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怪盗レッド スペシャル 第4話 マサキの“なにごともない”休日[前編]

     

 

 今回の恭也様の潜伏先(せんぷくさき)は、桜子が住んでいる(まち)から、だいぶはなれている。

 今は深夜の2時すぎ。

 電車やバスなどの公共交通機関は、すべて終わっている。

 だが、電車が動きだすまで待っているわけには、いかない。

 おれは、ざっと今使える移動方法を頭の中で計算すると、さっそく動きだした。

 

 移動を開始してから数時間がたち、おれは朝日のまぶしさに、目をほそめる。

 多少の費用がかかるのには目をつぶって、おれが桜子のいる街に着いたのは、朝の7時。

 思ったより、時間がかかったな。

 スマホのトークアプリの画面を確認するが、桜子からの返事はきていない。

 情報収集が必要だ。

 おれは、足ばやに桜子の通う高校へむかった。

 事件に巻きこまれているなら、(のん)()に登校するとも思えないが、それを確認するためにも、まず行ってみるべきだろう。

 

 高校近くの通学路で、人目につかないように、おれは登校する生徒を見張(みは)る。

 しばらく、登校する生徒をながめていると、校門へとむかう生徒たちの中に、たった1人で歩く桜子の姿を見つけた。

 少し、目の下にくまができているが、それ以外は変わった様子はない。

 少なくとも、おれに「SOS」を送るような、緊急事態(きんきゅうじたい)が起きているようには見えない。

 ふうぅ……。

 おれは、ほっと息をつく。

 しかし、なぜ桜子はあんなメッセージを送ってきたんだ?

 桜子の性格からいって、(たち)の悪いいたずらをするとは思えない。

 ならばあれは、「一見、ふだんどおりの生活を送っているように見せているだけ」という可能性もある。

 ……もう少し、見張ってみるか。

 恭也様には、今日1日の休みをもらっている。

 

 おれは、桜子が通りすぎるのを待ってから、移動を開始する。

 調べた情報によれば、桜子のクラスは、たしかこのあたりのはずだが……。

 おれは、校舎の窓が見える、校庭の大木の上に登り、気配を消して双眼鏡(そうがんきょう)で確認する。

 



 

……いたな。

 桜子が窓ぎわの席にすわって、授業を受けている。

 いや。あれは授業ではなく、テストか。

 クラス中の生徒が、もくもくと机にむかっているから、その可能性が高そうだ。

 桜子は普通にテストを受けているだけのようだ。

 だから異常はない…………と断定するのは、ちょっと早いようだな。

 おれは、校舎とは反対方向に、視線をむける。

 学校のまわりに立つビルの一室。その窓ガラスの1つが、キラリと光っている。

望遠(ぼうえん)レンズ……位置取りからいっても、プロの監視(かんし)だな。しかも、監視対象は、桜子か」

 校舎とビルの位置関係、それに望遠レンズの光の角度をざっくり計算して、考える。

「トラブルを(まね)きよせる特異(とくい)体質(たいしつ)なのか?」

 おれは、ため息をつく。

 SOSが、このことだったのかどうかはわからないが、(ほう)っておけば、桜子がやっかいごとに巻きこまれるのは、まちがいない。

 なら、おれのやることは1つだ。

 

 すとん、と音もなく大木から降りると、おれはビルにむかって移動を開始する。

 どうやら、監視者のいるビルの5階は、テナントが入ってないらしい。

 おれがさっき、光を確認したのも5階。

 わかりやすくて、助かるな。

 相手は、プロではあるだろうが、それだけだ。

 おれは5階にあがると、気配を消して進む。

 あそこだな。

 ドアの前に、スーツ姿のいかつい男が立っている。

 しかも、わきのあたりのふくらみを見ると、(じゅう)を持っているか。

 ……さわぎを起こすわけにはいかないからな。

 おれは、ギリギリまで気配を消して近づいてから、ドアの前の男に声をかける。

「ご苦労なことだな」

「な、なん…………がっ!」

 おれは、すばやく腹に(こぶし)を打ちこみ、男を静かにさせる。

 そして、男の背後のドアを小さく開けて、中の様子をうかがう。

 窓ぎわで、監視をしているのが、男2人。

 こちらには、まだ気づいていない。

 なら、とっとと終わらせるか。

 おれは、ドアのすきまから部屋の中にすべりこむと、足音を消して、窓ぎわで監視している男たちの背後に立つ。

 ようやく男たちが気づいて、ふり返る。

「き、きさま、なにも……ごほっ!」

 有無(うむ)を言わせず、男の1人のあごに掌底(しょうてい)を突きいれる。

 男の体が浮きあがってから、床に倒れこむ。

「な、な、なにものだ!」

 もう1人の男が、床にしりもちをついて、あとずさる。

 男の顔が、恐怖で引きつっている。

 今ので実力差がわからないようなら、プロの(うら)世界で生きてなどいけないだろう。

 この男も、ただだまらせるなら簡単だが、それだと情報が引き出せない。

「……だれを監視している?」

「そんなことを言うわけ……」

 ヒュン、とおれは男の顔の真横に、パンチをはなつ。

 男の髪が、風でなびく。

「ひっ……!」

「もう一度きく。だれを監視している? 目的はなんだ?」

「う、宇佐美桜子とかいう女だ。拉致(らち)してくるようにたのまれた。そうだ! たのまれただけなんだ」

 男は、おびえた様子で答える。

 やはり桜子がターゲットか。

 やはり、放っておかなくて、よかったな。

「おまえらを(やと)ったのはだれだ?」

「い、依頼人について言うわけが……はいっ! 言います!」

 おれがもう一度、拳をかまえると、男があっさりと口を割る。

 依頼人をききだしたおれは、男に「仲間のあとかたづけをして、この件から手を引け」と言って、ビルの外に出る。

 

 あれなら、桜子がさらわれることはないだろう。

 大きな組織に(ぞく)していない、小さなグループのようだ。

 プロだからこそ、引きぎわをわきまえて、自分の命を優先して考えるだろう。

 しかし、これでほしい情報は手に入った。

 

「……だいたい、事件の構図(こうず)が見えてきたな」

 

第5話 マサキの“なにごともない”休日〈後編〉につづく

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