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【期間限定】『地獄たんてい織田信長』スペシャルれんさい 第2回 怪人X現る!?


◆第2回
大注目の超ハイテンションコメディ『地獄たんてい織田信長』1巻のスペシャルれんさい中!!
街をさわがせている怪人X! あやしい影の正体を推理してみてね!
もう読んでいるひとも、もう一度読んでみたり、お気に入りのシーンをおともだちに紹介したりして、みんなで楽しもう!

2022年2月28日までの期間限定公開です。

☆ ☆ ☆ ☆ ☆

二 怪人X現る!?

☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

 怪人X。

 

 それは近ごろ、街を不安におとしいれている正体不明の男だ。

 

 神出鬼没(しんしゅつきぼつ)でけっして正体を明らかにしない怪人X。

 

 目撃者(もくげきしゃ)をたずねて取材したけど、人によって証言が食いちがっている。

 

「真っ白な顔の男でお神輿(みこし)に乗っていたよ」

 

「いやいや、オデコの広い肖像画みたいな男だった」

 

「いやいやいや、ヒゲもじゃの武士だったよ。肖像画(しょうぞうが)みたいな」

 

 と、こんな調子。ただ、いまのところたいした被害(ひがい)もないから、みんなのんきなもの。

 

 図書館にある本から、織田信長の肖像画を探しだしてラクガキしていた。

 

 はては『味方になれ~』と恨めしげな声で、金品をわたそうとしてきた、など。

 

 たしかにめちゃくちゃな悪事はしていないけど、子供も多い地域だし気味が悪い。

 

 怪人Xのせいで街には『不審者(ふしんしゃ)に気をつけて』って貼り紙がそこら中にあふれている。

 

 いまや警察も警戒するさわぎとなっているんだけど……。

 

***

 

「な、な、な、な……!」と、ぼく、横山情也は腰を抜かしていた。

 

 たぶん目玉も飛びだしているし、なんなら開いた口もふさがっていない。

 

 人間、本当にビックリすると、無意識に「あわあわあわ」って口からもれるんだな。

 

 尻もちをつきながら、ぼくはそんなことをこころの冷静な部分で思っていた。

 

 だって、気分は幽霊でも見たようだったから。

 

 いや、じっさいにこれって幽霊とかと同じじゃないの?

 

 怪人Xを見つけたと思ったら……!

 

「なななななんで、肖像画が動いてるんだよおおおおおおお!」

 

***

 

 ことの起こりは、そう。今日の学校でのできごとだ。

 

 朝、教室にはいると、

 

「お、情也」

 

「表彰された記者さんがきたぞ!」

 

 と、みんながぼくの机にわっとかけよってきた。

 

 今週はずっとこうだ。表彰されて四日もたつのに、毎日この調子でちょっとはずかしい。

 

 果報も女子にかこまれながら、なんだかんだと質問攻めにあっている。

 

 彼女は椅子にすわって足をくみ、得意げな口調で質問におうじていた。

 

「いやあ、あたしたち、記者の人にも注目されちゃってさあ。あの注目度は、清須会議(きよすかいぎ)で三法師(さんぼうし)をかかえて上座にすわった秀吉(ひでよし)なみだったよ。ねえ、情也」

 

「たとえが一ミリもわからない」

 

 ぼくはつっこんでから、机にランドセルをひっかける。

 

 そしてガヤガヤとさわがしい朝の教室を、ぐるっと見回した。

 

 クラスメイトたちは明るい顔で、表彰されたぼくらについて語っていた。

 

 そこにはウワサやデマによるイジメもないし、悲しみもない。

 

 真実の価値を説いてニュースサイトをたちあげたけっかがこれなら、とてもうれしい。

 

『てきとうなことをいって、人を傷つけてはいけない』

 

 みんなにこの想いが伝わるように、ぼくたちはニュースサイトを更新する。

 

 誰もが明るい顔のままでいられるように、がんばるんだ。

 

 そのために……。

 

「果報」

 

 ぼくは彼女の机までいって、話しかけた。果報は「なに?」と、こっちをむく。

 

「あのさ、今日の放課後、緑地(りょくち)公園の丘に集合できる?」

 

「家にかえってから? 丘って小川が流れてるとこだよね? いけるけど」

 

 果報は目をぱちくりした。

 

「でも情也。怪人Xの取材をする予定だったのに、公園になんの用なの?」

 

「これまでの聞きこみから、重要なことがわかったんだ。それを元に、ニュースサイトの大事な取材をしようと思う。細かい話は現地でするから」

 

「──わかった」

 

 果報は表情を引きしめてうなずく。

 

 ぼくの眼差しから、重要な用事だとわかってくれたみたいだ。

 

 さあ、怪人X。ぼくたちの報道で、正体をあばいてやるぞ。

 

 まちがったウワサがどれだけ人を傷つけるか、みんなに知ってもらうんだ。


 

 ──と、このときはまだ、ぼくはやる気でいっぱいだったんだ。

 

 あんなことになるって、知らなかったから。

 

***

 

 緑地公園は街の中央に位置する、とても広い公園。

 

 野球場なら何個分だろう? 十個はいくかな?

 

 グラウンドもあって、ジョギングコースもあって、大きな花壇(かだん)もある心地いい場所。

 

 人気スポットだけど、広すぎるせいでけっこう空いている。

 

 なんでもむかし、国際的なイベントがあって開発された公園らしい。

 

「あのね、果報」

 

 ぼくはため息をついて、待ちあわせ場所にあらわれた果報を見つめる。

 

「今日はニュースサイトの取材っていったよね」

 

「うん」

 

「これまでの聞きこみでわかったことからの大事な取材って、たしかにいったよね」

 

「うん」

 

 にっこり笑う果報に、ぼくはまたため息をついた。

 

「じゃあなんでそんなカッコしてんの?」

 

 ぼくは果報の頭から足先まで、視線をおうふくさせた。

 

 彼女の手にあるのはバケツに糸にエサ。姿はTシャツ短パンに麦わらぼうし。

 

「果報、それ完全にザリガニ釣りにきてるだろ」

 

「バレたか」

 

「バレるよ」

 

 つっこむと、果報はちぇっと舌を鳴らした。

 

 果報と行動したら、いつもこの調子。毎回、彼女にふり回される。

 

 ま、だからこそ果報の好奇心に対する瞬発力が、ぼくらの武器になっているんだけど。

 

 空き巣の写真をとったときも、そうだ。

 

 果報が空き巣を見つけて足止めしてくれなきゃ、ぼくは撮影できなかった。

 

 こういう自由さが、果報の魅力でもあるんだ。

 

「細かいことは、いいじゃん、情也。ザリガニ釣りの奥義(おうぎ)を教えてあげるからさ」

 

「いらないよ、拳法(けんぽう)かよ。とにかく今日は取材なんだから」

 

 そういってぼくは芝生の上に、街の地図を広げた。

 

 ザリガニ釣り装備の果報はかがみこみ、大きな瞳で見つめる。

 

「今週はずっと、ぼくと果報で怪人Xの目撃証言をたどっていただろ? 情報を整理してたら、おもしろいことがわかったんだ」

 

「なんか地図に黒い点があるね。情也が描きこんだの?」

 

「そう。これが怪人Xの目撃された場所」

 

 ぼくはいくつかちらばった点を、ひとつひとつ指さした。

 

 数は多くないけど、ほとんどがこの緑地公園の周辺に記されている。

 

 ここは広すぎて、みんなが知らない場所もきっとあるし……。

 

「きっとこの公園に、怪人Xにかかわるなにかがあると思うんだ。だからこの丘から、いっしょに怪人Xを見張ろう。人目をしのんで、もうどこかにいるかもしれない」

 

「わかった!」

 

 果報は真面目な顔でうなずく。そしてバケツからザリガニ釣り道具をとりだして、

 

「見つけたら教えて!」

 

 と、うしろの小川に糸をたらした。

 

***

 

 ま、なれてるけどね、こういうの……。

 

 ぼくは双眼鏡を片手に、丘から緑地公園を見回していた。

 

「そろそろ順番かわってよ、果報。休憩(きゅうけい)したい」

 

「んー。ちょっと待って。あたし、ザリガニ釣れば釣るほど見張りが上手くなるから」

 

 果報はてきとうなことをいって、まだザリガニを釣ろうとする。

 

 ぼくはちぇっと舌打ちして、変わりばえのしない景色を視界にいれた。

 

 子供たちや親子連れ、ペットの散歩など人は多いけど、公園に怪人Xらしき人物はいない。

 

 緑地公園は、とてもおだやかで平和だった。

 

 こりゃムダ足だったかな……。

 

 この場所もぼくの推測だし、ハズレかもしれない。もう少し取材を続けてみるか。

 

 そう思いながら、ぼくはうしろでザリガニを釣る果報をちらっと見る。

 

 彼女は例の奥義を炸裂させたのか、「よし!」と、大きなザリガニを釣り上げたところだった。

 

 いまはゴキゲンな表情の果報。

 

 だけどかつてぼくは、あの顔をすごく悲しそうにさせちゃったんだ。

 

 あのときのぼくは理由もなくウワサを信じ、的外れに果報を軽べつしていた。

 

 ウソ情報におどらされ果報を傷つけたと知ったとき、ぼくは大変な罪悪感におそわれた。

 

 あれから、ぼくは正しさについてよく考える。

 

 だけどそれは、いまだってこたえがよくわからない。

 

 だからせめて情報だけは正確に伝えたいと、いまもこうしてるんだけど……。

 

「あれ?」

 

 太陽がだいぶかたむき、そろそろ今日の成果をあきらめたころ。

 

 公園の西のはずれに、なんだかいわかん。なんだろう、あれ。

 

 そこは人なんて誰もいかないような、用具倉庫とかがあるところだ。

 

 この公園、あんな場所があったんだ。

 

 考えながら双眼鏡をかまえ、じっと目をこらす。

 

 しげみにかくれている場所だけど、なにか変だ。

 

 木々の陰からキラッと鏡が見えて、その前にヨロイを着たサムライが……。

 

 え? サムライ?

 

 ウソでしょ? それとも見まちがい?

 

 ぼくはさらに目をこらす。するとそこにいるのはやっぱりサムライで、しかも……。

 

「サ、サムライがメイクしてる───────!」

 

 まちがいない。あれが怪人Xだ! あやしさ全開でもう問答無用でしょ!

 

「サムライッ? どこっ?」

 

 うしろから、すかさず場所を聞く果報。

 

「西のはずれ! なんか倉庫とかある場所で……」

 

 ここまで説明したところで、ぼくを背後から追い抜いていくそよ風。

 

 ええっ! て思って双眼鏡をはずすと、丘を勢いよくかけおりる果報のうしろ姿が!

 

「は、速すぎる!」

 

 説明と同時にかけだしたんだ! なんて瞬発力!

 

 っていうかちょっと待って、もうなにもかもが、ちょっと待って!

 

「ぼくもいくから! ちょっと、果報、ホントにあぶないから! 慎重に! 慎重に、果報! お願い聞いて─────!」

 

 はしりだすぼくの願いもむなしく、果報の背中はどんどん小さくなっていく。

 

「先いってるよーーー!」

 

 果報はちらっとこっちをふりかえって、さらに加速した。その顔は輝きに満ちている。

 

 好奇心の暴走機関車だ……。



メイクしている肖像画!?!? あやしすぎるサムライの正体は!?
第3回につづくよ!(1月9日 午前7時 公開予定)

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