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<①~③巻トクベツ無料公開!>『サキヨミ!』第9回 言えない秘密


人の “不幸な未来”が見える「サキヨミ」の力を持つ私・如月美羽。同じ部活のミステリアスなイケメン・瀧島君と二人で、協力して未来を変えることに!? この力のことは二人だけの秘密なんだけど、友だちの夕実ちゃんから隠しごとをうたがわれちゃって……?

すてきなお知らせ&シリーズ10巻とうたつ!!!!!

なんと、角川つばさ文庫でずーーーっと大人気の「サキヨミ!」シリーズに、スペシャルなお知らせが……! 10月2日ころまで待っててね!
「サキヨミ!」は、恋に部活に友情に……青春がいーっぱいつまってる!
最っっっ高にときめいてキュンキュンする学園ラブコメだよ♡
このすてきなシリーズを、もっともーっとみんなに知ってもらいたくて、特別に①②③巻を《スペシャル連載》でお届けしちゃいます!
①巻はまとめてぜんぶ公開、②③巻は毎日連載していくよ。

 ※2023年12月15日までの期間限定公開です。

ここからは第②巻だよ!

...。oо○ ①巻もくじ はこちら ○оo。...
...。oо○ ②巻もくじ はこちら ○оo。...

.。*゚+.*.。 9 言えない秘密 ゚+..。*゚+

「美羽(みう)ちゃんさ。私に何か、隠してること、ない?」

 ……ゴクリ。

 電話ごしの夕実(ゆみ)ちゃんの言葉に、私はつばを飲み込んだ。

 隠してることって……もしかして、私が「ミミふわ」をやってるってこと?

 それとも、私に「未来が見える」力があるっていうことまで、バレちゃってる……!?

(うっ、ウソでしょ――!?)

 

 私――如月(きさらぎ)美羽には、人の「よくない未来」が見える。

 人の顔を見たとき、その人にこれから起こる未来のできごとが、映像で見えてしまうことがあるんだ。

 その映像や力のことを、私は「サキヨミ」って呼んでる。

 小さいときに起こったある事故がきっかけで、私はサキヨミを見るのが怖くて、人の顔を見られなくなってしまったの。

 でも、中学に入って出会った瀧島幸都(たきしま ゆきと)君も、同じ力を持っていて。

 瀧島君は、その力を使って人助けをしていた。

 動画配信者「雪うさ」になって、「サキヨミ」で見た未来を「占い」として発信。注意を呼びかけることで、見えた未来が実現しないようにしてるんだ。

 弟のシュウが大怪我をしてしまうっていうサキヨミを見た私に、瀧島君は力を貸してくれた。

「ミミふわ」っていうキャラクターを作って、私を変身させてくれたの。

「ミミふわ」になることで怖さがうすれた私は、たくさんのサキヨミを見ることができたんだ。おかげで、最後にはシュウを助けることができた。

 サキヨミの力のことも、雪うさやミミふわのことも、瀧島君と私、二人だけの秘密。

 実は、ミミふわになっているとき、美術部の親睦会をやっていた夕実ちゃんやレイラ先輩、叶井(かない)先輩と、バッタリ会っちゃったの。

 でも、ミミふわの正体が私だってことは、なんとかバレずにすんだ――……はず、だったのに。

「な、何のこと?」

 スマホを持つ手が震える。なんだろう。夕実ちゃん、いったい何を言おうとしてるの……!?

 もし、私がミミふわだってことが夕実ちゃんにバレてたら、どうなるんだろう。

 ミミふわは、うさ耳カチューシャに羽の形の仮面、ピンクのワンピースを身につけて、テンション高くみんなの占いをしていくっていうキャラなんだ。決め台詞は「ふわぽよ」。

 普段のおとなしい私からはとても想像できない、真逆のキャラクター。

 夕実ちゃん、変に思うかな。『あれが美羽ちゃんの本来の姿なの? それじゃあ普段の美羽ちゃんはウソなの?』なんて言われちゃったら、どうしよう。

 隠しごとをしていたことだって、きっとよく思わないよね。

 同じクラスで、同じ美術部。中学に入って、初めてできた友達だったのに。

 私が「ミミふわ」のことを打ち明けたら、夕実ちゃんとの関係は、壊れちゃうかもしれない。

 それに、もし夕実ちゃんがだれかに話してしまって、学校中に広まってしまったら……?

(……いやぁぁぁぁぁっ!!)

 ちょっと想像しただけで、血の気が引く。そんなことになったら、恥ずかしくてもう学校に行けないよ!

「うん、あのさ……もしかして、なんだけど」

 夕実ちゃんが声をひそめた。ドキドキと、心臓が波打つ。

「……美羽ちゃん、瀧島君と付き合ってる?」

 ………………ふえっ!?

「えっ、ご、ごめん、何て? 瀧島君と、私が?」

「うん。付き合ってるのかなって」

 …………え。

(えええええ―――――っ!?)

 なっ、何その予想外の答えはっ!!



「つ、つ、付き合ってないよ!? なんで!? なんでそう思ったの!?」

「見たの。美羽ちゃんと瀧島君が、歩道橋の上で話してるところ」

 歩道橋……!

 たしかに今日、私と瀧島君は、シュウを助けた後、公園から二人で歩いて帰ってきた。

 その途中、歩道橋の上でしばらく話して、その……ちょっとした事故で、瀧島君に抱きつかれちゃったりもしたけど……まさか、あれを夕実ちゃんに見られてたの!?

「な、ないない! あるわけないよ、そんなの!」

 私は思わず、ブンブンと首をふった。

「見間違いじゃない? 私と瀧島君が付き合うとか、ありえないでしょ! だって、瀧島君だよ? かっこよくて人気者の、あの瀧島君! 私じゃつり合わないし、そもそも相手にされないよ!」

「そうかな? そんなことないと思うけど……」

「とにかく、絶対に見間違いだよ! だ、だって私、今日、一日家にいたし……!」

 とっさについたウソに、きゅっと胸がしめつけられる。

 そもそも私、体調不良ってことで、親睦会をお休みしたんだよね。シュウを助けるためとはいえ、夕実ちゃんだけでなく、レイラ先輩たちにもウソをついちゃった。

 ウソをつくって、気持ちがいいものじゃないけど……瀧島君との秘密を守るためだと思えば、こうするしかないんだ。イヤだけど、しかたがない……よね。

「――そうだよね。美羽ちゃんがそんなウソ、つくわけないよね。ごめんね、変なこと聞いて」

 夕実ちゃんのその言葉に、ちくりと胸が痛んだ。ごめんって言わなきゃいけないのは、ウソをついている私のほうなのに。

「あ、ところでさ、美羽ちゃん、『ミミふわ』って知ってる?」

 ――ドキッ!

「み、ミミふわ? なに、それ?」

「雪うさの妹分なんだって! かわいくってさ、もうすごいの! 占いで人助けをしちゃったんだよ!」

「へ、へえー! すっ、スゴイね!」

 いきいきとはずむ夕実ちゃんの声とは反対に、私の声はぎこちなく上ずる。

「あこがれちゃうなぁ。私にはあんなこと、絶対できないよ。私、ミミふわさんのこと、もっと知りたいな」

 ぎくり、と体がこわばった。もっと、知りたい? それって……どういうこと?

 まさかとは思うけど……やっぱり夕実ちゃん、私がミミふわだってこと、感づいてる……?

「あのさ、美羽ちゃん」

「なっ、何っ?」

 つーっと、背筋を冷や汗が流れた。胸の鼓動も、うるさいほど激しくなっている。

「えっと…………ううん、なんでもない。それじゃあ、また学校でね!」

 夕実ちゃんがそう言ったとたん、電話はぷつっと切れてしまった。

(……何を言いかけたんだろう?)

 なんとなくすっきりしない気持ちで、私はスマホを顔の前に下ろした。

 すると、ピコンと新着動画の通知が出た。雪うさ――瀧島君が、新しい動画をアップしたんだ。

 ピンク色のワンピースにちょうちょ形の仮面、うさ耳カチューシャにピンクのカツラ。「ぴょんぴょーん!」という決め台詞が特徴的な、加工されたかわいい声。

 このかわいい女の子の正体が、あのクールな瀧島君だなんて、だれも思わないだろうな。

 同じように、ミミふわのことだって、だれにもバレるはずない、よね……?

「雪うさ、今日の一言です! 自分の気持ちを大事にしましょう! それがステキな未来への近道です!」

(この子がさっきまで会ってた瀧島君だなんて、なんだか、不思議……)

 瀧島君と力を合わせて、サキヨミの力で人助けをしていこうって、決めたばかりだけど。

 私……ちゃんと、やっていけるかな。

 雪うさの動画を見終わったとたん、どっと疲れが押しよせてきて、私はベッドに倒れこんだ。

 そしてそのまま、ゆっくりと眠りに落ちていった。


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