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【期間限定】『君のとなりで。』スペシャルれんさい 第27回 悲しい過去


◆第27回

天才ピアニストの柴田さんに吹奏楽部に入ってもらおうと、作戦を練るさくらと内藤さん。
そんなとき、内藤さんが「ある方法」を思いついて……?

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♪悲しい過去

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「俺に協力してほしいことって、なに?」

 お昼休みに入ってすぐ、私と内藤さんは、ろうかのすみっこに崎山くんを呼び出した。

 大人っぽい笑顔の崎山くんを前に、内藤さんは顔を真っ赤にしてうつむいてしまう。


「よ、吉川さん。お願い」

「……わかった!」

 内藤さんは、崎山くんのことが好きみたい。

 話せなくなってしまった内藤さんのかわりに、私が口を開いた。

「崎山くんって、柴田月乃さんと同じ小学校だった?」

「月乃? うん。幼稚園からいっしょだよ」

 さらりと返された言葉に、私たちはほっとした。

 さすが、内藤さんの『崎山くん情報』は確実だ。

「実は、吹奏楽部のことで柴田さんにお願いしたいことがあったんだけど、断られちゃって。もしかしたら、崎山くんから声をかけたら、話を聞いてくれるかもしれないって思ったの」

 崎山くんは、ちょっと考えて答えた。

「もしかして、森田先輩が転校しちゃうから、かわりのピアノを月乃に……ってこと?」

「崎山くん、知ってたの!?」

「うん。さっき、北田先生に呼ばれて聞いた。俺も同じこと頼まれたよ」

「そうだったんだ……」

 関東大会突破は、部員全員の願いだ。北田先生も必死なんだな。

 きっと、崎山くんから誘ったら、OKしてくれるような気がする!

 ほっとしていたら、崎山くんが「うーん」とうなった。

「でも……悪いけど、俺が頼んでも無理だよ。月乃はもう、ピアノがひけないんだ

 ピアノが、ひけない……!?

「それって、どういうこと……?」

「3年前、コンクールで優勝したのがきっかけで、ひけなくなったんだ」

 崎山くんはゆっくりと話し始めた。

「月乃は、もともとステージに上がるのが苦手だったんだ。とにかく目立ちたくないって子で、スポットライトを浴びるのがイヤだって、よく言ってた。コンクールは、親の期待にこたえるために、無理に出たんだよ」

 ふと、北田先生に見せてもらった、3年前の柴田さんの動画を思い出した。

 こわばった顔をしていたのは、緊張のせいじゃなくて、無理をしていたからだったのかな。

「優勝なんてしたくなかったんだって。でも、次から次へとコンクールに出場させられて……それで、耐えられなくなって、指が動かなくなったんだ」

 きっと、崎山くんはその様子を、そばで見ていたんだろう。

 話している崎山くんもつらそうだ。

「今はまったくピアノに触れていないらしい。だから、月乃は吹奏楽部には入らないと思う。北田先生にもさっきそう伝えた」

「そんなことがあったんだ……」

 柴田さんに、そんな過去があったなんて。

 急にピアノをひいてほしいなんて言って、悪いことをしてしまった。

「俺は引き続き、学校内にピアノが上手な子がいないか探すよ。あと、月乃のことはここだけの話ってことで、よろしく」

「うん、わかった。ありがとう」

 教室に戻っていく崎山くんの後ろ姿を見送ると、内藤さんはふーっと息をはき出した。

「私たちにできることは、もうないみたいだね……」

「……うん」


 けれど……。

 私の頭の中には、動画で聞いた、柴田さんの美しいピアノの音が鳴り響いていた。
 

 

吹奏楽部にさそったとき、柴田さんが「イヤよ」と即答した理由を知ってしまった、さくらと内藤さん。柴田さんといっしょに演奏することはできないの……?
でも、あきらめかけたそのときに、チャンスがおとずれる!? 次回をおたのしみに♪

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