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【期間限定】『君のとなりで。』スペシャルれんさい 第43回 それぞれの想い


◆第43回

吹奏楽コンクールの関東大会で、みごとに演奏をしきった黒羽中吹奏楽部。
はたして、みんなの演奏は、最大の目標・全国大会に届いたの……?
ぜったい注目です!!

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♪それぞれの想い

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「えー、関東大会おつかれさまでした」

 学校に帰ってきた私たちは、楽器を片づけて音楽室に集合していた。

 高田先輩と役員が前に出て、最後のあいさつをしている。

「みんなよくがんばりました。みんながいたから、関東代表になれました。ということで、」

 ニコニコと高田先輩が笑う。

 そして、賞状を両手で高々とかかげた。

「全国大会、行くぞ!」

 わぁぁぁぁと歓声が音楽室中に広がった。

 私たちは、県大会突破に続いて、関東大会も突破した!

 まだまだ、このメンバーといっしょに……伊吹先輩といっしょに、コンクールの舞台に立つことができる!


「まだ信じられない! 全国大会に行けるなんて!」

「うれしすぎるよ~~~!」

 さっこと加代ちゃんと抱き合って、飛びはねた。

 関東大会の会場で発表を聞いたときも、あんなに泣いたのに。

 うれし涙はまだまだ止まらないらしい。

「吉川さん、すごく感動したよ。ありがとう。全国大会もよろしくね!」

 高橋先輩は、泣きはらした目でそう言った。

「さくらちゃん、よかったわ~! 特別講師のレッスンが効いたのかな。ふふ。またおいでね!」

 椿先輩は、こっそり私にそう耳打ちした。

「吉川さん、私、ステージでもちゃんとひけたわ」

「うん。柴田さんのピアノ、すっごくよかった!」

「ありがとう。あなたのおかげよ」

 柴田さんは、はればれとした顔で私にそう言ってくれた。

 やっぱり、柴田さんってすてきだな。

 かなわないや……。

 でも、かなわなくても、しょうがない。

 私は、〝私がなりたい自分〟に、少しでも近づけるようにがんばるしかない。

 柴田さんのきれいな顔を見つめながら、決意した。

「吉川さん、大丈夫よ。私には好きな人がいるから」

「え!?」

 突然告げられた言葉に、ドキッと心臓がはねた。

 柴田さんに好きな人!?

 それって、いったい誰なんだろう。

「でも、ちょっと複雑なのよ。相手には好きな人がいるの。だから、私は見守ることに決めたわ。好きな人が選んだ相手なら、応援したいもの」

 その言葉、どっかで聞いたような気がする。

「えっ、待って。それって、もしかして……!」

 柴田さんの視線を追うと……。

「断る」

「一枚だけでいいです! 関東大会突破の記念に! 俺と写真撮ってください!」

 伊吹先輩! ……じゃなくて、崎山くん!?

 ええええ!?

 でも……。そう言われてみれば、心当たりがある。

 そうか。だから柴田さんは、演奏前にすごく緊張していても、崎山くんのひとことで落ち着くことができたんだ。

 しかも、崎山くんの好きな人も、全部お見通しみたい。

「それは……複雑そうだね」

「そうね」

 ふふっと笑う柴田さんは、優しいまなざしで崎山くんを見つめていた。

 学校を出て、さっこと加代ちゃんといっしょに、はずむ足取りで帰り道を歩く。

「今日は最高の一日だったね」

「本当に!」

「あ~~~全国大会か~~~」

「がんばってよかったね」

 まだまだ興奮(こうふん)がさめなくて、胸が熱い。

 今なら、この勢いで、なんだってできる気がした。

 よし!

 心の中で、気合いを入れる。

 どうしても、伊吹先輩の誤解をときたい。

 私が好きなのは崎山くんじゃなくて、あなたですって……ちゃんと想いを告げたい。

 それに、さっこと加代ちゃんにも、もうかくしたくないから。

「さっこ、加代ちゃん」

 私は意を決して、足を止めた。

「どうしたの、さくら」

「忘れ物?」

「違うの。ふたりに話したいことがあって」

 きょとんとしているふたりを、まっすぐ見つめた。

「今まで言い出せなくてごめん。実は私……好きな人がいるの」

「「えええ!?」」

 さっこと加代ちゃんの絶叫(ぜっきょう)が、夕暮れの空に響きわたった。

「ふふふ~。やっぱりそうだったんだね」

「私、気づいてたよ~~。やっと言ってくれたか!」

「え!?」

 ふたりは、私が伊吹先輩が好きだってこと、気づいてたの!?

 おどろいていたら、さっこも急にもじもじし始めた。

「じゃあ……私も。実は、私は高田先輩が好きなの」

「私も言っちゃう! 私は佐久間先輩が好き」

 さっこと加代ちゃんも、ポッとほおを赤らめながら告白してくれた。

「そうだったんだ!」

「うん。みんな、恋も部活もがんばろうよ!」

「秘密の恋だけどね」

 ふふっと3人で笑って、エールを送り合う。

 うれしいな。今日から私たち、『秘密の恋仲間』だね。

「先輩たち、さっき学校を出たばっかりだから走れば追いつくかも!」

 さっこがそう言うと、加代ちゃんもうなずく。

「この勢いで、告白しちゃおうかな」

「私も!」

 わわっ。ふたりも、これから告白するの!?

 なんだか心強い。

「あ、崎山くんはまだ学校にいたよ」

「さくらも、ダッシュで行っておいでよ」

「へ!?」

 崎山くん!?

 あ! 私、好きな人の名前を、まだ言ってない!!

 大変だ。ふたりは、私の好きな人をかんちがいしてる!

「よーし、健闘(けんとう)を祈る!」

「明日、報告し合おうね!」

「あ、ちょっと!」

 さっこと加代ちゃんは、高田先輩と佐久間先輩を追いかけて、それぞれ別の方向へ走って行ってしまった。

「ええっと……」

 ポツンと残された私は、ぼうぜんと立ちつくす。

 明日の朝、まずはふたりの誤解をとくことから始めなくちゃ……。

 とりあえず今は、私も……。

「よし!」

 気合いを入れて、伊吹先輩が利用している駅の方向へダッシュした。
 

関東大会を突破した黒羽中吹奏楽部、ついに、夢の全国大会へ!
そして、想いを伝えるために走っていったさくらの、恋のゆくえは……?
次回、2巻最終回です!

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