連載

  1. ホーム
  2. 連載
  3. 小説
  4. 【期間限定】『君のとなりで。』スペシャルれんさい!
  5. 【期間限定】『君のとなりで。』スペシャルれんさい 第31回 やってしまった!

【期間限定】『君のとなりで。』スペシャルれんさい 第31回 やってしまった!


◆第31回

「柴田さんと伊吹先輩が二人で話せる時間を作る」条件は、いつのまにか「柴田さん、伊吹先輩、崎山くん、さくらでダブルデートする」という計画に!?
いったい、どうなっちゃうの!?

第1巻(1回~16回)を読みなおす(もくじへ)
第2巻(17回~)を読みなおす(もくじへ)

*・*・*・*・*・*・*・*・*・*・*・*・*・*・*・*

♪やってしまった!

*・*・*・*・*・*・*・*・*・*・*・*・*・*・*・*

「それって、もしかしてダブルデートってこと?」

「うん」

 崎山くんは、さらにたたみかける。

「だって、伊吹先輩と月乃のデートをのぞき見するなんて、趣味の悪いことできないでしょ。だからと言って、ふたりきりでデートするのは絶対ダメ」

「う、うん」

「ダブルデートすれば、月乃を監視できるし」

 監視って……。柴田さんは変なこと、しないんじゃないかなあ。

 どっちかっていうと、崎山くんが伊吹先輩とおでかけしたいだけでは……?

 なんて思っていたら、崎山くんはキラキラの笑顔で私の顔をのぞきこんできた。

「だからさくらちゃん、俺の相手役をしてよ。俺と部のために、協力して!」

 えええ~~~~!

 確かに、柴田さんと伊吹先輩のデートが実現しないと、柴田さんは入部してくれない。

 そうなったら、関東大会突破は無理だ。

 だけど、私だって、ふたりきりでデートはしてほしくない……。

 うーん。これは、しかたないよね。

 腹をくくった私は、小さくうなずいた。

「わかった。協力する」

「ありがとう! あとは俺に任せて。月乃と伊吹先輩には、いい感じに言っておくから!」

「うん」

「じゃあ、明後日の日曜日に決行だよ。場所と時間は、後で連絡する」

「わかった」

「あ! 浴衣、着てきてね! 絶対だよ!」

 浴衣!?

「えっ、ちょっと待って、それってどういう……!?」

 答えを聞くより前に、崎山くんはビュンと走り去ってしまった。

 いったい、どこに行くつもりなんだろう。

 教室に戻っても、なんだかモヤモヤしていた。

 ダブルデート、かぁ……。

 でも、そんなことしたら。

 伊吹先輩は、『私が崎山くんのことを好き』だって、さらに誤解してしまいそう……。

 やっぱり、やめておいたほうがいいかも……?

 その日の部活の帰り道。

 いつも元気いっぱいの加代ちゃんが、めずらしく静かだ。

「加代ちゃん、どうしたの? 具合でも悪い?」

 心配になって、青白い顔をのぞきこんだ。

 すると、加代ちゃんが小さな声で話し始めた。

「ここだけの秘密にしてくれる?」

「うん。約束する」

「実は……さっき3年生が話してたのを、ぐうぜん聞いちゃったんだけど」

「うん」

「ピアノの森田先輩が、来週転校しちゃうんだって」

「「え!?」」

 私とさっこの声が響いた。

「それってヤバくない?」

 さっことは別の意味で、私もうなずく。

 森田先輩の転校のことを知っているのは、ほんの少しの人たちだけだったのに。

 ウワサが広まっちゃってるんだ!!

 私たちの反応を見て、加代ちゃんはどんどん落ちこんでいく。

「どうしよう。パーカッションパートのせいで、関東大会に出られなかったら」

 ピアノは、パーカッションパートの楽器。

 加代ちゃんは、パーカッションのメンバーとして、責任を感じているんだ……。

「それはないでしょ。ピアノがいなくたって、関東大会は出られるよ」

「それに、パーカッションパートのせいじゃないよ」

 さっこと私がフォローをするけれど、加代ちゃんは泣きそうな顔でうつむいた。

「でも、関東大会突破はきっと無理だよ。ここまでがんばったのに……」

「加代ちゃん……」

 あまりにも落ちこんでる姿に、かける言葉をなくしてしまう。

 急な転校でコンクールに出られなくなって、残念に思っているのは森田先輩も同じだ。

 でも、もし、柴田さんが入部してくれたら。

 この状況をなんとかできる。

 そのすべての可能性をにぎっているのは、私なんだ……!

 私はぎゅっとこぶしをにぎりしめて、気合いを入れる。

 そして、うつむいている加代ちゃんの肩にポンと手を置いた。

「加代ちゃん! 大丈夫だよ!」

 急に明るい声を出した私に、ふたりは目を丸くした。

「実はね、私、天才ピアニストを勧誘中なの! 関東大会までに絶対入部してもらうから、安心して!」

 ふたりを安心させるように力強く言うと、加代ちゃんに笑顔が戻ってきた。

「そっか……。よかった!」

「本当によかった! さくら、お願いね!」

「うん! 任せて!」

 分かれ道でふたりに手を振って、「また明日ね」って言って別れる。

 ひとりになった私は、苦~い顔になっていた。

 ……つい勢いで言ってしまった。これはもう、後には引けない。

 ダブルデート、断るわけにはいかなくなっちゃった!


ついに広まってしまった、ピアノの森田先輩転校のウワサ……。ここでみんなが不安になったら、せっかくみんなががんばってきた演奏に、影響が出ちゃうかも!?
すべては、柴田さんに入部してもらえるようがんばるさくらにかかっています……!
次回、いよいよダブルデートの日がきちゃいます!

もくじに戻る
第1巻(1回~16回)を読みなおす(もくじへ)

関連記事

関連書籍

君のとなりで。(2) 近くて遠い、ふたりの距離

君のとなりで。(2) 近くて遠い、ふたりの距離

  • 【定価】 726円(本体660円+税)
  • 【発売日】
  • 【サイズ】新書判
  • 【ISBN】9784046319463

紙の本を買う

  • カドカワストア
  • アマゾン
  • 楽天

電子書籍を買う

  • BOOK WALKER