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【期間限定】『君のとなりで。』スペシャルれんさい 第72回 乗り越えた証(あかし)


◆第72回

伊吹先輩に「球技大会、見とけよ」と宣言されたさくら。
その言葉の意味とは……? ドキドキいっぱいの第72回です!!

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*・*・*・*・*・*・*・*・*・*・*・*・*・*・*・*

 

♪乗り越えた証(あかし)

 

*・*・*・*・*・*・*・*・*・*・*・*・*・*・*・*

 

 あっという間に10月中旬。

 

 全国大会まであと少ししかない。

 

 金賞を目指して、私たちの団結はますます強くなっていた。

 

 

「さくら、さっこ。こっちこっち!」

 

「待ってよ、加代ちゃん」

 

「ご、ごめんなさい。ちょっと通してください」

 

 人の波をかきわけて、私たちはなんとかグラウンドにたどり着いた。

 

 今日は、黒羽中の球技大会。

 

 バスケ、野球、バレー、サッカーなどなど、球技ならなんでもやっちゃう、お祭りイベントだ。

 

 毎年11月に開催されているんだけど、今年は体育館の工事があるから、1ヶ月前倒しで行われることになった。

 

「ここが一番、ゴールがよく見えるんだよ」

 

「へぇ~~。サッカー通は違うねえ」

 

「うん!」

 

 これから始まるのは、球技大会のメインイベント、サッカーの決勝戦。

 

 荒木田先輩の3年5組対3年6組の対決なんだ。

 

 6組はサッカー部員が多いから、5組はピンチ!

 

 加代ちゃんは祈るようにグラウンドを見つめている。

 

「これから決勝戦を始めます!」

 

 アナウンスが鳴り響くと、選手たちが真ん中に集まった。

 

 その瞬間、会場が大きくどよめいた。

 

「あ! あれ、伊吹先輩じゃない!?」

 

 本当だ! 5組の選手たちの中に、伊吹先輩がいる。

 

 先輩は、チームメイトの荒木田先輩とハイタッチした。

 

 伊吹先輩はさっきまで、バスケと野球とバレーでも大かつやくしていた。

 

 今年は、サッカーにも出るんだ……!

 

『もう、サッカーをやる資格はないなんて、言わない』

『自分を責めるのは、もうやめだ』

 

 力強い言葉をもらった、あの日のことを思い出す。

 

『球技大会、見とけよ』

 

 グラウンドにいる先輩だけを、まっすぐに見つめた。

 

 

「伊吹先輩がサッカー出てるってホント!?」

 

 キックオフの瞬間。テニスで大かつやくしていた崎山くんが駆けつけた。

 

「うん。あそこ……!」

 

 私が、指をさしたそのとき。

 

 伊吹先輩はあっという間に相手からボールをうばって、ゴールを決めた。

 

 サッカーのことはよくわからないけれど、伊吹先輩が別格に上手なことだけはわかる。

 

「なんか伊吹先輩、楽しそうだね」

 

「うん」

 

 でも、先輩はひとりだけで点を取ってるわけじゃない。

 

 荒木田先輩にパスを出したり、チームメイトのシュートをアシストしたりして、試合を進めている。

 

 試合に勝つ!っていうよりも、サッカーを心から楽しんでるみたい。

 

「ああっ。あと30秒! 荒木田先輩っ! シュート決めて!」

 

 加代ちゃんは声を張り上げて応援してる。

 

「今、同点?」

 

 

「うん。あと20秒以内にゴールを決めたほうが勝ち!」

 

 加代ちゃんも、さっこも、崎山くんも、私も。会場中が祈るようにして、ボールを見守っている。

 

 荒木田先輩がシュートしたボールは、キーパーに受け止められてしまった。

 

 キーパーが投げたボールを、伊吹先輩がカット!

 

「「伊吹先輩~~~~~!!」」

 

 会場中に、伊吹先輩コールが響く。

 

「あと、10秒! 9、8、7……先輩、決めて!」

 

 崎山くんの声に、私もぎゅっと手をにぎる。

 

 その時だった。

 

 伊吹先輩が、ゴール目がけて走りながら、会場に目を向ける。

 

 さまよっていた伊吹先輩の視線が、ぴたっとこっちを見た。

 

 気のせいじゃない。

 

 伊吹先輩は、ボールをけりながら、私を見てにやりと笑ったんだ。

 

 そして、すっと腕を伸ばして、私を指さした!

 

『見とけ』

 

 先輩の口が、そう動いた。

 

 どくん!

 

 心臓が、音を立てる。

 

「あと、2秒!」

 

 先輩が、ゴール目がけてシュートをはなった。

 

「ゴーーーーール!!」

 

 笛の音と共に、大歓声が巻き起こった。

 

「勝った!! 伊吹先輩も荒木田先輩も、かっこいい!」

 

「伊吹先輩、すごかったね!!」

 

「伊吹先輩が……俺のためにゴール決めてくれた……」

 

 加代ちゃんが、さっこが、崎山くんがあらためて恋に落ちている。

 

 まわりの女子たちも、

 

「伊吹先輩、私のこと指さしてゴール決めた!」

 

「違うよ、私だよ!」

 

 って、論争になってる。

 

 うーん、確かに私と目が合った気がしたんだけど。

 

 気のせいだったのかもしれない。

 

 ぼんやりとグラウンドをながめていると、伊吹先輩はこっちを見て、ふっと、とくいげに笑った。

 

 それを見たら、私のためかどうかなんて、どうでもよくなった。

 

 だって、先輩の笑顔が、とってもまぶしいから。

 

 過去を乗り越えた、晴れ晴れとした笑顔が、心からうれしかった。

 

 伊吹先輩は、サッカーと向き合って、今度こそ乗り越えたんだ。

 

 ふと見ると、高田先輩と鈴木先生も、遠くから安心した顔で見守っていた。

 

 

 大興奮の中で、球技大会の閉会式が終了した。

 

 制服に着がえたさっこと加代ちゃんと3人で、校舎を出て校門に向かっていた。

 

「あああああ~~! 荒木田先輩、かっこよかった~~好きになっちゃったかも」

 

 サッカーの優勝をよろこぶ3年5組の人たちを見て、加代ちゃんはうっとりしている。

 

 そのとき、荒木田先輩に、女子が駆けよってきて……。

 

「あれ……?」

 

 なんと荒木田先輩にガバッと抱きついた!!

 

 荒木田先輩は女子を抱きしめ返して、くるくる回している。

 

「え!?」

 

「もしかしてあの人、荒木田先輩の彼女……?」

 

「彼女、いたの!?」

 

「うそ……。うそぉぉぉぉぉ~~~~~!!!!」

 

 加代ちゃんは大ショックを受けてくずれ落ちた。

 

 せっかく、新しい恋を見つけたばっかりだったのに。

 

 かける言葉も見つからない。

 

 へたりこんだままの加代ちゃんの腕を、さっこがよいしょっと肩にかついだ。

 

「さくらは崎山くんといっしょに帰ったら? 加代ちゃんは私にまかせていいよ」

 

 さっこに耳打ちされる。

 

 ちょうど、崎山くんが、校門を出ていくところだった。

 

 ふたりとも、大変な時に私の恋(かんちがいだけど)を応援してくれている。

 

 すごくうれしい……けど、私は、崎山くんじゃなくて、伊吹先輩にどうしても伝えたいことがあるんだ。

 

 加代ちゃん、さっこ、まだ言えなくてごめん。

 

 心の中で手を合わせる。

 

「ちょっと行ってくる!」

 

 ふたりに見送られて、私は走り出した。

 

 

伊吹先輩が『見とけ』と言ったのは、いったいだれに……?
そして、伊吹先輩に、さくらが伝えたいこととは……??
次回をおたのしみに♪

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