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怪盗レッド スペシャル 第6話 怪盗レッドの家族写真

中学生だけど、みんなにはヒミツで「正義の怪盗」をやってる、アスカとケイ。
そんな2人のかつやくを描いた「怪盗レッド」シリーズは、累計120万部を超える、つばさ文庫の超・人気シリーズです!

今回は、アスカとケイの「お母さんたち」のお話。
『怪盗レッド』7巻のウラ話だから、つづけて読んでみると、さらにおもしろいかも!

   *****

 

 大通りを横に入って、小道を先にすすむ。

 見えてくるのは、1(けん)のお店。

 店の中には、明かりがともっている。

 近づいていくと、窓越(まどご)しに、めずらしいデザインの、カップやランプなどが見える。

 ここは、()()()さんが趣味でやっている、輸入雑貨屋(ゆにゅうざっかや)さん。

 わたしとケイは、今日は美華子さんにさそわれて、美華子さんのお店にやってきたんだ。

   カランカラン

 木製のドアを開けると、ドアについたベルが鳴る。

「は~い、いらっしゃいませ」

 お店の奥のほうから声がきこえる。

 ドタバタと音がして、美華子さんが奥から出てきた。

「あら? アスカとケイじゃない。もうそんな時間なの?」

 美華子さんが、わたしとケイのすがたを見て、おどろいたように、(かべ)にかかった時計に目を向ける。

 約束したのは、午後2時。

 今は、その10分前だ。

「おじゃまします、美華子さん。いそがしいところでした?」

 わたしが言う。

となりでケイも、ちょこんと頭を下げている。

「大丈夫、大丈夫。ひさしぶりにお店にきたから、探しものに熱中しちゃって……。奥へどうぞ」

 美華子さんが、わたしとケイを奥に案内する。

 わたしは、お店の中を歩きながら、まわりを見まわす。

 この輸入雑貨屋さんにおいてある商品って、変わったデザインのものが多いんだよね。

 海外でつくられたものらしくて、ライオンの口の中にライトがついていたり、(かめ)(こう)()をさかさまにしたデザインのティーカップがあったり。

 もちろん、落ちついたデザインのものもあるけど、近所の店で見かける商品とは、少しちがうものばかりなんだ。

 美華子さんは、この店を、完全な趣味としてやっている。

本業は、貿易(ぼうえき)会社の社長だ。

 お店は、美華子さんが日本にいるときにしか開けていないから、あんまり売れてないみたい。

 それでも、通ってくれるお客さんはいるんだって、前に美華子さんからきいたことがある。

「今日はもう、店じまいね。閉店のプレートに変えてきちゃおう」

 美華子さんが言って、お店のドアの外側にかかったプレートを「閉店」に変えてきた。

「いいんですか? せっかくお店を開けたのに」

「いいの。たまにはゆっくり、あなたたちと話したいと思ってたし。どうせお客さんもこないし」

 美華子さんはそう言って、ケラケラと笑う。

 ……お客さんがこないっていうのは、笑いごとじゃない気もするんだけど……。

「さぁ、すわって。今、(こう)(ちゃ)とコーヒーを用意するわ」

「あっ、それなら、お父さんから美華子さんに、おみやげをあずかってきました」

 わたしは、持っていた紙袋をわたす。

「わあっ! これ(つばさ)兄さんの手作りパウンドケーキじゃない! 翼兄さん、お菓子もおいしいのに、めったに作らないから、すごくレアなのよね」

 美華子さんが、紙袋の中身を見て、(こう)(ふん)したように言う。

 そうなんだよね。

 お父さんは、お菓子を作るのが上手なのに、あまりつくらない。

 でも、たまに作ると、お店で買うのより、ずっとおいしいんだよ!

 だから、おみやげ用に、パウンドケーキを焼いているのを見て、ひそかに楽しみにしてたんだ。

「それじゃあ、これも切り分けましょう。2人も手伝って」

 美華子さんが言って、手早くお茶会の準備をする。

 といっても、コーヒーを入れるのは、ケイがやったし、紅茶の準備や、パウンドケーキの切り分けは、美華子さんがやったんだけどね。

 わたしは、自分の実力がわかっているから、お皿に盛りつけられたパウンドケーキをテーブルに運ぶ係だ。

 お茶会の準備ができると、わたしたちは木製のテーブルのまわりにすわって、パウンドケーキを、ひとくち。

 う~ん……おいしいっ!

 口に入れると、ふわっとしたやわらかさが伝わってきて、そのあとにやさしい(あま)い味が広がる。

 不思議なのは、甘いのに甘すぎないってこと。

 いつまでも残る甘さじゃなくて、さらっと甘さが口の中で、とけてなくなる。

 そのせいか、甘いものがあんまり得意じゃないケイも、気にならない様子で食べている。

「……やっぱりおいしいわね。本当に料理では、翼兄さんに勝てる気がしないわ」

 美華子さんが、食べながら、ため息まじりに言う。

「お父さんって、昔から料理が得意だったんですか?」

「そうよ。料理する必要があったのと、お父さん……あなたたちからすると、おじいちゃんか。そのおじいちゃんが、料理が得意だった影響もあるんだろうけど」

「へえ~」

 わたしは、お父さんのほうのおじいちゃんには、小さいころにしか会ったことがないんだよね。

 だから()(おく)もおぼろげなんだけど、やさしそうな人だった気がする。

 わたしたちは、パウンドケーキと紅茶とコーヒーを楽しみながら、いろんな話をする。

 だいたい、話をしていたのは、美華子さんとわたしだけどね。

 ケイは、必要なときしかしゃべらないし。

 それでも、つまらなそうにはしていなかった。

「そういえば、それ。ちゃんとつけてるのね」

 美華子さんが、わたしが首から下げたペンダントを指さす。

「なくしちゃうと嫌だから、ふだんはつけないんですけど、今日はいいかなと思って」

 わたしは言って、首からペンダントをはずす。

 これはロケットペンダントといって、チェーンの先に写真を入れたケースがついている。

 同じものを、ケイも持っているんだ。

 そしてこれは、元々は、お母さんたちのものだったんだって!!

 これをゆずり受けたのは、()(かみ)(じま)だったなぁ……。

「写真は、新しいのを入れたのね。……なつかしいわね、あのときのこと」

 美華子さんが目を細めて、なつかしそうに語るのに、わたしは首をかしげる。

「あのときって? 見神島に行ったときですか?」

 そんなに昔のことでもない気がするけど。

「ちがうわよ。ほら、島に行ったときに、少し話したでしょう。――そのロケットペンダントが(ぬす)まれたという話」

「ああ! はい、ききました。お母さんたちが、すりの被害に()ったって」

「そうそう、そのときのことよ。8年前……もうすぐ9年になるかしら。あのときは、アクシデントもあったけど、楽しい思い出も多かったから」

「それって、お父さんやお母さんたちとの……」

「ええ、そうよ。……そうね。ただの昔話だけど、アスカとケイの2人には、きいてほしいかも。きいてくれる?」

 わたしは、もちろん大きくうなずく。

 となりでケイも、コクリとうなずく。

「じゃあ、話すわね。ロケットを盗まれたってこと以外は、特別どうということもない話だけど……」

 美華子さんは、そうことわってから、ゆっくりとした口調で、8年前に見神島で起きたことについて、語りはじめた。

 

   *****

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