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怪盗レッド スペシャル 第6話 怪盗レッドの家族写真

杏子(きょうこ)さん、()()さん。まだ食べ歩きするんですか?」

 私――美華子は、前を歩く2人を見ながら、あきれ顔で言った。

 あたりには、浴衣(ゆかた)すがたの老若男女や、ものめずらしそうにまわりを見ている外国人など、色々な人が、笑顔で歩いている。

 ここは見神島。

 この島では、8年に一度だけとりおこなわれる、2日間のお祭りがある。お祭りの2日目の最後には、巫女(みこ)()(しん)()が行われる。

 もともとは、ひっそりやっていたお祭りだったらしいけど、いつのまにか国内どころか、海外でも有名になったらしい。

 SNSで紹介されたら、あっという間に情報が広がるしね。

 そんなわけで、お祭りの日の前後は、かなり前から旅館の予約をとらないと泊まれないぐらいたくさんの人が、島にやってくる。

 私は、本当はくる予定じゃなかったんだけど、杏子さんと美緒さんにさそわれて、2家族の旅行に合流することになった。

 杏子さんと美緒さんの少し前を、翼兄さんと(けい)(いち)(ろう)兄さんが、ならんで歩いている。

 翼兄さんは、いつの間に買ったのか、戦隊もののヒーローのお面を、頭の横につけている。

 圭一郎兄さんは、さっき輪投げでとった景品のミニカーを、小さなドライバー1本で、歩きながら解体してしまっている。

 ……この2人は、あいかわらずね。

 2人の兄の変わらない様子に、ちょっと安心しつつ、私は、杏子さんと美緒さんの横に、それぞれぴったりとくっついている子どもたちに目を向ける。

「ママ! あのべびーかすてらっていうの食べたいっ!」

「はいはい、ちょっと待ってねー」

 美緒さんの娘のアスカが、浴衣のそでを引っぱって、ねだっている。

 たしか、さっきまでこの子、りんご(あめ)を、食べていた気がするんだけど……。

「…………」

 杏子さんの息子のケイは、ものしずかだけど、気がつくと興味があるほうへと、無言で歩いていってしまう。

 杏子さんが、その手をにぎって、歩く方向を修正してる。

 ……やっぱり、(こう)(づき)()の血ってことなのかしら?

 ケイにかんしては、すでに天才性を(はっ)()しているらしい。

 圭一郎兄さんとはちがって、兄さんと杏子さんは、きちんとした場で、息子の才能を育てることにしたみたい。

 そんな2人の子どもたちは、さっきから私に(けい)(かい)するような目を向けている。

 もっと小さいころには会ったことがあるんだけど、私がずっと海外に留学していて、顔を合わせなかったからか、アスカは覚えていないらしい。

 ケイのほうは、覚えてはいそうなんだけど、その上で警戒されている気がする。

……私、なんか悪いことしたっけ?

 イギリスの大学に入学して、それからは、ヨーロッパを転々としていたから、アスカが私のことを覚えていないのは、しかたないんだけど、さすがに(おい)(めい)からこんな目で見られるのは、ちょっとへこむかも。

「ところで、美緒さん。それ、よっぽど気に入ってくれたんですね」

 私は、美緒さんがときおり(きん)(ちゃく)から、ペンダントを出して、ながめているのを見て言う。

「それはそうよ。家族の写真を入れておけるロケットだなんて、()(てき)じゃない」

 美緒さんが答える前に、杏子さんがふり返る。

 杏子さんも、巾着から、同じデザインのペンダントをとりだす。

 このペンダントの先のロケットには、数枚の写真を入れられるようになっている。

 私が海外で見つけて、この2人にプレゼントしたもの。2人ともすごく気に入ってくれたのは、うれしいんだけど……。

「でも、私の写真まで入れなくてもよくないですか? しかも、むかーしの写真だし、ちょっとはずかしいんですけど……」

 2人のロケットペンダントには、夫婦で撮った写真のほかに、私の高校生のときの写真も、なぜか入っている。

「だって、美華子ちゃん、高校を卒業してから、ほとんど日本にもどってこなかったじゃない。だから、ちょうどいい写真がなかったの」

 杏子さんが、くちびるをとがらせて言う。

「そうそう。日本に帰ってこない美華子ちゃんが悪い。私たち、さびしかったんだから」

 美緒さんも、おどけた様子で賛成する。

 ……もう、この2人にはかなわないなぁ。

 私の写真を入れないという(せん)(たく)()が、この人たちには、最初からないんだから。

「アスカとケイの写真は、どうするんですか? まだ入れてないんですよね?」

 私は話をそらす。

「ええ。この子たちの写真は、この島にいる間に撮ろうと思っているの。でも、この2人で撮るか、家族7人でいっしょに撮るか、悩むところなのよね……」

 杏子さんは、あごに手をあてて、首をかしげる。

 さらっと、私も家族の人数にカウントされている。

「今の写真を抜くのもなんだから、家族7人そろってるのがいいんじゃないかって、わたしは言っているの」

「そりゃ、高校の制服すがたよりは、いいですけどね……」

 私は2人のマイペースぶりに、(にが)(わら)いする。

 他人と話をしていて、相手にペースをにぎられるなんて、ほとんどない私だけど、この2人が相手だと、どうにもダメ。

 やっぱり私が、この2人を中学生のときから知っていて、あこがれているせいかもしれない。

「あっ、そろそろ時間ね。神社へ行きましょう。舞の時刻には、混みあいそうだし」

 杏子さんが、腕時計を見て言う。

「そうですね。ねえ、翼さんとふじ……じゃなくて、圭一郎くん。もう神社に行こうって」

 美緒さんが、前の2人に声をかける。

 圭一郎兄さんの名前を呼びまちがえそうになったのは、昔のくせだろう。

 圭一郎兄さんには、ちょっと複雑な事情があるから。

「おっ。もうそんな時間か。それじゃあ、場所取りにいくか、圭一郎」

「そうだね。今から行けば、そこそこいい場所で見られるはずだよ」

 翼兄さんと圭一郎兄さんが答えて、みんなそろって、神事の巫女の舞がある、神社へと向かうことにした。

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