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みんなのイチオシ! “怪盗レッドのナンバー1人気の巻” 前後編を全文ためし読み! 第7回

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16  タキオンの思惑

 爆発音がしたほうにむかうと、スタッフが集まっているのが見える。
 やっぱり、間に合わなかったの……!?
「気落ちするのは、まだ早いよ、お嬢さん」
 恭也が、わたしのとなりで言う。
 それって、どういう……!?
 近づくと、ちらほらと野次馬になっている、お客さんのすがたがある。
「爆発したのは、あれかな」
 恭也が、地面に横倒しになっている、金属製のゴミ箱を指さす。
 たしかに、ゴミ箱の金属が黒くこげているし、地面にもこげあとがある。
 でも、想像していたより、ずっと爆発の規模は小さい。
 ケガをした人がいたのか、スタッフに支えられて、救護室にむかっていく。
 よくは見えなかったけど、自分で歩けるぐらいで、見た感じのケガもすり傷しか、わからないぐらいだった。
「さがってください!」
 UFパークのスタッフの人がやってきて、お客さんが近づかないようにしてる。
 わたしや恭也も、スタッフの人の指示通りに、うしろに下がる。
「ゴミ箱が爆発したんだって」
「やだ! 早くここを出たほうがいいんじゃない」
 さわぎに気づいた若いカップルが、足ばやにその場を立ち去っていく。
 広いパーク内だから、爆発に気づいた人は多くないと思う。
 でも、すぐに情報は広がるし、見てない人が話をふくらませて伝えたりして、パニックが起こるかも。
「これだけで、テロってわけは、ないよね?」
「そうだといいけど、ちがうだろうね」
 恭也は、肩をすくめる。
 だとしたら、この爆発はなんなのだろう?
 こんな小さな爆発を起こして、タキオンになんの意味があるの?
 それとも、タキオンとはべつの人による爆発とか。
 ……ううん。それこそありえないよ。
 タキオンの計画と、ぐうぜん同じ場所で、べつの人が爆弾テロを起こすなんて。
「テロ失敗? これじゃあ、警戒されるだけだよね……」
 警察だってよばれるだろうし、パークは、臨時閉園になって、お客さんに帰ってもらうことになるかも。
 そうなったら、タキオンがUFパークを爆弾テロの場所に選んだ意味が、よくわからなくなる。
「……警戒されることが、狙いだろう」
「え? どういう意味?」
 わたしが恭也にきき返すのと、ほぼいっしょのタイミングで、とつぜん園内に放送が流れる。
『ギギィ……ジジィ……』
 大きなノイズが入り、思わず顔をしかめる。
『やあ、みなさん、楽しんでいるかな?』
 機械で変えた、若い男の声がする。
 その異質さに、お客さんやスタッフから、ざわめきが起きる。
『だが、楽しい時間は、今このときまでだ。我々はパーク内に爆発物をしかけた。さきほど、東の区画で小さな爆弾を爆発させた。これはほんのあいさつだ。この爆弾の10倍の威力のある爆発物を、パーク内にしかけてある。楽しみにするといい』
 タキオン!
 声が変えてあるから、だれかはわからない。
 あのときに見た、幹部のだれかだろうか。
「どういうこと?」
「さっきの爆発って、これのことよね!」
「アトラクションじゃないの?」
「ケガ人が運ばれてたのを見たぞ! アトラクションじゃない!」
 混乱した様子で、まわりの人たちのざわめきが、さらに大きくなっていく。
『これを見ろ』
 放送は終わっておらず、今度はパーク内のいろいろな場所に設置されている、大型ビジョンに映像が表示される。
 そんな……!
 覆面をした男女が2人、立っている。
 その横には、スーツを着たおじさんや、スタッフが、しばられた状態で床にころがされている。
 しかも、覆面の男女の手には拳銃がにぎられ、銃口はそのおじさんや、スタッフにむけられていた。
『このUFパークの社長とスタッフの一部は、すでに人質となっている。それと、今から外にだれか出ようとしたら、即座に爆弾を爆発させる。逃げ切れると思うなよ』
 ブツン、と放送と映像が同時に切れる。
 完全にしてやられた。
 わたしは、くちびるをギュッとかむ。
「ここからが、大変なことになるな」
 恭也が真剣な表情で、予言するようにつげた。
「いやーっ!」
「逃げるぞ!」
「〝爆発させる〟って言ってたわよ。出入口に爆弾がしかけてあったら、どうするの!」
「じゃあ、どうすればいいんだよ!」
「安全な場所にかくれるしかない!」
「どこが爆発するかわからないのよ! このパーク内に、安全なところなんてないでしょ」
「警察はどうしたんだ!」
「ずっと圏外のままだぞ!」
 お客さんが怒鳴り声をあげて、パニックになってる。
 広いパーク内だから、押し合いなどは、まだ起きてないけど。
 逃げると爆発させる、という脅しがきいているのか、出入り口にむかう人は少ない。
 むやみに逃げようとする人は、スタッフやほかのお客さんに、とりおさえられている。
 スカイタワーでの、パニックを思いだす。
 あのときは、せまいタワー内だったから、もっとひどかった。
 でも、今は逃げることすらゆるされずに、広いパーク内にいるしかない。
 恐怖心にたえられない人が多くても、おかしくないよね。
 でも、違和感がある気がする。
 爆弾テロを成功させたいなら、人質をとったり、小さな爆弾を爆発させて、おどすみたいなことを、する必要がぜんぜんない。
 爆発させたあとに、犯行声明みたいなのを、出すんじゃないかな?
 こんなとき、ケイならどう考える……。
 わたしは、必死に頭を働かせる。
 ケイみたいに一瞬では導きだせなくても、ケイの考えを一番近くできいてたのは、わたしなんだから。
 ………………あ。
「……まさか、これがやつらの狙いなの? さわぎを起こすこと自体が」
 ぽろりと、考えが口をついて出た。
「おそらく、正解だ」
 恭也がうなずく。
「テロを起こすのなら、だまってやればいい。わざわざ前もって、あおる必要性がないからね。だから、このテロは、とあるべつの重大事から目をそらすための、大がかりな陽動だ」
「陽動!? しかも、べつの重大事って……なんなのそれ!」
 わたしは、恭也につめよる。
「そっちの件には、べつの人間が対応しているよ。彼らなら、問題なく仕事を果たしてくれるだろう」
 恭也は、わたしにつめよられても、気にした様子もなく、答える。
 しかも、どこかほこらしげだし。
 でも、たとえそうだとしても、こことはべつの場所で事件が起きてるってきいて、だまってるわけにもいかないよ!
「だからといって、ここでのテロも、放置するわけには、いかないだろう? そして今、ここにいるのは、おれときみだけだ」
「そ、それは……そうだけど」
 テロを放置するのは、ありえない。
 だけど、恭也の言ってることが、信用できるの?
 ケイならこんなとき、冷静な判断がくだせるのに……。
 わたしには、それができない。
 判断できるのは、恭也をわたしが信用できるかどうか、だけ。
 どうして、こんなときにここにいないのよ、ケイ。
 わたし1人じゃ…………ううん!
   パンッ!
 わたしは、自分の両側のほおを、両手ではる。
 よし! 気合い入った。
 ケイの考えを、100%真似することはできなくても、それに近づくことは、できるはず。
 だって、わたしはケイの相棒なんだから。
 恭也が、わたしの急な行動に、おどろいた顔をむけてくる。
 でも、すぐに妙にうれしそうな表情になる。
「……ふっきれたか」
 恭也がなにかつぶやいた気がしたけど、よくききとれない。
「べつの事件にむかったのは、あなたが信頼している相手なのね?」
 恭也にきく。
「ああ。もっとも信頼がおける人間だ。いい相棒もついていたよ」
 そう話す恭也の目もとが、やさしそうに見えたのは、気のせい?
 だれなのかは気になったけど、それはおいておく。
 とにかく、恭也が信頼すると言う以上、それを信じる。
 それが、今のわたしに出せる結論だ。
「1つ、きいてもいい?」
「なにかな?」
「どうして、恭也はこのテロ事件の阻止に、協力しているの?」
 最初から、恭也の行動はよくわからなかった。
 情報をわざと流してきたり、なにかを知っているそぶりを見せたり。
 しかも、今はタキオンのテロ計画を阻止するのに、協力するつもりみたいだし。
 わたしが知っている恭也は、そこまでお人好しじゃなかったんだよね。
「正義の味方なんて、ガラじゃないが、恩人からの、ことわれないたのまれごとなものでね。今回にかぎっていえば、100%信用してもらっていい」
 恭也は、肩をすくめて答える。
 その言葉を、まるごと信じるのはどうかと思うけど、でもここまでの恭也の話に、ウソらしいものはないんだよね。
「わかった……信用する」
 恭也といっしょに、タキオンのテロを阻止する。
 一番大事なのは、このUFパークにいる人たちの、身の安全。
 それが、今のわたしの――怪盗レッドの方針だ!
「考えはまとまったようだね。それで、まずはどうする?」
 恭也が、わたしにきいてくる。
「それは決まってるわ。犯人のところに行く。といっても、様子を見にいくだけのつもりだけど。情報を得るには、それが一番だから」
 わたしは、考えていたことを恭也に伝える。
 あの大型ビジョンにうつしだされた場所の様子から、スタッフ専用の部屋の1つだと思う。
「ワナの可能性もあるぞ」
「だとしても、そこになにかの情報があることには変わりないでしょ」
 わたしの答えに、恭也はふきだすように笑う。
「な、なによ?」
「いや、きみらしい判断だと思ってね。きみの相棒がいたら、そういう決断はしないだろう。それに、今は意外と、それが一番かもしれない。……イノシシのような作戦だけどね」
「だれがイノシシよ!」
 なんで、みんなわたしのことを、動物にたとえるのが好きなのよ!
 しかも、まっすぐに進んでいく動物ばっかりだし。
「とにかく、方針が決まったわけだし、さっそく動くわよ」
 わたしはため息をつくと、走りだした。

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