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怪盗レッド スペシャル 第4話 マサキの“なにごともない”休日[前編]

「明日から、おまえたちが怪盗レッドだ!」
春休みのある日、アスカとケイは父からそんな宣告をうける。
2人はねずみ小僧を先祖にもつ家系で、13才になると、怪盗にならなくてはいけないらしく...?

累計120万部突破の大人気シリーズの書き下ろし小説です!

このお話は、「怪盗レッド スペシャル 第3話」のつづきだよ。
まだ読んでない子は、こちらからどうぞ。
第3話 宇佐見桜子のメッセージ
怪盗レッド15巻に登場する、マサキと桜子の「その後」のお話だよ!

      

 

 高級マンションのキッチン。

 おれは、そのキッチンに立っている。

 夜中に帰ってきた、恭也(きょうや)様の食事を作るためだ。

「あ~~今日も疲れたよ、マサキ」

 リビングのソファに、大きく足を広げて腰を下ろした恭也様が言う。

「おつかれさまでした。すぐに食事の準備をするので、少々お待ちください」

 

 最近の恭也様は、日本中あちこちをまわって、〝調査〟をしているらしい。

 らしい、というのは、おれは同行を許されていないからだ。

 恭也様の師匠であり、先代の「怪盗(かいとう)ファンタジスタ」である、「ラドロ」のボスは、恭也様に1人で調査を行うように言いつけている。

 なまった恭也様の体を、(きた)えなおすためということだ。

 

 たしかに、フラワーヴィレッジ城から転落したあと、回復するのに、1カ月以上も時間がかかっている。

 そう簡単に、本来の動きが、もどるわけがない。

 それがわかるからこそ、しぶしぶ同行せずにいる。

 だから今は、おれにとって、セーフハウスにもどってきた恭也様のお世話をする、大事な時間……。

 

 …………だが。

 おれはそう考えながらも、ちらちらと、キッチンのカウンターにおいたスマホを見る。

 さっきまでそこには、トークアプリの画面が開いていた。桜子(さくらこ)とのトーク画面だ。

 宇佐美(うさみ)桜子。

 行方(ゆくえ)知れずだった恭也様を探しているときに、ぐうぜん出会った――天才少女だ。

 本人は隠しているつもりだったようだが、桜子の頭の回転のはやさ、調査能力など、あれで〝ただの女子高生〟ではない。

 すぐに気づいたが、本人が隠したがっているようなので、だまっていた。

 

 あのあと桜子について調べてみたが、想像以上の実績だった。

 もう数年もすれば、世界に名前を知られることになるだろう。

 ただ、見ていてとんでもなく、あぶなかっしい。

 真正面から危険に突っこんでいくようなことを、平気でやる。

 しかも、その自覚がない。

 今だってそうだ。

 おれは、もう一度、スマホを見る。画面に変化はない。

 

 今から約1時間ほど前のことだ。

 最初に、連絡先の登録をしたことを知らせるメッセージが来て以来、(おと)()()がなかった桜子から、2週間ぶりにメッセージが送られてきたのは。

 しかも、メッセージは、たった3文字。

 

 ――SOS

 

 直後に、なにかあったのか、確認のメッセージを送ったが、既読がついたのは、今から10分ほど前。

 しかも、桜子からの返信はない。

 ――なにをしているんだ、桜子は!

 いらだちを感じながら、おれはフライパンをあおって、空中に浮きあがったライスをまた受けとめる。

 なにかあったのか?

 無自覚のまま、危険に飛びこむ桜子のことだ。

 なにもないとは言い切れない。

 ああ、まったく!

 どうしておれが、こんなことに気をとられなきゃいけないんだ。

「マサキ。手が止まってる。こげてるみたいだけど」

 いつのまにか、恭也様がキッチンまでやってきて、フライパンの中を指さす。

 そこには、香ばしすぎるにおいがただよっている。

 しまったっ!

 あわてて、コンロの火をとめる。

 卵が、こげついてしまっている。

 こんなミス、いったい何年ぶりだろうか。

「失礼しました! すぐに作り直します」

「かまわないよ、これでいい。もったいないだろう」

 恭也様はそう言って、フライパンの中のオムライスを、お皿に移す。

 しかし、とても恭也様に召し上がってもらう出来じゃない。

「これでは味が……」

 おれは、手を伸ばすが、その前に恭也様がひょいと皿を取り上げてしまう。

「マサキ」

 恭也様が、あらたまった表情で言う。

「はい、なんでしょうか」

「明日……いや、もう日付が変わっているから、今日か。今日1日、休みをとっていいよ」

「そ、それは……!」

 おれが必要ない、ということだろうか。

 オムライスも満足に作れない、中途半端な従者など……。

「今のマサキの料理は、いつもよりおいしくなさそうだ。でも、1日休めば、いつも通りのマサキの料理が食べられる……そうだろう?」

 恭也様が、見すかしたような目で、おれを見てくる。

 もしや、すべて気づかれて……?

 いや。自分の行動をかえりみれば、気づかれるのも当然か。

 ――1日の休みで、問題をかたづけてみせろ。

 恭也様はそういう意味で、言っているにちがいない。

 なら、ここで断るのは、失礼だ。

 それに、桜子の件をかたづけないと、おれの心の(あん)(ねい)がおびやかされているのは、事実だ。

「はっ。それでは1日、お休みをいただきます」

 おれは、深々と頭を下げる。

「そうそう。マサキは真面目(まじめ)すぎるから、少し羽をのばすぐらいがいいんだよ」

 恭也様はそう言いながら、リビングにむかいながら、スプーンですくってオムライスを口に運んでいる。

 本当は、食べながら歩くなど行儀(ぎょうぎ)がわるいとたしなめたいところだが……今は、お休みをいただいている身。

 見なかったことにしよう。

 おれは、さっそく自室にもどると、すばやく必要なものをバッグにつめこむ。

 そして、マンションを出る。

 むかうのは、桜子のところだ。

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