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【期間限定】『君のとなりで。』スペシャルれんさい 第34回 帰り道の事件


◆第34回

浴衣ダブルデートはちょっとモヤモヤしたかんじに……。
でも、最後にまさかのドキドキが待っていた!?
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♪帰り道の事件

*・*・*・*・*・*・*・*・*・*・*・*・*・*・*・*

「はぁ……」

 夕焼け空を見上げて、ため息をひとつ。

 ダブルデートが終わり、私はひとりでトボトボと歩いていた。

「おにあいだったなぁ……」

 楽しそうに話していた伊吹先輩と柴田さんを思い出すと、胸が苦しくなる。

 わかってる。これは、関東大会を突破するために、必要なことなんだって。

 加代ちゃんに元気になってもらいたいし、なによりも部活のみんなのためなんだ。

 それに、伊吹先輩が柴田さんのピアノを必要としている。

 私だって、ふたりの演奏を聞きたい。

 でも、心がズタズタだよ……。

 崎山くんは別れぎわ、

『もし、伊吹先輩も月乃が好きなら、俺は見守ることにするよ。好きな人が選んだ相手なら、応援したいしね』

 って、晴れ晴れとした表情で言っていた。

 私も、崎山くんみたいに思えたらいいのに。

「できないよ……」

 応援なんて、できっこない。

 伊吹先輩と柴田さんが楽しそうに話をしてるだけで、悲しい気持ちになってしまう。

 私って、心がせまいのかな。

 大人っぽくてかっこいい柴田さんには、絶対かなわないのに。

 うつむきながら歩いていると……。

「……?」

 私のゲタの音を追いかけるように、後ろのほうから別のゲタの音が聞こえてきた。

 辺りは薄暗い。急に怖くなってくる。

 もしかして、私の後をついてきてるのかも……。 

 思い切って、バッと振り向くと。

「え!?」

 そこには、伊吹先輩がいた!

「すげー顔。怖がりすぎだろ」

「だ、だって。暗いですし、下駄の音、後をつけられてるのかもって思って」

 びっくりしすぎて、しどろもどろで言うと、伊吹先輩の声が優しくなった。

「怖がらせて悪かったな。俺も帰り道、こっちなんだよ」

「……崎山くんと柴田さんはいっしょじゃないんですか?」

「ああ。あのふたりは家が近所らしいから、いっしょに帰った」

「そうなんですか」

 びっくりしたのが落ち着いてくると、じわじわうれしくなってきた。

 先輩と、ふたりで話せた。

 もう少しだけ、いっしょにいられたらいいな。

「暗くなってきたし、駅まで送る」

「えっ!?」

「おどろきすぎ。このくらい、先輩の役目だろ」

 先輩のとなりにならんで、駅までの道を歩いていく。

 だまっていたら、ひとりでドキドキしてることがバレてしまいそう。

 話題を探さなきゃ。

「ええっと。柴田さん、入部してくれたらいいですね」

「そうだな。ていうか、俺にここまでさせておいて、入部しなかったらゆるさないけど。でも、まぁ、大丈夫だろ。期待していいと思う」

「今日、先輩が来てくれたおかげですね」

「違うだろ」

「え?」

「一切聞く耳を持たなかったあいつを、ここまでやる気にさせたのはお前だ」

 伊吹先輩は、口の端をきゅっと上げて、笑った。

「お前のおかげだ」

 その言葉に、私はびっくりして目を見開いた。

 先輩に、笑顔でほめてもらえるなんて……!

 うれしすぎて顔が熱い。心臓が苦しいぐらいに鳴っていて、何も言えないよ。

 すると、先輩は小さな紙袋を差し出した。

「ごほうびだ。やる」

「え! あの、ありがとうございます」

 やっとのことでお礼を言って、さっそく開けてみると。

「これって……」

 それは、さっき私が見ていたピンクのこけしキーホルダーだった。

「先輩、どうしてこれを……?」

「じーっと見てただろ」

 先輩、覚えていてくれたんだ。

「さっきはあんなこと言っちゃいましたけど、本当は欲しかったんです」

 こけしを、てのひらで大事につつみこむ。

 そんな私に、先輩はまたいじわるな顔を向けた。

「それ、願いがかなうおまじないらしい。仲よくやれよ」

「え!?」

「いちおう気をつかって、さっきはあまり話しかけないようにしてたんだけど」

 もしかして、このこけしって、崎山くんと私の恋愛がうまくいくように……ってこと!?

 そんな……。

 先輩の優しさが、胸をえぐる。

「ちがうんです……」

「え?」

 私は、強い声で言った。

「私は……崎山くんのこと、友達としか思ってません! 私は……」

 そこまで言って、ハッと我に返る。

 本当の気持ちを言いたいけど、でも、ダメだ。

 だって、柴田さんにかなうわけがない。

 ぐっとこぶしをにぎりしめて、口から出かかった言葉を飲みこんだ。

「送ってくださってありがとうございました! もうここで大丈夫です!」

「……っ。おい!」

 先輩を振り切って、私は駅まで猛ダッシュした。
 

まさか、最後に、こんなドキドキと、切ないイベントが待っているだなんて……!
さくらの恋は、どうなってしまうの?
次回もおたのしみに!

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