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【期間限定】『地獄たんてい織田信長』スペシャルれんさい 第3回 怪人Xの正体


◆第3回
大注目の超ハイテンションコメディ『地獄たんてい織田信長』1巻のスペシャルれんさい中!!
公園にあらわれたメイクをする肖像画! その正体はいったい!?
もう読んでいるひとも、もう一度読んでみたり、お気に入りのシーンをおともだちに紹介したりして、みんなで楽しもう!

2022年2月28日までの期間限定公開です。

☆ ☆ ☆ ☆ ☆

三 怪人Xの正体

☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

「か、果報……」

 

 全力疾走して、やっと果報に追いついたのはもう現場だった。

 

 公園が広いせいで、ヘトヘトだ。

 

 到着したここはうっそうと草が生いしげり、木々にかこまれた奥まった場所。

 

 なるほど、あやしい人物がかくれるにはちょうどいいだろう。

 

 しかしあのサムライ、なに者なんだろう? 役者説は本当なのか?

 

「ど、どう? あのサムライ、まだいる?」

 

 ヒザをつかみ、ぼくは肩で息をしながら果報に声をかける。でも返事がない。

 

 目線を上げて見てみると、果報の様子が変だ。

 

 くちびるをふるわせ、なにかを恐れるように前を見つめている。

 

(もしかして、相手に見つかったの?)

 

 だから「慎重に」っていったのに。

 

 どうしよう。見つかったのなら、まずは逃げるか?

 

 考えながら、ぼくも果報の視線を追う。

 

 だけど草むらのむこうにいるサムライの背中は、こっちを気にしてはいなかった。

 

 それどころかたぶん倉庫から引っぱりだしてきた鏡を前に、まだメイクを続けている。

 

(果報、まだ見つかってないなら、そっとかくれよう)

 

 ぼくは体をかがめ、果報に耳打ちする。

 

 だけど彼女はほうしん状態で、ぽかんとサムライを見ているまま。

 

 なにをそんなにおどろいているの?

 

 少し落ち着きをとりもどしたぼくは、サムライをじっと見つめた。

 

 でも、なんだかそのサムライの姿がしっくりこない。

 

 あれ? 人間の造形って、あんな感じだったっけ?

 

 目と鼻と口のバランスがおかしいというか……。あれ?

 

「なにやつでおじゃるかっ!」

 

 ──しまった!

 

 ぼさっとしている間に気づかれちゃった。ここは逃げの一手で……!

 

 と、考えたのも一瞬だった。

 

 視界に飛びこんできたサムライの顔に、ぼくはつき飛ばされたように吹っ飛んでしまう。

 

「な、な、な、な……!」

 

 ぼくは腰を抜かし、尻もちをついていた。

 

 たぶん目玉も飛びだしているし、なんなら開いた口もふさがっていない。

 

 あれって教科書とかでよく見る……。

 

「なななななんで、肖像画が動いてるんだよおおおおおおお!」

 

 果報が固まっていた理由は、これか……!

 

 かぶりものとか、はりぼてとか、これはけっしてそういうんじゃない。

 

 相手からはちゃんと生命というか、意思を持った動きを感じる。

 

 描かれた絵から立体として飛びでてきたような、そんな見た目だ。

 

 そう。肖像画がふつうの人間みたいに動いている!

 

「ど、どうして……」

 

 果報もおどろきの中から声をしぼりだす。

 

 そりゃそうだよな……。こんな怪奇現象、誰だっておどろくよ……。

 

 と思っていたら彼女はヒゲもじゃのサムライに指をさし、

 

今川義元じゃん」

 

 あっけらかんと、そういった。

 

「は? え? 果報?」

 

「これ、今川義元の武者絵だよ! うわー、すごい!」

 

 果報はようやく我にかえり、ぱっと顔を輝かせた。

 

 でも、あれ見てその反応ってふつうなの? ぼくがおかしいの?

 

「か、果報、どういうこと? 今川義元って?」

 

「え? 知らないの? 今川義元って戦国最強とまでいわれた海道一の弓取りで父親の今川氏親が制定した今川仮名目録に仮名目録追加二十一条を加えた……」

 

 果報は興奮した歴史オタクみたいに早口でしゃべった。

 

 いや、じっさいに興奮した歴史オタクが早口になっているんだろうけど。

 

「くっくっく……。よくわかったでおじゃるな、そこの娘」

 

 今川義元とよばれた動く肖像画は、果報を指して変な言葉を使う。

 

「やっぱり……。オジさん、今川義元だね?」

 

「いかにも。まろこそは地獄よりよみがえりし戦国大名、今川義元。いま一度天下をねらうため、ここに復活した者でおじゃる!」

 

「見た瞬間にわかったよ。ただ者じゃないって」

 

 果報は自分のカンをほこるようにいうけど、それはぼくも思った。

 

「だけど、どういうこと? オジさん、そういう役でお芝居にでるってわけ? なんかの最新技術で、肖像画みたいになってるとか?」

 

 ぼくは二人の会話にわりこんだ。好奇心と歴史がすべての果報じゃ話にならない。

 

「フン。たわけた小僧でおじゃる」

 

 今川義元を名乗る肖像画は口をぐにゃっと動かし、そこから笑い声をもらした。

 

 なんていうか、絵が現代の最新技術でアニメの3Dみたいに見える感じ。

 

 ヨロイを着たそれはヒゲがもじゃもじゃで、とても強そう。

 

 かかってこられたら、ぜったいにかなわない。

 

「しかし」

 

 どう逃げるか考えていたら、今川義元の変な目がギラリと光った。

 

「計画の日まで、まろは人に姿を見せるつもりはなかったでおじゃるがのう。ここで目撃され、閻魔の耳にはいるとやっかいじゃ。始末しておくか」

 

「な、なに……?」

 

 ぼくはあとずさる。

 

「どうせ消し去るならまろの真の姿を見せてやろう! 変身でおじゃる!」

 

「へ、変身っ?」

 

 って、姿を変えて強くなっちゃうあれ?

 

 いや、さすがにそんなのできるわけ………。

 

「ふぬぬぬ……」

 

 できるわけない、と信じたかったけど、そうはいかないみたい。

 

 今川義元が力をいれて顔をまっ赤にする。

 

 するとその体から景色がゆがむほど、暗いオーラが炎みたいにたちのぼっていった。

 

 ──ウソでしょ……?

 

 そんなことが、本当にあるの?

 

 ぼくは身がまえた。

 

 どうする? ただでさえ強そうなのに、これいじょうそうなったら手に負えない。

 

 ぼくは逃げ場を探してキョロキョロした。

 

 だけどその間にも今川義元は体をぐにゃぐにゃととかし、新しいりんかくをつくっていく。

 

「本当に変身を……」

 

 ぼくは息をのんだ。まばたきも忘れていた。

 

 やがて五秒もたつと、サムライだった今川義元は、そのなごりも見えなくなっていた。

 

 黒くて高いぼうしをかぶり、体はぽっちゃり、ほっぺはプルン。服は着物で歯は黒くてまゆ毛が点で、不自然に白くて、まるで平安時代の公家みたいに……。

 

「め、めっちゃ弱そうになってる────!」

 

 変身の意味あんの、それ!

 

「今川義元は高い家柄で将軍家の側近とかを保護していたから、ああいうファッションがステータスだったんだよ! あれが真の姿なんだね!」

 

 果報は「ねえ?」って感じだけど、知らんがなとしかいえない。

 

 しかし、状況のいじょうさだけは痛感する。

 

 やっぱり相手は役者でもなさそうだし、これはぜったいにふつうじゃない。

 

 幽霊とか妖怪とか、そういう見ちゃいけないやつだ。

 

 地獄からよみがえったって? 説得力がありすぎる。このままじゃやられるぞ!

 

「逃げよう、果報!」

 

 ぼくはペンをとりだし、サインをねだろうとする果報の手をつかむ。

 

 そして人の多いエリアへ一目散にかけだすけど……。

 

「始末するといったはず。逃がすと思うでおじゃるかっ!」

 

「ひいいいいいい!」

 

 ぼくは半泣きで全力疾走!

 

 しかしうしろからはあやしい光が輝きだし、

 

「地獄闘法! 寄親寄子制の術!」

 

 と、今川義元の声がひびいて、むらさきの明かりがバシュッと弾けた。

 

 な、なに? なにされちゃったの?

 

 疑問に思う間もなく、光をあびた用具倉庫がガタガタとゆれる。

 

 そしてつぎの瞬間、倉庫の中からボールにマットにロープ……。

 

 いろんなものが倉庫のシャッターを開け放ち、続々とこっちへ弾け飛んできた!

 

「な、なにそれなにそれ!」

 

「まろの地獄闘法は道具に魂をあたえ、兵として使役するのでおじゃるよ! これぞまろを親とする寄子衆!」

 

 おひょひょひょひょ、ゲホッ! という無理した笑い声。

 

 すると道具たちは逃げるぼくらのゆく手をふさぐように、ザッと前に壁をつくった。

 

「くっ!」

 

 冗談じゃないぞ。倉庫から道具がでてきて、こんな動きをするなんて……。

 

 トリックとか手品とか、そんなものを超えている!

 

「ねえねえねえ、情也!」

 

 となりをはしる果報が声を上げる。

 

「な、なに果報。逃げるアイディアが?」

 

「そんなんじゃないよ! あのさ、さっき寄親寄子っていってたじゃん! あれは上下関係を親子関係に見たてて、今川義元が兵を動員するときとかに使った軍事システムだよ! だから倉庫の道具を、子役として兵士にしたてたんだ! やっぱ本物だよ!」

 

「いいから逃げてっ!」

 

 好奇心むきだしの果報へ、半泣きでお願いするぼく。

 

 だけどどこにむかって逃げても、むらさきに光る道具たちがぼくらのじゃまをしてくる。

 

 あっちにいくとボールが列をつくり、こっちにいくとマットがひらいてたちはだかる。

 

 それをかわしたと思ったら、ロープでいきどまりをつくられ……。

 

「どうすりゃいいんだよ……」

 

 とうとう、ぼくと果報は倉庫を背中に、道具たちから追いつめられてしまった。

 

 右も左も逃げ場はなし。

 

 って、あれ?

 

 これって、もしかして、リアルに命の危機?

 

 絶体絶命ってやつ?

 

 あんなギャグみたいな人にいいようにやられるなんて……。

 

「ウソでしょ……」

 

 ぼくはこめかみに伝う汗を感じながら、こちらへ迫る今川義元を見つめていた。

 

 彼はむらさきのオーラを放ちながら、ニヤリとおちょぼ口のはしを持ち上げた。

 

 ちょっとかわいかった。



今川義元が登場!? いったいどうなるの~!?
第4回につづくよ!(1月10日 午前7時 公開予定)

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