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怪盗レッド スペシャル 第6話 怪盗レッドの家族写真

「……それが、8年前にあったことよ」

 美華子さんが長い話を終えて、紅茶でのどをうるおす。

「ペンダントを盗まれたっていう話はきいてたけど、お母さんたちも、すごくあのお祭りを楽しんでたんだなって……」

 わたしは、初めてきくお母さんたちの話に、不思議な感じがする。

 だって、あたりまえだけど、わたしが覚えているのは「わたしから見たお母さん」だけだから。

 美華子さんから見たお母さんのすがたって、すごく新鮮な話だったよ。

「……でも、8年後の約束は果たせなかった。だからあのとき、私はあなたたち2人といっしょに、見神島に行ったの」

 美華子さんは、いろいろな感情がまぜこぜになったような、複雑な表情で言う。

「でも、今はロケットペンダントもとりもどせたし、わたしとケイも、ちゃんと写真を入れられましたよ」

 わたしは自分のロケットを開く。

 そこには、お父さんとお母さんの写真、美華子さんの写真、そして新しく撮った、わたしとケイの写真が入っている。

「あなたたちが、そのロケットを大事にしてくれていてよかったわ。それで、今日はこれをわたそうと思ったの」

 美華子さんが、1枚の写真プリントを、テーブルの上におく。

「これって……!」

 わたしは、その写真を見て、目を見開く。

 となりのケイも、めずらしく、はっきりとわかるぐらいに表情を変えて、おどろいている。

 その写真は、見神島で撮ったものだと思う。

 後ろに写る景色に覚えがあるから。

 そこに写っていたのは、お父さん、圭一郎おじさん、お母さん、杏子おばさん、美華子さんに、小さなわたしとケイの7人。

 みんな笑顔で、お父さんとおじさんが、お母さんと杏子おばさんの肩をそれぞれ抱きよせるようにして、7人がギュッとつまっている。

「この写真は……」

 わたしは、写真から目をはなせないまま、美華子さんにきく。

「杏子さんと美緒さんにあんなことがあってから、ずっとしまいこんでいたの。でも、しまっておくぐらいなら、2人にあげるべきだと思って、探してたの」

「……ぼくたちがお店にくる前に探していたのは、これですか?」

 ケイがきく。

「ええ。だいぶ奥にしまいこんでしまっていて、とりだすのに苦労したわ」

 美華子さんが、肩をすくめる。

「この写真は、あなたたちにあげるわ」

「でも! この写真は、美華子さんにとっても、大切な思い出なんじゃないですか?」

 わたしは言う。

 だって、見神島の話をする美華子さんは、すごく楽しそうだった。

 お母さんとのやりとりとか、身ぶり手ぶりをまじえて、笑顔で話して……。

「私は奥にしまいこんでいたぐらいだし、やっぱり2人が持っているほうが……」

「……それなら、コピーします」

 え?

 ケイの急な言葉に、わたしはびっくりする。

 コピー?

「……そのプリントもだいぶ古くなっているので。データとして読み込んで修正をかければ、撮った当時の状態にかなり近づけられます。それに、データにすれば、美華子さんも、アスカやぼくも、持てますから」

 ケイは、レッドのとき以外では、めったにきいたことがないぐらい、はっきりとした口調で言う。

「それは……ありがたい話だけど……いいの?」

 美華子さんは、めずらしくとまどったような表情をしてる。

「美華子さんが持ってた写真じゃないですか! いいに決まってます。美華子さんも持っててください。持ってないとダメです!」

 わたしは、強く言いきる。

 お母さんたちだって、美華子さんにこの写真を持っていてもらいたいはずだ。

 だって、わたしなら、そう思うから。

「……ありがとう。ちょっとだけ肩の荷がおりたかも」

 美華子さんはそう言って、笑みをうかべる。

 わたしは、ちらりとテーブルの上の写真を見る。

 写真の中のお母さんたちも、「それがいい」って笑ってくれている気がした。

おしまい

 



「怪盗レッド スペシャル」はまだつづくよ!

第7回更新をお楽しみに!

アスカとケイがロケットペンダントをとりもどすお話はこちら!
→怪盗レッド(7) 進級テストは、大ピンチ☆の巻

アスカとケイのお父さん、翼と圭一郎、そして美華子がだいかつやくするお話は、こちら!
→怪盗レッド THE FIRST ここから、すべては始まった

 

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