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【期間限定】『君のとなりで。』スペシャルれんさい 第48回 不安な予感


◆第48回

せっかく全国大会に出場できるのに、部活内はトラブルだらけ……。そんなとき、さらにまた新たなトラブルの予感がやってくる!?

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*・*・*・*・*・*・*・*・*・*・*・*・*・*・*・*

 

♪不安な予感

 

*・*・*・*・*・*・*・*・*・*・*・*・*・*・*・*

 次の日、気合いを入れて部活に行った。

 

 音楽室は昨日と同じように、ピリピリしている人と、のんびりしている人が入り交じっている。

 

 吹奏楽は団体競技。

 

 いくら私が「金賞をとるためにがんばろう!」ってひとりで決めても、みんなの心がひとつにならなければ、音は絶対にまとまらない。

 

 金賞をとりたい人だけががんばっても、ダメなんだ。

 

 みんなでひとつにまとまるためには、いったい、どうしたらいいんだろう。

 

 そもそも、私にできることって、何かあるんだろうか。

 

 方法がわからないまま、私は今日も残って練習をすることにした。

 

 

 夢中で練習していて、ふと気づいたら、教室の外は真っ暗。

 

「わっ。もうこんな時間! 帰らなきゃ!」

 

 あわてて楽器庫に入ろうとしたら、中から声が聞こえてきた。

 

 あれ……? この声は……。

 

 ドアノブをつかみかけた手が止まる。

 

「体育祭のマーチングは、やるつもりだよ。毎年、部外の伊吹ファンがすごく期待してるし」

 

「俺のせいなら、やらないでくれ。みんなにそんなことをさせたくない」

 

「伊吹の気持ちもわかるけど、部のためには、やったほうがいいと思う」

 

「この大事な時期に、そんな時間ないだろ」

 

 伊吹先輩と高田先輩の声だ。

 

 マーチングって、何のことだろう?

 

 真剣に話し合っているのが伝わってきて、とても楽器庫に入っていけない。

 

 気づかれないように、そっとドアから離れようとした……そのとき。

 

「俺は、やるべきじゃないと思ってる。高田の意見もわかるけど、部長として判断してくれ」

 

 伊吹先輩の声と足音が聞こえたかと思うと、急にドアが開いた。

 

「きゃっ」

 

 おどろいて、持っていた譜面台が、手からすべり落ちてしまった。

 

 ──ガシャン!

 

 うわっ。大きな音が響いてしまって、首をすくめる。

 

「吉川……いたのか」

 

 伊吹先輩が、びっくりしたように私を見つめた。

 

 どうしよう! ふたりの話を聞いていたことが、バレてしまった。

 

 私は思いっきり頭を下げる。

 

「すみません、立ち聞きするつもりはなかったんです!」

 

「おどろかせたな。ケガはないか」

 

 怒られると思ったのに、伊吹先輩は私の譜面台を拾ってくれた。

 

 その伊吹先輩の背中に、高田先輩が声をかける。

 

「伊吹。実力テストが終わったら、僕は部長として、みんなに方針を話すよ」

 

 高田先輩のほうをちらりと見た伊吹先輩は、譜面台を私に渡して、音楽室を出ていった。

 

 私にだけ聞こえる小さな声で、「悪かった」とつぶやいて……。

 

 ふたりの間に、何があったんだろう。

 

 拾ってもらった譜面台を抱きしめて、その場に立ちつくした。

 

「こんなところ見せて、ごめんね」

 

 伊吹先輩の姿が見えなくなると、高田先輩がいつものおだやかな声で言った。

 

「高田先輩、あの……。私、今聞いたこと、誰にも言いません」

 

「うん、ありがとう。ちょっと意見の違いがあってね。でも、心配しないで」

 

「はい」

 

 高田先輩が心配しないで、って言うなら、きっと大丈夫。

 

 そう思うのに、なんだか、胸に不安が残る。

 

「さ、帰ろうか」

 

「は、はい!」

 

 わ! そうだった。もうこんな時間だ! お母さんに怒られちゃう。

 

 あわてて楽器を片づけて、音楽室を出る。

 

 高田先輩と楽しくおしゃべりしながら帰ったけれど、胸の不安は、じわじわと広がっていった。

 

 

ぐうぜん知ってしまった、高田先輩と、伊吹先輩の対立。
黒羽中吹奏楽部の中心でもある二人の意見のちがいは、このあと、部にどんな影響をあたえるの……?
ドキドキの展開、次回もおたのしみに!!

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