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みんなのイチオシ! “怪盗レッドのナンバー1人気の巻” 前後編を全文ためし読み! 第7回

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19  ラドロのアジトにて

「どうして、あなたに案内されるわけ?」
 わたしは、恭也をジト目で見る。
「ラドロにとっておれは新参者だからな。こういった雑用仕事もこなさなきゃならないんだよ」
 苦労してる、みたいな表情をしてるけど、恭也はこの状況をどこか楽しんでるように見える。
 だいたい、ラドロにいるからって、素直に使われるような性格でもないし。
 レッドのコスチュームから、私服すがたに着替えたわたしは、恭也の案内で、街中にある高層ビルにやってきていた。
 外からだと、上が見えないぐらいに高い。
 50階か、60階はありそう。
 1階の床は、きらりと光る大理石。
 スーツすがたの男女の会社員風の人たちが、1階ロビーだけでもかなりの数いる。
 見た感じは、ふつうの会社のように見える。
 といっても、ふつうの会社がどんななのか、くわしいわけじゃないんだけど。
 ドラマとかで見るのと、イメージが同じ。
 受付に美人のお姉さんが、すわっている。
「やあ。今日もきれいだね」
 恭也が、受付のお姉さんに話しかける。
「どうぞ、お通り下さい」
 受付のお姉さんは、恭也の言葉には無表情で返事をする。
 完全に、恭也のあしらい方がわかってる。
「つれないなぁ」
 恭也が、しょんぼりした様子でもどってくる。
 今の話しぶりだと、だいぶ慣れてる感じだよね。
 ……やっぱり、関係者?
「ここは、ラドロのアジトなの?」
 わたしは、恭也にきくけど、肩をすくめるだけ。
 質問には、答えるつもりはないみたい。
 恭也といっしょに、エレベーターに乗りこむ。
 ほかに乗ってくる人はいなくて、恭也と2人だけだ。
 恭也が50階のボタンを押して、そのままエレベーターは動きだす。
 もうすぐ、ケイに会える。
   ドクン
 そう思うと、心臓の鼓動が大きくなる。
 なにを言えばいいのか。どんな顔をすればいいのか。
 自分でも、よくわからない。
 エレベーターから景色をながめるよゆうもないままに、50階に到着する。
 エレベーターをおりると、赤紫のじゅうたんのしかれたろう下が、のびていた。
「こっちだ」
 恭也が、先を歩いていき、目の前の、ぶあつい立派なドアの前に立つ。
   コンコン
 恭也がノックすると、中から人の気配がして、ガチャリとドアが開く。
 出てきたのは、スーツすがたの女性だ。
 ドアを開けたままにして、中に入るように、うながされる。
 わたしは、ゆっくりと部屋の中に入る。
 入った部屋は、学校の教室の3倍はありそうなぐらい、広かった。
 前、全面がガラスで、さえぎるものもなく、空を見わたせる。
 その手前には、テーブルとソファがあり、そこに、スーツすがたの白髪の欧米系の老人が1人、そして、そのむかい側に………………ケイが、すわっていた。
 なぜか、2人は、チェスを指している。
 …………は?
 あまりに予想外のケイのすがたに、わたしは思考が停止する。
 最後に船の上から連絡してきた様子から、拉致されたとかじゃないんだ、とは思ってた。
 だけど、ラドロのところにいるって言うんだから、もっと緊迫した雰囲気が流れてるものだと、思うでしょ。
 なのに、これはなに?
 部屋の中は、ゆったりとした雰囲気で、チェスを指すケイと老人も、どことなく親しげだ。
 しかも、こっちにまだ気づいてないみたい。
 そんな間のぬけた状態だけど……でも。
 ……それでも……ケイが目の前にいる。
 不意にそのことが実感できて、目にじんわりと、涙がたまる。
「ケイッ!」
 呼びかけたとたん、体が動いてしまった。
「アスカ……!?」
 わたしに気づいて、おどろいた声をあげるケイ。
 ケイに駆けよったわたしは、だきつく。
 なんで勝手にいなくなってるのよ、バカ。
 心配しないとでも思ってたの。
 落ちこまないとでも思ってたの。
 それとも……わたしならだいじょうぶだって、信じててくれたの?
「アスカ……」
 ケイがもう一度、わたしの名前をよんで、わたしはケイから体をはなす。
 でも、肩はつかんだまま。
「勝手にどっかにいなくなるのには、慣れたけど、相棒に心配かけないでよね! それと家族にも」
 わたしは、キッとにらもうとしたけど、目から涙がポロポロとこぼれてきて、うまくできない。
「……ああ、そうだな」
 ケイは、なぜか目をふせて、ほんのわずかに、笑っている。
 なによ、その顔は。
「本当に反省してるの?」
「しているが、今はそれよりも、先に話すべきことがある」
 ケイは、表情を真剣なものに変える。
 それで、わたしもケイからはなれて、気を引きしめる。
 目の前にいる老人。
 ケイがインカムで伝えてきたことが事実なら、この老人がラドロの……。
 そう思っていると、部屋の奥から人影がすがたを見せる。
 1人は赤いドレスの小さな女の子、そしてもう1人は、黒い装束のひょろりと背の高い男。
 有栖ちゃんにサクス!?
 有栖ちゃんは、いつものにこやかな楽しげな笑みで、ステップをふむように近づいてくる。
 サクスは、めんどうくさそうな表情をしながら、老人のうしろに立つ。
「また会えたわね、レッドさん」
「……う、うん。数日ぶりだね」
 いつもの調子で話しかけてくる有栖ちゃんに、わたしはなんとか返事をする。
 なにがどうなっているのか、理解を追いつかせるのに必死だ。
「さて。それでは話をしようか」
 そこで、ようやく老人が言った。
   ピリッ
 そのひと言だけで、まわりの空気が緊張する。
 ケイばかりを見ていて、老人をよく観察してなかったけれど、この人、ただ者じゃない。
 白い髪はきれいに整えられ、顔のしわも年齢を感じさせるものながら、その気配とプレッシャーは、今まで戦ってきた強敵たちとくらべても、決しておとらない。
 スーツすがたで、品のいい老人という感じに見えたけど、そんなのに、だまされちゃダメだ。
 ソファの横に車いすがおいてあるところを見ると、おそらく歩くことは難しいのだろうけど、それでもつい、身がまえてしまいそうになる。
「きみの活躍ぶりは見ていた。紅月アスカ。なかなかのものだった」
 老人が、わたしを見る。
 見すかすような視線に、落ちつかない気分になる。
 それよりも、活躍を見ていたっていうことは、やっぱりラドロはUFパークでのことを、知っていて、監視してたってわけね。
「あなたが……ラドロのボス?」
 わたしは、老人の目力におされないように、ぐっと体に力をこめて、質問する。
「そうだ。そこの不肖の弟子の師匠でもある」
 老人はそう言って、この部屋に入ってから、やけにおとなしい恭也にむけて、指をさす。
 …………はい?
 恭也の師匠? ということは……。
「ファンタジスタの師匠!? ……え、でも、ちょっと待って。どういうこと?」
 頭が混乱して、すぐには理解が追いつかない。
「むずかしい話じゃない。おれたちと、同じなんだ。織戸恭也は2代目怪盗ファンタジスタだ。初代はこの目の前にいる、ラドロのボスだ」
 ケイが、説明をしてくれる。
「えええええっ!」
 思わず、大声をあげてから、しまった、とあわてて口をおさえる。
 場の空気が、少しだけゆるむ。
「不肖の弟子とはひどいですよ。今回はがんばったでしょう」
 恭也が、不服そうに老人――ラドロのボスにむけて言う。
「崖から落ちたていどで、1カ月も意識不明とは、たるんでいる証拠だ!」
 ラドロのボスが、恭也を一喝する。
「そ、そんなむちゃな。そりゃあ、助けてもらったのには、感謝していますが」
 恭也も、このラドロのボスである師匠には、頭が上がらないらしい。
 口調もちがうし、めずらしく、おされっぱなしだ。
「織戸恭也は、フラワーヴィレッジ城から転落したあと、ラドロによって助けられたそうだ。だが、意識不明の状態が1カ月ほどつづき、リハビリが終わったのが、つい最近のことらしい」
 ケイが、事情を知らないわたしに、フォローを入れてくれる。
 なるほど。
 でも、後遺症らしきものがなかったのは、よかったと思う。
 ファルコンは、だいぶあちこちに傷跡をのこしていたし。
「話をもどそう」
 ラドロのボスの言葉に、わたしは視線をもどす。
「取引のほうも、無事に片づいた。成果は上々といったところか」
「そうか」
 ケイは、短くうなずく。
 取引って? どういう意味だろう?
 ケイは、わかっているっぽいけど。
「紅月飛鳥は、知らない話だったな。一応だが伝えておく。UFパークでの事件の裏で、タキオンは世界の食料を人質にとれるような、遺伝子組み換え植物を、手に入れようとしていた」
 え?
 ええええええっ!
「だいじょうぶなの、それ!」
 といっても、言っている意味が半分ぐらいしか、わからないんだけど!
 そういえば、美華子さんもテロを起こすなんて、タキオンらしくないって言っていた。
 裏に、なにか事情があるのかも、とも。
 それが、このことだったの!?
「無事に片づいたということは、別働隊が阻止に成功した、ということだろう」
 ケイが冷静に言う。
 わたしたちが動かなくても、ラドロが動いたってこと?
 なんのために?
「ラドロの別働隊ではないが、まあ、問題なくな。今後、同じことが起きないような対策まで、ちゃんとしておった。……なかなかに、有望な2人組だな、あれは」
 ラドロのボスは、最後にぼそりと言ったけれど、よくききとれなかった。
 ともかく、そっちの食料人質作戦は、阻止されたってことみたい。
 気にはなるけど、それはケイに、あとできいてみよう。
「さて、紅月圭。こちらは見たいものは見られた。合格だ。あとは、そちらの回答次第だ」
 ラドロのボスはそう言って、ケイをするどい眼光で見る。
「……わかった。考えておく」
 ケイは、その視線を受け流して、答える。
 また、わからない話をしてる。
 さっきから、この2人の会話は、ほとんどわからないんだよね。
 ――と、ケイがソファから立ちあがる。
「……用はすんだ。帰ろう、アスカ」
 ケイは言うと、部屋のドアにむかって、歩きだす。
「えっ? ええっ?」
 さっきまで、レッドモードだったケイが、いつもの調子にもどってる。
 っていうか、もう帰るの!?
 いろいろとききたいことが、あるんですけど!
 しかも、ラドロのボスが今、目の前にいるんだし。
 このまま帰っちゃっていいの?
「今は、これだけだ」
 ケイが、はっきりと言う。
 そこまでケイが言いきるなら、これ以上話をきけたりは、しないってことなのかな。
 心のこりはあるけれど、ケイと再会できたし、よくばらないほうがいっか。
 わたしは、ケイの横にならんで、いっしょに部屋を出る。
 だれも止めてきたりは、しなかった。
 恭也と有栖ちゃんが、小さく手をふってくれてたけどね。

 わたしとケイは、いっしょにエレベーターに乗って、1階までおりる。
 ビルの外に出ると、もう日が暮れるところだった。
 すっかり、1日、事件にふりまわされちゃった。
 スマホを見ると、実咲や水夏、優月からのメッセージや着信が、山のようにきてる。
 やばっ……そういえば、UFパークで別れたままだ。あとで連絡しとかないと。
 わたしとケイは、だまったまま駅にむかって歩く。
 3分ほど歩いたところで、ふとケイが言った。
「今回はすまなかった」
 え? ケイが、あやまった?
 びっくりして、思わずケイの顔を見る。
 本気で言っているみたい。
 それなら、わたしもちゃんと答えなきゃね。
「……いいよ。気にしてないって言ったら、ウソになるけどね。なにか理由があったんでしょ」
 わたしは、今の気持ちを素直に伝える。
 再会する前までは、ケイに怒る気持ちもあった。
 だけど、再会したらどうでもよくなっちゃったんだよね。
 だって、ケイが自分勝手な理由で、すがたを消したとは、とても思えなかったから。
「理由は、まだ話せない」
 ケイが答える。
「だろうと思った。なら、待ってる」
 わたしがさっぱりと答えると、ケイがびっくりしたような顔で、わたしを見る。
 こんなケイの顔を見られるのは、めずらしい。
「いいのか? なぐられるぐらいは、覚悟していた」
 なぐるって……わたしはそんなことで、暴力ふるったりしないってば。
 わたしの拳は、悪人専用なんだから。それに……。
「『まだ』なんでしょ。いずれ話してくれるなら、いいよ。正直、ラドロのこととか、すごく気にはなってる。ケイがなんでラドロのところに行ったのか、とか。ラドロがどうして、今回は協力的だったのか、とか」
 本当に疑問だらけだ。
「でも、それはかんたんに話せないだろうな、となんとなく予感してた。だから、話せるようになってからでいいよ。それで、きいてから、怒るかどうか考える。きかなくちゃ、それもわからないし」
「アスカらしいな」
 ケイが、息をつく。
「でも、わたしをふくめて、家族に心配かけるのは、なしだからね」
 わたしは、ケイの鼻先に指をつきつける。
「……わかった」
 ケイはうなずいたけど、たぶんその必要があれば、またケイは同じようなことをする気がする。
 でも、それならまたわたしが、ケイのことを探しに行けばいい。
「わたし、今回のことで思ったんだ。ケイがいなくても、もっといろいろできるように、ならなくちゃって。前に、2人で1人前の怪盗レッドだって、お父さんに言われたでしょ。でも、わたしは、1人で1人前になりたい。それで、ケイとあわせて、2人前の怪盗レッドになりたいと、思ったっていうか……」
 なんだか、はずかしくなってきて、最後のほうは言葉をにごす。
「……2人前だと、餃子の注文みたいだな」
 ケイが、笑って言う。
「ああもう! そういう意味じゃないってば! せっかく人が真面目に言ったのに!」
 たしかにわたしも言いながら、それっぽいな、とか餃子食べたいな、とか思っちゃったけど!
「とにかく、もっとがんばらなくちゃってこと!」
 わたしは、むりやりに話を終わらせる。
「……そうだな。本当にそう思う」
 ケイはうなずくと、自分の手のひらを見つめてから、ギュッとにぎりこむ。
 ケイはケイで、思うところがあるのかもしれない。
 問題は山積みだし、わからないこともたくさんある。
 だけど、決めてることが1つだけあるんだ。
 それは、先に進むっていうこと。
 あきらめたくなることも、くじけそうになることも、これからもあると思うけど、それでも前に、先に進む。
 それだけは、決めたんだ。
 だから、わたしは立ち止まらずに、先に進むよ。
 わたしは、となりを歩くケイを、ちらりと見る。
 ――ケイといっしょに。


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