スペシャルれんさい『スイッチ!(1)イケメン地獄はもうカンベン!』 【36】つながりはじめた絆たち

大人気シリーズ『スイッチ!』の第1巻をスペシャル公開!
男嫌いなのにイケメンアイドルたちのマネージャーになっちゃった!?
キュン度MAXな、笑ってトキメク学園ラブコメ☆ ぜひ、この機会にチェックしてくださいね!
『スイッチ!』シリーズ最新⑫巻も好評発売中です!
ジョーカーのメンバーが、まさかの女子校に潜入!? お見のがしなく!!
☆『スイッチ!』動画はコチラから!

★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★
【36】つながりはじめた絆たち
★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★
黒猫館。402号室。
コンサートまであと3日となり、3人の顔にも緊張が走る。
しかしダンスは、3人の心のようにまだまだバラバラのままだ。
「はいっ。では今日のレッスンはここまでです。そして今日からみなさんに実施していただきたい恥ずかしいプレイがあります」
「恥ずかしいプレイって……」
翼さんは顔を赤らめ、和月さんはクツクツと笑う。
「まつりちゃん、大胆だね」
「レッスンが終わったら、ほかのふたりを必ずほめてください」
「ほめるところがない場合はどうすればいいんだよ」
「それは僕のことを言ってるのか?」
「ほかにいるわけないだろ!」
「ケンカはやめてください! ほめるところが見つからなければ、見つかるまでレッスンは終わりません。いいですか、どんなことでもいいんです。必ずひとりにひとつですよ!」
「まつりちゃんは俺らのこと、ほめられるわけ?」
「もちろんです!」
私は胸をはり、大きくうなずく。
「ほおおお。じゃあほめてみろよ」
「みなさんのよいところは平均よりルックスがよいこと。以上です!」
「……ほかには」
「聞こえませんでしたか? 以上ですっ」
「「「……」」」
どんよりとするメンバーに向かい、私はキョトンとする。
「……俺。まつりちゃんよりは、まともなこと言えそうだわ」
「「……同感」」
和月さんのこぼした言葉に、翼さんとレンさんが大きくうなずくのでした。
「では。レンさん、お願いします!」
「──パス」
レンさんは面倒くさそうに顔をそらす。
「パスは認めません」
「オマエに指図(さしず)される筋合いはない」
「忘れましたか? 勝負に負けたみなさんは、忠犬のように私の言うことを聞く。約束したはずです」
「そんな約束守る必要ないだろ」
いらだたしげにはきすてるレンさんに向かい、私は静かな口調で語りかける。
「レンさん。──逃げないでください」
その言葉にレンさんはドカッと腰をおろし、はあっと大きなため息をつく。
「小笠原和月。和月は仕事入れすぎ。おぼえが悪い。そもそも練習する気あんの?」
「──あ?」
和月さんが声をとがらせ、眉間にしわをよせる。
「──ただ。責任感が強くてたよりがいがある。和月がいないと、すぐにバラバラになってた。和月は──すごいと思う」
「あれ? 和月さん」
「わっ。タンマ。こっち見ないで」
和月さんは真っ赤になって、顔を片手で隠す。
「次は翼さんです」
「翼はそもそも運動神経が悪くて、ダンスをなめてるのが目に見えてイラつく。惰性でやるならやめてほしい」
「……言いたいことはそれだけかよ」
翼さんは、肩をふるわせながら、レンさんをにらみつける。
「ただ。本気で集中したときの翼の吸収力はすごい。本当だったら何ヶ月もかかるようなことを、一瞬でやってのけたりしてムカつくけど、そこだけはすごいと思う」
「レン……」
翼さんがおどろいたような顔でレンさんを見つめる。
「ただし。俺は翼が大嫌いだけどな」
「そっくりそのまま、返してやるよ!」
「わーっ。せっかくいい感じだったのに! ケンカはやめてくださいー!」
でも3人の空気がやわらかくなっている。
その後もレッスンのあとには必ず反省会の最後にお互いのよい点を話しあった。
3人のおどりの動きと同じように、心が重なっていくのがわかった。
「それでは。明日はがんばってくださいね!」
明日はいよいよオーディションをかねたコンサート当日。
そして──。
真剣にレッスンをつづけている3人の顔を盗みみる。
それは、すなわち──。
私が3人のマネージャーを終える日でもあった。

【書籍情報】
スイッチ!(1) イケメン地獄はもうカンベン!
- 【定価】748円(本体680円+税)
- 【発売日】
- 【サイズ】新書判
- 【ISBN】9784046317674