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『はなバト!』1巻無料公開! 第14回


 

絶対ナイショのパートナーと、 【花言葉】をとなえてみんなを救え!

わたし、白沢みくに!
きれいなお花が大好きで、『花言葉』にくわしい中1だよ。

ある日の放課後、見たことのないバケモノ(!?)がおそってきて
……って、いったいうちの学校で何が起きてるの!?
助けてくれたのは、どこかミステリアスな、華道部の竜ヶ水先輩。

「みんなを守れるのは、『花』を味方にできるきみだけだ」

なんて、そんなのムリです!!!
だけど、友だちにまで危険がせまってきて!?
こうなったら、 『花言葉』がもつ力で、わたしがピンチを救ってみせる....!

 

16 キツネの正体!

「……は?」
 眉をひそめる伊織を、じっと見すえる。
 ──確かめるのは怖いけど、わたしがやるしかないんだ。
「……あなたが、キツネの正体なんでしょ? みんなのココロを、食べてるんでしょ?」
「何をいってるんだ?」
「認めないつもり? だったら──」
 準備してきた、『お守り』──あぶらあげを取りだす。
 前に、ヒナちゃんがお守りとしてわたしてくれて……キツネから逃げるときに、助けてくれた。
 これならきっと、正体をあばけるはず……!
「──早く、認めてよ! 本物の伊織を返して!」
 いろんな思いを込めて、わたしは力いっぱい、あぶらあげを投げつけた。
「………………」
 伊織の顔にあぶらあげがはりついて、ゆっくりと、地面に落ちる。
「……あれ?」
 キツネだったら、何か反応するんじゃないのかな……?
 文字どおり『しっぽを出してくれる』かと思ったけど、伊織は動かなかった。
 ちゅんちゅんと、どこかから小鳥の鳴き声がきこえる。
「……どういうつもりだ」
 とても静かな声で、伊織はいった。
「怒らないから、説明しろ……」
 目が! 目が怖い!
 どう見ても怒ってる!
「順を追って、論理的に! いますぐに、全てを説明しろ!!」

 ──わたしたちは、すぐそこの公園に入った。
 伊織はムスッとしたままコンタクトレンズをはずして、水道でばしゃばしゃと顔を洗った。
「……なんで朝っぱらから、顔を油まみれにされなきゃならないんだ」
 ブツブツいいながら、カバンからメガネケースを取りだしている。
 小学生のころに使っていた、よく見覚えのある黒いケースだ。
「だって……わたしは、絶対に、キツネの正体をつかまなきゃいけなくて……」
「だからなんなんだよ、キツネ、キツネって」
 黒ぶちのメガネをかけて、伊織はジロリとにらんでくる。
(あ……)
 久しぶりのメガネ姿の伊織に、なんだか、胸の奥がキュッとなった。
 変わっちゃったように思ってたけど──伊織は全然、変わってない。
 そんなこと、わたしが一番、分かっていたはずなのに。
「何があったのか、さっさと説明しろ。あぶらあげを投げられっぱなしじゃ、割に合わない」
「えっと……」
 わたしたちは久しぶりに、通学路を並んで歩きだした。
 そして歩きながら、サク中でどんどん生徒の性格が変わっていること、その原因が『キツネのオニ』──いわゆる妖狐であることを、伊織に説明した。
「だから様子が変だったのか、アホらしい」
 眉間に指を当てて、伊織は大きくため息をついた。
「……で。悪いが、俺も『竜ヶ水先輩』のことは覚えてない」
「そう……」
 正体が神さまってことは隠して、それとなく竜ヶ水先輩の話もしてみたけど。
 やっぱり伊織も、先輩のことは存在すら覚えていないみたい。
 本当にいなくなっちゃったんだ、って悲しくなるけど、ここでへこんでる場合じゃない。
「まず初めにいっておくが、俺は妖怪とかそんなもん、一ミリたりとも信じてない。今回のことはすべて、集団幻覚とか妄想のたぐいだろうと思ってる」
 うん。伊織はこういう人だ。
 疑ってた自分が、本当に恥ずかしくなってくる。
「だが、おまえがこれ以上変なことをいわないように、話を整理してやろう」
「あ、ありがとう……」
「サク中では去年から、『急に性格が変わる』人が現れていた。そしてその原因と思われる妖狐に、実際、みくにも襲われた。襲われた直後、俺が現れたから、その『竜ヶ水先輩』とやらが俺を疑いはじめた」
 ため息をはさんで、伊織は言葉をつづける。
「で、このあいだ。また妖狐を追っていた先で、俺を見つけた。だからますます怪しい……と、みくには思ったわけだな」
「うん」
 校門を通りぬけ、ロータリーへ。
 校舎へ向かって歩きながら、会話は続く。
「明確に否定させてもらうが、俺はその妖狐じゃない。俺だったらそんな回りくどいことをしなくても、いつでもみくにを襲えたはずだろ」
「でも……それなら、なんであんなにタイミングよくいろんな場所にいたの? まぎらわしすぎるよ!」
「……そ、それは」
「それは?」
 急に口ごもって、伊織はふいっと顔をそらしてしまった。
「……それは、つまり、その……俺は……みくにが、心配だったから……」
「えっ?」
「だっ……だから……ファンクラブの奴らにからまれてたり、ぐちゃぐちゃな校長室で見つかったり……何してんのか気になって、おまえが行きそうなところを探してただけ、というか……」
 どんどんごにょごにょ声になっていって、ききとりづらいけど。
 ようするに、『わたしを心配して探してたから』ってことなの?
「じゃ、じゃあ、なんで! なんで、ガーベラをくれたこと、忘れてるの!?」
「……がっ……ガーベラ!?」
 伊織はたじろいで、かーっと耳までまっ赤になる。
「だって、伊織が本当にわたしの幼なじみなら、忘れてるはずないもん! 忘れたなんていわれたら、ニセモノかと思うじゃん!」
「………………るだろ」
 すごく小さな声で、伊織が何かをつぶやいた。
「え? 何?」
「恥ずかしい話だから!! ごまかしただけに決まってるだろ!!」
「えっ」
 突然の大声に、ビックリして足が止まる。
 周りにいた他の生徒たちも、みんな注目してる。
 




「俺が! 忘れるわけないだろ!? なんで説明しなきゃ分からないんだ! 入院してたのだって、ほんとはめちゃくちゃ心配してた! おまえが俺のことさけてばっかりだったから、様子も見にいけなかったし!」
「え、あの……」
「ふざけんな! こんなことをいわせるなよ! 分かるだろ! ふつうは!」
 まっ赤な顔のまま一気にまくしたてると、伊織はぜーぜーと肩で息をした。
「あ……ご、ごめん……」
 ずっと伊織は、わたしを心配してくれてたんだ。
 ただ、それだけだったのに。
「……本当にごめんね、疑って。ずっと、さけていて」
「べ……別に」
 取り乱したのをごまかすみたいに、伊織はクイッとメガネをかけ直した。
「いいか。まず考えるべきは、妖狐の目的だ。それが分かれば、おのずと正体は分かるだろ」
「目的……」
 そんなの、全然考えてなかった。
 オニがココロを食べる目的……っていわれても。
 竜ヶ水先輩は、『くもったココロを食べて、オニは強くなる』っていってなかったっけ?
 自分が強くなる目的の他に、何かある?
 わたしが頭をひねっていると、伊織は校舎横に植えてある背の低い木に歩みよっていった。
「珍しいな。もう咲いてる」
 そういいながら、大きな花びらの白いお花をひとつ、つみとっている。
「ほら」
「え」
「ムクゲ。花言葉は『信念』」
 小さいころ、ガーベラをわたしてくれたときの伊織と、姿がかさなる。
 伊織はきっと、わたしをはげまそうとしてくれてる。
「……信念」
「おまえの知りたい真実じゃないかもしれない。信念を持って、何を大事にするか考えろ」
「……うん」
 わたしは伊織の手から、大きくてまっ白なお花をそっと受け取った。

第15回つづく>

 

【書誌情報】

絶対ナイショのパートナーと、 【花言葉】をとなえてみんなを救え!
わたし白沢みくに。柔道がトクイだけど、中学では大好きなお花の似合う"おしとやかな子"をめざそうと思ってるんだ。でも、「学園のピンチをすくえるのは君だけだ」って、ヒミツのおやくめをはじめることに!?


はなバト! 咲かせて守る、ヒミツのおやくめ!?

  • 作:しおやま よる  絵:しちみ
  • 【定価】814円(本体740円+税)
  • 【発売日】
  • 【サイズ】新書判
  • 【ISBN】9784046322678

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▼気になる2巻は2月7日発売だよ!

部活もおやくめも大ピンチ!? 花言葉でみんなを救うストーリー、2巻め!
華道部が"廃部"の危機!? なのに、伊織もやめるって言い出して……? 七夕まつりでは、竜ヶ水先輩とのペア解散のピンチ!? 花言葉でみんなを救う【おやくめ】ストーリー、トラブルだらけの第2巻!


はなバト!(2) 想いがうずまく七夕まつり!?

  • 作:しおやま よる  絵:しちみ
  • 【定価】836円(本体760円+税)
  • 【発売日】
  • 【サイズ】新書判
  • 【ISBN】9784046322685

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