連載

  1. ホーム
  2. 連載
  3. 小説
  4. 怪盗レッド スペシャル
  5. 怪盗レッド スペシャル 第7話 「夏の夜の夢」のうらがわで

怪盗レッド スペシャル 第7話 「夏の夜の夢」のうらがわで

     3

 

 終わったぁ……。

 わたしは、大きく息をつく。

 公演も大成功に終わり、そのあとにスカイタワーであったさわぎにも巻きこまれずに、みんな無事に帰ってこられた。

 それが3日前の話。

 わたしは、気がぬけた気分で、演劇部の部室にいた。

 いつもの窓ぎわの席にすわり、向かいには加瀬部長がいる。

 公演が終われば、今度は生徒会への報告書づくりが待っているんだ。

 もちろん、公演に協力してくれた家庭科部などへの、お礼もすませてある。

 公演が終わっても、まだまだ仕事があるんだよね。

 これも副部長になって、初めて知ったことだ。

 だけど、知ることができてよかったと思う。

 公演が、まわりのたくさんの人たちに支えられてるっていうことに、より実感が持てるようになったから。

「そういえば、スカイタワーの係の人から連絡があってね。公演も評判がよかったし、そのあとのさわぎにも冷静に対応してもらえて、とても助かりました。また機会をもうけられるように検討します、って言ってたよ」

「ほんとですか!?」

 わたしは、思わず立ち上がりかける。

 中学校の演劇部が、スカイタワーの劇場で公演できるなんて、今回きりのことだと思ってた。

 だけど、またチャンスがもらえるかもしれないなんて……!

「うちの学園だけじゃなくて、地域のほかの中学をふくめてっていう話だから、次もわたしたちにって話では、ないけどね」

 加瀬部長はそう言って、肩をすくめる。

「それでもすごいことですよ!」

「だね。今度は、このあたりの中学の演劇部で集まって、合宿とかできるといいかもね」

「いいですね。ぜひ、やりましょう!」

 わたしは、力をこめて言う。

 いろんな演劇部と交流すれば、色々なことが学べそうだし、ほかの演劇部がどういう練習をしてるのか、すごく気になる。

「それにしても、今回の公演のアスカは、すごくがんばったね。正直、本番であそこまでできるとは、思ってなかったよ」

「もともとアスカは、本番に強いタイプなので。だけど、わたしもおどろきました。いっしょに演じてて、本当に楽しかったですし」

「そうそう! そういうところは、幸村先輩とちょっと似てるところがあるかもね。今回の経験でアスカが演じられる役のはばも、ぐっと広がったと思う。演劇部が公演できるものの選択肢も広がるなぁ。本当に秋の公演の演目になやんじゃうよ」

「うれしいなやみですね。ピーターパンとかもできそうですし、オリジナルの脚本でもいいと思いますし!」

 そのとき。

 コンコン。

「おじゃましま~す。なにしてるんですかー?」

 部室がノックされたかと思ったら、ドアが開いてアスカが顔を見せる。

「アスカこそ、夏休み中なのに、なんで学校にきてるのよ。まさか学校があると、かんちがいして……」

「そこまで、おっちょこちょいじゃないよ!」

 アスカは、ほおをふくらませる。

「学校に宿題のプリント忘れてたから、とりにきたの。そうしたら、演劇部の部室に明かりがついてたから」

 それも、胸を張って言えることじゃないと思うけど……。

 でも、こんなに早い時期に宿題のプリントのことを思い出しただけ、成長したのかも。

 どうせ今年も、休みの終わりごろに、みんなで集まって、宿題をやることになると思うけど。

「それで、加瀬部長と水夏は、どうして部室に?」

 アスカが、あらためてきいてくる。

「報告書を、生徒会に提出しないといけないの」

 わたしが答える。

「大変そう……手伝おうか?」

 アスカの申し出に、わたしと加瀬部長は、顔を見合わせる。

「ありがたいけど、アスカにまかせるのは、そこはかとなく不安が……」

「ひどっ! たしかに報告書とか書ける自信はないけど……」

 いやいや、アスカに限らず、いきなり報告書を書けって言われても、むずかしいと思うよ。こういうのは、慣れだから。

「なら、こっちの書類を分けてもらえる? 衣装に関係するものと、それ以外で分けてくれればいいから」

 加瀬部長が、山積みになっていた書類を、テーブルの上に移す。

 家庭科部に作ってもらった衣装は、演劇部の部費からも(せい)(さく)()を出して、2つの部の共同所有ってことになる。

 ただそれだと、いずれなあなあになるからって、ちゃんと生徒会に報告して、3者で管理することになったんだ。

 今回は、そのための報告書なんだけど、けっこう枚数があるんだよね。

「それくらいなら、できます!」

 アスカは元気よく返事をすると、うれしそうに手伝い始める。

 そのアスカの姿を見つつ、わたしはクスリと小さく笑う。

 今までのアスカは、どこか演劇部との(きょ)()を保とうとしてた。

 そのアスカが、すすんで手伝いにくるなんて、正式な部員になって、さらに公演を乗りこえて、ちょっと変わったのかも。

 アスカは、今まで立ち止まっていたぶん、きっとどんどん成長していく。

 ……本当に、秋の公演が待ち遠しくなってきた。

 わたしも、負けないようにしないと!

 でも、今はまず報告書を終わらせないとね。

 わたしは報告書を書きながら、自然と笑みをうかべていた。



「怪盗レッド スペシャル」第8話

更新は8月中旬予定だよ!お楽しみに!!

作家プロフィール

関連記事

関連書籍

怪盗レッド18 銀色の髪の転校生☆の巻

怪盗レッド18 銀色の髪の転校生☆の巻

  • 【定価】 748円(本体680円+税)
  • 【発売日】
  • 【サイズ】新書判
  • 【ISBN】9784046319579

紙の本を買う

  • カドカワストア
  • アマゾン
  • 楽天

電子書籍を買う

  • BOOK WALKER