みんなのイチオシ! “怪盗レッドのナンバー1人気の巻” 前後編を全文ためし読み! 第1回

3 いやしのチョコチップクッキー
次の日の放課後。
また、テスト勉強のために学校の図書館に行ったけど、自習机はいっぱい。
みんな、考えることは、いっしょなんだよね。
「だれかの家に行く?」
優月がきく。
「あー、うちはダメなんだよね。今日、おじさんが夜勤明けなんだ」
ケイのお父さんの、圭一郎おじさん。
今日の昼間に帰ってきて、今はぐっすり寝てるはず。
「うちも、今日はお母さんのお客さんがくるって……」
「じゃあ、わたしの家にくる?」
水夏は言うと、さっそくスマホで、家に連絡をとってる。
水夏は、しばらく話していたかと思うと、
「勉強会に使っていいって」
右手でオーケーサインを、出す。よかった!
どこかのお店でもいいけど、ガヤガヤしてて集中できないんだよね。
それに、お金がかかるのが、おこづかいにきびしい。
そんなわけで、わたしたちは、水夏の家にむかうことにした。
水夏の家は、きれいな赤い屋根の一軒家。
水夏のお母さんが出むかえてくれて、リビングを使わせてもらうことになった。
わたしの家のリビングより、2倍ぐらい広くて、中央にソファとテーブルがおいてある。
壁に液晶テレビ、窓際には、観葉植物がかざってあって、すごく整理されてる。
うちとは、大ちがいだよ。
お父さんたちが、けっこう物を置きっぱなしにするんだよね。
圭一郎おじさんが、見たことのない小型の機械とかテーブルに置いたままにしてて、下手にさわれなかったり、することもあるし。
そういうわけで、準備万全。テスト勉強をはじめたわけだけど……。
時間がたってくると、だんだんと集中が切れてくる。
う~ん……。
さっきから、数学の問題で手がとまったまま、10分ほどたってる。
ムダにシャーペンを、指で回したりしても、答えは頭にうかんでこない。
教えてもらおうにも、みんな集中してて、話しかけづらいんだよね。
そんなタイミングで、
「……ちょっと休憩する?」
実咲が顔をあげた。
「やったあ!」
わたしは、すぐに飛びつく。
「あれ? アスカがそんなに元気なら、やっぱり休憩はいらないかな?」
実咲が、わたしの顔色をうかがうように見る。
「ええええっ! すっごくつかれてるって。めちゃめちゃ集中力が切れてるから!」
わたしは、あわてて実咲に言う。
「もうアスカってば。そんなに必死にならなくても。冗談だよ」
「そんなに休みたかったんだ」
水夏が、肩をすくめてる。
うぅ……すっかり、見すかされてるよ。
「わたしも、少し、つかれちゃったかも。水夏ちゃん。キッチン借りていい? くる途中でお菓子とジュース買ってきたから、用意するね」
優月が立ちあがる。
「わたしも行くよ。カップの場所とかわからないでしょ」
水夏も優月といっしょに、キッチンにむかう。
わたしは実咲を見る。
「そういえば、試験が終わったら行きたいところ、実咲の希望を、きいてなかったよね?」
「試験が終わったら?」
「ほら、昨日話したテスト明けのお休みに、遊びにいく話」
「あっ、そのことね。そうだなあ……」
実咲だけ、意見きいてなかったし。
「どこでもいいんだけど……私も、遊園地がいいかな。UFパークなら、電車でそんなにかからないし。ジェットコースターや、観覧車やお化け屋敷とか、いろいろあるでしょ」
「たしかに、1日中いろんなことで遊べるから、お得かも!」
問題は、混んでることだけど、テスト明けのお休みの平日に行くから、だいじょうぶそうだし。
水夏と優月が、お菓子とジュースを持って、もどってくる。
おーっ! おいしそうな、クッキー!
わたしは、さっそくお皿から手にとって、ぱくりとひと口。
ふわ~、おいしい~!
バターの香りとチョコチップの甘さが口に広がって、つかれた脳が、いやされる感じ……。
「それで、なに、話してたの?」
「試験後のお休みのことだよ。UFパークがいいかなって」
「そうだね。ジェットコースターは、ちょっと苦手だけど、ほかにも色々あるし」
「それじゃあ、UFパークで決まりってことでいい?」
わたしは、あらためて3人にきく。
「「「うん!」」」
実咲、優月、水夏が、同時にうなずく。
やった! なにに乗ろうかなぁ。
今から、ワクワクしてきちゃうよ。
「ところでアスカ。ケイくんはさそわないの?」
あ~~、ケイか。
べつに、声をかけてもいいんだけど……。
「きいても行かないって言うよ。遊園地は、ケイにとって天敵みたいなもんだもん。行くまでに電車に乗らなきゃならないし、遊園地の中も、乗り物だらけじゃない?」
自転車でさえ、気持ちが悪くなるんだよ。
ジェットコースターに乗るわけないし。
観覧車も、だめなんじゃないかな?
「あ~、そうだっけ」
優月と水夏も、納得という表情になってる。
「それにしても、ちゃんと、おこづかいは残ってる? 遊園地に決めたのはいいけど、当日になってお金がないとかは、ダメだからね」
水夏が、わたしを見ながら言う。
なんでそこで、わたしを見るの?
「だいじょうぶだって! ちゃんとムダづかいしないで、ためてあるから」
あんまり、使うこともないっていうのも、あるんだけど。
トレーニング関係や、お菓子とかは、お父さんがお金を出してくれるし。
レッドで必要なものも、ケイがお父さんたちに請求してるみたい。
おこづかいを使うのって、たまにマンガを買うぐらいかなぁ。
「じゃ、そろそろ勉強にもどろう。テストの調子がわるいと、思いっきり遊べなくなるよ?」
実咲が、おどかすように言う。
そ、それもそうだね……。
補習決定だったら、どよ~んと、暗い気持ちで遊園地に行くことになるもん。
わたしたちは、そろって真剣な表情になると、さっそくテスト勉強にもどることにした。
「みんなで、がんばろう!」
「「「お――――っ!」」」