連載

  1. ホーム
  2. 連載
  3. 小説
  4. 怪盗レッド スペシャル
  5. 怪盗レッド スペシャル 第7話 「夏の夜の夢」のうらがわで

怪盗レッド スペシャル 第7話 「夏の夜の夢」のうらがわで

中学生だけど、みんなにはヒミツで「正義の怪盗」をやってる、アスカとケイ。
そんな2人のかつやくを描いた「怪盗レッド」シリーズは、累計120万部を超える、つばさ文庫の超・人気シリーズです!

今回は、『怪盗レッド』18巻のサイドストーリーだよ。
ネタバレがあるので、まだ読んでいない子は気をつけてね!

     1

 

「はあ~あ」

 わたし――()(がわ)()(なつ)は、(えん)(げき)()の部室のイスにすわって、大きくのびをする。

「副部長って、こういう報告書を書く仕事が多いんだって、副部長になって初めて知りました」

 正面の席で、わたしと同じように書類に向かう()()部長が、おっとりとした笑みをうかべる。

「そうなのよね。生徒会への報告書とか、機材の貸し出し(しん)(せい)とか。ほかの部より、書く書類は多いと思うわ」

 演劇部の部室にいるのは、わたしと加瀬部長の2人だけ。

 昼休みをつかって、生徒会に提出する、演劇部の活動予定をまとめているところだ。

 まだ次の公演の予定はないけど、夏休み中に体育館を使って練習するために、早めに希望を伝えておかないと、ほかの部活で予定がうまっちゃう。

 体育館は、使いたい部が多いしね。

「でも、水夏が副部長になってくれてよかった。書類をまとめるのも手早いし、助かるわ」

 加瀬部長が、ほんわかとした口調で言う。

「これぐらいなら、わりと得意なほうですし」

 わたしは、書類を書きながら言う。

「最初、水夏が副部長に決まったときはね……。きっとわたしのこと、(ゆき)(むら)先輩と比べて『なってない!』って、怒るんだろうなと思ってたの」

「えええっ!? そんなふうに思ってたんですか!」

 わたしは、思わず顔を上げて大きな声を出す。

「も、もちろん、今は思ってないわよ。ただ、水夏って、すごく幸村先輩のことを慕っていたでしょ。だから、次の部長がわたしじゃ、気に入らないんじゃないかって……不安だったの」

「そんなことあるわけないじゃないですか……。そもそも、わたしは加瀬部長のことも、尊敬してます」

「んん? そうなの? な、なんだか、面と向かって言われると、照れるわね」

 加瀬部長は、ほおに手をあてて、首をわずかにかたむける。

 高等部に進学した幸村(すず)()先輩の後を()いで、中等部演劇部の部長になったのが、この、ちょっとのんびりした、加瀬(ゆき)()先輩。

 去年まで、幸村先輩の相手の王女役だったり、女王役だったり、幸村先輩とからむ役を(えん)じることが多かった。

 つまり、幸村先輩といっしょに舞台に立っても、まったく()(おと)りしない実力の持ち主なんだよね、加瀬部長って。

 とくに、王女役や女王役といった、気品のある役に、すごくはまる。

 幸村先輩の人気にはおよばないけど、当時から、加瀬部長もけっこうな人気があったんだ。

 女性役を演じる部員からは、お手本にもされてたりする。

 そんな先輩を、わたしが不足だと感じるわけない。

「副部長に立候補したのは、自分の成長につながるかなって思ったからです。わたし、人に対して、きびしくしすぎちゃうことがあるので」

 アスカと最初に会ったときも、そんな自分だから、うまく(なか)()くなれなかったんだよね。

「水夏のきびしさは、自分に対してもでしょ。しかも、自分には他人相手より、さらにきびしいところがあるし」

「そう言ってくれるのはうれしいですけど……。やっぱり言い方とか、態度とかで、人への伝わり方ってちがうと思うし、そういうことを学ぶのに、副部長の立場っていいかなって思ったんです」

「なるほどねー。でも、水夏って、1年生にはそんなに怖がられてないでしょ? (めん)(どう)()もいいし」

「いえ……それなりに怖がられてはいると思いますけど。……でも、たぶん加瀬部長のほうが、怖がられてます」

「えーーーーーーっ! うそ!?」

 加瀬部長は、ショックを受けたように、目を見開いている。

 どうやら、ぜんぜん自覚がなかったみたい。

「加瀬部長は、見た目と(ふん)()()はおっとりしてるのに、ビシッときびしいことも言うじゃないですか」

「そ、それは部長だから、当然だよ……」

 雰囲気は、友達の()(づき)とそう変わらないのに、部活の時間になると、ガラリと変わるから最初はみんなおどろくんだよね。

「でも、1年生は、そこにすごくギャップを感じて、ショックだったみたいですよ」

「ううぅ……まあしょうがないかぁ。部長なんだし」

 加瀬部長は、がっくり肩を落としつつも、受け入れたみたい。

 ……ふふ。

 実際のところ、怖がられてる以上に、練習や演技の面で、尊敬もされているんだけどね。

 それを伝えると、加瀬部長によけいなプレッシャーをかけそうだし。

 去年まで、伝説的な人気をほこった幸村先輩の後を継いだ加瀬部長が、プレッシャーを感じていないわけがない。

 そんな様子は見せないけれど、部活のとき、気を張っているのは、副部長として近くで見てきてるから、よくわかる。

「そういえば、(こう)(づき)アスカは正式に入部しないのかな? あの子、正式に部員になっても、ぜんぜん問題ないと思うんだけど。水夏の友達なんだよね?」

 加瀬部長は、気分を変えようと思ったのか、話をガラリと変えてくる。

「わたしもさそったんですけど、ちゃんと部活に出られないかもしれないからって、遠慮しちゃって。(みょう)()()()()なところがあるんですよね、アスカって」

「そっかぁ……アスカの運動神経は、幸村先輩以上だし、正式に入部してくれたら、演劇部も色々とやれる演目がえるなぁ、と思ってさ」

「こればっかりは、アスカの気持ち次第なので。なにかきっかけがあれば、気持ちも変わるかもしれないですけどね」

 加瀬部長とわたしは、そんなふうに話しながら、生徒会に提出する書類を片づけていく。

作家プロフィール

関連記事

関連書籍

怪盗レッド18 銀色の髪の転校生☆の巻

怪盗レッド18 銀色の髪の転校生☆の巻

  • 【定価】本体680円(税別)
  • 【発売日】
  • 【サイズ】新書判
  • 【ISBN】9784046319579