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『はなバト!』1巻無料公開! 第16回


 

絶対ナイショのパートナーと、 【花言葉】をとなえてみんなを救え!

わたし、白沢みくに!
きれいなお花が大好きで、『花言葉』にくわしい中1だよ。

ある日の放課後、見たことのないバケモノ(!?)がおそってきて
……って、いったいうちの学校で何が起きてるの!?
助けてくれたのは、どこかミステリアスな、華道部の竜ヶ水先輩。

「みんなを守れるのは、『花』を味方にできるきみだけだ」

なんて、そんなのムリです!!!
だけど、友だちにまで危険がせまってきて!?
こうなったら、 『花言葉』がもつ力で、わたしがピンチを救ってみせる....!

 

17 わたしの好きなもの!

 そのあとは大変だった。
 消防車がやってきて、焦げだらけの水びたしの部屋で、わたしだけが見つかって──。
 その日は臨時休校になって、病院にも警察にもつれていかれて、本当に大変だった。
 このあいだ、めちゃくちゃになった校長室にいたこともあって、いろいろ疑われたけど。
 けっきょく、『こんなこと中学生にできるはずない』って結論になって、解放されたんだ。
 でも、ホッとしたのもつかのま。
『白沢みくにが現れた部屋は、破壊される』
『実は、竜巻を呼んだのも白沢みくに』
 そんな悪魔のようなウワサが、生徒のあいだをかけめぐっているとか、いないとか──。

 そして、次の日。
「みくにゃん! おはよーう!」
 教室に入ると、ヒナちゃんが勢いよく抱きついてきた。
「……って、なんでそんな包帯だらけなん? もしかして、ミイラの研究者になるん?」
「ミイラの研究者って、みんな包帯巻いてるの?」
「知らんけど。うちも今度、イカのミイラを見にいく予定やで」
「それ、ただのスルメだよね?」
 わたしのツッコミに、あはは! と声をあげて笑って。
 ヒナちゃんはふと、真面目な顔になった。
「なんか、こうやってみくにゃんと話すの、久しぶりな気がせえへん? 毎日学校に来てたはずやのに、なんでやろ」
「うん……そうだね」
「ありがと、みくにゃん」
 突然そんなことをいわれて、わたしはドキリとした。
「え?」
「なんか、いっておいたほうがええ気がしたから!」
 とびっきりの笑顔を向けられて、なんだか胸の奥から、熱いものがこみあげてくる。
「ううん……」
 涙がこぼれないように、わたしもにっこり笑ってみせた。
「わたしこそいつもありがとう、ヒナちゃん!」

 全部、元に戻ったみたい。
 ──ううん。全部じゃない。
 ほむら先輩は、いなくなってしまった。
 急に転校することになったという話で、ショックで倒れる人が続出したみたい。
 生徒会長のイスが空いてしまって、先生たちも大さわぎしてる。
 伊織はたぶん何か勘づいてるけど、何もいってこない。

 そして。
 みんな気づいていないけど、竜ヶ水先輩は消えたまま──。

 放課後になって誰もいなくなった教室で、わたしは自分の席に座っていた。
(なんだか今日は、心が軽かった気がする)
 自分にウソをつくのをやめて──おしとやかで、お花が似合う子を目指すのをやめたら、距離を感じていたクラスメイトとも、不思議と自然にお話ができた。
 みんなと話してみて、分かった。
 ヒミツを作って、壁を作っていたのは、わたしのほうだったんだなって──。
 髪をほどいて、かんざしを見つめる。
(……平和になったし、楽しい一日だった)
 そのはずなのに。
 くもりの取れたピカピカの鏡には、浮かない顔のわたしが映っている。
(……あれ?)
 それを見て、何かが心に引っかかった。
 ドキドキと、心臓が急に速く動きだす。
(校長室の掃除をしていたとき……先輩の体が死んじゃったら、わたしの中の神通力も消えるって、いってたはず)
 でもわたしはキツネとの戦いで、花言葉の力を使えた。
 先輩の神通力は、まだわたしの中にある。
 ──ということは、まだ竜ヶ水先輩は、完全に消えてしまったわけじゃない?
(そういえば、先輩は……)
 もともと、消えかけていた神さまだっていってた。
 そして、わたしが信じて、お願いしたことで、この世に残れたっていってた。
 それって、つまり……!

◆◆◆

 木に囲まれた、しめった土のにおいがする空気の中を、ひたすら走る。
「はあ、はあ、はあ……!」
 息が切れる。髪の毛が、汗で顔にはりつく。
 木々の合間をぬうように進むと、突然パッと、視界が開けた。
 小さな池。
 たどり着けた。あのときのほこら。
 あいかわらずボロボロ。きっとわたし以外、ここにあることを知らないほこら。
 池のほとりは、満開になった花菖蒲の紫色でいっぱいになっていた。
 にぎりしめていたかんざしをかかげ、ふるえる手で、鏡にお花を映す。
 ドキドキする。上手くいくかなんて、分からないけど。
「花菖蒲……花言葉は」
 ぎゅっと、胸にかんざしを当てる。
「『あなたを信じる』!」
 鏡から光があふれて、あざやかな紫色の花びらが舞いあがった。
 光がどんどん強くなる。
 わたしはそっと目を閉じた。

 ──龍神さま。
 わたしを信じてくれたあなたを、わたしも絶対に信じます。
 だからどうか、戻ってこれますように──。

「……ありがとう」
 それは、ささやくような小さな声。
 でも不思議とききとりやすい、耳に優しい声。
「白沢さんを、信じてよかった」
 ゆっくり、まぶたを持ちあげる。
 ちらちらと舞う、菖蒲の花びらの向こう。
 その姿が見えた瞬間、目からぽろりと涙がこぼれた。
「りゅ、りゅ、りゅ……」
「え」
「竜ヶ水先輩~~~~~っ!」
 泣きながら飛びつくと、竜ヶ水先輩は勢いよくうしろに倒れこんだ。
「し、白沢さん……落ち着いて……! お、重い……」
「落ち着いてられません! わたし、わたし……もう、先輩に会えないかと……!」
「ちょっと! 人の服で鼻水をふかないで! 一回離れて!」
 ぼろぼろと、涙が止まらない。
 会えた。会えた! ちゃんと会えた!
「………………」
 泣きつづけるわたしの前で、しりもちをついたまま、竜ヶ水先輩はしばらくだまりこんでいた。
 それからくすっと小さく笑うと、そっと顔に手を伸ばしてきた。
「そんなに、泣かないで……白沢さんに、涙は似合わない」
 細い指で涙をぬぐわれて、わたしはようやく、少しずつ落ち着いてきた。
「……包帯だらけだね。大丈夫?」
「わたしのケガなんて全然平気です。それより、先輩が消えちゃわなくて、本当によかった……」
「白沢さんのおかげだよ」
 ピカピカになった鏡を見て、先輩はほほ笑む。
「ちゃんと……自分で、ココロのくもりを取れたんだね」
「はい! わたし……もう、ヒミツはやめました! お花が好きな自分も、柔道をがんばってきた自分も。どっちもわたしだから!」
 手にしていたかんざしを、ぎゅっとにぎりしめる。
「大好きなものを、大好きっていう! そう決めたら、とっても楽になりました!」
 竜ヶ水先輩は静かにうなずいて、わたしの話をきいてくれる。
 




「だから、あの……華道部に、正式に入部しようかなって思うんです!
「そっか」
「似合わないって思われても、いいんです! わたしがやりたいから、やります!」
「似合うよ」
 その短い言葉を、わたしはすぐに理解できなかった。
 心臓を撃ちぬかれたみたいな衝撃で、しばらく何もいえなくなる。
「…………え?」
「前向きでまっすぐなきみには、花が似合うと思うよ」
 竜ヶ水先輩から、間近で見つめられて。
 ほっぺがみるみる、熱くなっていく。
「う、あ、あの、その……えっと──」
 なななな、なんで急に、こんなにドキドキするんだろう!?
 取り乱しちゃいけない! 武道をたしなんできた者として!
「──さ、さすが、先輩! そうですよね! おしとやかだから、かわいいから、お花が似合うんじゃない! 誰にだって似合う! わたし、まちがえてました!」
「え?」
「あっ……っていうか先輩、このほこらの神さまですもんね!? 小学生のころのわたしのお願いを叶えてくれようとしたなんて! さすが、龍神さまは優しいなあ!」
 ──「いつか誰かに、『お花が似合うよ』っていってもらえますように!」
 四年前、このほこらで願ったこと。先輩は全部、きいていたんだよね。
「うーん……」
 長いまつげをぱちくりとしばたたかせてから、竜ヶ水先輩は苦笑いした。
「……いまいち、伝わってない気がするな……」
「それより、先輩!」
 また会えたことがうれしくて、あと回しになっちゃってたけど。
 大事なことを、伝え忘れてた!
「あの……すみませんでした!」
 屋上まで、キツネを追っていったとき。
 そもそもあのとき、わたしが先輩の忠告をきいていたら、先輩が消えかけちゃうなんてことにはならなかったんだ。
「先輩のいうことをきかずに、あんなことになっちゃって……本当に、ごめんなさい」
「そんな……ぼくこそ、ごめんね」
 竜ヶ水先輩が、首を横にふる。
「いつもぼくを守ってくれたきみのことを、助けたかったのに……あんなふうに力を制御できなくなるとは、思わなかった」
 先輩は伏し目がちに、じっと自分の手のひらを見つめている。
「ぼくが龍神としての力をとり戻すには、何か方法を見つけないといけないかもしれない……」
 竜ヶ水先輩が、ご神体の鏡を使って、銀色の龍の姿になったとき。
 あのときの先輩は、先輩じゃないみたいだった。先輩が鏡にさわれるようになるには、確かに、何かが必要なのかも──。
「なるほど……よし!」
 もう一度、かんざしをぎゅっとにぎりしめる。
「わたし、決めました! これから、先輩が龍神さまとして、力をちゃんと使えるようになるまで……わたしがお手伝いします!」
「えっ」
 ポカンとして、先輩は再び、ぱちぱちとまばたきをする。
「い……いいの? あんなにあぶない目にあって……こんなに、傷だらけになってるのに」
「華道部と同じです! わたしがやりたいから、やるんです! それに……」
 わたしは無意識のうちに、先輩の服のすそをつかんでいた。
「……白沢さん」
「先輩がいなくなって、気づきました。先輩がいてくれないと、すごくさびしいって」
 雨の中、竜ヶ水先輩を探したときの気持ちを思い出すと、いまでも不安になる。
 もう、あんな思いはしたくないから。
「わたしが、先輩を守ります」
「……あ……ありがとう……」
 竜ヶ水先輩はほっぺをまっ赤にして、ふいっと目をそらしてしまった。
「……そんないいかたは、ずるい……」
 そのつぶやきは、周りの木の葉がざわざわと鳴る音で、かき消されていった。
 池のほとりの花菖蒲も、吹きぬけた風にゆれている。
「わあ……!」
 ずっとうす暗かったのに、木々のすきまから、西日が差しこんできた。
 あかね色の光の中でゆれるあざやかな紫は、すごく──。
「きれいだね」
 竜ヶ水先輩が、ポツリと小さな声でいった。
「はい! わたしもいま、そういおうと思ったんです!」
 この先、何が起こるか分からないけど。
 きっとわたしは、先輩と見たこの景色を、一生忘れないと思う。

 ──これからも龍神さまと、ずっといっしょにいられますように。

 わたしはかんざしをにぎりしめ、心の中で、そっと願いをつぶやいた。

このお話のつづきは、シリーズ2巻め『はなバト!(2) 想いがうずまく七夕まつり!?』で楽しめるよ!
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部活もおやくめも大ピンチ!? 花言葉でみんなを救うストーリー、2巻め!
華道部が"廃部"の危機!? なのに、伊織もやめるって言い出して……? 七夕まつりでは、竜ヶ水先輩とのペア解散のピンチ!? 花言葉でみんなを救う【おやくめ】ストーリー、トラブルだらけの第2巻!


はなバト!(2) 想いがうずまく七夕まつり!?

  • 作:しおやま よる  絵:しちみ
  • 【定価】836円(本体760円+税)
  • 【発売日】
  • 【サイズ】新書判
  • 【ISBN】9784046322685

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【書誌情報】

絶対ナイショのパートナーと、 【花言葉】をとなえてみんなを救え!
わたし白沢みくに。柔道がトクイだけど、中学では大好きなお花の似合う"おしとやかな子"をめざそうと思ってるんだ。でも、「学園のピンチをすくえるのは君だけだ」って、ヒミツのおやくめをはじめることに!?


はなバト! 咲かせて守る、ヒミツのおやくめ!?

  • 作:しおやま よる  絵:しちみ
  • 【定価】814円(本体740円+税)
  • 【発売日】
  • 【サイズ】新書判
  • 【ISBN】9784046322678

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