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ものがたり

【スペシャルれんさい】『星のカービィ あぶないグルメ屋敷!?の巻』第3回 コピー能力!


◆第3回

パフェスキー夫人のおたんじょうび会でごちそうを食べるため、どうやってお屋敷(やしき)に入りこむか、いろいろと作戦を考えていたワドルディ。
デデデ城に戻ったワドルディが、次にデデデ大王に命じられたこととは……?

 

☆゜・。。・゜゜・。。・゜☆゜・。。・゜゜・。。・

 

コピー能力!

 

☆゜・。。・゜゜・。。・゜☆゜・。。・゜゜・。。・

 

 コックカワサキを頼れないとなると、かわりの料理人を探さなくてはならない。

 

 でも、コックカワサキ以上の料理人なんているはずがない。

 

(あーあ……デデデ大王様、いかりくるうだろうなあ……)

 

 そう思うと、ワドルディの足取りは重くなった。

 

「ただいまもどりましたぁ……」

 

「お、早かったじゃないか、ワドルディ。コックカワサキはどうした?」

 

「それが……」

 

 ワドルディがしょんぼりと報告すると、デデデ大王は腕を組んで「うーむ」とうなった。

 

「まったく腹が立つわい! パフェスキー夫人め、招待状(しょうたいじょう)は出し忘れるわ、コックカワサキはひとりじめするわ! オレ様にケンカを売ってるのか! まことに、けしからん!」

 

「は、はい。けしからんです」

 

「きっと今ごろ、パフェスキー家のお屋敷(やしき)ではコックカワサキが料理を作ってるんだろうなあ。ローストビーフとか、七面鳥の丸焼きとか、牛タン塩焼きとか、フィレ肉のステーキとか、ハンバーグとか……!」

 

 大王の妄想(もうそう)は、肉ばっかり。

 

「うっわー! 腹がへってきたー! なんてナマイキなんだ、パフェスキーめ! オレ様の誕生日だって、そんな豪華(ごうか)な料理を作らせたことはないっていうのに!」

 

「大王様の誕生日パーティは、ぼくら部下しか出席しませんもんね……」

 

「うるさーい!」

 

 デデデ大王はワドルディを思いっきりけとばした。

 

「あ、そういえば、カービィのやつはどうなっただろう?」

 

 デデデ大王は、目を回しているワドルディには目もくれず、双眼鏡(そうがんきょう)を手に取って窓辺(まどべ)に走りよった。

 

「まさか、あいつがシェフになることはないと思うが……思いたいが……だが、わからんぞ。あのピンク玉は、ちっこいくせにゆだんならんからのう」

 

 大王は双眼鏡(そうがんきょう)を目に当て、窓の外をながめた。

 

「む……? あいつめ、ちゃくちゃくと準備を進めてるぞ! 見てみろ、ワドルディ」

 

 デデデ大王は、ワドルディに双眼鏡(そうがんきょう)をつきつけた。

 

 ワドルディが双眼鏡(そうがんきょう)をのぞいてみると、広い野原の真ん中でいそがしく飛び回っているカービィが見えた。両手に大きな石をかかえて、せっせとつみ上げているようだ。

 

「何をしてるんでしょう?」

 

「火の用意をしてるようだぞ」

 

「火……あ、料理に使うための……」

 

「うむ。ああやって石をつみ上げて、かまどを作ってるんだ。かまどで料理を焼き上げれば、オリジナル料理の完成というわけか……」

 

「やるなあ、カービィ」

 

 ワドルディは一瞬だけ感心してしまったが、すぐに思い出した。

 

 かまどの準備(じゅんび)をととのえる手ぎわの良さは、たいしたものだ。でも、問題はあの恐怖(きょうふ)のケーキ……。

 

(いくらりっぱなかまどを作っても、材料があれじゃなあ……)

 

 ワドルディは、ボウルの中でぶつぶつと泡立っていたどす黒い液体を思い出し、思わず「うぇー」となった。

 

 しかしデデデ大王は、カービィのおそるべきケーキの正体を知らない。キリキリと歯ぎしりをして、どなった。

 

「ぜったいに、カービィの料理を完成させてはならん! ジャマをしてこい、ワドルディ! あのかまどを、ぶっこわすんだ!」

 

「え……ぶっこわすって……」

 

「あとかたもなく、こなごなにしろ……と言いたいが」

 

 デデデ大王は、ワドルディの小さなからだを見下ろすと、フンと鼻をならした。

 

「おまえじゃ、たよりにならんなあ。カービィに、とっちめられるに決まってる」

 

「は、はい」

 

「もっと強いやつに命じなきゃならん。うむ……そうだ、バーニンレオを呼べ!」

 

「え……あいつですかあ……」

 

 ワドルディは、しりごみした。

 

 バーニンレオは、デデデ大王につかえる部下の一人。火を自在(じざい)にあやつる、とっても強い戦士。

 

 ただ、強いことは確かなのだけれど、かなりのらんぼうもので、あばれ出したら手におえない。ワドルディは、バーニンレオがちょっとばかり苦手だった。

 

「今回の標的(ひょうてき)は、かまどだからな。火のスペシャリストといえば、バーニンレオ。あいつにまかせるにかぎる!」

 

「うーん……でも、バーニンレオはすぐ暴走しちゃうからなあ……」

 

「つべこべ言わずに、行ってこーい!」

 

 デデデ大王のどなり声が、城じゅうにひびき渡った。ぐずぐずしていたら、またけっとばされる。

 

 ワドルディはあわてて、大王の部屋を飛び出した。

 

☆゜・。。・゜゜・。。・゜☆゜・。。・゜゜・。。・

 

「カービィのかまどをぶっこわす? そいつは、おもしろそうだな!」

 

 話を聞いたバーニンレオは、大はりきり。ブォーッと炎をはいたので、ワドルディはあわてて頭を押さえて床にふせた。

 

「そういうことなら、オレにまかせておけ! かまどなんて、あとかたもなく燃やしつくしてやるぜ〜!」

 

「あ、あのね、あんまりはりきりすぎないでね。まわりのものまで燃やしたら、大火事になっちゃうから……」

 

「よけいなことを言うんじゃねえ! オレの見せ場をジャマしたら、しょうちしねえぜ!」

 

 バーニンレオはまたしても、ゴォォォッと大きな炎をはいた。

 

(だ、だいじょうぶかなあ……)

 

 ワドルディは、気が気ではなかった。

 

 バーニンレオが暴走し始めたら、だれにも止められない。カービィのことももちろん心配だし、火の始末も気にかかる。

 

(カービィがやけどをした時のために、消毒薬と包帯を用意しておかなくちゃ。それに、消火器も……)

 

 ワドルディの苦労はつきない。

 

☆゜・。。・゜゜・。。・゜☆゜・。。・゜゜・。。・

 

 カービィは、石をつみ上げて作ったかまどの中に、燃料となる枯れ木をくべ終えたところだった。

 

「これでよし、と。あとは、火をつけるだけ!」

 

 カービィは満足げにうなずいて、大きなマッチを取り出した。

 

 そこへ。

 

「ちょーっと待ったぁ!」

 

 大声を上げて襲(おそ)いかかってきた影がある。

 

 カービィはびっくりして空を見上げた。

 

 あばれんぼうのバーニンレオが、一直線に飛びかかってくる。カービィはあわててとびさがった。

 

 バーニンレオは、あいさつ代わりとばかりに、小さな火の玉をポッポッとはき出した。

 

 カービィは、飛んでくる火の粉(こ)をふりはらってさけんだ。

 

「何をするんだ!」

 

「デデデ大王様の命令だ! そのかまど、ぶっこわせってな!」

 

 バーニンレオは、からだを大きくふくらませた。

 

 次の瞬間(しゅんかん)、その口からオレンジ色の炎が放たれた。

 

「うわあっ……やめてよ!」

 

 カービィは悲鳴をあげた。

 

 かまどはもともと火を燃やすためのものだから、火には強くできている。でも、バーニンレオの炎はあまりにも強すぎた。

 

 直撃を受けたカービィのかまどは、その高熱にたえきれず、一瞬(いっしゅん)にして黒こげになってしまった。

 

 もちろん、くべられていた枯れ木は、あとかたもなく燃えつきた。

 

「わああ……かまどが……! せっかく作ったのにー!」

 

「はっ、ざまあみろ!」

 

 バーニンレオはそっくり返って笑った。

 

 かまどを破壊(はかい)した火は、またたくまに草を焼いて広がり、周囲(しゅうい)の木々にまで燃えうつりそうになった。

 

 そこへ、くすり箱と消火器をかかえたワドルディがかけつけてきた。

 

「カービィ、だいじょうぶ!? やけどは!?」

 

「あ、ワドルディ! ぼくはだいじょーぶだよ!」

 

「よかった!」

 

 ワドルディは消火剤をまき、燃え広がろうとする火をなんとか消し止めた。

 

 バーニンレオが、ふきげんそうにどなった。

 

「よけいなことすんな、ワドルディ! オレがせっかくつけた火を!」

 

「火事になったら、大変じゃないか」

 

「消火器ってやつは、オレの宿敵(しゅくてき)なんだよ。気に入らないぜ……」

 

 バーニンレオは、うらめしそうにつぶやいたが、ふと何か思いついたように笑顔になった。

 

「よーし。ワドルディ、その消火剤をカービィにぶちまけるんだ!」

 

「え!? だめだよ、そんなこと……」

 

「カービィが持ってるマッチにふっかけろ。そうすれば、もうマッチは使い物にならねェ」

 

 カービィはハッとして、マッチを背中の後ろにかくした。

 

 バーニンレオは勝ちほこったように、カービィにつめよった。

 

「かまどもない、マッチもない……となれば、カービィはもう火を起こせねェ。オレの任務は、パーフェクトに完了だ!」

 

「で……でも……それじゃ、カービィが……」

 

「どうした、ワドルディ? おまえ、ひょっとしてカービィをかばってるのか?」

 

 バーニンレオは、うたがわしげに目を細めてワドルディをにらんだ。

 

 ワドルディは歯を食いしばった。友だちのカービィを痛めつけるようなことは、絶対にしたくない。でも、デデデ大王にうたがわれたら、ただではすまない。

 

(どうしよう……!)

 

 そのとき、カービィが小声でワドルディにささやいた。

 

「だいじょーぶ! 心配いらないよ、ワドルディ」

 

「……カービィ……」

 

「いい考えがあるから! 消火器、ぼくにふきかけてもだいじょーぶ!」

 

 ワドルディはカービィをふりかえった。

 

 カービィは、いつもと同じ笑顔でうなずいた。

 

(カービィには、何か作戦があるんだ……)

 

 カービィが「だいじょーぶ」と言ったら、ぜったいに「だいじょーぶ」なのだ。これまでだって、いつも、そうだった。

 

 ワドルディは思いきって、消火器をかまえ直した。

 

(ごめんね、カービィ!)

 

 心の中でつぶやいて、ワドルディはレバーに手をかけた。

 

 なるべくカービィには当てないように、後ろに回りこんでマッチをねらう。

 

 思いきってレバーを引くと、消火剤が白い泡になって勢(いきお)いよくふき出した。

 

 マッチはたちまち、消火剤まみれになってしまった。これではもう、使い物にならない。

 

 バーニンレオが、けたたましい笑い声を上げた。

 

「よぉぉし! これでもう、マッチもかまども使えねェ! パーフェクトに任務完了(にんむかんりょう)だぁぁーっ!」

 

 勝ちほこるバーニンレオは、すきだらけだった。

 

 それこそ、カービィのねらい通り。

 

 カービィはからだをそらせて、思いっきり息をすいこんだ。

 

 バーニンレオは、「ん?」と声を上げた。

 

「なんだ、この風……台風……? じゃねえぇぇ……わあああっ」

 

 ワドルディは目をみはった。

 

 カービィの大きな口が、バーニンレオをすっぽり飲みこんだ!?

 

「か、カービィ!?」

 

「んーっ!」

 

 カービィは、きゅっと目をつぶった。

 

 その頭の上に、美しい金色の炎がポッと燃え上がった。まるで、かがやく王冠(おうかん)のように。

 

 ワドルディは、ハッとした。

 

「そうか……! コピー能力だね!」

 

「うん!」

 

 カービィは目を大きくあけて飛び上がり、ポッと火の球をはいた。

 

 カービィには、特別な力がそなわっている。相手をすいこんで、その力を自分のものにしてしまう『コピー能力』

 

(カービィはバーニンレオをすいこんだから、『ファイア』のコピー能力を使えるようになったんだ!)

 

 カービィは楽しそうに、小さな火の球をいくつもはいた。

 

「見て見て、ワドルディ! これで、だいじょーぶ! かまどはこわれちゃったけど、自由に火をあやつれるようになったから!」

 

 カービィは、岩かげに置いてあった「超豪華(ちょうごうか)☆スイートスペシャルてんこもりカービィケーキ」をひっぱり出してきた。

 

 ワドルディは、「……うっ……」と絶句(ぜっく)したきり、言葉が出てこない。

 

 材料もすごかったけれど、巨大(きょだい)なケーキ型に入れられた黒いかたまりは、もはや食べ物とは思えない何かになりはてていた。

 

「う……うう……バターとおしょうゆと納豆が混じったにおいがするぅ……」

 

「それだけじゃないよ! バニラエッセンスとシナモンとぬかみそも、たっぷり入ってるよ!」

 

「こ、これを焼くの?」

 

「うん! ケーキの土台のスポンジになるんだ! 焼き上がったら、たっぷりトッピングして、ゴージャスなケーキにするんだよ! トッピングの材料は、これ!」

 

 カービィが次にひっぱり出してきたのは、これまたケーキの材料とは思えないものばかりだった。

 

「か……カービィ……これをケーキにのせるの……?」

 

「うん! ワドルディも手伝ってね!」

 

「な、なんで、とりのからあげ……?」

 

「おいしそうでしょー!」

 

「シューマイと、ギョーザと、たくあん……」

 

「よだれが出ちゃうでしょ! あと、ソーセージと、ちくわと、まぐろの切り身! その上から、生クリームとイチゴジャムをたっぷりかけるんだー!」

 

「うっ……」

 

 ワドルディは頭をおさえて、つっぷしてしまった。

 

「どうしたの、ワドルディ? あ、わかった。すごく、おなかすいてるんだね? まっててね、すぐ焼き上がるからねー!」

 

 カービィは、ケーキ型に向かって胸をはると、口を大きくあけて炎をふき出した。

 

 こんがり焼きたいところは、強い火で。じっくり焼きたいところは、弱い火で。細かいところまで焼き残さないように、ていねいに。

 

 ワドルディは、その手ぎわの良さに感心した。

 

(やっぱり、カービィはすごいや……。コピーしたばかりの力を、カンペキに使いこなしちゃうんだから。ああ……でも、もったいないよー!)

 

 ため息が出てくる。

 

(せっかく、火かげんはカンペキなのに、材料がひどすぎる。やっぱり、ケーキの材料は、ぼくがそろえれば良かったなあ。カービィには、焼くところだけまかせておけば良かったんだ……)

 

 後悔しても、もうおそい。

 

 ケーキの土台を焼き上げると、カービィはトッピングを次々にかざりつけていった。とりのからあげ、ギョーザ、シューマイ、生クリーム……。

 

「ワドルディも手伝っていいんだよ? 好きなものをトッピングしてねー!」

 

「う……ううん。ぼく、料理のセンスないから……」

 

「えんりょしなくていいのに! じゃ、そこで見ててね!」

 

 カービィは、からあげとか、ちくわとか、まぐろとか、その他いろいろなものをケーキにかざりつけ、その上からたっぷりイチゴジャムやハチミツをかけた。

 

「んー! おいしそうっ!」

 

 カービィは、うれしそうに、くるんくるんと何度も宙返(ちゅうがえ)りをした。

 

「すごい! これは、歴史に残るケーキかも!」

 

「う……うん。残るかも……いろんな意味で」

 

「ぼく、ひょっとしたら、天才パティシエなのかな!? 修業したこともないのに、生まれつきの才能なのかな!? やだ、自分の才能がこわすぎるー!」

 

「う……うん……こわいかも」

 

 ひょっとしたら、カービィとデデデ大王って、性格似てるんじゃ……と思いながら、ワドルディはうなだれた。

 

「これならきっと、パフェスキーさんのお屋敷(やしき)のシェフになれるよねっ!」

 

「う……うん。なれると、いいね」

 

「さっそく、試食してみなくちゃ。ワドルディも、どうぞ」

 

 カービィは、特大のスプーンをワドルディにわたした。

 

 ワドルディの顔が、引きつった。

 

「ぼ、ぼくも食べるの?」

 

「もちろん! これは、ぼくとワドルディの友情のケーキだから!」

 

「あ、ありがと……でも、これはカービィが作ったんだから。カービィからお先にどうぞ」

 

「えんりょしなくていいよ。ワドルディ、食べて食べて」

 

「カービィのあとでいいんだ、ぼくは!」

 

 ワドルディは、必死(ひっし)に顔をそむけた。

 

 カービィは、首をかしげた。

 

「そう? じゃ、ごめんね。ぼくが先に試食しちゃうよ」

 

「うん、どうぞ!」

 

「いただきまーす!」

 

 カービィはスプーンやまもりにケーキをすくって、ぱくっとひとくちで飲みこんだ。

 

 ワドルディは、かたずをのんで見守った。

 

 にこにこと楽しげだったカービィの顔が……とつぜん、引きつった。

 

 ピンク色の顔が、サーッとむらさき色に染まる。

 

 ワドルディはあせってさけんだ。

 

「カービィ! だいじょうぶ!?」

 

「ん……んぐ……ぐぐ……!」

 

 カービィは飛び上がり、とびきり大きな火の球(たま)をはいた。

 

「うわっ、あぶない!」

 

「うぁぁぁ! ひゃぁぁぁ!」

 

 カービィは悲鳴を上げながら、飛ぶように走り出した。

 

 ワドルディは、その後を追いかけた。

 

「待って、カービィ! だいじょうぶ!?」

 

 カービィの行く手に、大きな石!

 

「あぶない、気をつけてっ!」

 

 ワドルディがさけんだけれど、間に合わない。カービィは石につまずいて、ポーンと大きくはねた。

 

 地面に激突(げきとつ)すると同時に、カービィの頭上にかがやいていた炎の王冠(おうかん)がはずれて、たちまちバーニンレオのすがたに戻った。

 

「こ、このやろ〜! おぼえてろっ! 次は、ぜったい負けないからな!」

 

 バーニンレオは、ころげるように逃げていってしまった。

 

 ワドルディは、あっけにとられてバーニンレオを見送ったが、ハッと気づいてカービィに向き直った。

 

 カービィは、ぐったりと草の上に横たわっている。いさましい炎の王冠(おうかん)が消えたあとは、すっかり、いつものカービィに戻っている。

 

「カービィ! だいじょうぶ!?」

 

「う……うん……」

 

 カービィは、ヨロヨロしながら起き上がった。

 

「本当にだいじょうぶ? 頭の上の炎の冠(かんむり)がなくなっちゃったよ……?」

 

「コピー能力は、ダメージを受けるとはずれて、使えなくなっちゃうんだ」

 

「じゃあ、『ファイア』のコピー能力が……?」

 

「バーニンレオにもどったんだよ。でも、いいんだ」

 

 カービィは、ぷるぷるっと首を振った。

 

「もう、火はいらないから。料理はこりごり! ぼく、料理人にはなれないや」

 

「そんな……」

 

「やっぱり、作るより食べるほうがいいよ!」

 

「……そうかぁ」

 

 ワドルディは、ホッとしたような、がっかりしたような、ふくざつな気持ちになった。

 

 ケーキの出来はひどいものだったけれど、あんなにはりきっていたカービィの努力がむだになってしまったのは、残念でならなかった。

 

 それに、もちろん、パフェスキー夫人のお屋敷(やしき)にもぐりこむ作戦が失敗してしまったことも。

 

 カービィは、しょんぼりとして言った。

 

「……パーティ、行けないね」

 

「……うん」

 

「行ってみたかったなぁ……」

 

「……きっと、またチャンスがあるよ」

 

 ワドルディとカービィは手をつないで、いっしょにため息をついた。

 

 と、その時だった。

 

 かすかに、上空からふしぎな音が聞こえた気がして、ワドルディは空を見上げてみた。

 

 青い空に、黒く小さな点が見えた。それは、ぐんぐん大きさをまして近づいてきた。

 

「あ……あれ! カービィ、見て!」

 

「え?」

 

「何だろう!?」

 

「飛行船……みたい……?」

 

 カービィの言う通りだった。

 

 それは、最初は小さな点にしか見えなかったけれど、今やはっきり姿をとらえられるくらい近づいていた。銀色にかがやく飛行船だ。

 

 飛行船は少しずつ高度を下げている。

 

 この近くに着陸するようだ。

 

「あれは、ひょっとして……!」

 

 カービィとワドルディは、飛行船の着陸地点に向けて駆け出した。



『ファイア』のコピー能力で、作戦成功!?と思いきや、パーティもぐりこみ大作戦はまたもふりだしに……。
そんなとき、あらわれた飛行船に乗っていたのは、いったいだれ!?

『星のカービィ あぶないグルメ屋敷!?の巻』れんさい第4回(6月3日更新予定)に続く


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