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【期間限定】『君のとなりで。』スペシャルれんさい 第51回 体育祭の大イベント


◆第51回

自分の、伊吹先輩に対する気持ちがどういうものなのか、柴田さんの言葉で気づいたさくら。
その一方で、体育祭に向けて準備が始まります!

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♪体育祭の大イベント

 

*・*・*・*・*・*・*・*・*・*・*・*・*・*・*・*

 

 

 やっと試験が終わって、部活に行こうとろうかに出ると、崎山くんにバッタリ会った。

 

「さくらちゃん、テストどうだった?」

 

「英語は自信あるよ。崎山くんのおかげ。ありがとう!」

 

「お役に立ててよかったよ」

 

 崎山くんは、キラキラの笑顔でうなずいてくれた。

 

「今日から久しぶりに部活だね!」

 

 指づかいの練習は家でもできるけれど、近所迷惑になるから、音を出すことはできない。

 

 だから、思いっきり音を出せる部活が、楽しみでしかたなかった。

 

「うん、全国大会に向けて、がんばらなくちゃ。……でも、今年の体育祭って、吹奏楽部はどうするんだろうね」

 

「え、体育祭って、吹奏楽部でなにかやるの?」

 

 たしか、テストが終わったら、体育祭で出場する競技決めのクラス会議があるはずだけど。

 

 吹奏楽部って、体育祭になにか関係あるんだろうか。

 

「さくらちゃん、知らないの? 黒羽中の体育祭で吹奏楽部がやるマーチングって、すごく有名なんだよ」

 

「マーチング?」

 

 どこかで聞いた言葉のような気がするけど……すぐに思い出せない。

 

 なんだったっけ? って考えていると、崎山くんが解説してくれた。

 

「楽器を演奏しながら行進したり、歩きながら列を作って、いろんな形になったりするんだ。難しいけど、すごくはなやかで、かっこいいんだよ。黒羽中のじゃないけど、これ、見て」

 

 スマホを取り出した崎山くんに、動画を見せてもらう。

 

「これ、マーチングバンドの全国大会の動画だよ」

 

「わぁ……」

 

 画面の中で、楽器を持った小さな隊列がどんどん大きくなっていく。

 

 そして、あっという間にいくつもの円に分かれて広がっていった。

 

「すごい! 歩きながら吹いてるのに、演奏が乱れてない!」

 

「動きも大きくて、見ごたえがあるよね」

 

 動きは素早くて、しかも、全員がきれいにそろっている。

 

 おそろいの衣装も、とってもおしゃれでかっこいい!

 

 夢中になって、最後まで動画を見てしまった。

 

「ありがとう。こんな演奏方法があるなんて知らなかったよ。吹奏楽って、座って吹くだけじゃないんだね」

 

「そうなんだよ。マーチングもかっこいいでしょ」

 

「これを黒羽中でもやってるの?」

 

「うん。ここまで難しいことはしないみたいだけど、毎年、体育祭の開会式でやってるんだって」

 

 ……あれ、でも、体育祭って、2週間後じゃなかったっけ!?

 

「もう時間あんまりないよね。私、行進しながら演奏なんて、できないよ」

 

「そうなんだよ。もし、体育祭でマーチングをやるなら、もう練習を始めないと、間に合わないと思う」

 

「先生も、高田先輩も、なにも言ってなかったよね。……あ」

 

 高田先輩、っていう名前で、ようやく思い出した。

 

『マーチング』って、高田先輩と伊吹先輩が、誰もいない楽器庫で話していた時に出てきた言葉だ。

 

「どうしたの?」

 

「ううん、なんでもない!」

 

 あのとき私が聞いてしまったことは、誰にも言わないって、高田先輩と約束した。

 

 だから、なんでもないよ、っていう顔をして、崎山くんに続きを話してもらう。

 

「去年の吹奏楽部は全国大会まで行けなかったから、関東大会が終わった後はマーチングの練習に打ちこめたんだろうけど……」

 

 と、いうことは、つまり。

 

「今年は、全国大会の練習をしながら、マーチングの練習もするってこと!?」

 

 そんなこと、できるんだろうか。

 

「いや、両方やるのは難しいと思うよ」

 

 崎山くんが、冷静に言う。

 

「だよね。私、そんな新しいことと、全国大会の練習を両立するなんて無理だよ。……だとすると、やっぱり、全国大会を優先することになるよね」

 

 全国大会の出場は、黒羽中吹奏楽部始まって以来の快挙だから。

 

 動画で見せてもらったマーチングはかっこよかったから、ちょっとやってみたかったけど。

 

 でも、崎山くんがにやりと笑った。

 

「それがね、吹奏楽部以外の生徒って、伊吹先輩の演奏を聞けるチャンスは、4月の部活紹介と体育祭、それに11月の学校祭だけなんだって。その中でも、マーチングは特にみんなが楽しみにしてるらしいんだ。伊吹先輩のマーチング衣装姿が、すっごくかっこいいんだって!」

 

「ってことは……?」

 

「マーチングはやりません、なんて言ったら、全校の伊吹先輩ファンが納得しないだろうね。

俺もだけど」

 

 4月の部活紹介、私はサボってしまって見ていないけど。ものすごく盛り上がったっていうのは、さっこからも、加代ちゃんからも聞いている。

 

 部活紹介よりもファンが楽しみにしているってことは……『やりません』なんて言ったら、大さわぎになっちゃうかも。

 

「ちょうどテスト休みが終わったところだし、マーチングをやるかどうかは、今日あたり、高田先輩から話があるかもね」

 

「でも、今のまとまってない部の状況で、さらにマーチングとなると……」

 

 そうだ。テスト休みに入ってしまっていて、すっかり忘れていたけれど。

 

 全国大会のための練習、っていうだけでも、のんびり派とピリピリ派に分かれて、部活のふんいきは最悪なんだった。

 

 このうえマーチングの練習までやることになったら、きっと、みんなの不満がふきだしてしまうんじゃないかな……。

 

「まぁね。さくらちゃんの考えてる通りだと思う」

 

 崎山くんは、少し真剣な目をして、窓の外を見た。

 

「でも、体育祭のマーチングは、コンクールの選抜メンバーじゃない人も参加できるはずだから。そういう意味では、部にとってもいいことなんじゃないかな」

 

「そっか……」

 

 マーチングなら、高橋先輩とも、柳瀬さんとも、いっしょに演奏できるんだ。

 

 選抜メンバーだけじゃなく、部員全員で演奏することができる。

 

「なにより、いつもの演奏とは違う、マーチングやってる伊吹先輩が見られるってことだけでも、俺はやる気十分だからね!」

 

 崎山くんは、そう言ってにっこり笑う。

 

 ブレないなあ……。

 

 私だって、できることなら、マーチングもやってみたい。

 

 でも、そうなったら、部の雰囲気は、どうなってしまうんだろう。

 

 金賞に向けた、全国大会の練習は?

 

 考え始めると、心の奥がもやっと重たくなってくる。

 

 落ち着かない気持ちで、崎山くんとふたりで音楽室に向かった。

 

 

高田先輩と、伊吹先輩の対立の原因は、『マーチング』……?
はたして、体育祭は、全国大会はどうなっちゃうの!? 次回もおたのしみに!

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