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【期間限定】『地獄たんてい織田信長』スペシャルれんさい 第5回 信長の目的


◆第5回
大注目の超ハイテンションコメディ『地獄たんてい織田信長』1巻のスペシャルれんさい中!!
助けてくれたのは織田信長! み、味方・・・か・・・?
もう読んでいるひとも、もう一度読んでみたり、お気に入りのシーンをおともだちに紹介したりして、みんなで楽しもう!

2022年2月28日までの期間限定公開です。

☆ ☆ ☆ ☆ ☆

五 信長の目的

☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

 果報が信長にサインをもらってから、ぼくたちは元の丘へともどった。

 

 太陽はもうしずみかけていて、公園をあざやかなオレンジにそめている。

 

 丘にたつとぼくは深呼吸して、めい想をして、ゲームをして気持ちを落ちつけてみる。

 

 そしてうしろをふりかえるけど、……やっぱり、いる。

 

 肖像画が。ふつうに。

 

 甲冑(かっちゅう)を脱いだ織田信長はより肖像画っぽくなり、果報とザリガニを釣っている。

 

 起きて見ていた夢かとも思ったけど、どうやらそうじゃないみたい。気が重くなる。

 

「ふふ……。なにがどうなっている、って顔じゃな」

 

 肖像画の目が、不気味にぼくをとらえた。

 

「うん……。しょうじき、わけがわからない」

 

「いいだろう。教えてやる」

 

 彼はそういって、自分の手元を指さした。

 

「あのな、ザリガニ釣りのコツはじゃな、川底にエサをおいて糸をたるませておくのが……」

 

「いや、そっちじゃなくて!」

 

 ぼくは勢いよくつっこんでから、

 

「あの……。信長さん……、でいいのかな?」

 

 ため息まじりにそう問いかけた。

 

「いかにも。我こそは織田信長である」

 

 信長は釣り糸をはなすと、背筋をピンとのばし、えらそうにこたえた。

 

 夕焼けの公園にふつうに存在するこの肖像画のせいで、美しい風景がだいなしだ。

 

「じゃあ、信長さん。ちょっとこの状況、ぼく理解できないんだけど、どうなってんの? なんで信長さんや今川義元があらわれて、こんなとこでケンカすんの?」

 

「ケンカとは無礼な。あれは魂を地獄にかえしただけじゃ」

 

「地獄? どういうこと?」

 

「我が愛刀『へ死きり長谷部』は、魂を地獄に送りかえすアイテムということである」

 

 信長はそう前おきをして、そのなにか食べてそうな口で状況を説明しはじめた。

 

「怪人Xともいわれていたあの今川義元の正体は、現世に脱獄した地獄の住人。そしてワシは閻魔から依頼をうけ、脱獄犯どもをつれもどしにまいった地獄探偵じゃ」

 

「じ、地獄の……?」

 

 ぼくは今川義元の言葉が本当だったことにおどろく。

 

 でも不思議と『まるでウソだ』とは思えなかった。

 

 少なくとも真実はふくまれている。そう感じた。

 

 だって信長の姿形、それに蒸発した今川義元が持っていた能力……。

 

 さっきまでの状況の前だと、ここからなにがでてきても不思議じゃない。

 

 ぼくが信長の言葉に説得力を感じていると、

 

「っていうかさ」

 

 果報が口をはさんでくる。

 

「信長さん、いま、脱獄犯どもっていったよね? ほかにもあんなのがいるの?」

 

「いかにも。この小僧とちがい、娘の方は冷静なようだな」

 

 信長はニヤリとした。

 

 笑ったつもりだろうけど不気味だ。相手にあたえる印象は逆効果である。

 

「よいか。地獄から現世にわたった魂は全部で三つ。しかし正体は判明しておらん」

 

「それで怪人を目撃した人の証言が食いちがっていたのか……。じゃあほかの魂の正体は、いまから捜査するの?」

 

 ぼくが問いかけると、信長はうなずく。

 

「それをつきとめるのも、地獄探偵の仕事の一つというわけよ」

 

「肖像画の姿で? そもそもなんでそんな見た目なの?」

 

「ほう。まさかそこに気がつくとは」

 

 信長は感心する。でも、むしろそこにしか気がいかない。

 

 続けられた彼の説明によると、地獄と現世では存在するルールそのものがちがうらしい。

 

 あっちにいる魂は、どうやら自分の形を持っていないようだ。

 

 だから地獄から現世にわたるときには、ルールにしたがい魂をいれる体が必要になる。

 

「そこで地獄から現世へのトンネルをくぐるとき、魂は肉体を持たされるというわけじゃ」

 

「なんでよりによって肖像画に……」

 

 ふつうの人間でいいじゃんと思うけど。

 

「それがつらいところでな。その魂が現世でもっともイメージされる形に、肉体がつくられてしまう。ワシならこの肖像画の姿が一番有名だということじゃ」

 

 信長はこまったように、あごをかいた。

 

 なんというか、おっしゃるとおり、それはつらいですねとしかいいようがない。

 

「じゃあ、こっちにわたった魂はみんな肖像画に?」

 

 ぼくが質問すると、

 

「そうとはかぎらんぞい」

 

 どこかから声が聞こえた。どことなく、信長や今川義元とにた感じの声だった。

 

「だ、誰っ! どこなの?」

 

 まさか肖像画第三号が? ぼくがキョロキョロあたりを見回すと……。

 

「ここじゃ」

 

 と、木のえだからブラ下がり、一匹のサルがいきなり目の前へ姿をあらわした。

 

「おっわあ!」

 

 ぼくは今日、三度目の尻もち。

 

 なんだったら、たぶん目玉がまた飛びだしている。

 

 だって木のえだにシッポでブラ下がってるこれ、これは……!

 

「サルが! サルがしゃべったあああああ!」

 

「ズバリ! あんた豊臣秀吉(とよとみ ひでよし)でしょっ!」

 

 尻をひきずってあとずさるぼくに、前のめりな果報。

 

 っていうか果報、なんでこの状況にすんなりなじんでんの? どうやるのそれ。

 

「迷惑な話なんじゃよね」

 

 サルは「よっ!」と勢いをつけてシッポをはずし、空中で一回転。

 

 そのまま信長のとなりに、ひょいとたった。

 

 姿、形、行動など、もう完全にサルだ。

 

「いかにもワシは豊臣秀吉じゃよ。生前は信長さまがサル、サル、とよんでいたから、そのイメージが現世に定着しちゃったんじゃ」

 

「ハゲネズミともよんでやっただろう」

 

「そっちで定着せんで、こころからよかったです……」

 

「おもしろくないな。まあ、よい。で、サルよ。閻魔と話はつけてきたか?」

 

「おおせのままに」

 

 かしこまってこたえるサル……、もとい秀吉。

 

 そしてぼくはぼくで、ありえない事態に頭がクラクラしはじめていた。

 

 ダメだ、これ。こんなの状況がとくしゅすぎて、ニュースサイトに上げられない。

 

 もし記事にしたら、頭がどうかしちゃったと思われるのがオチだ。

 

 記事は、しかたがない。ウソにならないよう、ちょっとごまかしてかこう。

 

 それよりも少しでも早く、この場から脱出しなければ……。

 

 ぼくはそろりそろりと足を後退させる。あとは果報の手を引いて……。

 

 って考えていたけど、このままおいとまできるほど世の中ってあまくない。

 

「そうだ、小僧」

 

 信長が視線をこちらにむける。

 

「な、なにかな?」

 

 逃げかけていたぼくはギクッと心臓をならして、半笑いになった。

 

「さっきは貴様に助けられたな。礼をしよう」

 

「お、お気になさらず。それじゃぼくらはこれで……」

 

「ワシは借りをつくるのがきらいでな」

 

 信長は一瞬でこちらとの間あいをつめ、ぼくの首根っこをつかんだ。

 

 そしてその肖像画な顔面をどアップにして、にたりと笑う。ちょっとしたホラーだ。

 

「よろこべよ。ワシからの礼は名誉なことだぞ?」

 

「いやあ、ぼくにはもったいないっていうか……」

 

 ぼくは目をそらすけど、信長はかまわない。

 

「遠りょするな。礼として貴様らは今日から、サルとともにワシの助手だ。ありがたく思え」

 

 れ、礼になってない……! なんなんだ、そのジャイアニズム……。

 

 ってつっこみたいけど、なんかわかる。

 

 この場で断れば、このおれさまな信長からなにをされるかわからない。

 

 飛びはねてバンザイしてる果報をよそに、ぼくはあきらめのため息をついた。

 

 これから、どうなっちゃうんだろう?



信長の助手にされちゃった!?
第6回につづくよ!(1月12日 午前7時 公開予定)

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