スペシャルれんさい『スイッチ!(1)イケメン地獄はもうカンベン!』 【37】コンサート当日

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【37】コンサート当日
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「すごい。こんなに広い会場でやるんですか?」
私はステージをグルリとかこむ客席を見つめ、思わずつぶやく。
「今回は次の『ドリームシップ』のデビューアイドルが決まるからね。マスコミもたくさん来てる」
関係者席をぎっしり埋めるマスコミの数に、世間の関心度の高さが垣間(かいま)見える。
「……みなさん。練習では一度だって完璧じゃなかったのに。本当に大丈夫なんですか?」
「そーゆー不安にさせるようなことをいまさら言うなよ。いまさら」
「そういえばまつりちゃん、その腕章はなに?」
「はいっ。私たちは勉強がてら、お客さんの整理と、会場の警備も手伝うことになってまして。お付き添いできるのはここまでです」
そう告げると、3人はおどろいたような顔をする。
「短い間でしたが、本当にお世話させていただきました。3人が力をあわせれば必ず、優勝できると思います。がんばってください」
「……なんか超他人行儀なんだけど」
翼さんがすねたように唇をとがらせる。
「え? そうですか? 私もともと他人ですし」
「いやいやっ。他人じゃないでしょ。マネージャーなんだから!」
和月さんの言葉に、私はポンと手を打った。
「そうですね。あと4時間は他人じゃないですね」
「……ポチ子。さみしいこと言うなよ」
翼さんが情けない声を出す。
「俺ら、だいぶオマエの言うこと聞いてやったよな。だから──もし優勝できたら、ひとつ言うことを聞け」
「……」
「ポチ子。そこまで嫌そうな顔をしなくても……」
「だって絶対にいやなこと言うに決まってるんじゃ……」
モニターをジッと見つめる3人のすがたに、私はふうっとため息をついた。
「わかりました。それからみなさん。手を出してください」
「──これは?」
「お守りです」
言われたままに3人は手のひらを上に広げる。
「小笠原和月さん。だれよりもお客さんをよろこばすことの好きな和月さんですから、最高のステージを作ってきてください」
「まつりちゃん。……ありがとう」
和月さんがギュッとお守りを手のひらの中でにぎりしめる。
次は翼さんの前にたち、手の中にお守りをにぎらせた。
「翼さん。翼さんが夜中や昼休み、こっそり練習していたのを知っています。どんどん上達していく翼さんのおどりに、感動しました。ぜひその感動を会場にいるファンに届けてください」
「ポチ子。サンキュー…僕、がんばってくる」
翼さんの瞳は強い決意でかがやいていた。
「そしてレンさん。はじめてレンさんのおどりを見たとき、美しくて鳥肌が立ちました。同時にとてもさみしいダンスだと思いました。でもいまのレンさんのおどりはちがいます。いままでとはちがったレンさんのおどり、楽しみに待っています。今日だけは──ファンのことだけを考えてください」
レンさんは私が手わたしたお守りをジッと見つめる。
「これオマエが作ったのかよ」
「はい。昨日夜なべして作りました」
3人の手には、フェルトで作った3人のマスコットがのっている。
「どうりでぶさいくなわけだ」
「なっ! ヒドイです! 人がせっかく──わっ」
レンさんが私の頭を自分の胸にすっと押しつける。
「──これから本番だ。吐くなよ」
「!」
抗議をこめて見上げたレンさんの顔が笑顔で、私はおどろく。
和月さんと翼さんも抱きつく。
それは──いままでみた中で一番きれいで屈託のないものだったから。
「──さあ。行ってきてください!」
3人の背中を押し、ステージへと送りだす。
コンサートのはじまりだ。

【書籍情報】
スイッチ!(1) イケメン地獄はもうカンベン!
- 【定価】748円(本体680円+税)
- 【発売日】
- 【サイズ】新書判
- 【ISBN】9784046317674