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【期間限定】『君のとなりで。』スペシャルれんさい 第58回 練習スタート!


◆第58回

あけましておめでとうございます!
今年も、『君のとなりで。』のドキドキ&キュンキュン展開から目がはなせません~!!
ぜったいに、お見のがしなく♪

いよいよ体育祭のマーチング練習がスタート!
そして、さくらと伊吹先輩の、特別レッスンの結果が明らかに!?

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♪練習スタート!

 

*・*・*・*・*・*・*・*・*・*・*・*・*・*・*・*

 

 マーチングで演奏する曲は、『東京オリンピック・ファンファーレ』と、『東京オリンピック・マーチ』

 

 1964年に開催された、東京オリンピックのための曲だ。

 

 曲のCDをかけながら、高田先輩が動きの解説をしてくれた。

 

「まず、トランペットパートがファンファーレを演奏します。その後、みんなでマーチを演奏しながら、隊列を組んでグラウンドを1周します」

 

 楽器を演奏するだけじゃなくて、演奏しながら歩かなきゃいけない。

 

 かっこいい曲に胸がおどるけれど、浮かれてはいられない。

 

「じゃあ、今日は音楽室の中で、行進の練習をしようか」

 

 さっそく、演奏なしで歩く練習をしてみたけれど、大苦戦!

 

 マーチングには、決まりごとがたくさんある。

 

 歩くときは、必ず左足から。

 

 全員でつま先の角度を合わせなきゃいけないし、1歩の歩幅は62・5㎝って決まっている。

 

 歩くだけでもこんなに大変なのに、さらに演奏なんかできるんだろうか。

 

 しかも、本番の体育祭までは2週間もない!

 

 マーチングの練習に加えて、もちろん全国大会に向けた練習もしなくちゃいけない。

 

 これが、想像以上に、ものすごーく大変なことだった!

 

 

 翌日の放課後。

 

 部活の前に、私は数学準備室の鈴木先生をたずねた。

 

 今日はいよいよ、数学の追試! 地獄の補習を受けるかどうかの分かれ道だ。

 

 昨日のお昼休み、伊吹先輩にしっかり教えてもらったから大丈夫なはず!

 

 渡された問題を、ひとつひとつ解いていく。

 

 しっかりすべての問題の答えを書いて、ドキドキしながら鈴木先生の採点を待つ。

 

 鈴木先生は、最後の問題に大きな花丸をつけて、答案用紙を返してくれた。

 

「吉川、よくがんばったな。追試、満点だぞ。伊吹のおかげかな」

 

「よかった……」

 

 これで、放課後は部活に打ちこめる!

 

 伊吹先輩に、お礼を言わなくちゃ。

 

「伊吹さ、口悪いけど教え方うまいだろ?」

 

「はい、とっても!」

 

「そりゃよかった」

 

「受験の時も、算数がぜんぜんできなくて……。この先もずーっと、苦手なままなのかなって、ゆううつだったんです。でも、これからは少し好きになれそうです」

 

 鈴木先生は、ふむ、とうなずいた。

 

「〝できないこと〟があっても、悪いことばかりじゃないと思うんだけどな」

 

「え?」

 

「できないからこそ、できるようになるために、発生するコミュニケーションがあるだろ」

 

「確かに……」

 

 もし私が、数学が人並みにできていたら、伊吹先輩に勉強を教えてもらうことはなかった。

 

 こんなふうに、数学を楽しめるきっかけは、なかったかもしれない。

 

「『助けてほしい』『教えてほしい』って言えることって、勉強に限らず、大切なことだと思うんだよな。すなおに言うのは、難しいことだから。それに、『手をさしのべてもらう経験』っていうのも、必要なもんだと思うんだ、きっと」

 

「手をさしのべてもらう経験……ですか」

 

「ああ。他人の手の優しさを知ってる人は、ほかの誰かにもきっと、手をさしのべることができるから」

 

「確かに……そうかもしれません」

 

「吉川も、そういうことがあったら、手をさしのべてやんなさいね」

 

「え……」

 

 私が? ずっと手をさしのべてもらってばっかりなのに?

 

「なーんてな。あ、吉川、もう部活始まるんじゃないか?」

 

「わっ。もうこんな時間! ありがとうございます、行ってきます!」

 

 あわてて数学準備室を飛び出して、音楽室へ向かった。

 

 私が、誰かの『助け』になれることって、あるんだろうか。

 

 

 今日の部活は、グラウンドでのマーチング練習からスタート。

 

 音楽室に荷物を置いて、急いでジャージに着がえる。

 

 外に出ようとしたら、ちょうど前を歩く伊吹先輩を見つけた。

 

 そうだ、『伊吹先輩のおかげで追試満点でした、ありがとうございます』って言わなきゃ!

 

「伊吹先輩!」

 

 声をかけると、伊吹先輩が私のほうを振り返ってくれた。

 

「ああ。追試だったんだろ。どうだった?」

 

「おかげさまで満点でした。ありがとうございました」

 

「そうか。よかったな」

 

 ほんの少し、伊吹先輩が笑ってくれたような気がした。

 

 うれしくて、じわじわとほおが熱くなる。きっと今、私の顔は真っ赤だ。

 

「あの……」

 

 数学、ちょっと好きになれそうです、って言おうとしたそのとき。

 

 ろうかの向こう側から、女子の集団があらわれた。部外の2年生だ。

 

「あの子、誰?」

 

「今、伊吹先輩に話しかけてたよね」

 

「1年生っぽくない?」

 

「ああ、吹奏楽部で、伊吹先輩によくシメられてるっていう子だ」

 

「なんか、距離が近くない?」

 

 ひそひそとささやく声が聞こえてくる。

 

 伊吹先輩は、部活の中にも外にも、他校にもたくさんのファンがいる。

 

 今まで、私が伊吹先輩に呼び出しをされても、ファンに何も言われなかったのは、私が『先輩にシメられている』って思われてたから。

 

 もし、伊吹先輩とふたりっきりで、勉強を見てもらっているなんてことがバレたら、今度こそ私がファンにシメられてしまうかもしれない……!

 

「あのっ、失礼します!」

 

「ああ」

 

 くるっと先輩に背を向けて、グラウンドに走り出した。

 

 伊吹先輩とのレッスンのことも、勉強のことも。

 

 誰にもバレないようにしなきゃいけないな……。

 

 

伊吹先輩とのひみつが、さらに増えてしまった!
次回、マーチングの練習に、『あの人』がやってくる!? おたのしみに♪

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