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【期間限定】『地獄たんてい織田信長』スペシャルれんさい 第1回 プロローグ&怪人Xを追え!


◆第1回
大注目の超ハイテンションコメディ『地獄たんてい織田信長』1巻のスペシャルれんさいがスタートしたよ!!
ある日とつぜん、社会の教科書でみたことのある戦国武将がクラスに転校してきたら、みんなならどうする?
もう読んでいるひとも、もう一度読んでみたり、お気に入りのシーンをおともだちに紹介したりして、みんなで楽しんでね♪

2022年2月28日までの期間限定公開です。

☆ ☆ ☆ ☆ ☆

プロローグ

☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

 ここは地獄。

 

 雲はむらさき色で空は赤黒く、カラスが「にゃあ」と鳴く変な世界。

 

 いうまでもなく罪をおかした魂が、罰としてやってくるこわい場所です。

 

 しかし閻魔(えんま)さまが代がわりして、地獄は変わりました。

 

 いきすぎた罰は禁止され、警察や消防を整備。とてもすごしやすい世界になったのです。

 

 ですが地獄は地獄。おみくじが凶ばかりだったり、四十三度のちょっと熱いお風呂にいれられたり、そんな恐ろしい罰がまちうけるきびしいところです。

 

 だから中には、それが気にいらない魂も存在します。

 

「我こそが地獄を統一し、こんな罰(ばつ)などなくしてくれる!」

 

 あやしく輝く三つの魂は、そういって地獄から現世へ続くトンネルを抜けていきます。

 

 でも用意したおやつを忘れてしまい、家までとりにかえってまたコソッとくぐりました。

 

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆

一 怪人X(かいじんエックス)を追え!

☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

 その男は、世界をまたにかけない大どろぼう。

 

 どんなお宝も軽く盗めませんが、町内をさわがせるていどには有名です。

 

 街の人々は敵意をこめて、男をこうよびます。

 

『セコい空き巣』と……。

 

 そんな男はエモノとなる家を探し、夕ぐれの街をうろついています。

 

 すると、ふむ。外壁(がいへき)ごしに見て、窓が開きっぱなしの一軒家を発見したようです。

 

 厳重(げんじゅう)な警備(けいび)はどうにも無理ですが、窓が開いている留守の家なら忍びこめます。

 

 男がその家のインターフォンを鳴らしても、反応がありません。

 

 おなかも空いたし、ちょうどいい。今日はここにしよう。

 

 男は外壁をよじのぼって、その上にしゃがみます。

 

 そしてさあ、こわいけど窓に飛びうつろうとした、そのとき。

 

「オジさーん!」

 

 壁の下から男をよぶ女の子の声がします。

 

 見るとショートカットで、毛先をぴょんぴょんとはねさせた、少年のような女の子。

 

 彼女は大きな瞳で男を見つめていました。

 

 やばいところを見られてしまったぞ……。男はあせります。

 

「や、やあ、お嬢ちゃん。誤解しないでくれよ。これはいまから工事をするところで……」

 

「ねえ!」

 

 女の子は男の言葉にかまわず、その背後を指さします。

 

「あっち見て!」

 

「あっち?」

 

 いわれて男が首を回すと、そこにはスマホをかまえる男の子の姿。

 

 って、え? 女の子もそうだけど、いつの間に回りこんだ?

 

 最初からマークされていたのか? 子供なのに動きが警察じみている。

 

 しかもスマホ? かまえているってことは、カメラ? え? ウソ?

 

 男はパニックになりますが、男の子はニヤリと口のはしを持ち上げます。

 

 そしてスマホに指をもっていき、

 

「はい、チーズ!」

 

 と、パシャリ。

 

 

 ***

 

 

「では犯人逮捕に功績のあった、横山情也(よこやま じょうや)くんと川島果報(かわしま かほ)さんに、感謝状を贈りたいと思います」

 

 警察署の署長が報道陣に説明すると、目の前の大人たちはいっせいにカメラをかまえた。

 

 ぼくはぎこちなく笑い、報道陣にむけて、もらったばかりの感謝状を広げて見せる。

 

 するとパシャパシャとたかれるフラッシュに、警察署の会議室は白くまたたいた。

 

 取材するのはなれてるけど、されるがわに回るのはなれない。

 

 となりの果報はばっちりピースできめているけど、なんで堂々としてられるんだろう?

 

「今回この二人は」

 

 大きなおなかの署長は胸をはって、まるで自分のお手柄みたいに得意げだ。

 

「共同で運営する、えー、ニュースの、あれ?」

 

ニュースサイトです」

 

 ぼくが教えると、署長は「ああ」と返事をして、続きを語る。

 

「ニュース斎藤(さいとう)で連続空き巣事件を取材し、その報道によって犯人逮捕へと導きました。お手柄の二人に、拍手を」

 

 びみょうにまちがえた署長がうながすと、部屋にいるみんなはパチパチ手をたたいた。

 

 報道陣のうしろでは、父さんや母さんに、担任の宮本(みやもと)先生やちょっと変わった名前の円間(えんま)校長、それから親戚のオバちゃんも拍手している。

 

「すっげえな」

 

「もう遊びとはいえないねえ」

 

 全員が口々にさわいでいて、ちょっと気分がいい。

 

 今日はみんなにぼくたちの取材の成果を認められた、記念すべき日だ。

 

(やったね、果報)

 

 目配せして小声でいうと、果報はニカッと親指をたてた。

 

 これからもまかせとけって感じ?

 

 たよりになる相棒だ。

 

「すいません。〇×新聞の記者ですが」

 

 そうこうしていると、すぐ前から声がした。

 

 見ると女性の記者さんが、ぼくたちにボイスレコーダーをむけている。

 

 なんか芸能人になったみたいで、ドキドキする。寝ぐせついてないかな。

 

「すばらしい実績を挙げたお二人に、インタビューさせてほしいのですが」

 

「ちょっと、照れくさいけど。どうぞ」

 

 ぼくは頭をかいた。果報は自分もこたえたそうに、早くもうずうずしている。

 

「じゃあ横山くんから」

 

 記者さんはボイスレコーダーのスイッチをいれた。

 

「まず、署長がおっしゃっていたニュースサイトって、なんですか?」

 

「えっと……」

 

 どうこたえたらわかりやすいかな。

 

「……ぼくと川島さんが管理してる、この街のニュースをあつかうウェブサイトです」

 

「どんなニュースを?」

 

「今回の空き巣事件だったり、なんでも。みんなに真実を知らせたいから」

 

「なるほど。取材するときに、気をつけていることはなんですか?」

 

 質問に、こころの中がチクッといたんだ。

 

 その問いに対するこたえこそ、ぼくたちがこのサイトを運営するきっかけなんだから。

 

「それは、……誤報(ごほう)をなくすことです

 

「え、誤報ですか? まちがった情報を流さないっていう意味?」

 

 意外なこたえだったのか、記者さんの目がぱちくりした。

 

「そう。だって誤報なんか流したら、いろんな人が悲しんだり、傷ついたりしますから。ていねいに取材をして、誤報をだす可能性をてっていてきに低くしています」

 

「すばらしい。我々も見習いたい姿勢ですねー」

 

 記者さんは感心したように、首をコクコクとたてにふった。

 

「じゃあ、川島さんは? どんなことを心がけて……」

 

「あたしは!」

 

 果報は順番が回ってくると、待ちきれず記者さんのボイスレコーダーをふんだくった。

 

 えっと思って見ていると、果報はすっごい笑顔でこういったんだ。

 

「ヤマカンですっ!」

 

 

 ***

 

 

「ヤマカンはダメだろ」

 

 警察署からの帰り道。

 

 目にしみる青空の下、ぼくはとなりをニコニコしてあるく果報に声をかけた。

 

 せっかくの晴れ舞台だったのに、果報のあの言葉はない。

 

 それまで感心されていたのに、おかげでみんなに大笑いされたんだから。

 

「ぼくがマジメにこたえてたのに、あれじゃ誤報しますっていったようなもんじゃない」

 

「誤解してるよ、みんな。ヤマカンって言葉は戦国時代の知将、山本勘助(やまもと かんすけ)の略という説があるんだよ。するどいカンを働かせ、成功をおさめることをいうんだから」

 

「知らないよ。ふつうは当てずっぽうだと思うでしょ」

 

「いいじゃん。うけたんだし」

 

「お笑い芸人じゃないんだから」

 

 ぼくは「まったく」といって、ため息をついた。

 

 セリフからわかるとおり、果報は重度の歴史人物マニアである。

 

 過去にうもれたできごとを追究することに、ロマンを感じるらしい。

 

 記者らしいっちゃらしいけど。

 

 彼女はぼくと同じ、六年五組のクラスメイト。

 

 ハーフパンツにショートカットで、いつも目を輝かせている女の子だ。

 

 積極的で好奇心旺盛(こうきしんおうせい)で、なんだかんだ、ぼくはずいぶん彼女の明るさに助けられてきた。

 

 そして……。過去にはすごく傷つけたことも。

 

 だから晴れの舞台でちょっとやらかしたって、本気で怒る気にはなれないんだ。

 

「それにしても、あー! やったー! うーれしー! 表彰されちゃったよー!」

 

 果報は喜(よろこ)びを爆発させるように、前に飛びでて大きくジャンプ!

 

 そしてこっちにふりかえって、またニカッと白い歯を見せた。

 

「で、情也。空き巣はつかまったしさ。ニュースサイトの取材、つぎはなににする?」

 

「うん。実はやりたいことがあるんだ」

 

「なになに? あたし、歴史人物の特集がいい!」

 

 果報はうれしそうにいった。

 

「それはまた、つぎにしようよ。いまはもっと問題になってる人物がいるでしょ?」

 

「もしかして、あれ?」

 

「そう。あれ」

 

「やっぱり! 織田信長(おだ のぶなが)でしょ!」

 

「ちがうよ。なんでこの流れでその名前がでてくんの」

 

 ぼくは果報につっこむ。どうしてそんなに歴史人物特集にもっていきたいんだ。

 

「いま、あれっていったらあれでしょ。怪人X

 

「ああ、怪人Xか。なるほど!」

 

 果報はうんうんとうなずいてから、

 

「で、誰だっけ」

 

 と、真顔で聞いてきた。さっきの「なるほど」は、なんだったんだ。

 

 ぼくは怪人Xについて果報に説明して、

 

「となりのクラスで山崎(やまざき)クンが、からかわれてたのを見たんだ」

 

 と、なぜ調べたいと思ったか伝える。

 

「山崎クンって、たしかお父さんが役者さんの男の子だよね?」

 

「そう。そのお父さんがテレビであやしい役を演じたから、怪人Xの正体じゃないのって。けっこうみんなからいわれてた」

 

「──そうなんだ」

 

 果報はちょっと真面目な顔になった。かつてのことを思いだしたんだと思う。

 

「まだイジメにはなってないけど、だからこそ、いまの内に止めないと。それってぼくたちの使命でしょ?」

 

 そういうと、果報がこっくりうなずく。

 

 やっぱり、たよりになる相棒だ。

 

 

 ***

 

 

 楽しそうに帰宅する情也と果報。

 

 しかしそんな二人を陰から監視する、二つの視線がありました。

 

「ふ。名前をよばれバレたかと思ったが」

 

 眼光(がんこう)するどく、片方の影はつぶやきます。

 

「怪人Xか。こちらでそうよばれておるとはのう」

 

「ぶっそうなよび名でございますなあ」

 

「目をはなすなよ、サル。我(われ)らの目的がかなうかは、あやつらにかかっている」

 

「わかっておりますとも!」

 

 もう片方の影が、バナナを食べながら返事をします。

 

 でもよごれた手をついとなりの影の服でふいてしまい、頭にゲンコツをくらいました。

 

 その間に情也と果報を見失い、サルはもう一発ゲンコツをくらったのでした。



ふたりを見守るあやしい影はいったいだれなんだ!?!?
第2回につづくよ!(1月8日 午前7時 公開予定)

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