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【先行ためし読み!】最新刊『絶体絶命ゲーム17』 第1回


最悪の地【奈落】から生きて帰ったことで、さらに伝説的存在になった春馬と未奈。
けれど、そんなころ渋神中では、なんと春馬たちの学年である2年生の全員が、1年生の奴隷にされて、ひどい目にあっていたのだ――!
「春馬が帰ればなんとかしてくれる!」と待っていたみんなのために、春馬はふたたびゲームをすることに…!!
この立場をひっくりかえすには、もう一度、絶体絶命ゲームやるしかない!? ーーそして、春馬と未奈の関係にも変化が……。
読みどころいっぱいの絶体絶命ゲーム最新巻をためし読み!(全3回・水曜日更新、公開は2026年5月6日(水)まで)


 

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0.羽田空港の意外な再会?

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 羽田空港第1ターミナル。

 飛行機をおりた武藤春馬(むとう・はるま)は、動く歩道に乗って、到着口にむかっていた。

 最悪の地『奈落』から無事に帰ってこられた。


 けれど、その表情は、くもっている。

 ようやく再会できた親友の上山秀介(うえやま・しゅうすけ)と、また離ればなれになってしまったからだ。

 結局、『奈落』にいく前と、なにもかわらない。


「……ぼくは、なにをしているんだ?」


 つぶやいた春馬に、前にいた滝沢未奈(たきざわ・みな)が、あきれ顔でふりかえる。

「秀介を連れもどせなかったことを、まだくやんでいるの?」


「未奈に迷惑をかけてまで、『奈落』へいったのに……」

「あのね、全部が自分の責任だと思わないで。秀介には、秀介の意思があるのよ。あそこから、抜けだしたくなったら、自分でなんとかするでしょう」

「そうだけど……」

「そんなことより、ようやく東京に帰ってきたんだから、おいしいものを食べましょう。羽田空港のレストランって、充実してるのよ。お寿司、焼き肉、ハンバーガー、それにスイーツもたくさんあるのよ。そうよね栄太郎」

 未奈が、わざと明るい口調で言った。


「……えっ、えっ、なに、なに、なに!?」

 うしろにいたマッシュルームヘアの小柄な男子、花宮栄太郎(はなみや・えいたろう)はなぜか動揺している。

「どうしたの? 考えごとでもしていた?」

「い、いや、べつに……」

 顔を上げた栄太郎を見て、未奈が首をかしげる。


「顔色がわるいけど、飛行機によった?」

「……な、な、なんでもないよ」

 栄太郎は動く歩道をおりると、不自然に、そそくさと歩いていく。

「そういえば、栄太郎。機内でも元気がなかったな。飛行機、苦手だったのかな?」

 春馬は、栄太郎を追っていく。

「ちょっと、待って」

 未奈もそのあとを追うと、うしろにいた金色のストレートヘアの永瀬(ながせ)メイサもつづく。


「栄太郎、待ってくれ……」

 春馬に言われて、やっと栄太郎は、立ちどまってふりむいた。

 深刻そうな顔をしている。

「栄太郎、どうしたんだ?」

「悩みがあるなら、早いうちに、話したほうがいいんじゃない」

 メイサが、おだやかな口調で言った。

「……う、うん。そうだよね。あの、ぼく……」

 栄太郎が覚悟を決めて、話しだそうとしたとき、


「あれ、なんで、いるんだよ……」

 三国亜久斗(みくに・あくと)の、不機嫌そうな声が聞こえてきた。

 春馬と未奈が目をむけると、到着口のドアの前に亜久斗がいる。

 ふわふわのボブヘアの女子が、亜久斗にかけよる。


「……あれ? あの娘、どこかで見たことあるような?」

 春馬が言うと、未奈が思いだす。

「あぁ、あのときよ。絶叫列車の『絶体絶命ゲーム』に参加していた……」

 そこまで言われて、春馬も思いだした。


「「早川鈴香(はやかわ・すずか)!」」


 春馬と未奈が、口をそろえて言った。

 その女子は、1年半前の年末に、絶叫列車でおこなわれた『絶体絶命ゲーム』に参加していた早川鈴香だ。

「どうして彼女が、ここにいるの?」

 未奈の質問に、春馬は「さぁ……」と首をひねる。


「危険なことはしないって、約束したわよね」

 鈴香が、亜久斗にむかって言った。

「……関係ないだろう」

「アイさんから聞いたわよ。……恵(めぐみ)の治療費のために、『奈落』へいってくれたんでしょう?」


「それよりも、春馬と未奈がいるぞ。あいさつくらい、しろよ」

「……えっ?」

 鈴香はようやく、春馬と未奈に気づいた。

「こんにちは」

 未奈が言うと、鈴香は急にはずかしくなったようで顔を赤くする。

「こ、こんにちは……。未奈、春馬」

「元気そうだね」

 色々と聞きたいことはあるが、春馬は当たりさわりのないあいさつをした。

「う、うん……。春馬と未奈も、元気そうね」

 鈴香が、春馬と未奈と話しているあいだに、亜久斗は人ごみにまぎれて歩いていく。

「あっ、ごめんなさい。……亜久斗、ちょっと待って」

 鈴香は、あわてて亜久斗を追っていってしまう。


「……あの2人、連絡を取りあっていたのね」と未奈。

「そうみたいだな」

「なんか……、いいね」

 未奈は、亜久斗の人間的な一面を見たようで、うれしかった。

「……うん。そうだね」

 春馬も、同じ気持ちだ。


「……亜久斗が『奈落』にきてくれたのは、わたしたちが誘ったからじゃなかったみたいね」

 メイサはそう言って、栄太郎をちらりと見た。

 栄太郎は、心ここにあらずという顔をしている。

「ところで、鈴香さんって、だれなの?」

 メイサが質問すると、春馬が説明する。


 1年半前、鈴香は自殺未遂をした親友にかわって、『絶体絶命ゲーム』に参加した。

 春馬と未奈と亜久斗も、そのゲームに参加していたのだ。

 そして鈴香は、見事に優勝して、願いごとをかなえてもらえた、はずだ……。


 春馬の話を聞いて、メイサは首をかしげた。

「それって、おかしいわ。彼女は身分を偽って、『絶体絶命ゲーム』に参加したんでしょう。それなら、優勝しても、願いはかなえてもらえないんじゃない?」

 メイサの言葉に、未奈ははっとなる。

「たしかに、メイサの言うとおりよ。鈴香は、願いをかなえてもらえてないわ」

「……うん、そうかもしれないな。鈴香の願いごとは、おそらく自殺未遂をした親友のことだ。彼女を転校させるとか、けがの治療とか……」

「さっき鈴香、『恵の治療費のために、奈落へいってくれたんでしょう?』って言ってたわね」

 未奈の言葉に、春馬がうなずく。


「亜久斗が『奈落』にきてくれたのは、鈴香さんのためだったみたいね。……意外とやさしいじゃない」

 メイサはさらっと言うと、シャトルバスの案内板に目をやる。

 羽田空港からは、あちこちの主要なターミナル駅にむかって、シャトルバスが出ている。

「わたしは横浜方面行きに乗るから、ここでお別れね」

 メイサはそう言って、空港ビルを出ていく。


「ぼくたちも帰ろう」

 春馬が、渋谷方面行きのバス停をさがしていると、


「……あの、春馬たちに話があるんだ」


 栄太郎が、思いつめた顔で言った。

「……やっぱり、なにかあるのね」

 未奈が、栄太郎にむきなおる。

「それで、なにがあったんだ?」

 春馬に聞かれると、栄太郎は体をふるわせ、とつぜん、2人にむかって深く頭をさげた。


「……春馬、未奈、ごめんなさい」

「おい、頭なんかさげるなよ。それよりも、なにがあったのか話してくれ」

 頭をあげた栄太郎は、今にも泣きだしそうだ。

「……か、か、隠していたわけじゃないんだ。ただ、まさか、ぼくが『奈落』で、『絶体絶命ゲーム』をやるなんて、考えてもいなかったから、伝えるタイミングがなくて……」

「その話はいいから、なにがあったの?」

 未奈が問うと、栄太郎は落胆したように大きく息をはいた。


「……負けたんだ」

「負けたって、なにに?」と未奈。

「新入生との『絶体絶命ゲーム』だよ。……ぼくたちは、去年、『渋神四星(しぶかみしせい)』と戦っただろう」


 栄太郎に言われて、春馬は去年の入学式を思いだす。

「渋神四星」というのは、去年の3年生で、学校を牛耳(ぎゅうじ)っていたカリスマ4人組だ。

 小学校時代から『絶体絶命ゲーム』で知る人ぞ知る存在だった春馬は、入学前から、四星たちに目をつけられていた。

 未奈が「渋神四星」に誘拐され、春馬と栄太郎、そして偶然、巻きこまれた松山亜沙美(まつやま・あさみ)は、渋神中学の恒例行事だという入学式の『絶体絶命ゲーム』に参加することになった。


「でも、入学式のゲームは、在校生が新入生に仕掛けるものだろう。だから、在校生が実行しなければ、ゲームはないんじゃ……」

 春馬が言うと、栄太郎は首を横にふる。

「在校生は、2年生だけじゃないだろう」

「そうか、仕掛けたのは3年生ね! もしかして、ミッシェル先輩が、なにかしたの?」

 未奈が、不安そうに聞いた。

 ミッシェル先輩とは、3年生の風祭(かざまつり)ミッシェル。

 3月の『絶体絶命ゲーム』で春馬たちが負けた相手だ。


「ぼくは、ゲームをやるつもりはなかったんだ。それなのに……。入学式の朝、ミッシェル先輩がやってきて、新入生相手の『絶体絶命ゲーム』をやるから、2年生も参加してくれって……」

「断ればよかったじゃない」

 未奈が言うと、栄太郎は首を横にふる。

「先輩からの命令を、断れるわけないだろう。それに、ぼくたちは『絶体絶命ゲーム』の学年対抗戦で、ミッシェル先輩たちに負けてるんだよ」


「ごめん、栄太郎。ぼくのせいだ……」

 春馬が、すまなそうに言った。

「そんなことないよ。あのゲームには、ぼくも参加していたんだ。春馬だけの責任じゃない」

 かばいあう春馬と栄太郎に、未奈がいらいらした口調で言う。

「それは、もう終わったことでしょう。それよりも、1年生とは、どういうゲームをしたの?」

「3人対3人の『鬼ごっこ』だ。最初、1年生の3人が逃げて、鬼役の2年生3人がつかまえるんだ。次に、2年生の3人が逃げて、鬼役の1年生3人がつかまえる。どちらが長い間、つかまらずにいられたかで、勝負したんだ」

 栄太郎の話を聞いて、春馬は考えこむ。

 最初に逃げるほうが有利なのか、あとで逃げるほうが有利なのか?

 逃げるのと追うのでは、どっちが体力を使うだろう?

 黙りこんだ春馬に、栄太郎が気まずそうに言う。


「それが……、1年生のリーダーは、あの塩鳥一輝(しおどり・かずき)だったんだ」

「塩鳥って、どこかで聞いたことがあるけど……?」

「商業施設などを経営している塩鳥グループだよ。一輝は、塩鳥グループ会長の孫なんだ」

「塩鳥グループの会長って、『なにごとも一番にならないと意味がない』が口癖の有名な人でしょう?」と、未奈。

「そうなんだ。孫には一番輝くようにという願いをこめて、一輝と命名したらしいよ」

 栄太郎が説明した。

「おじいちゃんのプレッシャーすごそうだな。……それで、ほかは、どういう生徒なんだ?」

「体の大きな男子と、ギャル風のメイクをした女子だった。ぼくたちが油断したのもあるけど……。でも、負けた原因は、ほかにあると思うんだ」

「どういうこと?」と未奈。


「彼ら、逃げる側だったときはふつうだったんだ。……それが、鬼になったら、3人が完ぺきなフォーメーションで、あっという間に、ぼくたちはつかまってしまったんだ」

「やるのが『鬼ごっこ』だってことを、前もって知っていたのか……?」

「3年生から知らされていたんじゃないかな……」

 栄太郎が、弱々しく言った。

「おそらく、そうだろうな。勝つ作戦も、伝授されていたかもしれない」

「あたしたちがいない間に、勝手なことを……」

 未奈が、くやしそうに言った。

「栄太郎、それで『絶体絶命ゲーム』に負けた罰はどういうものだ?」

 春馬の問いに、栄太郎は言葉をつまらせながら答える。


「……2年生は……、1年生の奴隷になったんだ」

「はぁぁぁぁ!?」

 未奈が、まわりの人がふりかえるような大きな声をあげた。


「……で、でも、ぼくも……、抵抗したんだ。……そ、そして、約束させた」

 話をする栄太郎の、様子がおかしい。

「約束って、どういうこと?」

 未奈が、首をかしげて聞いた。

「ゲームに、春馬と未奈がいなかっただろう。……だ、だから、2人が帰ってきたら、1年生と再戦することを……」


 栄太郎のひたいに汗がういて、目もうつろだ。

「おい、どうしたんだ?」

 春馬が心配して聞くが、栄太郎はかまわずに話をつづける。


「……だ、だ、だから……、春馬と未奈が……もどったら、また『絶体絶命ゲーム』を……

 栄太郎の異変に気づいた春馬は、彼のひたいにやさしくふれる。

「すごい熱だ。救急車を呼んでもらおう」


第2回につづく(2月25日(水)更新予定)



書籍情報


作: 藤 ダリオ カバー絵: さいね 挿絵: チヨ丸

定価
858円(本体780円+税)
発売日
サイズ
新書判
ISBN
9784046323743

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