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【期間限定】『君のとなりで。』スペシャルれんさい 第7回 秘密のお昼休み


◆第7回
クラスメイトの内藤さんとのすれちがいから始まった、無視や、陰口……。
どうしようもできない状況から、さくらを救いだしてくれたのは、無口でクールな学校イチのイケメン、伊吹先輩。
そんな先輩に、さくらが最後に伝えたかったこととは……?
さくらの気持ちが動き出す、キュンまちがいなしの第7回です!!

前回までを読みなおす(もくじへ)

*・*・*・*・*・*・*・*・*・*・*・*・*・*・*・*

秘密のお昼休み

*・*・*・*・*・*・*・*・*・*・*・*・*・*・*・*

 翌日のお昼休み、私はそっと音楽室のドアを開けて中に入った。


 今日で、この練習を終わりにしようと決意してきた。

 楽器庫に入り、フルートを用意する。

 まずは一音一音を長くのばす、ロングトーンの練習。

 集中力が切れたころ、準備室から伊吹先輩のトランペットの音色が聞こえてきた。

「あ……。『海の男達の歌』だ……」

 コンクール曲には、課題曲自由曲がある。

 自由曲の『海の男達の歌』が、とってもかっこいいんだ!

 その曲の冒頭、伊吹先輩ひきいるトランペットと、高田先輩ひきいるホルンだけで吹く、ゆったりとしたメロディー。

「きれい……」 

 思わず聴き入ってしまう。

 このメロディーのとちゅうで、フルートが加わるんだけど……合わせたら怒られるかな? 
 確実に怒られるよね……。

 音は出さずに、伊吹先輩の音に合わせて指だけ動かしてみる。

 そのうち、先輩は細かい動きのメロディーを吹き始めた。

 ここはフルートから始まって、木管楽器全部、そして最後には全部の楽器がいっしょに吹く。

『トゥッティ』と呼ばれるこの部分が、私は特に大好きなんだ。

 でも、テンポが速くて音も高いから、難しい。私の最大の課題でもある。
 指を止めて、伊吹先輩の音を聴いてみる。

 リズムが正確で、音もきれい。

「さすがだな……」

 伊吹先輩のトランペットは、やっぱりすごい。

 暗い海の中で、水面から月明かりがさしこんでいる……そんな情景が浮かんでくるような、静かで美しいソロのメロディー。

 本当はソロを吹くのはオーボエなんだけど、先生の強い希望で、伊吹先輩がトランペットで吹くことになったらしい。

 こうやって先輩の音色をひとりで聞けるのも、今日で最後。

 私はフルートを片づけながら、先輩の音をじっくり聞いていた。

 しばらくして、ふと我に返ると、先輩の音が止んでいる。

 時計を見れば、お昼休み終了5分前。

 やばい!

 あわててフルートをたなにしまい、楽器庫から飛び出す。

 そこで……運悪く、準備室から出てきた伊吹先輩と出くわしてしまった。

 う、うわ~~~~~~~~!

 最後の最後に、またイヤな顔をされてしまった。

「こ、こんにちは」

 苦しまぎれに頭を下げてみるものの、無視。

 うっ……。あいかわらずの塩対応だ。でも、にらまれないだけマシだと思おう。

 本当は、ものすごく迷惑なのに練習させてくれていたんだから……。

 そう思ったら、いてもたってもいられなくなって。

「伊吹先輩!」
 
 あろうことか、楽器庫に消えていく先輩の後ろ姿に、思いっきり声をかけていた。

 ひぃぃぃぃ! なにやってんの、私!!!!

 ゆっくりと、先輩はめんどくさそうに振り向いた。

 どうしよう。本当に呼び止めちゃった。

 でも、やっぱりお礼とおわびを言いたい。

 私はぐっとこぶしをにぎりしめ、息をすいこんだ。

「あの、先輩。個人練習の時間をジャマしてすみませんでした……」

 言った……! 言えた!!!!!

 達成感でいっぱいになりながら、深々と頭を下げる。

「弁当持ったまま、つっ立って泣くとか……意味わかんなすぎて追い返せねぇよ」

 ……それって初日のこと!?

 無視されるかと思ったら、まさかのひとこと。

 先輩が、そんな前のことを覚えていてくれてるなんて……。

 いや、よろこんでる場合じゃない。かんじんなことを言わないと!

『明日から、もう来ません』

 そう言おうとした時──……。

「ウザイから、ほかのやつには言うなよ」

 えっ!? それって……。

 これからも来てもいいってこと?

「ひっ……」

「は?」

「秘密ってことですか?」

 あわわわ。私はなにを言ってるんだ。

 伊吹先輩は、一瞬まゆ毛をピクッと動かして、ニヤリと笑った。

「ま、そういうこと」

 ──ズキュン!

 そのいじわるなほほ笑みに、その言葉に。

 私の胸は見事に撃ち抜かれてしまった。

 ♪

「伊吹先輩って、トランペットだけじゃなくて、勉強もスポーツもすごいらしいよ~」

 部活帰り、今日もさっこの『伊吹先輩情報』の時間がやってきた。

「うそ~! さらにかっこいい!」
「毎年、球技大会は伊吹先輩ファンで体育館がうめつくされるらしい!」

「へぇぇぇぇ~~~~。球技大会楽しみ! 何月だっけ?」

「11月!」

 へぇー。意外。スポーツもできるんだ。そりゃモテるだろうな。

「スポーツってなにが得意なの?」

 思わず口を出してしまったら。

「わ! さくらが食いついた! めずらしい~」

「さくら、スポーツマン好きだもんね。なんだっけ。小6の時、いい感じだった男子」

「いいって、そんな話題!」
 あわてて止めに入ったものの、こうなったさっこと加代ちゃんはだれにも止められない。

「いたいた! さくらといい感じだった人! えーと。加賀谷(かがや)くん!?」

「そーそー! 加賀谷くん! サッカー部の!」

「かっこよかったよねー」

「すごく仲よかったのに、どうしてつき合わなかったんだっけ?」

「気がついたら自然消滅してた……」

 仕方なくそう答えると、ふたりは妙に納得した顔で「あー」と大きくうなずいた。

 なにそれ!

「まぁ、確かにサッカー部の人ってかっこいいよね」

「伊吹先輩って、スポーツはだいたいとくいらしくて、球技大会もいろんな種目かけ持ちして活やくしてるんだって!」

「さすがだね!」

「でも、サッカーだけは選ばないらしいよ~。残念だったね、さくら」

「へっ!?」

 ヤバイ。今のリアクションはマズかろう。

「球技大会で、先輩との距離をぐぐっとちぢめたいね~」

「そうだね~~。楓センパイ! とか呼んで、差し入れしちゃったり~~!」

「「きゃーーー!!」」

 んん? 盛り上がるさっこと加代ちゃんに割って入る。

カエデって誰?」

「さくら知らなかったっけ。仕方ない、特別に教えてあげよう」

「うん」

「伊吹先輩の下の名前、【楓】なの」

 ──きゅん。

 へ……へぇぇ~~~~~。楓……かぁ。

 まぁ、確かに少しかっこいいかも。

「伊吹楓って……なんか芸名みたい。ずいぶんとハデな……」

 ドキドキしちゃったのをかくすために、そんなことを言いかけて、ハッと後ろを振り返る。

 ……いない。よかった。

 また本人にこんなこと言ってるのを聞かれたら、たまったもんじゃない。

 って、なんで意識しちゃってるんだろう。

 いつものごとく、もう別の話題でもりあがっているふたりをちらりと見て小さく息をはく。

 胸の奥がきゅっとしめつけられて、熱くなるほおをどうしたらいいのかも、わからなかった。
 

無口で、クールで、ふきげんそうな伊吹先輩が、
さくらだけに見せたほほ笑みと、ふたりだけの秘密の音楽室の時間……。
伊吹先輩なんてキョーミない、と決めこんでいたさくらに、心の変化が!?
次回も、ぜったいに見逃せない、キュンたっぷりでおとどけします!!

次回、第8回もおたのしみに!(第8回は11月12日午前10時公開予定!)

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