庫に運びこんでいる。何往復しても、なかなか運び終わらないほどの量だ。

 

「いいにおいがする! こっちだな!」

 

 デデデ大王はおかしのにおいにつられて、食料庫に飛びこみそうになったが、バンダナワドルディが必死に止めた。

 

「大王様、お客様は応接室(おうせつしつ)です! こっちじゃありません!」

 

「どけどけ! 山ほどのおかしが、オレ様を待っているのだ!」

 

「大魔女様をお待たせしては、いけません。まちくたびれて帰ってしまったら、たいへんです!」

 

 バンダナワドルディの言葉を聞いて、デデデ大王はやっと冷静になった。

 

「むむむ……たしかに、そうか。ワドルディ、全力で大魔女どのをもてなせ。デデデ印の最高級のお茶を、デデデ印の最高級のティーカップでお出しするのだ!」

 

「かしこまりました!」

 

 デデデ大王は急いで応接室(おうせつしつ)に向かった。

 

 バンダナワドルディが最高級のお茶を運んでいくと、大魔女は目を細めて笑った。

 

「フフ……ていねいな、もてなしじゃな。感謝するぞ」

 

「で、あんたは、いったい何者なんだ?」

 

 デデデ大王は、身を乗り出してたずねた。

 

「わらわは、銀河一の大魔女ポーリン。おかしを愛し、おかしをきわめた、天才パティシエ魔女じゃ」

 

「パティシエというのは、おかし作り職人のことだな。あんたが、自分でおかしを作るのか?」

 

「うむ、もちろん、魔法でな」

 

 ポーリンは、ふんぞり返った。

 

「大魔女たるもの、自分の手を使うことなどないのじゃ。すべて、魔法で作るのじゃ」

 

「では、あの山ほどのおかしもぜんぶ魔法で……?」

 

「当然じゃ。わらわほどの大魔女になれば、あのくらいのおかし、フォークをひと振りしただけでパッと作ることができるのじゃ」

 

 ポーリンは、フォークを取り出して、ひと振りした。

 

 すると、ポンッと音がして、テーブルの上にチョコレートケーキが出現した。

 

 濃厚(のうこう)なチョコレートがつやつやと光る、最高においしそうなケーキだ。

 

「うぉぉぉぉ……!?」

 

 デデデ大王は、思わずよだれをたらしそうになった。

 

 ポーリンは、手をひらひらと動かした。

 

「ま、このくらいは、朝メシ前じゃ。ゆっくり、味わうがよい」

 

「す、すごい……!」

 

「で、わらわがプププランドをおとずれた用件じゃが」

 

「うむ?」

 

 デデデ大王は、さっそくケーキにかぶりつき、ソファの上で飛び上がった。

 

ううううううまーい! うまいぞ! ほんの一瞬でこんなケーキを作ってしまうとは! あんたは、おそるべき天才だな!」

 

「フフフ……わらわは、この地で、グルメフェスを開催したいと思うのじゃ」

 

 デデデ大王は、あっというまにケーキを平らげて、たずねた。

 

「グルメフェス? なんだ、それは?」

 

「文字どおり、グルメのお祭りじゃ。グルメといっても、ただのごちそうではないぞ。わらわの大魔法で作り上げたきゅうきょくのおかしを、プププランドのみなに味わってもらいたいのじゃ」

 

「みなに? いや、その必要はない!」

 

 デデデ大王は、首を振った。

 

「あんたは、オレ様のためだけにおかしを作ってくれればいい。こんなにうまいケーキを、みんなに食わせるなんて、もったいないわい」

 

「そうはいかぬ」

 

 ポーリンは、冷たい目でデデデ大王を見た。

 

「一人でも多くの者をしあわせにすることが、魔女の使命なのじゃ。わらわは、その使命を果たすために、この地にやって来たのじゃ。そなた一人を満足させるためではない」

 

「しかし……」

 

「わらわのおかしは、なるべく多くの者に食べてもらいたいのじゃ。それができぬなら、もう、この星に用はない。さらばじゃ」

 

 ポーリンは、今にも立ち上がりそうなそぶりを見せた。

 

 デデデ大王は、あわてて引き止めた。

 

「まってくれ! わかった、あんたの望むとおりにしよう。住民たちを集めて、グルメフェスをやるぞ!」

 

「フフ……それでよい」

 

 ポーリンは、満足げにほほえんだ。

 

「では、準備はすべて、わらわにまかせてもらいたい。デデデ大王は、住民たちに、グルメフェスのことを知らせてほしい」

 

「うむ、まかせろ! 全住民に知らせるぞ!」

 

 デデデ大王と大魔女ポーリンは、がっちりとあくしゅをかわした。

 

☆゜・。。・゜゜・。。・゜☆゜・。。・゜゜・。。・

 

 ポーリンが帰ったあと、バンダナワドルディはニコニコして言った。

 

「みんなをしあわせにしたいなんて、りっぱですね。ポーリン様って、最初はちょっと怖いと思ったけど、本当はやさしい方なんですね」

 

「フン……あんなにうまいケーキを、みんなに食わせるなんて……もったいない……」

 

 大王はブツブツ言った。

 

 バンダナワドルディはたずねた。

 

「ポーリン様のチョコレートケーキ、おいしかったですか?」

 

「もちろんだ! 甘くてちょっぴり苦いチョコレートと、しっとりなめらかな生地(きじ)が何重(なんじゅう)にもおりかさなり、そこに、細かくくだいたナッツが加わって……んあああああ!

 

 デデデ大王は絶品(ぜっぴん)のチョコレートケーキを思い出して、ソファの上でのたうち回った。

 

「そうだ、食料庫には、あいつが持ってきたおかしが山ほどあったな。こうしちゃおれん!」

 

 大王は、食料庫に向かって駆け出した。

 

 食料庫のとびらを開けたとたん、ほわほわとあまい香りがただよい出した。

 

 デデデ大王は、舌なめずりをした。

 

「たまらんにおいだ! どれどれ……」

 

 デデデ大王は、シュークリームをひとつつまんで、口の中に放りこんだ。

 

 とたんに、大王は、興奮(こうふん)のあまり飛び上がった。

 

「う……うまーい! なんという、うまさなのだ!」

 

 大王は手当たりしだいにおかしを食べようとして、ふとバンダナワドルディを見た。

 

 バンダナワドルディは、目をキラキラさせて、おかしの山を見回している。

 

 大王は、食べようとしていたおかしを、バンダナワドルディに差し出した。

 

「おまえも食ってみろ」

 

「え? いいんですか?」

 

「オレ様の部下たる者、グルメでなくてはならんからな。超一流パティシエ魔女のおかしぐらい、味わっておけ」

 

「はい! ありがとうございます!」

 

「おまえらもだ」

 

 デデデ大王は、カベぎわに整列しているワドルディ隊を見た。

 

「ぼくらも!? わーい、ありがとうございます、大王様!」

 

 ワドルディ隊は、大よろこび。むちゅうで、おかしに飛びついた。

 

 たちまち、大歓声(だいかんせい)が上がった。

 

「うわあああ! このクッキー、最高です! なんて、おいしいんだろう!」

 

「ドーナツも、フワフワで、おいしい! 何個でもペロッと食べられちゃう!」

 

 みんなの、とろけそうな笑顔を見て、デデデ大王は豪快に笑った。

 

「ワハハハ! おまえたち、わすれるなよ。ポーリンは、オレ様のために、このおかしを持ってきたのだ。つまり、偉大(いだい)なオレ様へのみつぎものということだ」

 

「はい! さすがです、大王様!」

 

「グルメフェスのことを、プププランドの連中にふれまわってこい。オレ様のおかげだということを、ちゃんと伝えるのだぞ!」

 

「はーい!」

 

 おいしいおかしでまんぷくになったワドルディたちは、張り切って、城の外へ飛び出していった。

 

 

     


銀河一の大魔女・ポーリンの力で、おいしいおかしがいっぱいの、グルメフェスが始まります! 
おいしいものが大好きなプププランドの住民がたくさん集まって、まさかの大そうどうが発生!?
次回「みんなでグルメフェス!」をおたのしみに!



『星のカービィ まんぷく、まんまる、グルメフェス!』れんさい第2回(11月25日更新予定)に続く


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