連載

  1. ホーム
  2. 連載
  3. 小説
  4. 怪盗レッド スペシャル
  5. 怪盗レッド スペシャル 第9話 宝条有栖のちょっとした日常・下

怪盗レッド スペシャル 第9話 宝条有栖のちょっとした日常・下

   *****

 

 暗闇の中、西園寺家の勝手口近くに、男が1人立っている。

 逃げ場所の見張り役なのだろう。

 あたりをキョロキョロ見回しながら、落ちつかない様子でいる。

 このあたりに設置してある赤外線センサーは、すでに機能を切ってあるみたいね。

 ここまでのシステムは通常通りだったから、全部のシステムを落としているわけではなさそうだわ。

 まあ、そんなことをしたら、すぐに異変に気づかれてしまうから、当然だけれど。

 そういうところは、悪知恵が働くのね。

「サクス」

 わたくしが声をかけるのと同時に、サクスがわたくしの横から姿を消した。

次の瞬間、サクスが男の背後におりたつ。

 ストン。

 わたくしは、目で追えなかったけれど、どうやら首筋に手刀を落としたようね。

 男の体が、声もなくグラリとゆれて、地面に倒れこむ。

 あれでは、だれになにをされたのかも気づかなかったでしょうね。

 さあ、次よ。

 わたくしは、またサクスの両腕にかかえられて、次のポイントにむかう。

 勝手口から、屋敷のほうにむかうと、また1人、男が見張りに立っている。

 さっきと同じ手順で、サクスが見張りをしている男を()(ぜつ)させる。

「今、4人の気配が、屋敷の中に入った」

 サクスがつげる。

「そう。それにしても、便利よね、気配がよめるとかいうの。人の居場所もわかるんでしょ」

 わたくしには、当然そんなものはよめない。

 というか、よめるほうが異常よね。

 怪盗レッドのイノシシ担当……じゃなくて、実働担当のアスカも、さらりとやってのけていたけど。

 あれは野性のカンなのかしら?

「なれれば、できるようになる」

 サクスは、なんでもないことのように言う。

 で・き・ま・せ・んー!

 まったく。

自分が一般人とかけはなれてるってことを、もう少し自覚してほしいわ。

「とにかく、やつらが屋敷内で仕事を始める前に、つぶすわよ」

(りょう)(かい)した」

 サクスが、わたくしをかかえて、暗闇の中を進む。

 すると、すぐに屋敷が見えてくる。

その横側に回りこみ、やつらが忍びこんだルートにたどりつく。

「センサーのついた窓も、そのシステム自体を切ってしまえば警報器はならない……か。つくづく内部の裏切りとは、めんどうなものね。信じられるものが、どんどん減ってしまう」

「この窓のむこうに、やつらがいる」

「いいわ。このまま行って」

 サクスが、窓を飛びこえる。

 すると、ろう下を移動しようとしていた、あやしい男たちが、ギョッとした顔でわたくしたちを見る。

「な――!?」

 声をあげようとした男に、サクスが(しゅん)()に、()(すい)(ばり)()してだまらせる。

「真夜中に人の家で大声をあげようなんて、はしたないわよ」

 ストン。

と、わたくしはサクスの腕からすべりおり、泥棒グループに話しかける。

 1人は倒したから、残り3人。

あ、裏切者の使用人も数えれば、4人ね。

「なにものだ、てめえら」

 声をおさえて、男の1人が言ってくる。

 様子からして、こいつがリーダーみたいね。

「この状況で言うことかしら? そのセリフ ……サクス」

 わたくしの言葉が終わる前に、サクスが動き出す。

「がっ」

「はうっ」

「ぐっ」

 体術と麻酔針で、あっという間にリーダーらしき男以外の3人を眠らせる。

 あっけなさすぎて、ため息が出そう。

 ものの数にも入らない、とはこのことね。

「……これでわかったでしょ。わたくしたちは、あなたたちの敵よ。って、お知らせするのがおそかったかしら?」

「く、くそがっ!」

 最後に残ったリーダーの男が、ふところから(けん)(じゅう)をとりだして、わたくしにむける。

 あらあら。

 そんなものまで用意していたの。

 泥棒にそんなものが必要?

 いったいここで、なにをするつもりだったのかしら?

 わたくしは、自然と自分の目がするどくなるのを感じる。

「……ねえ」

 わたくしは、拳銃をかまえた男のほうに、一歩近づく。

「わたくしは、泥棒にもプライドがあるってことを、知ってるわ。でもね……あなたの仕事からプライドを感じない」

 拳銃の銃口がむけられているのに、一歩一歩近づいてくるわたくしに、男は()おされながらも、いきがる。

「プ、プライドだと? そんなもの、あろうがなかろうが、犯罪者に違いはねえだろうが」

 男の拳銃を持つ手が、カタカタとふるえている。

 わたくしと拳銃との距離は、1メートル。

 いつ撃ってきてもおかしくないけれど、恐怖はまったく感じなかった。

「もちろん、プライドがあろうとなかろうと、あなたがたは犯罪者よ。世の中からすれば、最低なやつらだってことには、まちがいない。

だからこそ、よ。プライドすら持たないやつを、わたくしは、まったく描きたくならないわ」

 わたくしは、やっと立ち止まる。

 鼻先に拳銃がある。

「し……知ったことか!」

 男がさけびながら、ひきがねを引こうとした瞬間――

「がはっ……」

 サクスの麻酔針を受けて、男はそのまま床に倒れこむ。

「……無茶をする」

 サクスが顔をしかめて、わたくしを見ている。

「信用していたもの」

 もちろんサクスなら、わたくしに傷ひとつつけることなく、対処できるでしょう。

 それぐらいの見る目は、あるつもりだわ。

「こいつらはロープでしばって、まとめておけばいいでしょう。あとはレッドのやり方でもまねて、(とく)(めい)で警察をよんでおけばいいわね。運がよければ、これもレッドのしわざだと思われるかもしれないわ」

「レッドに文句を言われるぞ」

「大丈夫よ。警察が勝手に()(かい)するのは、わたくしはあずかり知らないことだもの」

 わたくしの言葉に、サクスが「とんでもないやつだ」という目をむけてくる。

 あら。

 こんなにかよわい相棒に、そんな目をむけるなんて、ショックだわ。

作家プロフィール

関連記事

関連書籍

怪盗レッド13 少年探偵との共同作戦☆の巻

怪盗レッド13 少年探偵との共同作戦☆の巻

  • 【定価】本体680円(税別)
  • 【発売日】
  • 【サイズ】新書判
  • 【ISBN】9784046316691