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一年間だけ。スペシャルストーリー あまい言葉と、キミのうそ〈前編〉


つばさ文庫で人気急上昇中の『一年間だけ。』シリーズ。その1人めのヒロインほのかちゃんと、「レジェンド(伝説)カップル」と呼ばれる相手のつかさ先輩の、甘ずっぱいエピソードを、書き下ろしのスペシャルストーリー前編・後編でお送りします

 

※公開期間は2021年9月30日23:59までです。

 

   1

 もうすぐ夏休み!

 わたし、()(どう)穂乃(ほの)()は、中学二年生の夏を前に、わくわくしていた。

 一年生のときは、中学に入ってはじめての夏で、部活に宿題に、いっぱいいっぱいだった。

 三年生になったら、受験勉強で、きっと余裕がない。

 だから、二年生の夏は、たぶん中学生活で、一番楽しめる夏なんだ。

 親友のちほちゃんや、まゆちゃんと、遊ぶ約束もしているけど……。

 一番楽しみなのは、つかさ先輩と、ふだんよりもいっぱい会えるだろうってこと!

 (むら)()(つかさ)先輩は、二つ年上で高校生の……わたしの彼氏。

 わたしは、スマホのメッセージアプリを開いて、つかさ先輩とのやり取りを見直した。

 『ほのちゃん、好きだよ』

 

 『今日のデートの服、かわいかった』

 

 『ちょっと電話しない? 声が聞きたいんだ』

 

 なにげないやり取りの中でも、つかさ先輩は、わたしが思わずはずかしくなっちゃうくらい、あまくてやさしい言葉をいっぱい(おく)ってくれる。


 でも、こういうやり取りを毎日しているから、学校がちがってなかなか会えなくても、がんばれているんだ。

 でも、会えない日々も、もうすぐ終わり。

 夏休みになったら、好きなときに会うことができる。

 去年は、つかさ先輩が受験生だったけど、今年はちがう。

 きがねなく遊べる夏なんだ!

 ――そう思っていたんだけど……。

 

 夏休みが近づいたある夜。自分の部屋で、宿題をしていたときのことだった。

 スマホの通知音が鳴って、わたしはシャーペンをおいた。

 画面には、『つかさ先輩』と名前が表示されていて、自然と笑顔になってしまう。

 だけど……。

 

『ほのちゃん、ごめん

 俺、しばらくいそがしくなる』

 

 つかさ先輩からのメッセージに、わたしの頭は、まっしろになった。

 どっ、どういうこと――!?

    2

 つかさ先輩とは、去年、わたしが中学の入学式へ向かう途中で、出会った。

 わたしは新一年生。つかさ先輩は新三年生。

はじめての制服。

 はじめての先輩。

 はじめての……恋。

 中学生になって、なにもかもが、新しく感じることばかりだった。

 つかさ先輩と付き合うことになったときは、信じられなかった。

 だけど、つかさ先輩はわたしの二個年上。

 いっしょにいられるのは、『一年間だけ』だったんだ。

 つかさ先輩が高校に入学して、わたしが中学二年生に上がって――。

それでも、わたしたちは、おたがいの気持ちが変わらないって信じられている。

 いつの間にか、わたしの中学では、わたしとつかさ先輩のことを『レジェンドカップル』なんて、伝説のように呼ぶようになっていて、びっくりしちゃった。

 わたしもつかさ先輩も、おたがいが初恋で、まだ手さぐりな部分もあるのにな……。

 でも、いつかは自分でも胸を張って『レジェンドカップル』って言えるようになれたらいいなって、思っていたんだけど……。

「はぁぁぁぁ……」

 翌日の教室で、わたしは自分の席でほおづえをついて、盛大なため息をついてしまった。

 それもこれも、昨日のつかさ先輩のメッセージのせい。

 あわてて『どうしてですか? なにかあったんですか?』って送ったけど、つかさ先輩からの返事は、『部活と勉強がいそがしくて……ごめんね』だった。

 部活と勉強なら、しかたないなって、思うしかないんだけど……。

「ほのちゃん、どうしたの? 朝からそんなに暗い顔して」

 話しかけてきたのは、同じクラスの(まえ)()()()ちゃん。

 わたしは、昨日のできごとを、ぽつぽつと話した。

「は~、高校生って、そんなに大変なのかな?」

「わかんない……。たまに、レナ先輩と連絡取るけど、毎日楽しいって言ってるよ?」

 レナ先輩っていうのは、美術部の先輩だった人。

 つかさ先輩とも親しくて、同じ高校に通っているんだ。

「夏休みになったら、たくさん会えるって、楽しみにしていたのに……」

「でも、ぜんぜん会えない、っていうわけじゃないんでしょ?」

「夏祭りには、いっしょに行こうって言われてるけど……」

 それだけじゃ、足りないよ……って思うのは、わたしのわがままなのかな?

 つかさ先輩は、そう思っていないのかな……。

 わたしだって、つかさ先輩と同じ高校に行きたいから、二年生といっても、遊んでばかりというわけにはいかない。

 だけど、つかさ先輩とすごす夏を楽しみに、期末試験もがんばったのになぁ……。

 ちほちゃんが、パンッと手をたたいた。

「ほのちゃん、今日は私とデートしよ! 帰り道にあるアイス屋さん、新商品が出るんだって!」

 明るく誘ってくれるちほちゃんの優しさが、ありがたい。

 わたしは、ちほちゃんにつられるように笑って、うなずいた。

   4

 放課後、アイスを食べたあと、わたしたちは駅前の文房具屋さんに来ていた。

 わたしは英語のノートが、もう少しで使い終わりそうだったし、ちほちゃんも消しゴムを買いたいっていうから、いっしょに向かったんだ。

 買い物を終えて、帰ろうとしたときだった。

「あれ?」

 駅ビルへ向かう人の中に、つかさ先輩と同じ高校の制服姿があった。

「ほのちゃん、どうかした?」

「つかさ先輩と同じ高校の人がいてね……って、あれ? つかさ先輩?」

 その人が横を向いたことで、顔が見えた。

 まさか、つかさ先輩本人だったなんて!

「ぐうぜんじゃん、よかったね! 声かけてきなよ!」

「うん! でも……あれ?」

 つかさ先輩、今日は部活があるって言ってなかったっけ?

 足を踏み出そうとしたところで、つかさ先輩が一人じゃないことに気がついた。

 つかさ先輩は…………女の人と並んで歩いていたんだ。

「どっ、どういうこと、ほのちゃん!? あれ、だれ!?」

「わかんない……」

 ちほちゃんがわたしの肩をつかんで、ガクガクゆさぶってくるけど、わたしは答えることができない。

 見たことがない女の人だ。

 大学生くらいかな? おとなっぽくて、すごくきれいな人で……。

 つかさ先輩とその人は、とても親しそうに見える。

 行き先が分かれるのか、ぺこりと頭を下げるつかさ先輩に、その人は「またね」と言うように、手をふった。

 つかさ先輩は、そのまま遠ざかっていく。

「まさか…………これって、村瀬先輩の浮気現場っ!?」

「うわーん、ちほちゃん! 言葉に出さないでー!」

 ぽつりとつぶやいたちほちゃんを、思わずぽかぽか(たた)いちゃった。

 思ったけど……わたしもそう思っちゃったけど……!

 ふりむくと、つかさ先輩の背中は、もう見えなくなっていた。

    5

 その日の夜は、よく眠れなかった。

 つかさ先輩から、いつものようにメッセージはもらったけど……『さっきいっしょにいた、あの人はだれですか?』なんて聞けないよ……。

 あたりさわりのない返事しか、できなかった。

 翌朝(よくあさ)

「ほのちゃん、クマがひどいよ……?」

登校してきたちほちゃんから、心配そうに言われてしまった。

 しっかり顔を洗ってきたけど、目の下のクマは、かくしようがなかったみたい。

「…………ちほちゃん、わたし、どうしたらいいと思う?」

 一晩考えても、答えは出なかった。

 年の差があっても、学校が離れても、ずっとやっていけると思っていたのに。

 『本物のレジェンドカップルになりたい』って思っていたのに……。

 わたしがため息をつくと、ちほちゃんがずいっとスマホを差しだしてきた。

「ほのちゃんがそう言うと思って、リサーチしておいたよ!」

「リサーチ?」

 画面に表示されていたのは、レナ先輩とちほちゃんのメッセージ画面。

 そこに、『今度の土曜日は、バスケ部の練習は、お昼までらしいよ』と書かれている。

「――決戦は土曜日! ほのちゃん、二人で探偵団を結成しちゃおう!」

 ちほちゃんが、グッとこぶしをにぎって、高らかに言う。

 ど、どういうこと……?

〈後編につづく 8月5日更新予定〉

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