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【期間限定】『地獄たんてい織田信長』スペシャルれんさい 第8回 あやしい小学生は、まぎれもなく小学生


◆第8回
大注目の超ハイテンションコメディ『地獄たんてい織田信長』1巻のスペシャルれんさい中!!
ぼくらと一緒に授業を受ける信長たち。ホント、もう、いったいどうなってるの!?!?
もう読んでいるひとも、もう一度読んでみたり、お気に入りのシーンをおともだちに紹介したりして、みんなで楽しもう!

2022年2月28日までの期間限定公開です。

☆ ☆ ☆ ☆ ☆

八 あやしい小学生は、まぎれもなく小学生

☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

 圧倒的な存在感(?)で、周囲に人をよせつけない信長と秀吉。

 

 授業がおわるとどこからか白馬を引いてきて、信長はひょいとまたがった。

 

 ──学校で馬に乗る人をはじめて見た……。

 

「ふう。いい汗をかいたわい」

 

「ぎょいにございます、信長さま」

 

 二人はさわやかに汗を輝かせ、はははと笑ってグラウンドから教室にもどっていく。

 

 ぼくはグラウンドで、ぼうぜんと彼らを見送っていた。

 

 やはり怪人Xの正体はこの人たちかもしれない……。ぼくが本気でうたがいだすと、

 

「あー、あなたたちですね」

 

 校舎からあるいてきた、こん色の制服のオジさん。

 

 ふだんはお世話になりたくないけど、いまだけはお世話になりたいその人は……。

 

「け、警官だ……!」

 

 クラスの誰かがポツリといった。声は期待に満ちている。

 

 そして気持ちはぼくも同じだ。

 

 このままあの二人をつれだしてくれたら、少なくともクラスには平和がもどる。

 

 だけど……。

 

 ぼくのこころは、ほんの少しの痛みも感じていた。

 

 信長がぼくたちを怪人Xから助けてくれたのは本当だし、あんまり変な容疑をかけられるのは、ちょっとかわいそうかな……。

 

 ぼくは複雑な気持ちで、信長と秀吉を見守った。

 

 いざとなれば助け船をだそうと思っていたけど……。

 

「ええと、あなた……」

 

 警官は上から下まで、信長の姿をながめた。

 

 小学校のグラウンドで白馬にまたがった肖像画を、彼はどういう気持ちで見ただろう。

 

「ちょっと、これは、あの、正気ですか? そんなカッコで小学生の授業にまぎれこんで」

 

「まぎれこんでおらぬ。ワシは正真正銘(しょうしんしょうめい)の小学生じゃ」

 

「んなわけないでしょ」

 

「こぉの、おろか者めが!」

 

 ここで秀吉が、大声で会話にはいる。

 

 たぶんペットと思っていたサルがいきなりしゃべって、警官は目を見開いた。

 

「見よ、この体操服の美しい文字を! これでも我らが小学生ではないといえるのか!」

 

「う、美しい文字?」

 

 警官は信長の体操服に目をこらした。

 

 そこにはりつけられたゼッケンには、

 

『六年五組 おだのぶなが』

 

 と、かかれている。しかも筆でかかれていて超キレイ。

 

「これぞ信長さまが小学生だというしょうこ! さあ、下がるがよい」

 

 秀吉はえらそうだけど、

 

「なんのしょうこにもなっていない……」

 

 ぼくは脱力のあまり、グラウンドに手をついた。

 

 なんていうか、あの人たちは現代に生きるのにむいてない。

 

 そろそろ仲裁して助けなきゃ……。そう思っていたら、

 

「いやあ、おまわりさん」

 

 おだやかな声が聞こえてきた。

 

 見ると優しい目に白いひげの、円間(えんま)校長がゆっくりとこちらにむかってきていた。

 

 そういえば信長たち、円間校長のすいせんで転入したとか……。

 

「ごくろうさんですねえ。どうされました」

 

 ぽっちゃり気味の円間校長は、警官のとなりにたち、ゆっくりとした口調でいった。

 

「いえ、ご近所の方から通報がありましてね。この世のものとは思えない人が、小学校にまぎれこんでいると」

 

「それで、この二人を?」

 

「ええ、怪人Xのこともありますし。ニュースサイトによると、まだあと二人いるとか」

 

 警察の人もアテにしてくれてるんだ。ちょっと感動。

 

「それなら、心配ありませんよ」

 

 円間校長はにっこり笑い、

 

「この二人はまぎれもなく小学生ですから」

 

 まちがいなくそういった。

 

 その言葉に、警官も、ぼくも、クラスメイトも、全員が口をあんぐり開けて、今度は円間校長の正気をうたがった。

 

 ウソでしょ、そんな……。

 

「えっと、校長先生、あの、本当に?」

 

 警官はうたがいの言葉をむけるが、

 

「ええ。身元はわたしが保証します」

 

 円間校長は平然といいはなつ。

 

 あまりに自信たっぷりなその様子に、警官はとうとうあきらめ、チラチラこちらをふりかえりながらかえっていった。

 

 やがてその姿が見えなくなると、円間校長はこちらにクルッとふりかえる。

 

「えっと、横山情也さんと川島果報さん」

 

「あ、はい」

 

 ぼくと果報はならんで返事をする。

 

「悪いけどお昼休みに、校長室にきてくれるかな」

 

「校長室に、ですか。いいですけど」

 

「悪いねえ。お願いがあるんだ」

 

 

 

***

 

 

 

 校長先生が、いったいなんの用だろう。

 

 円間校長は、児童に対してとても親しみを持ってくれる先生だ。

 

 やる気をのばしてくれたり、いろんな相談に乗ってくれたり。

 

 ニュースサイトの更新のために、視聴覚室を開放してくれたのも校長先生。

 

 とにかく優しくて、児童とも仲のいい先生なんだけど……。

 

「のう、情也」

 

 考えながら更衣室で着がえていると、秀吉が声をかけてきた。

 

 にしても、サルにえらそうに口を利かれるの、なんか屈じょく的である。

 

「どうしたの、秀吉さん。バナナなら持ってないよ」

 

「それは残念じゃが、用は別じゃ。ちょいと気になったことがあってな。どうしておぬし、ニュースサイトなんか運営しとるんじゃ?」

 

「べつに……、関係ないでしょ」

 

「おおありじゃ。ワシと信長さまは正義とバナナのために働いておる。信長さまはおぬしを助手にするとおおせられたが、不純(ふじゅん)な動機であるならば仲間にするわけにはいかん」

 

 秀吉はキリッとぼくを見て、そういった。

 

 おサルなのにそんなりりしい顔されても……。

 

「わかったよ。いうよ」

 

 べつにかくしているわけじゃないし。

 

 ただ、あまり思いだしたくないんだけど。

 

 

 

 一年くらい前だ。

 

 五年生のときも、ぼくは果報と同じクラスだった。

 

 あのころ、ぼくらのクラスで変なウワサが流れていたんだ。

 

 それは果報が友達のノートを盗んだっていうもの。

 

 彼女はひっしに「ちがう」といっていた。

 

 だけど流れだしたウワサは止められない。クラスメイトの目は冷たかった。

 

 そしてぼくも、そのウワサを真にうけた一人だった。

 

 友達のものを盗むなんて、とんでもないヤツだ。そう果報を軽べつしていた。

 

 だけど、真実はちがった。

 

「ノート? あれは家に忘れただけだよ」

 

 ノートがないといっていた果報の友達は、翌日、それを学校に持ってきていた。

 

 その事実に、静まりかえる教室。

 

 ことの真相はこうだ。

 

 前の日、友達が持つ歴史人物が表紙のノートを果報がほめていた。

 

 つぎの日、その友達のノートが見当たらなかった。

 

 一連の流れを見ていたクラスメイトが、『果報がかわいいといっていたなあ』と、前日のできごとを思いだした。

 

 その話には尾ひれがつき、人に伝わる内にだんだんと刺激的な内容に変化していく。

 

 そして最終的に『果報が盗んだ』になったようだ。

 

 ウワサの真相が明らかになるころには、果報は机でしょんぼりとしていた。

 

 あの明るい果報が。元気な果報が。悲しそうに目をふせている。

 

「ごめんね」

 

 ぼくはちょくせつ彼女になにかしたわけじゃなかったけど、あやまった。

 

 くだらないウワサ話で、人を判断してしまってはずかしかった。

 

 そして、このときだ。

 

 真実に価値があると、ぼくが知ったのは。

 

 みんなが真実を知れば、きっとくだらないウソやウワサで傷つく人をへらせるだろう。

 

 それを伝えるのは、気づけたぼくの使命かもしれない。

 

 ぼくは強くそう感じて、ニュースサイトをたちあげたんだ。

 

 ウワサによって傷ついた果報も、

 

「あんな悲しい思いをする人をふやしたくないし……。それに情也はあぶなっかしいから、監視が必要だよね」

 

 と、ぼくの意志に賛同してくれた。

 

 それいらい、ずっと二人で活動をしてるんだ。

 

 あとプライドにかけてハッキリさせておくけど、あぶなっかしいのは果報だと思う。

 

 

 

「なるほどの」

 

 秀吉はうんうんとうなずくと、

 

「ま、合格にしといてやろうか」

 

 と、えらそうにいった。ちょっとイラッとした。

 

「でも今度はこっちが聞くけどさ」

 

「なんじゃ」

 

「そっちこそ、本当はなに者なの? さっきの警官もあやしんでいたし、この世のなによりもうさんくさいんだけど」

 

 ぼくはシャツのボタンをとめながら聞いた。

 

 すると、「昨日いったとおり」と、質問にこたえたのは信長だ。

 

「我らは閻魔の依頼で任務をすいこうする地獄探偵。それ以上でもそれ以下でもない」

 

「地獄探偵? 最近の探偵は小学校で児童になるの?」

 

 ぼくはうたがいの目を信長にむける。

 

「うたがうなら、まあよい」

 

 信長は表情のよめない顔で、そういった。

 

 そして自分の着物に名札をピンでとめ、真面目な顔をする。

 

「あとで校長の言葉を聞けば、すべてがわかるだろう」



校長室に呼ばれた情也と果報。円間校長のお話とはいったい・・・・・・?
第9回につづくよ!(1月15日 午前7時 公開予定)

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