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【期間限定】『君のとなりで。』スペシャルれんさい 第42回 最高の演奏を


◆第42回

ついに、吹奏楽コンクール関東大会の演奏直前! 
夢の全国大会へのキップをつかむ、大切な演奏が始まります!!

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♪最高の演奏を

*・*・*・*・*・*・*・*・*・*・*・*・*・*・*・*

 ついに、舞台そでに移動する時間になった。

 ひかえ室を出る前、緊張が高まる中で、私たちは全員で円陣(えんじん)を組んだ。

 高田先輩が、みんなに向かって言う。

「ここに来るまでに、ひとりひとり色々なことがあったと思います。衝突したことも、涙を流したことも。でも、今はそのすべてを絆に変えて、全員で心を合わせよう」

 力強い言葉に、選抜メンバーがうなずいた。

「今までの練習の成果をすべて出そう。結果はついてくるから。みんなで心をひとつにして、演奏を楽しもうね。観客席で応援してくれている部員の分も!」

 いつもおだやかな高田先輩の声にこもった熱で、みんなの気持ちに火がともる。

 絶対に、全国大会に行きたい!

 副部長が楽器を高々とかかげて、声を張り上げる。

「みんなで全国大会に行くよーーーーーー!!!!」

「「「「おーーーーーーーーーーーっ!!!!!!」」」」

 みんな、意気揚々と楽器をかかげた。

 さっこも加代ちゃんも、内藤さんも、崎山くんも、柴田さんも。

 そして、伊吹先輩も──。

 目を合わせて、うなずき合う。

 熱意ときずなを胸に、私たちの決意はさらに強まった。

 いよいよ順番がやってきた。

 楽器を持った部員たちが、スポットライトの降りそそぐステージに出ていく。

 柴田さんは真一文字に口を結び、ふるえる手をぎゅっとにぎりしめていた。

 もしかしたら、またつらいことを思い出しちゃったんだろうか。

 大丈夫かな、と思っていたら……。

 崎山くんが、さりげなくグランドピアノに近づいて、青い顔をした柴田さんの耳元で、何かをささやいた。

「……!」

 次の瞬間、柴田さんの目には、自信が戻っていた。

 よかった! 崎山くんのおかげで、柴田さんはもう大丈夫。

 今度は私が舞台に出る番だ。

 でも、どうしよう。すごく緊張してきた。

 フルートを持つ自分の手がふるえている。

 落ち着かなくちゃ……!

 大きく深呼吸をして、歩き出したそのとき──。

「大丈夫だ。お前ならできる」

「え……」

 耳元でかすかに聞こえた声に、目を見開く。

 歩きながら横目で見ると……。

 となりを歩いていたのは、伊吹先輩だった……!

「……はい!」

 笑顔でうなずいて、自分の席に座る。

 大丈夫だ。大丈夫だ。

 私ならできる。

 伊吹先輩の声を頭の中に響かせて、ぎゅっとフルートをにぎりしめ、しっかりと顔を上げた。

 観客席では、選抜落ちの4人と高橋先輩が、じっとステージを見守ってくれていた。

「がんばれ、吉川さん!」

 高橋先輩の口が、そう動いた。

 その後ろには、椿先輩たち卒業生もいる。

 椿先輩は、伊吹先輩にピースを向けているみたい。

 伊吹先輩の苦笑が目に浮かんで、ちょっとだけ緊張がほぐれた。

「楽しもう」

 指揮台に上がった北田先生の口が動く。

 いよいよだ。全国大会まで、あと一歩。

 念願の、関東大会の舞台だ。

 よろしくね。がんばろう。

 今までの練習の成果を出そう。

 大切な私のフルートに、心の中で声をかける。

 小さく息をついて、指揮棒が上がるのをじっと待った。


 
 演奏が始まると、不思議と冷静になれた。

『海の男達の歌』の伊吹先輩の勇ましいファンファーレが鳴り響く。

 速い動きが続く中、このファンファーレに背中を押されて、がんばろうと思える。

 伊吹先輩のハイトーンと、加代ちゃんの鎖(くさり)の音とともに、トゥッティに突入した。

 伊吹先輩がトランペットでソロを歌い上げ、柴田さんのピアノがそれに合わせる。

 柴田さんは楽しそうに、今まで聞いた中で、一番美しい音をつむいだ。

 高田先輩ひきいるホルンが勇ましく鳴り、その勢いのまま、一気に突き抜けるように最後の音が響きわたった。
 

 北田先生の合図で、みんながいっせいに立ち上がる。

 拍手を浴びながら、実感していた。

 私、関東大会に出られたんだ。

 伊吹先輩やみんなと、またコンクールの舞台で演奏ができたんだ!

 観客席の高橋先輩が、うなずきながら泣いている。

「ありがとう」

 何度もそう言っているみたいだった。

 ……よかった。

 私は、先輩の想いも乗せて、演奏することができた。
 

選抜メンバーも、観客席のメンバーも、部員全員の心をひとつにして、関東大会での演奏をやりきった、黒羽中学吹奏楽部。
この演奏は、夢の全国大会へとつながるの……?
次回もおたのしみに!

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