ものがたり 2022.12.16

【スペシャルれんさい】『星のカービィ　まんぷく、まんまる、グルメフェス！』第５回バンダナワドルディの作戦

大人気ゲーム『カービィのグルメフェス』の小説版、『星のカービィまんぷく、まんまる、グルメフェス！』が、大ボリュームためし読みできちゃうよ！
カービィVSデデデ大王VSメタナイトの、食いしんぼうバトルがはじまります☆（全５回）

◆第５回

グルメ王の座をかけて、グルメフェスを始めたカービィたち。
でも、ウェイターハンドが始めた『グルメフェス』は、じつはとっても大変な、大事件だったみたいで……！？　カービィたちのピンチに、バンダナワドルディたちが動きだします！

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バンダナワドルディの作戦

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　いっぽう、中央広場では――。

「うう……ううう……もうダメだ……おしまいだぁぁぁ！」

　ポーリンは、頭をかかえて、地面につっぷしてしまった。

　バンダナワドルディが、ポーリンをゆさぶって、はげました。

「しっかりしてください、ポーリンさん！　どうなってるんですか？　ウェイターハンドがうらぎったって……？」

「聞いてたでしょ？　ウェイターハンドって、ものすごいおちょうし者のお祭り好き、おまけにバトル好きなの。あいつ、あたしの元をはなれて、自分勝手にグルメフェスを始めようとしてるんだ。カービィくんたちを、その参加者にするつもりなんだよー！」

「そんなまねは、ゆるさんぞ！」

　バル艦長が言った。

「もう一度、ウェイターハンドを呼びもどせ！　あんなナマイキなやつ、ワシが、たたき折ってやるわ！」

「ううん、もう無理。ウェイターハンドは、『だれにもグルメフェスをじゃまさせない』っていうお願いを発動させちゃったみたい。だから、もう呼びもどすことはできないし、こっちから手をだすことも、たぶん無理」

　ポーリンは、山もりのおかしに手をのばした。

　その手は、パチンと音を立てて、はじかれてしまった。

　ポーリンはため息をついた。

「ほらね、やっぱり。ウェイターハンドのお願いに反応して、ドリームフォークがバリアを張ったんだ……え!?」

　とつぜん、ポーリンは目をまるくして、山もりおかしの上に身を乗り出した。

「ど、どうしよう!?　カービィくんたちが、ますます、たいへんなことになってる！」

「え!?」

　バンダナワドルディやメタナイツたちも、山もりおかしをのぞきこんだ。

　カービィたち八人が、まんまるなすがたになってころがっていた。猛（もう）スピードでおかしを食べまくりながら、レースをしているようだ。

　バンダナワドルディは、うろたえた。

「ええ!?　みんな、どうして、あんなすがたに？　デデデ大王様まで、まんまるに……！」

　バル艦長が、ポーリンをどなりつけた。

「説明しろ！　なぜ、メタナイト様まで、まんまるなおすがたになってしまったのだ！」

「た、たぶん、これが、ウェイターハンドが言ってた『百倍もスリリングなグルメフェス』なんだ。ああやって、ころがってレースをして、順位を決めるっていうイベントなんだよ」

　バンダナワドルディがさけんだ。

「だめです！　今すぐやめさせなくちゃ！　あんなにころがったら、みんな目が回って、気持ちが悪くなっちゃいます！」

　ブロントバートが言った。

「ううん、その心配は、なさそうだぜ。あいつら、気持ちが悪いどころか、めちゃくちゃ楽しそうにころがってる」

　ポーリンは、もう一度、山もりおかしをじっくり見つめた。

「ほんとだ。目が回ったりしないように、ドリームフォークの魔法がきいてるみたい」

　バンダナワドルディは、ホッとした。

「ならば、ひと安心です。このレースが終わったら、グルメフェスも終わるんですよね？　そうしたら、みんな、元にもどれるんじゃないでしょうか」

　アックスナイトが、うなずいた。

「そうだな。グルメフェスをやりとげることが、ウェイターハンドの願いなんだろ。だったら、その願いがかなったら、ドリームフォークの魔法もとけるはずだ」

　けれど、ポーリンは暗い顔で言った。

「そうかんたんには、いかないかも……ドリームフォークが魔法で作り出すおかしは、この上もなく、おいしいんだ。ずっと食べ続けていたいって思うくらい」

「えっと……はい、そうですね」

　バンダナワドルディは、食料庫で食べたケーキの味を思い出して、うなずいた。

　住民たちも、さんせいした。

「たしかにな。オレはシュークリームを一個食べただけだけど、まいあがりそうなおいしさだったぜ。ぜったいにわすれられないくらい！」

「ぼくはクッキーを食べたよ。他のおかしなんて、食べたくなくなるくらい、圧倒（あっとう）的にうまかったなあ」

　ポーリンは言った。

「カービィくんたちは、なみはずれた食いしんぼうだから、なおさらだよ。きっと、『もっともっと食べたい！』って、願い続けると思う。そうしたら、ドリームフォークは、そのお願いを無限にかなえ続けることになる……」

　バンダナワドルディは、その言葉の意味に気づいて、ぎょっとした。

「む……無限に!?」

「うん。願えば願うほど、つぎつぎに、極上（ごくじょう）のおかしが出てくるんだよ。カービィくんたちは、元にもどることなんてわすれて、おかしの国の住民になっちゃうかもしれない」

「ど……どういうことだ！　メタナイト様は、どうなる!?」

　バル艦長が、声をふるわせてさけんだ。

　ポーリンは、また、なみだぐんだ。

「みんな、あの山もりおかしの中に閉じこもって、永遠に出てこなくなっちゃうんだよ。プププランドのことも、友だちのことも、みんなわすれて。そして、それが、ウェイターハンドの本当の願いなんだと思う。あいつは、終わることのないグルメフェスを、いつまでも続けたいんだ……」

　ポーリンは、うなだれて顔をおおった。

「まさか、こんなことになっちゃうなんて。魔法でみんなをしあわせにするどころか、こんなひどい目に合わせるなんて……うぇぇぇ……あたしなんて、魔女失格（しっかく）だよ！」

　バンダナワドルディは、青ざめた。

「なんとか、みんなを助けることはできないんですか!?　救い出す方法は!?」

　ポーリンは、泣きながら、首を横に振るばかり。

　バル艦長が、イライラとどなりつけようとしたが、メタナイツたちが止めた。ポーリンを責めたところで、どうにもならない。

　バンダナワドルディは、しばらくの間、うろうろ歩き回って考えこんでいた。

　やがて――ひとつの考えを思いついて、バンダナワドルディは足を止めた。

　口にするのをためらうぐらい、むずかしい考えだった。

　でも、このまま、だまってはいられない。

　バンダナワドルディは、思いきって言った。

「デデデ大王様たちが、元にもどりたいと願えばいいんですよね？」

「……え？」

　ポーリンは顔を上げた。

「だったら、ドリームフォークよりも、もっとおいしいおかしを作ればいいんじゃないでしょうか？」

「……え!?」

「おいしいおかしを、大王様たちにとどけるんです。そうすれば、みんな、『こんなにおいしいおかしを、もっともっと食べたい！』と思い、元にもどることを願うと思うんです」

　ポーリンは目をまるくして、なにか言おうとした。

　けれど、ブロントバートが、すばやく口をはさんだ。

「いや、待てよ。ワドルディ。その作戦は、無理だぜ」

　バンダナワドルディは、言いはった。

「むずかしいのはわかってるけど、やってみなきゃ。ほかの方法が、思いつかないんだ」

「いや、おかし作りのむずかしさじゃなくてさ。それ以前に、どうやって、作ったおかしをあの中にとどけるんだよ。バリアがあるんだぜ」

「……あ！」

　バンダナワドルディは、ハッとした。かんじんなことを、すっかりわすれていたのだ。

「そうだったね……やっぱり、ほかの方法を考えなきゃ……」

　がっかりしたバンダナワドルディに、ポーリンが言った。

「ううん、バンダナくん。なんとかなるかもしれない」

「え？」

　バンダナワドルディは、ポーリンを見た。

　ポーリンは、もう泣いていなかった。手で何度もなみだをふいて、言った。

「あのバリアは、グルメフェスをじゃまさせないために張ったもの……ということは、グルメフェスにまぎれこませちゃえば、いいんじゃないかな」

「まぎれこませる……？」

「おかしなら、バリアをとおりぬけられるかもしれないってこと！」

　バル艦長が、うたがわしげに言った。

「そんな都合（つごう）のいいことが、あるのか？」

「あるよ、きっと！　ドリームフォークは、『おいしいものをたくさん食べたい』っていうカービィくんたちの願いを、かなえてくれるはずだから。ためしてみるね」

　ポーリンは、広場の入り口に走って行き、そこにかざりつけられていた花の形のキャンディをむしり取った。

「えーい！」

　いのるように、山もりのおかしに向かって投げつける。

　すると、キャンディーははね返されることなく、おかしの世界へ飛びこんでいった。

「やったあ！」

　ポーリンは、明るい声を上げて、バンダナワドルディを振り返った。

「思ったとおりだよ。おかしは、中に投げ入れることができるんだ」

「じゃ、ぼくらがおいしいおかしを作れば……」

「うん。中の八人に、とどけられるよ」

　バル艦長が、気むずかしい表情で言った。

「おまえたちに、ドリームフォークを上回るおかしを作れるかどうか、だな」

「ポーリンさん、手伝ってくれますか？」

　バンダナワドルディに問われて、ポーリンはうなずいた。

「うん。あたしのせいで、こんなことになっちゃったんだもん。なんとかしなきゃ。それに、バンダナくんの真剣な顔を見て、思い出したんだ」

「……え？」

「あたしは、おばあさまみたいにすてきな、パティシエ魔女になるんだ。その夢を、あきらめたくない。ドリームフォークにだって、負けられないよ！」

　まっすぐな、力強い宣言だった。

　やっと前へふみ出したポーリンの言葉を聞いて、バンダナワドルディはにっこりした。

　メタナイツたちが、口々にさけんだ。

「オレたちも手伝うぞ」

「おかし作りは、やったことないけど……」

「教えてくれれば、なんでもやるぜ」

「たまごをわるのは、とくいだス！」

　それを聞いて、バル艦長もあわてて言った。

「ワシも手伝うぞ。そう言おうと思っていたところだ！」

「ありがとう！」

　ワドルディ隊も、ぴょんぴょんとびはねてさけんだ。

「ぼくらも、がんばります！」

「がんばりまーす！　おー！」

　バンダナワドルディがさけんだ。

「それでは、行きましょう！　デデデ城のキッチンへ！　みんなを助け出すための、おかし作り大作戦、開始です！」

　一行は、バンダナワドルディを先頭に、デデデ城に向かって駆け出した。